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『FGO』や『ペルソナ』の影に潜むエージェント・リュウズオフィス──『マンガで分かる!FGO』や『カルデア放送局』を企画したその会社に迫る

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 熱心なゲームファンでも、“リュウズオフィス”という名前を聞いたことがある人は、おそらくほとんどいないだろう。

 リュウズオフィスとは、ゲームビジネスのマーケティング戦略を立案・実行する企業である。公式WEBサイトの制作・運営から、プロモーション動画やニコ生の制作まで、その業務の内容は多岐に渡っている。

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(画像は株式会社リュウズオフィスのスクリーンショット)

 リュウズオフィスの公式サイトには、同社がこれまでにプロモーションに携わったゲームタイトルがズラリと並んでいる。
 そこにあるのは『ペルソナ』、『真・女神転生』、『世界樹の迷宮』といったアトラスの人気シリーズや、現在スマートフォンで圧倒的な人気を誇る『Fate/Grand Order』(以下、FGO)など、ゲームファンから熱狂的に支持されている作品ばかりだ。

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『Fate/Grand Order』
(C) TYPE-MOON / FGO PROJECT

 こうしたゲームタイトルのプロモーションに携わるリュウズオフィスとは、いったいどのような企業なのだろうか。それを解き明かすのが、この記事の主旨である。

 そこで今回は、リュウズオフィスの代表取締役である小沼竜太氏と、同社でプランニング・チームのチームマネージャを務める山中武氏に、お話を伺った。
 ちなみに山中氏は、『FGO』公式サイトのコンテンツである『マンガで分かる!Fate/Grand Order』(以下、マンガで分かる!FGO)の担当編集者として、このコミックの企画から携わっている人物だ。解説マンガの概念を打ち破るこのコミックがいかにして誕生したのか、その裏側についても詳しく聞いている。

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『マンガで分かる!Fate/Grand Order』第3話より
(C) TYPE-MOON / FGO PROJECT

 さらにインタビューの聞き手として、ライターのマフィア梶田氏に登場いただいた。
 『ペルソナ』シリーズや『FGO』といった、リュウズオフィスがプロモーションに携わったゲームの熱心なプレイヤーとして知られる梶田氏は、『マンガで分かる!FGO』解説パートの執筆や、ニコ生の配信番組「Fate/Grand Order カルデア放送局」【※】でMCを務めるなど、リュウズオフィスと直接仕事のやり取りを行っている。

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※「Fate/Grand Order カルデア放送局」……『FGO』の最新情報をネット配信で紹介する生番組。マフィア梶田氏は2016年1月にオンエアされた「Vol.1」より、MCとして出演している。2016年12月に放送された「Vol.4 第七特異点配信直前SP」では、来場者が120万人を超えた。 (画像はFate/Grand Order カルデア放送局SP Fate/EXTRA CCCスペシャルイベント開催記念放送 – 2017/04/26 19:15開始 – ニコニコ生放送より)

 小沼氏や山中氏とも親交があるだけに、今回のインタビューでは当事者ならではの視点から、リュウズオフィスの仕事について鋭く切り込んでくれた。

 リュウズオフィスの業務を説明することは、とかくインターネットでは悪役とされがちな“広告代理店”という職業が、いったい何のために存在しているのか、そしてどのような役割を果たしているのかを解き明かすことにもなっている。
 ネット時代におけるプロモーションとはどういうものか、という話題は、ゲームファンだけでなく業界人にとっても必見の内容だと言えるだろう。

 そしてじつは、この記事はリュウズオフィスの求人募集としての役目も担っている。ゲーム業界や広告業界に就職したい人、そしてゲームプロモーションや配信番組の現場で働いてみたい人は、ぜひこの記事を最後まで読んでみてほしい。

聞き手/マフィア梶田TAITAI斉藤大地クリモトコウダイ
文/伊藤誠之介
構成/クリモトコウダイ


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左から山中武氏小沼竜太氏マフィア梶田氏

『FGO』を世に送り出すための準備と、その態勢作りの最初の一歩

マフィア梶田氏(以下、梶田氏):
 リュウズオフィスさんは、こういう取材を以前にも受けたことがあるんですか? 

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マフィア梶田氏

小沼竜太氏(以下、小沼氏):
 いえ、初めてですね。基本的には表に出ない存在ですから。

梶田氏:
 なるほど。そんなリュウズオフィスが、いったいどういうお仕事をされているのかを、まずお聞きしたいのですが。

小沼氏:
 リュウズオフィスは、ゲームメーカーさんにマーケティングのソリューションサービスを提供している会社です。
 ゲームが年間数千本の規模でリリースされているなかで、ゲームメーカーさんとしては自分たちのたった1本を選んでもらわないといけない。これはかなり大変なことで、ユーザーさんが1本のゲームを手に取るためには、何か理由が必要なんです。

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小沼竜太氏

 その理由を見つけたり、明確化したりするお手伝いをして、その上で実際にユーザーさんの手に取っていただくために、いったいどうしたらいいのかを考える。
 それを考えたら、今度は実行に移すためのお手伝いをする。これがリュウズオフィスの仕事の基本だと考えています。

梶田氏:
 1本のゲームがユーザーの目に入りづらい時代に、少しでもフックになるようなものを作り上げる、ということですか? 

小沼氏:
 ほとんどの場合は、製品そのものがフックになる何かを持っています。それを見つけて言語化し、さらにそれをユーザーさんに伝えるための順番や方法を考えるんです。この順番や方法のことを、僕たちはストーリーと呼んでいます。

 我々の仕事は、ゲームを手にとってもらうためのストーリーを作って、そのストーリーを実現するためのあらゆるお手伝いをすることなんです。

梶田氏:
 リュウズオフィスが携わっている作品の中でも、この記事を読んでいる人の関心が特に高いのが、『FGO』だと思うんです。『FGO』に関わりだした初期の頃を思い出してみて、いかがですか? 

小沼氏:
 最初の関わりは、『FGO』の企画/開発を手掛けることになるディライトワークス代表の庄司顕仁さんをTYPE-MOONに紹介したこと、そして、『FGO』を世に送り出すための準備、トレーラー映像や公式WEBサイトの制作と、その態勢作りの最初の一歩をお手伝いしたことですね。

──『Fate』はアニメ化もされたし、以前から人気の高い作品であるとは思うんですけど、正直言うと『FGO』が出るまでの『Fate』って、ここまで爆発的に盛り上がるようなIPではなかった気がするんです。

小沼氏:
 その通りだと思います。

──それが『FGO』で、ここまでのIPに成長できたことに対して、プロモーションが具体的にどこまで関与したのかに興味があるんですが、小沼さんとしては何か、思い当たるところがあるのでしょうか? 

小沼氏:
 『FGO』以前と以後の『Fate』はまるで別物だと思います。『FGO』以前の時期に新作としてリリースされていたゲームタイトルは、『Fate/EXTRA』シリーズしかなかったですから。

 『FGO』がなぜあそこまで一気に巨大化したのか、その理由を正確に分かっている人は、たぶん日本には誰もいないと思います。ただ、一つだけ言えるのは、初代の『Fate/stay night』も含めて、長年作品を世に送り出し続けていたシリーズである、ということでしょうか。

──リリース当初は大変な時期が続きましたが、そこからゲーム外のプロモーションに関して何かやり取りや提案はあったのでしょうか? 

小沼氏:
 リリース後、しばらくの間、ゲーム内容に関しては本当に緊急手術がずっと続いているような状態だったと思います。
 そこで、ニコニコ生放送やマンガというゲーム外の策を弊社からご提案しました。その他、皆さんの仕事が円滑にまわるようなサポートや提案もさせて頂きましたが、そのくらいですかね。

解説マンガの解説を、マフィア梶田氏が依頼された理由とは

──ゲーム外のサポートとして代表的なのが、やはり『マンガで分かる!FGO』ですよね。立ち上げについて詳しく伺ってもいいでしょうか。

小沼氏:
 『マンガで分かる!FGO』に関しては、『FGO』の遊び方を理解してもらおうという狙いが根底にあり、「漫画を使ったコンテンツがあるといいんじゃないか」という提案をしたんです。
 じつはその時、『マンガで分かる!FGO』の担当編集になる山中の入社がすでに決まっていたというのもあります。

山中武氏(以下、山中氏):
 僕は前職が書籍の編集者で、マンガをはじめいろんな本を作ってきたんですけど、入社後2日目ぐらいに「じつはこういう企画があって」というのを聞いて、ビックリしました(笑)。

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山中武氏

梶田氏:
 早め早めの動きで仕事を取ると(笑)。『マンガで分かる!FGO』はかなり目立つというか、悪目立ちするものだと思うんですけど、なんでああいう内容になったんですか? 

小沼氏:
 ディライトワークスさんから作家イメージの提案もあり、「弱酸性ミリオンアーサー」【※】の事例について共有を受けていたんです。それを踏まえて、内容面の提案に関しては山中に任せました。

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※弱酸性ミリオンアーサー……『あいまいみー』で有名なちょぼらうにょぽみ氏による、スクウェア・エニックスのスマートフォンアプリシリーズ『ミリオンアーサー』のアプリ内4コマ漫画。だがその内容は、ゲーム内ストーリーとは異なり、独自のストーリーが展開されているのが特徴で、著者の作風が色濃く出ている。インタビューで言われている事例とは、スマートフォンゲームの漫画を、著名な作家に依頼し、その作家の作風が色濃く出ることで話題のコンテンツとなり、それがユーザーに受け入れられた──ということである。
(画像はSQUARE ENIX|弱酸性ミリオンアーサーのスクリーンショット)

山中氏:
 そもそも最初は、「『FGO』のゲームシステムの複雑な部分をマンガで解説できないか」という、普通の解説マンガをやろうという話で進んでいました。

 それでどの作家さんに描いてもらったら面白いかなと考えて、候補の作家さんのリストを作ったんですが、その中にリヨさんを入れていたんですよ。
 リヨさんとは以前、別の企画でお仕事をしたことがあって、またお仕事がしたいなと思っていたので。そうしたら、リストを見たTYPE-MOONの武内崇さん【※】「リヨさんがいい」と。

※武内崇
『月姫』『Fate/stay night』の原画家であるイラストレーター。TYPE-MOONの代表として、『Fate』シリーズをはじめとするさまざまなプロジェクトの陣頭指揮を行っている。

梶田氏:
 武内さんが希望したんですか。

山中氏:
 そこからリヨさんを説得して……。

梶田氏:
 説得したということは、リヨさんは最初、尻込みしていたんですか? 

山中氏:
 その頃のリヨさんは、『Fate』についてまだそれほど詳しくなかったんです。熱いファンの方が多い作品ですから、そこに自分が入っていいのか、みたいな心配をされていましたね。

 でも「『Fate』の最新作のど真ん中でやれるのはチャンスだと思うので、やってみたほうがいいと思いますよ」という話をして、それで受けてくれることになって。

梶田氏:
 運命の分かれ道ですね。そこでリヨさんが受けなかったら、あのマンガもどうなっていたか分からないですから。いざリヨさんに描いてもらうことになって、その時点ではあくまで解説マンガとして依頼したんですよね? 

山中氏:
 そうですね。マンガの中でどんな順番で、どんな話をするのかをちゃんと決めて、じゃあこれでネームを描いてみてくださいとお願いして、上がってきたのが、今の第1話を含むいくつかのネームだったんです(笑)。

──「そもそも『FGO』ってどんなゲームなの?」というのに、第1話でまったく触れてないですよね。

梶田氏:
 ある意味、前代未聞ですよね。

山中氏:
 でも武内さんをはじめ、みなさんから「これがいい」という話を頂けたので。

梶田氏:
 自分はあのマンガにくっついているコラムを書かせてもらっているんですけど、最初に依頼の電話を頂いた時のことをよく覚えているんです。「マンガがあまりにも解説していないので」というお話だったんですけど(笑)。

山中氏:
 あの当時は、もう少し解説を補強したいという話があったので、じゃあ下に記事をつけましょうということで、梶田さんにご相談させていただいたんです。

梶田氏:
 よくその発想に至りますよね(笑)。おかしいと思わないんですか、解説マンガの解説って。しかもなんであの時オレに電話がかかってきたのか、今でも不思議なんですけど。

小沼氏:
 Twitterでガチャを回したってつぶやいていたからですよ。

山中氏:
 腕利きのライターが、『FGO』のガチャを回しているっていう。

梶田氏:
 回している人は他にいくらでもいるじゃないですか!?

小沼氏:
 『FGO』のゲームシステムをちゃんと解説できるライターとしての技量を持っていて、かつ緊急事態だったので、すぐに連絡が取れる人が必要だったんです。

山中氏:
 マンガの連載がすでに始まっていましたからね。

──逆に梶田さんとしてはなぜ、解説のお仕事を受けたんですか? 

梶田氏:
 あの当時の『FGO』は絶賛バーニング中のコンテンツだったんですけど、オレはいちファンとしてバーニングなところを受け入れた上で、「このゲームおもしれぇ!」って遊んでいたんです。

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 そういう感じだったので、『FGO』のこういうところはいいけどこの部分はアレだ、みたいなことを自分の連載でバンバン書いていたんですよ。

マフィア梶田の二次元が来い!:第269回「再び銀幕に召喚される姫神英霊のグランドオーダー」(4Gamer.net)

 なので……正直言うと、公式から仕事が来るとは思っていませんでした。ゲームを楽しんではいたけれど、メーカーとしては使いづらいだろうなという自覚があったので。

 だから小沼さんから電話がかかってきた時は「マジか!」って思いましたよ。あの時に聞きましたよね、「勝手にいろいろ書いていますけど、いいんですか?」って。

山中氏:
 でも、リヨさんもそういう意味ではかなり自由に描かれていたので、逆にやりやすかったんじゃないですか? 

梶田氏:
 お話を聞いて自分としては、「これ、いっちょ噛みして大丈夫なの?」って思いましたよ(笑)。解説マンガの解説をしなきゃいけない時点で、これは相当ヤベぇぞって。
 マンガで分からないものを解説して、それでも分からないって言われたら、オレの立場がないですから。結果的に解説として受け入れられて、良かったですけど。

リヨが描く主人公は、プレイヤーの闇の部分を代表している

──『マンガで分かる!FGO』って、結局のところはプロモマンガじゃないですか。それがゲームと切り離しても、それ単体で楽しめるコンテンツの領域にまで達しているのが大変興味深いです。

山中氏:
 リヨさんはこれまでのTYPE-MOON作品の文脈の中にいた方ではなかったので、連載を開始した当初、リヨさんのマンガを受け入れてファンになってくれた方は、当時の読者の半分ぐらいじゃないですかね。

 
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(画像はGame – TYPE-MOON Official Web Siteのスクリーンショット)

 すごく良かったと言ってくれている人が半分、ぜんぜんダメと言っている人が半分ぐらいで。

──それが今ではすっかり受け入れられているのが凄いですね。

梶田氏:
 それにしても、ゲーム内容に関して「こうしてほしい」的な、マンガが運営母体に文句を言うっていうプロモーションは、それまであんまりなかったじゃないですか。
 あれはリヨさんから送られてきたものが最初からそうだったんですか? それともTYPE-MOONのほうから、そういうのをどんどんやってくれと言われたんですか? 

山中氏:
 順序的にはリヨさんのネームが先ですね。僕はネームの内容には編集者としてほとんど意見を出していなくて。初代が終わって『もっとマンガで分かる!FGO』になってからは、けっこうフリーダムに描いてもらっていますね。

 初代の頃はスマホゲーム全般に通じるような皮肉をまじえながら、ゲーム解説をしているという感じだったんです。

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『マンガで分かる!FGO』第2話より
(C) TYPE-MOON / FGO PROJECT

 「面倒くさいゲームだな……」と言いながらも、そのシステム自体についてはちゃんと触れているので、そういう意味では解説になっていないようでなっていたんですよ。

 でも『もっと』になると正直、解説することがそんなになくなってきて。
 それでけっこうフリーダムに、マンガの中で話を進めていくみたいな感じになっていったんです。その時に、初代の時に培った芸風みたいなものを引き継いでいて。

梶田氏:
 プレイヤーの闇の部分を代表している(笑)。それはある意味、『Fate』というコンテンツならではですよね。
 普通に考えたら、メーカーさんは嫌がるじゃないですか。ツッコんでほしくないところ、言わなくていいところをあえて言って、しかもそれが容認されている。

 これはユーザー目線での意見ですけど、ある意味であのマンガが、『FGO』自体のヘイトコントロールになっているんじゃないかと。

山中氏:
 意図しているわけではないですが、結果的にそうなっているかもしれませんね。

梶田氏:
 だから解説マンガという位置付けではなくて、『FGO』のコンテンツの1つとして見られているんじゃないですかね。

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『もっとマンガで分かる!FGO』第23話より
(C) TYPE-MOON / FGO PROJECT

山中氏:
 あのマンガはすごく大勢の方が見てくださっているんですけど、それは『FGO』というコンテンツがどんどんユーザーを増やして広がっていくそばで、伴走できたことが大きかったと思います。
 そうやって、リヨさんの作風が『FGO』のファンの方に受け入れられていったのは編集者として嬉しいですね。

梶田氏:
 リヨさんのマンガは、プレイヤーが言ってほしいことを的確に抽出して、代わりに主人公が言ってくれていると思うんです。でもそれは、『FGO』にかなり詳しくないとできない気がするんですけど? 

山中氏:
 リヨさんは勤勉な方なので、僕の知らないところで、『FGO』に限らず『Fate』に関わるものを、けっこう見てくれていると思います。そうじゃないと描けないネタもあるので。

梶田氏:
 そういう意味では、ズバリな作家を選びましたね。『マンガで分かる!FGO』は公式の宣伝コンテンツとして偉大ですよ。

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『マンガで分かる!FGO』単行本1巻表紙
(C) TYPE-MOON / FGO PROJECT

山中氏:
 僕がお礼をいうのもなんですが、ありがとうございます(笑)。あと、感想を追っていると、ゲームはやっていないけどリヨさんのマンガは読んでいるっていう層が、やっぱり一定数いるんですよね。

梶田氏:
 あのマンガがある意味、『FGO』の招待状になったというか。あのマンガを見て「なんじゃこりゃ」と思った人が、ゲームについて調べて「よし、やってみよう」というパターンが、かなりあると思うんですよ。

山中氏:
 『歴メシ!』っていう、歴史上の人物が食べた食事のレシピが載っている本があるんですが、それが『FGO』のユーザーさんの間で人気になっていたそうなんです。

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(画像はAmazon|歴メシ! 世界の歴史料理をおいしく食べるより)

 その話を聞いた担当編集さんがとりあえず調べてみようと思って、本屋さんで手に取ったのが『マンガで分かる!FGO』で。そうしたらまったくわからなかったと(笑)。

梶田氏:
 そりゃそうでしょうね(笑)。

山中氏:
 なので、ゲームを始めたそうです。これでユーザーが1人増えているんですよ(笑)。

小沼氏:
 我々が『マンガで分かる!FGO』を生み出すきっかけを作ったのは確かだし、それを編集したのも確かなんですけど、「誰がプロデュースをしたか」という観点で言うと、おそらく武内さんだろうと。
 企画と手段を提供して、それをコンテンツサイドとしてキチンとプロデュースするTYPE-MOONという存在があったからこそ、今の『マンガで分かる!FGO』があるのかなと思っています。

 我々が提供する企画があって、手段があって、それに加えてコンテンツサイドのプロデュース力というのがすべて揃っていないと、なかなか上手くはいかないと思うんですよ。

──『マンガで分かる!FGO』って独立している感じがあって、我々から見るとプロモーションの一環なので、リュウズさんとリヨさんが独自にやられているイメージがあったんですが……なるほど。武内さんとTYPE-MOONという存在があったからこそ、だったんですね。

「マスからWEBへ」を確信的に実行した『ペルソナ3』のPR

梶田氏:
 リュウズオフィスでは『FGO』のほかに、『ペルソナ』や『真・女神転生』といったアトラスさんの作品のプロモーションも手がけられていますよね。

小沼氏:
 『ペルソナ』や『真・女神転生』のプロモーションは、アトラスのプロデューサーやプロモーションチームと密にコミュニケーションを取りながら、ゲーム本来の魅力を引き出す企画を提案したり、独自の施策を実施したりしています。節目のプロモーションにはほぼほぼ、何らかの形で関わらせて頂いていますね。

 たとえば公式WEBサイトでしたら、始まりから終わりまですべてリュウズで制作と運営のお手伝いをさせて頂いています。生放送の配信番組も、100%ではないんですけど、重要な発表のものに関しては関わらせて頂いています。

──『Fate』だけでなく『ペルソナ』も同じだと思うんですが、『ペルソナ』も『ペルソナ3』【※】より以前は、もちろん人気はあったんだけど、今ほどファン層が厚い感じではなかったですよね。
 だから現時点から結果だけを見ると、「『ペルソナ』と『Fate』って、IPが強いからそりゃ当たるよね」と言われるかもしれないけれど、リュウズさんが関わり始めたタイミングはどちらも、むしろIPがここまで強くなる前ですよね? 

小沼氏:
 そうですね。『ペルソナ3』に関して言うと、ゲームの内容を見させてもらった時に、自分も含めて、当時のオタク寄りのゲームユーザーが、「これは僕たちが好きなものがギュッと詰まっているぞ」と感じて、「この内容がそのまま伝われば絶対にウケるから、余計な加工を加えずに、ゲームの動画をWEBサイトにいっぱい配置しましょう」という提案をしました。
 そしてそれは、間違いなくファンになって下さったユーザーの皆さまに受け入れてもらえたと感じています。

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※『ペルソナ3』……2006年にアトラスより発売されたPS2用RPG。『ペルソナ』シリーズの第3弾にあたるが、キャラクターデザインを副島成記氏が担当するなど、過去のシリーズとは雰囲気やゲームシステムを一新。それまでの『メガテン』『ペルソナ』のファン層とは異なる新たなプレイヤーをも獲得し、大ヒット作となった。
(画像はP3 – ペルソナ3 – 公式サイトのスクリーンショット)

 要するに『ペルソナ3』で何をやったかというと、そのまま伝われば必ずヒットにつながると信じ、適切な人の手に届くように、適切な人の目に映るようにしましょうと。
 たとえば『ペルソナ3』には、「影時間」【※】という設定があるじゃないですか。そこでWEBサイト上で影時間を作りましょうと。

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「影時間」にアクセスした時の公式サイト
※影時間……『ペルソナ3』では午前0時から約1時間、“影時間”と呼ばれる特別な時間が存在する。多くの人には影時間の存在は認識されていないが、主人公たちは影時間のあいだも自由に行動でき、影時間に出現するシャドウと呼ばれる怪物と戦うことになる。

 午前0時から1時間だけは、サイトが影時間化して緑になるみたいな、ちょっとしたギミックを入れてみたんです。結果として、『ペルソナ3』を追っかけていた人たちが午前0時のことを「影時間だ」と言い出してくれたときは、「よし、やった!」と。

梶田氏:
 オレもやっていました、その当時(笑)。あれは面白かったですよ。まだ学生でしたけど。

小沼氏:
 ありがとうございます。『ペルソナ3』を追い求めている何千人かが、午前0時にパソコンの前に集まったら、必ず何かが起こると思ったんです。だから、見てほしい人に見てもらうための工夫をしたんですね。

── 一般的なプロモーションというのは、知らない人に対して認知させるものだと思うんです。でもリュウズさんのプロモーションというのは、熱量を高めるとか気分を上げるとか、そういうことに特化している何かだと思っているんですよ。
 だからこそ『ペルソナ3』や『Fate』が、持っているポテンシャルのMAXまでいって、そこをさらに超えていくみたいなことが起こっているんじゃないかと。

小沼氏:
 サービス開始前の『FGO』の施策で、新サーヴァント7騎を7週連続のTVCMで公開【※】するということを提案したんですが、製作委員会のほうでも「それは名案なので絶対にやりましょう」と言ってくれたんです。
 あのCMは熱量を高めることを狙って、『Fate』ファンしか見ていないところで最新情報を公開するという方針だったんです。

※7週連続のTVCMで公開
2015年4~5月にかけて、TVアニメ『Fate/stay night[Unlimited Blade Works]』2ndシーズンのCM枠内で公開された。

梶田氏:
 『Fate』って、『FGO』が出るまでは二次創作の世界を中心に広がりを見せていて、みんな世界観やキャラクターを知っていたわけじゃないですか。

 ただ、世界観やキャラクターを知ってはいるけど、自分が手をつけるコンテンツは見当たらないっていう人たちが、初めてマスに打ち出された『Fate』である『FGO』に集中したことによって、今日の大爆発になったんじゃないかと、自分は思っているんです。
 「今回の『Fate』はオレにも入れそうじゃん」って。実際オレがそうでしたし。

小沼氏:
 1万人に知ってもらうのと100人に知ってもらうのではどっちが強いかというと、普通は1万人だと思うんですけど、1万人の中に9900人のアンチがいたら、これはマイナスなんですよ。
 そういう1万人よりも、数は少ないけれども本当に好きな100人に届けたほうが、パワーとしてはあるんですね。

 7週連続とか、「Fate」のアニメ枠で流すとか、その施策の根底にあるのは、「好きな人が集まる場所やタイミングを見定めて公開することで、そこにいる好きな人たちに見ていただこう」という発想ですね。そして「それでいいんだ」と言い切ったのが、TYPE-MOONさんを始めとする製作委員会の皆さんです。

 ただ、僕の中で見積もっていた100人という数が、『FGO』に関しては間違っていて。じつは5000人ぐらいいた、ということだと思います。

梶田氏:
 『FGO』でのリュウズさんの功績はどちらかというと、ゲームが安定しだしてユーザーが普通に遊び始めた時に、『マンガで分かる!FGO』や「カルデア放送局」がバズりだして、ユーザーを増やしていったことじゃないかなと。バズるきっかけを作り出したというか。

小沼氏:
 あくまで我々ができることは、きっかけを作るお手伝いだと思うんですが、その中で功績があるとするなら、漫画や生放送ではなくて、情報の出す順番を提案し、規定したことだと考えています。

 Twitterに出す情報が最速である、生放送に出す情報も最速である、サイトの更新も最速である。最新の情報がどこにあるか、を明確にする。
 だから『FGO』は公式のメディアを見ていれば、ほとんどの場合、そこが最速の情報になっているはずです。もちろん、例外はあると思いますが。

──なるほど。たしかに自分自身、メディアの人間としても、いちユーザーとしても、生放送とTwitterを見れば最新情報は大丈夫という感じで情報を追っています。

小沼氏:
 ゲームがたくさん出るようになったと同時に、その情報もたくさんあふれるようになっていて。ゲームが発売されました、新しいPVが公開されました、公式サイトが更新されましたという情報が1日に何十件もあるので、その中の1つの情報をユーザーさんがわざわざ取りに行って、それを見に行く理由は、もはや多くの場合において存在しないんじゃないかと思うんです。

 そんななかで、情報に注目してもらうための理由作りの1つとして、生放送があると考えているんですね。

梶田氏:
 「カルデア放送局」って、業界全体から見てもあの規模の視聴数を取れる生放送は他にないので、業界の内外から注目されているんですよね。
 あの番組はいったいどこからどこまでが、リュウズさんのお仕事なんですか?

小沼氏:
 制作という意味で言えば、全般に関わらせて頂いてます。生放送現場の話をすると、プランナー、構成作家、ディレクター、フロアディレクター、プロデューサーと、この5人ぐらいがいれば、番組はだいたい作れちゃうんです。

山中氏:
 発表しなければいけない内容に関してはもちろん委員会のみなさんが決めています。それを材料として番組の形にするのがウチの仕事ですね。

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