GOOD CINEMA PICKS

知られざる「東京の黒人」の思い。“外国人嫌い”で有名な日本で幸せに暮らす人々を描いた映画『Black In Tokyo』|GOOD CINEMA PICKS #005

Text: Noemi Minami

Artwork: ©Amarachi Nwosu

2017.12.8

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欧米諸国から日本は「xenophobia(ゼノフォビア:外国人嫌い)」と言われることが多い。人種の多様性が高くないため「外国人とどう接していいのかわからない人」が多いと言った方が正確かもしれないが。そんな日本で外国人として住むことはどんな感じなのだろう?

社会問題に焦点を当てた映画を紹介する『GOOD CINEMA PICKS』で今回は、世界中で歴史的に人種差別の対象となってきた「黒人」の日本での体験にスポットライトを当てたドキュメンタリー『Black in Tokyo 東京の黒人』を紹介する。

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Photo via Melanin Unscripted

東京在住の4人の「黒人」に聞いた、日本のイメージとは

『Black in Tokyo 東京の黒人』の監督の名はAmarachi Nwosu(アマラーチ・ノースゥ)。20歳のときに学業のために日本に住んでいたというノースゥは“他になかったから”東京に住む「黒人」をドキュメントをすることを決める。

動画は彼女が立ち上げたビジュアルプラットフォームMelanin Unscripted(メラニン・アンスクリプテッド)で投稿されている。メラニン・アンスクリプテッドは既存の人種に対するステレオタイプを分解するビジュアルプロジェクト。バックグラウンドに関係なく、ユニークな個人や次の世代のためにカルチャーを切り開く人々のストーリーを発信することで、情熱を追いかける人々をインスパイアする。

「外国人にどう接していいかわからない人」が多い日本で、「黒人」としての日常はどんなものなのか。ノースゥがインタビューした東京在住の4人の「黒人」が話した日本は、予想とは少し違った。

※動画が見られない方はこちら

ブラックカルチャーをリスペクトする日本人

Bボーイ、ブラックミュージック、ドレッドヘアーの日本人…。

海外では他者の文化を知識のないままファッションに取り入れたりする文化盗用が国際的に問題視されているなか、日本で人気のブラックカルチャーは大丈夫なのか?ヒヤヒヤしてしまう。しかし映画のなかの4人はポジティブに受け取っているという。

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Photo via Melanin Unscripted

それは、ブラックカルチャーが好きな日本人は深く学び、リスペクトし、カルチャーを純粋に愛していることが彼らに伝わっているから。アフリカ系アメリカ人の男性は、アメリカにいるときはブラックカルチャーを消費する人たちを文化盗用だと冷たい目で見ていたが、日本に来て見方が変わったという。

人種に対してセンスティブなアメリカからきて、日本の「ブラックミュージック」っていう音楽ジャンルについて聞いたときは、なんだよそれって思ったけど、時間がたつにつれて、ネガティブなことなんてひとつもなくって、リスペクトだけがあるってことがわかったんだ。

日本で美容院を営むアフリカ系の男性は、日本人にドレッドヘアーを広めようと積極的だと言う。

そこに「リスペクト」があれば、たとえ他者のカルチャーを身にまとっても一概に文化盗用と言えないのかもしれないと考えさせられる。

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Photo via Melanin Unscripted

「日本に来る外国人は日本語を勉強しなければならない」

日本でラッパーとして活躍している男性は、日本語を勉強してから暮らしがガラっと変わったという。日本人のアーティストはコラボしづらいという海外からきたアーティストに対しては、「そういう奴に限って日本語を学ぶ努力を一切してない」と言い切る。

アーティストとして活動している女性も、「日本語を学ぶことは日本の文化を学ぶこと」と話し、日本語を話せるようになってから日本の生活が変わったと言う。

美容室の彼は、一言。「日本に来たい外国人のみんな、まず落ち着いて。日本の文化と日本語を学ぶんだ」

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Photo via Melanin Unscripted

広告には白人ばっかりだから黒人のイメージがなくてもしょうがない

それでも日本の既存の「黒人」のイメージが偏っていることは否定できないだろう。それについては、「原宿、新宿、渋谷の街の広告を見れば金髪・青い目の白人ばかりだからしょうがない」と言う映画のなかの男性。「黒人」をバスケの広告以外の場でも見れたならことは変わるだろうと彼は付け足す。

黒人の俺たちは他の人種と比べても、特に自分たちで意識的にイメージを作り変えていかないといけないんだ。

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Photo via Melanin Unscripted

決して正当化しちゃいけない、日本の“外国人嫌い”というイメージ

日本の“外国人嫌い”のイメージからすると「東京の黒人」についてのドキュメンタリーと聞けば、人種差別についてかと思ってもおかしくない。しかし、『Black in Tokyo 東京の黒人』は日本に対してポジティブな視点を持った人々の姿が映し出されていた。

これで、日本の“外国人嫌い”なことが正当化されるわけではないし、存在する人種差別を無視していいというわけではない。でも、外国に行ったら現地の文化や言語を学ぶ努力をするべきという普遍的なレッスンが学べることや、日本に住むことを前向きに捉える人々のストーリーを知って、何か希望が見えたような気がするのも事実である。

Amarachi Nwosu

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Melanin Unscripted

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※こちらはBe inspired!に掲載された記事です。2018年10月1日にBe inspired!はリニューアルし、NEUTになりました。

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