≪被害額数十億≫闇で出回る「富裕層リスト」。地面師もびっくりの“国際劇場型詐欺”とは？

≪被害額数十億≫闇で出回る「富裕層リスト」。地面師もびっくりの“国際劇場型詐欺”とは？

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気鋭のノンフィクションライター・甚野博則氏の新刊『ルポ　超高級老人ホーム』が話題だ。富裕層の聖域に踏み込んだ同書では、選ばれし者のみが入居する「終の棲家」を徹底取材している。本稿では、超富裕層を顧客にプライベートバンク事業を展開するアリスタゴラ・アドバイザーズ会長の篠田丈氏に、近年増加傾向にある富裕層を狙った詐欺事件について話を伺った。（取材・構成　ダイヤモンド社書籍編集局）

「あなただけに教えます」は要注意（Photo: Adobe Stock）

闇で流通する「富裕層リスト」

——『ルポ　超高級老人ホーム』で取材した富裕層は「安心」のために施設への入居を決めた方もいました。富裕層を狙った犯罪は近年増えているのでしょうか。

篠田丈会長（以下、篠田）：やはり富裕層の方々と接していると、詐欺話も多いです。誰が作っているかは分からないんですけど、富裕層の名前はリストで回っているようです。

——例えばどんな詐欺があるのでしょうか。

篠田：先日もうちのお客さんが個人相手に3億円ほど貸していました。相手ももちろん多少は富裕層なんですけど、返してくれなくなってしまってどうしようと困っていました。それなのに、追加で別の人からお金を借りたいと言われていると。

　もしかして詐欺師のリストに名前が載っているのかなと冗談で言ってましたが、実際ありうる話です。

地面師もびっくりの「投資詐欺」

——他にはどんな詐欺事件があるのでしょうか。

篠田：割と多いのは、発展途上国の政府関係者をよそおった投資話です。例えばカンボジアで事業やりませんか、とかですね。

　最初は「これからどんどん経済成長するし、土地を買っておきませんか」だとか、「国賓としていくらでも厚遇しますよ」などと言って勧誘するんです。

——少し怪しい誘いですよね。

篠田：本当に政府関係者の可能性もゼロじゃないと思います。ですが、そもそも政権だって不安定なところが多いので、どこまでが本当か分からないですよね。

　共通しているのは、ある日突然連絡が取れなくなって、何十億円も投資したのに取り戻せなくなるというパターンです。

——どういう内容で投資を募るのでしょうか。

篠田：やっぱり不動産が多いですよね。発展途上国だから、不動産を買っておくと価値がどんどん上がっていくっていうイメージも強いんです。この土地はリゾート地になるから買っておきませんか、このビルを買っておけばすぐに価格が上がっちゃう、とか。

　詐欺師も同行して現地まで視察に行くんです。その場で現地の人も同席して「日本でいう自民党の幹事長だよ」と人を紹介されたりとか。本物かわからないですけどね。私の知り合いも何十億円か取られていました。

——途中で怪しいと思わないぐらい巧妙なのでしょうか。

篠田：おかしいと思わないぐらいだったんでしょうね。それも、一度に何十億円も払っているわけではないんです。1年とか2年かけて徐々にお金を取られたようです。

　メールから何から証拠は残っているので、警察や弁護士にも相談したようでしたが、結局お金は戻ってこなかったようです。

「あなただけに特別に教えます」

——金融商品の投資詐欺もあるのでしょうか。

篠田：くだらないのでいったら、日本国債を安く買えるんだけど買わないかという詐欺話がありました。45億円で発行する国債を42億円で買えるから、もうすぐ3億円戻るよっていう話がつい最近あって。とある党の幹事長の紹介もあるし、財務省の官僚も連れてくるから、なんてこともあったり。

　もちろん止めました。だって、国債の仕組みが分かっていれば絶対あり得ないんです。でも、「あなただけに特別に教えます」って言われると結構コロっといっちゃうんですよね。

——富裕層を狙った詐欺だけに金額も大きいです。

篠田：小さい詐欺から大きい詐欺までいっぱいありますよね。詐欺ではないけどちょっとひどい話、くらいのものもあります。

　例えばこれから大きくなると言われていたベンチャー企業に投資したら、全然ダメだったとか。最初からお金を溶かすつもりだったのか、頑張ったけど結果的に失敗してしまったのか分からないようなケースもありますよね。

——詐欺の被害にあわないためにはどうしたよいでしょうか。

篠田：少しでも怪しいと感じたら、信頼できる人に相談することです。どれだけの富裕層でも、誰も相談する人がいなかったらおもいっきり資産を盗られてしまうと思いますよ。