小川菜摘、還暦超えても「新人女優の気持ち」で舞台に全力投球 家族の観劇も励みに
2024年12月5日(木)15時22分 マイナビニュース
●舞台にやりがい「第二の人生のようで、今とても楽しい」
舞台を中心に女優業に情熱を燃やしている小川菜摘。61歳の今も「新人女優の気持ち」で一つ一つの作品に全身全霊で取り組んでいるという。このたびアサヌマ理紗らと演劇集団・熟年団を立ち上げ、12月4日〜8日に東京の恵比寿・エコー劇場で舞台『チェリー・ホープを知ってるかい。』を上演している。小川にインタビューし、今の仕事に対する思いや同舞台への意気込み、今後の抱負など話を聞いた。
小川は結婚を機に舞台活動を休止し、50歳を迎える2012年に再開。子育てがひと段落したことで復帰した。
「もともと役者をやりたくて、特に舞台をやりたかったんです。でも結婚して、子供も生まれて、舞台はすごくスケジュールを取られますし、地方公演もあったりして、舞台のお仕事をやっていたら家庭が回らないと思ったので、舞台はお休みすることにしました。映像の仕事やバラエティは続けていましたが、現在舞台復帰して一番やりたかった仕事ができて、第二の人生のようで、今とても楽しいです」
映像作品にもやりがいを感じつつ、観客の反応を直接感じることができるのは舞台ならではの喜びだという。
「映像のお仕事は、台本を読み込んで現場に行っても、監督の思いや意向があるので、瞬発力でそこに合わせていく難しさや楽しさがありますが、舞台はまっさらな状態でみんなで1から積み上げていき初日に挑むという、映像とは違う楽しさがあるんです。映像ももちろんセリフを覚えないといけないですが、舞台は物語が始まったら終わるまで本当に集中して、みんなでバトンを渡していく楽しさだったり、難しさだったりがあります。カーテンコールでお客様が拍手してくれたり、感動して泣いてくださる姿を見て、苦しんだり悩んだりした事が、報われたなと。そのために頑張っている気がします」
SNSで寄せられる声も原動力になっているという。
「舞台を見に来てくださった方が、『小川さんを観てファンになりました』と何人もの方が次の舞台を観に来てくださるんです。それがとても自分の糧になって、もっと応援して下さる方が増えていくように頑張らなきゃなと。今はそういった意見をダイレクトにいただけるのでうれしいですし、励みになります」
家族や友人が観に来てくれることも励みになっているそうで、「家族が『面白かったよ』と色々な感想を言ってくれるのも、ありがたいし、うれしいです。家族だけでなく、友達や知り合い、役者仲間など、いろんな方も観に来てくださるので、すごく励みになります」とうれしそうに語った。
今回の『チェリー・ホープを知ってるかい。』に関しても、家族の観劇について「公演数が短いのですが、スケジュールが合えば来てくれるんじゃないですかね」と話していた。
●芝居で脳をフル回転「それがパワーの源になっているのかな」
舞台復帰してから12年経つが、小川は「今も新人女優の気持ち」だと語る。
「もう還暦を超えていますが、20年以上ブランクがあるので、本当に一生懸命、全身全霊で取り組んでいかないと皆さんに追いつけないなと。いつも学ぶことばかりですが、一作品一作品どんどん吸収して、それを次の舞台で生かせるようにと心がけています」
自分自身も一生懸命取り組んでいる人に魅力を感じるという。
「一生懸命頑張っていたら、誰かが観て評価してくれるだろうし、自分のためにもなると思っています。お芝居が上手でも下手でも、一生懸命取り組んでいる人は魅力的だなと思うので、私はそうでありたいなと思います」
どの作品でも、演出家の言葉や自分でひらめいたことなどを台本に書き込むようにしているそうで、「『新人女優さんみたいですね。台本真っ黒じゃないですか』とよく言われるんです」と笑いつつ、「いつまでも私は新人女優の気持ちで必死にやらないとついていけないと思っているので、これからも取り組み方は変わらないと思います」と語る。
このたび立ち上げた演劇集団・熟年団は、小川とアサヌマ理紗の「愉快な人たちと楽しい舞台を作りたい!」という呼びかけに、村上大樹、今林久弥、小林タカ鹿、千葉雅子が集結し、アサヌマ以外のメンバーが熟年世代だったため、「熟年団」と命名。さらに、熟年ではない、若手実力派の冨岡健翔、加藤夕夏も加わった。
「舞台共演をきっかけにアサヌマ理紗ちゃんと年の離れた友達になり、すごく仲良くなって、『何かやりたいよね』という話になって。『村上さんにやってほしいよね』『あの人が出たら面白いよね』と妄想の世界で2人で盛り上がっていたので、本当に実現してびっくりしています」
そんな熟年団が今回挑むのは、25年前に初演された名作、鈴木哲也脚本『チェリー・ホープを知ってるかい。』。1999年の大みそかに、生まれ育った一軒家に久しぶりに集まった姉弟たちの家族をめぐる物語を描く。小川は今回も、観客の反応を楽しみに稽古に励んでいる。
「セリフを入れていく時期は本当に苦しいですが、本番は私たちカンパニーが楽しんでやることによって、観に来てくださるお客様も楽しめると思うので、楽しみながら届けたいです」
61歳の今も、パワフルに活動している小川。女優という自分のやりたいことができているからこそ、元気でいられるという。
「若さを保つ秘訣は、芝居に関して悩んだりしている思いが脳をフル回転させているだろうから、それがパワーの源になっているのかなと。家に帰るとくたくたですけどね(笑)」
今回小川が演じる長女『あおい』は、40歳頃という設定。「実年齢より若い役を演じるのはけっこう大変なんです(笑)」と吐露しつつ、女優業は自分とは違う人物を演じられることも醍醐味だと語る。
「私の価値観では、こんなこと絶対言わないだろうなということもありますし、例えば極悪人の役だったら、自分の中に全くない部分を出さないといけない。それを想像で演じて作っていくのが役者の仕事なわけで、そこを体感できるというのは面白いなと感じています」
●「70、80代になっても舞台で輝いている女優になれたら」
充実した日々を送っている小川。「今年はこれを含めて4本舞台をやっているので、自分でもよくやったなと(笑)。来年も役者の仕事を楽しくできたらいいなと思います」と話した。
今後の女優業はどのように思い描いているのだろうか。
「何も考えてないですけど、お仕事のお話がある限りは、すべて全力で向き合って、この人を呼んでよかったなと思ってもらえるように頑張っていきたいということだけです」
立ち上げた熟年団については「ライフワークにしていきたい」と考えている。
「今回たくさんお客様が入ってくださって、『熟年団の第2弾が観たいです』というお声が多ければ絶対に続けていきたいです。」
そして、70代、80代になっても舞台に立ち続けたいと熱い思いを明かす。
「以前、浅丘ルリ子さん、山本陽子さん、水谷八重子さんの3人で『三婆』という素晴らしい舞台をされていて、皆さん当時70歳オーバーでしたが、本当にかっこよくてすごいなと。皆さんに比べたら私なんかまだまだひよっこだなと思い、あの舞台を見た時に、70代、80代になっても、お客さんを喜ばせて舞台で輝いている女優さんになれたらいいなと思いました。立派な先輩の背中を見つつ、目指していきたいです」
そして最後に、ファンに向けて「人生経験を積んだ熟年の役者と、フレッシュな若手の 化学反応がとっても面白いのでぜひ! 『チェリー・ホープを知ってるかい。』はどの層の方がご覧になっても楽しめる、12月に観劇するのにふさわしいお芝居なので、たくさんの方に来て頂きたいです」とメッセージを送った。
■小川菜摘
12月30日生まれ。東京都出身。1978年『ゆうひが丘の総理大臣』でデビュー後、文学座演劇研究所入団。以降、NHK大河ドラマ『徳川家康』や映画『会社物語 MEMORIES OF YOU』など数々のドラマや映画に出演。2012年、同年齢の役者達で結成した「劇団500歳の会」の旗揚げ公演『いつかみた男達〜ジェネシス〜』をきっかけに舞台でも精力的に活動。最近の出演作は『歌うシャイロック』、『ふたり、静かに』、『中村雅俊芸能生活50周年記念公演』など。著書には『LOVEBLOG美味しくて楽しくてちょっとおしゃれな暮らしのこと』がある。