雀巽の日記帳

雀巽が綴る日常の記録

Series A FinTech に Tech Lead として入社しました — UK スタートアップ動乱、その先へ

こちらは以下のポストの続きです。

赤裸々な複数回のレイオフ体験をまとめているので、ぜひ目を通してみてください!

necojackarc.hatenablog.com

レイオフから約1ヶ月、Series A の FinTech 企業に Tech Lead として入社しました!

実は他にも1件、非常に魅力的なオファー*1をいただいていたのですが、エンジニア、特に『いちプレーヤー = Individual Contributor (IC)』としてのさらなる成長と円熟、人生のフェーズと企業文化およびフェーズとのマッチなどを考慮して、決断しました。

今回丁重にお断りさせていただいた会社は、実は1年前のレイオフ後から副業として関わらせてもらっています。その際も熱心に誘っていただきましたが「僕の人生のフェーズとやりたいことが合致したらフルタイムで参画したい」とお伝えしており、今回も同様の運びとなりました。今後も続いていく、これで終わりではない関係です。

非常にありがたいお話です。

できる形で貢献し続けていけたらと思っています。

入社までの流れ

入社を決めた企業ですが、トライアル方式での採用となりました。どうやら先方も初の試みだったようです。

人事面接(カルチャーフィット)とエンジニアリングマネージャー(カルチャーフィット & 口頭技術面接)の二回の面接の後、本来であればコーディング面接やシステムデザイン面接が行われているようですが、

  • 僕がその時点で既にレイオフ済みで時間に余裕があったこと
  • 二回の面接でのフィット感が非常に高かったこと
  • CV ã‚„ Linkedin でわかる経歴的にもフィット感が高そうなこと
  • 面接より精度高く評価ができるトライアルを行いたいと常々思っていたこと

が重なり、Head of Engineering を筆頭にゴーサインが出て、トライアルに踏み切ったそうです。

トライアル期間は2週間、給与支給(正式オファーと同額)、好きなタイミングで双方中止可能、他企業の面接も続けて良いという条件でした。こちらからも会社をよく見ることができ、面接のような極端な時間的制限のある場の一瞬のアウトプットの出来に左右されず、実際の仕事ぶりで評価されるため、こちらのメリットも大きかったので即 OK しました。

最悪のパターンでも希望額通りの給与が働いた期間分貰え、最高のパターンではチームのことをよく知った上での入社となる、魅力的な提案です。

トライアルでは一つの小規模なエピックが渡され、実際にチームの一員として働く(全てのチームや全社ミーティングにも出席)という、実際の働き方に完全に沿った形での二週間となりました。

最終的に期間内にエピックは本番リリースまで辿り着き、ソフトスキル面でもハードスキル面でも高評価を貰い、正式オファーをいただきました。

入社企業について

僕のエンジニアとしてのモチベーションの一つは端的にいうと「問題解決を通して誰かの生活がより良くなるのを実感する」なのですが、入社企業のビジョンも誤解を恐れず大雑把にいうと「より良い世界のため」であり、働いた実感としても人を大事にする企業でした。

ビジネスモデルとしては、大雑把に言うと非営利団体(NPO)やチャリティ(慈善事業)を支援する形になっており、従業員もチャリティやボランティアへの意識が高い人が多いです。NPO やチャリティへの貢献について、僕自身は積極的に考えたことはありませんでしたが、前述した「問題解決を通して誰かの生活がより良くなるのを実感する」との親和性は高いと感じました。

Series A とは言え、設立から10年近い会社で、コロナ禍を経たピボットで Series A にたどり着いた会社なので、組織としての土台も整っていそうです。

例えば、

  • 各開発チームの基本サイズはエンジニアが4人で、自律性高く独立している(Autonomous なチーム)
  • 必要最低限かつ効率的なミーティング運用と開発プロセス
  • Trunk-based development による CI/CD の実現(各プルリクエストは short-lived で main ブランチに直接マージされ、即プロダクションリリース)
  • ISO/IEC 27001 などの情報セキュリティ認証済み
  • 希望者でのオンコール運用かつオンコール者への豊富な手当て
  • フレキシブルな労働時間(例えばオファーレターに「日中にジムに行く」のも問題ないと書いてある)
  • リモートファーストなハイブリッド(週1出社)

などが挙げられます。

顧客基盤も強固になりつつあり、有名企業だと、Google、TikTok、Linkedin、Canva、Atlassian、OpenAI、HSBC、Asana、Monday.com、New Relic などがカスタマーです*2。

アーキテクチャ面でも良いバランスを保っており、Monolith から Domain Driven Design ベースの Event Driven な Modular Monolith へほぼ移行済み、という状態でした。データベースは PostgreSQL のスキーマを利用した bounded context ごとの論理的な分割程度にとどめ、イベントバスも現在はインメモリで複雑性排除、と言うようなバランスになっていました。

テックスタックは、フロントエンドは Next.js、バックエンドは Express ベース、言語は一貫して TypeScript です。インフラは基本 ECS なようです。

型安全な DDD ということで、我が盟友の id:Yasaichi くん(とこちらは思っている、ピクスタ時代の元同僚かつ id:t-wada さんを師と見た兄弟子)が最近発表した内容に近いことをやっています。

Effect についてトライアル期間中に Tech Lead の一人に聞いてみたところ、実際に Effect の作者と Slack で話したことがあり、やはり似た概念を実装しているようでした。話の内容からかなりアンテナが高くかつ、実行力も実装力もある優秀なエンジニアだなと伝わってきたのも嬉しい点でした。

コードベース全体として、日本語訳が発売され今話題になっている、関数型ドメインモデリング本*3との親和性が非常に高い設計になっています。

今回はトライアルのメリットが双方に大きく働き、向こうは自信を持ってオファーを出すことが、こちらは安心してそれを受けることができました。

もちろん2週間しか働いてないので、見えてない部分もお互いまだまだありますが、「レイオフで3度目の無職!」というポストを書かなくて済むように祈っています!笑

……これ、フラグじゃないよね?

新しい会社と共に長期的に成長目指して頑張ります!

現在の UK ジョブマーケットについて

体感としてはあまり悪くなかったです。

僕が Senior から Lead/Staff レベルの経歴かつ、Seed、Series A、Series B、日本を含めれば IPO を一応経験していることになるのと、5-10人規模のマネージャー・リードを経験済みだったのもプラスに働き、スタートアップからの DM を沢山いただきました。

こちらから申し込むケースでは書類選考で落ちることもありましたが、#OpenToWork にしてないにも関わらず Linkedin で DM が沢山きている状況で、その中に魅力的なものが十分数あった、かつ DM で向こうからくるケースでは高確率で書類選考が通る、というのもあり、球数は常に十分あるという状況でした。

最終的には約1ヶ月の就職活動でオファー2件(1件は副業先からのフルタイムオファー)、最終面接2件(両方受ける前に辞退)となりました。

本記事執筆時点でシステムデザイン面接の結果待ちが一件ありますが、そこはイギリス大手企業に最近買収されたスタートアップで採用プロセスが非常に遅く、2-3週間に1ステップしか進まないため間に合いませんでした。リクルーターの話によると、大量に候補者を集めて、全員同時に進めているそうなので、かなりスローペースなようです。

最近有名になった企業ではありますが、ほとんどの人が知っている企業の傘下なので可能な採用プロセスなんだろうと思います。実際、「大手企業の福利厚生と資本をバックにしたスタートアップ」なので、人気はあるんだと思います。

Founding Enigneer というタイトルの創業期スタートアップのポジションも沢山ありましたが、週4前後で出社のケースが多く、求められる時間的コミットメントも高い(応募段階で 残業への同意宣言なケースが必要もあり)、ストックオプションは多いが当然リスクも高いということもあり、人生フェーズとの兼ね合いから今回は優先度を下げてみていました。

タイミングが合う人には、非常に魅力的な挑戦だと思います。

イギリスはまだまだスタートアップが活発だなと思いました。

*1:給与面では同等だが、相当額なストックオプションとそれに付随するチャレンジングな責務と展望。

*2:この辺り全て公開情報なので守秘義務は大丈夫です。興味ある方は調べてみてください!笑

*3:Scott Wlaschin さんの講演は数年前に見ていたのですが、本はまだ読了していないので、急いで読み始めました。