アルツハイマー病の症状が「うつる」仕組み
アルツハイマー病は脳以外の場所からもやってくる
認知症においてアルツハイマー病の占める割合は70%と極めて高くなっています。
また人口の高齢化によってアルツハイマー病に罹患する人々が急速に増えており、将来的に高齢者の3人に1人がアルツハイマー病になるとする研究結果も発表されています。
そのため近年になり、アルツハイマー病の原因について脳以外がかかわっている可能性について調べられるようになってきました。
がんをはじめ極めて多数の患者がいる病気では、細菌やウイルスの感染や有毒な化学物質、生活習慣、遺伝子など多様な要因が入口となって機能しているからです。
そこで今回、ユニバーシティー・カレッジ・コークの研究者たちは、アルツハイマー病が腸内細菌を介して「うつる」可能性について調べることにしました。
重症患者の腸内細菌ほど酷い症状を引き起こす
これまでの研究でも、アルツハイマー病の患者は健康な患者に比べて、有害な腸内細菌を多く持つことは知られていましたが、腸内細菌を介した伝達が起こり得るかは不明でした。
調査にあたってはマウスと16匹の健康な若いマウスが用意され、糞便移植によって腸内細菌の移植が行われました。
すると移植を受けた健康なマウスたちに記憶障害が発生し、新しいことを覚えられなくなっていることが判明します。
また記憶障害のレベルを調べたところ、アルツハイマー病がより重症だった患者の腸内細菌ほど、移植されたマウスに、より深刻な症状を起こしていることが示されました。
この結果は、アルツハイマー病の重症度と腸内細菌が関連しているだけでなく、移植によって健康なマウスに症状が「うつる」ことを示しています。
研究者たちも実験結果を受けて「アツルハイマー病の症状が腸内細菌を介して若く健康な生物に伝達される可能性があることが、世界ではじめて確認された」と結論しています。
(※今回の研究では糞便移植を介したアルツハイマー病症状の伝達について確認されたものであり、アルツハイマー病患者との単純な接触が症状を移すことはありません)
次に研究者たちは、どの腸内細菌が脳に対してどんな影響を与えるかを調べることにしました。