格安通信サービスを提供するMVNO。多数の事業者がおり、市場はレッドオーシャンと呼ばれる状況にあるが、問題は採算性の低さとその深刻さだ。実態は想像を超えるようだ。
MVNOの現状を示した適時開示文書
MVNO市場には650社以上が参入している。市場はまだ拡大傾向にありながらも、事業者数の多さから、おのずと1社が獲得できる契約者は限られてくる。こうした状況から、近い将来の業界再編も予測されてきた。
そうした中で9月末に起きたのが楽天によるプラスワン・マーケティングの通信事業(フリーテル)の買収だ。買収にあたって楽天が公開した適時開示文書からはMVNO事業の厳しさを伺い知れるものとなっている。
開示文書によると、楽天はプラスワン・マーケティングに事業承継の対価として5億2000万円を支払う格好だ。さらに承継する資産は18億7700万円。負債は30億900万円となり、差し引き10億円超の負債を引き受けることになる。
プラスワン・マーケティングが通信事業に乗り出したのは2014年。この3年で残ったのは、約43万契約(2017年3月末時点、MM総研調査)と10億円を超す大きな負債だった。
ちなみに、43万契約というのは、少ない数ではない。MM総研の調査では今年3月末段階において業界第5位に位置づけられ、MVNOでは大手の部類に入る会社だった。売上も43億2900万円とそれなりにあるが、貸借対照表上に残った数値は厳しいものとなっている。
こうした状況となったのは、これまでプラスワン・マーケティングはテレビCMを放映するなど、多額のコストをかけてきたという側面もあるが、一概に個別事情によるものと評価できない側面もある。他社の意見も含めると、MVNO事業は今、「本当に儲からない」というのが現実に近いようだ。