VAIOから、フラッグシップモバイルPC「VAIO Z」の新モデルがいよいよ登場した。

最高峰の技術を搭載し、常に「憧れ」のPCを実現してきたVAIO Zが、6年ぶりに刷新。フルカーボンボディの採用をはじめとした数々のブレークスルーによって誕生したその姿は、最高のモバイル体験を実現するPCとして、大きな注目を集めるものになるだろう。

そして、今回のVAIO Zは、プロジェクトリーダーの経験がないエンジニアによって開発するという、VAIO内でも新たな挑戦によって生まれた製品でもある。新たなVAIO Zに携わった5人のエンジニアに、開発に賭けた熱い思いを聞いた。

  • 新しい「VAIO Z」。世界初の4面フルカーボンで1kgを切る軽さと長時間駆動を実現

    新しい「VAIO Z」

最高峰ノートPCが“並外れた”進化へ

VAIO Zは、ソニー時代から、最先端の技術の採用と、常識外のブレークスルーによって、最高のモバイル体験を実現するために開発された、最高峰のモバイルPCでありつづけてきた。

2014年7月にソニーから独立したVAIOが、オリジナル製品第1号としてVAIO Zを2015年2月に発売し、新たな会社の姿勢を示すのに最適な製品だと位置づけたことは見逃せない。VAIO Zのモノづくりによって、独り立ちしても、挑戦する姿勢を失わないことを伝える役割は、しっかりと果たしたといえる。

それから6年。VAIO Zが、新たな進化を遂げることになった。

  • VAIO Zの天板

VAIO PC事業本部エンジニアリング統括部プロジェクトリーダー課の古川恵一プロジェクトリーダーは、「VAIO Zは、最高のアウトプットを求めるお客様の相棒であるために、その時代のVAIOブランドを象徴する、並外れた性能の実現と、新たな次元のモバイル体験ができる製品でなくてはいけない。今回のVAIO Zは、並外れたスピードと、並外れたスタミナ、並外れたタフネスを兼ね備え、新たな体験ができ最高峰のモバイルPCを目指した」と語る。

新たな開発チームが挑んだVAIO Z

新たなVAIO Zの検討が開始されたのは、2018年12月のことだった。

開発の中心となったのは、これまでにリーダーの経験がないエンジニアたち。古川プロジェクトリーダーのほか、武井孝徳メカニカルリーダー、板倉功周エレクトリカルリーダー、古谷ソフトウェアリーダーの4人のリーダーが選抜された。これまでにもそれぞれの担当領域で、歴代のVAIO Zには関わったことはあったが、中心的な役割を果たしたことはなかった。

第1世代であるtype Zが2008年に登場して以来、歴代のVAIO Zの開発は、メンバーの入れ替わりはあったものの、基本的には固定したチームで行われてきた。だが、今回のVAIO Zは、それとは異なる。新たな世代のVAIO Zを作るために、新たな世代にモノづくりを託すという、まさに新たな挑戦でもあつたのだ。

  • 2008年8月に発売されたソニー時代の「type Z」。メインマシンとしても使える軽量大画面のコンセプトで、“ステータスの象徴”と訴求されていた

古川プロジェクトリーダーは、「プロジェクトリーダーに選ばれた当初は、VAIO Zを作ることができるという期待感が大きかった。だが、仕様検討に入ってからは大変なことばかりだった。中途半端なものは出せない。妥協もできない。VAIO Zとしてあるべき姿とはなにか、世の中ではどんな変化が起こり、それにどう応えるべきか。その回答にたどり着くまでには多くの不安があり、多くの壁にぶつかった」と語る。

  • VAIO PC事業本部エンジニアリング統括部プロジェクトリーダー課の古川恵一プロジェクトリーダー

開発チームに課せられたテーマは、「新たな次元の体験ができるネクストゼネレーションVAIO」である。その上で、開発チームは、VAIO Zとしての妥協なきパフォーマンスとモビリティの追求を共通認識することとし、品質も、品位についても最高を目指すことを掲げた。

最初の作業は、それを実現するために必要な要素を、付箋に書いて、ホワイトボードに貼りだしていくことだった。

「VAIO Zとしてあるべき姿を追求するために、さまざまなアイデアを出し、試行錯誤を重ね、さらに、先輩エンジニアにも意見を聞いたりした。仕様検討は困難を極めた。多くの課題にぶつかりながらも、それらをひとつひとつ解決していった」(古川プロジェクトリーダー)

開発チームは新たなメンバーで構成されたが、VAIO Zが持つ思想はそのまま継承された。これまでの経験や蓄積を生かしながら、新たな世代によって、新たな息吹を吹き込んだのが、今回のVAIO Zである。

開発コードネームに込めた意味

開発コードネームは、「FUJI」。富士山のFUJIから取ったものであり、プロジェクトリーダーである古川氏が名付けた。理由は2つある。

ひとつめは富士山の雄大な姿がVAIO Zの役割に重なったからだ。

「VAIO Zは、VAIOのフラッグシップモデルであり、同時に、開発した技術やノウハウが、VAIOのさまざまなモデルに生かされていくことになる。富士山には広い裾野があるように、VAIO Zが頂上となって、他の製品にも技術が広く波及していくことを示した」と古川プロジェクトリーダーは語る。

開発コードネームの「FUJI」は、大文字で表記される。海外では、ファミリーネームを大文字で書く場合があり、新たなVAIO Zが、VAIOファミリーのトップでありたいという思いを込めたからだ。

そして、もうひとつの理由は、「世界から見た日本の象徴」であることだ。

「VAIO Zは、美しさでも、パフォーマンスでも、世界中で最高のプロダクトでありたい。それは富士山と同じである。これまでは、国内中心にビジネスをしてきたが、今後は海外でもビジネスを拡大したい。VAIO は、世界で輝けるブランドになりたい。それを牽引する製品になる、という思いを込めた」とする。

ターゲットはトップビジネスアスリート

新しいVAIO Zの開発にあたり、もうひとつ商品企画部門から出てきた提案が、「トップビジネスアスリート」の最高の相棒になるという目標だった。

「トップビジネスアスリート」とはなにか。VAIOによると、さまざまなスポーツのアスリートが、最高のパフォーマンスを出すために最高の道具を手に入れたり、投資を惜しんだりしないのと同じように、仕事の成果を生み出したり、優れたアウトプットを求めたりするために、最高のパフォーマンスを発揮するPCが欲しいという人たちを「トップビジネスアスリート」と位置づけ、これがVAIO Zのターゲットユーザーであるとしている。

「VAIOの本社がある安曇野市の近くには、登山できる山が多いが、登山をするためには、信頼できるギアが求められる。ときには命を預ける場合もあるだろう。ビジネスシーンにおいて、信頼できるツールが欲しい、という人たちにこそ、VAIO Zのこだわりが届き、共感してくれるはずだと考えている。そうした人たちがどんなものが欲しいのか。それが、VAIO Zのコンセプトになっている」(古川プロジェクトリーダー)

開発チームが壁にぶつかったり、選択に悩んだりした時には、「トップビジネスアスリートのためのPCとして、どう判断すべきか」ということが基本姿勢になっていたという。