ウエストランド井口と作家飯塚の「今月のお笑い」。

今月のお笑い 18本目 [バックナンバー]

ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2023年10月のお笑い」

井口はラッパー、「R-1」芸歴制限撤廃、「キングオブコント」振り返り、不動の格付け最下位

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ウエストランド井口と構成作家・飯塚大悟が、毎月のお笑い界の出来事を勝手に振り返る連載「今月のお笑い」。「キングオブコント2023」がサルゴリラの優勝で幕を閉じ、「R-1グランプリ」芸歴制限撤廃のニュースが報じられ、「リンカーン」(TBS)の後続番組「ジョンソン」がスタートした10月。このほか井口が出演したあの“伝説のライブ”や、飯塚が気になった番組など、話題満載でお届けする。

構成 / 狩野有理 ヘッダーイラスト / 清野とおる

※取材は11月4日に実施。

ウエストランド、単独ライブやるんかい

井口 「キングオブコント」の話からしますか?

飯塚 いや、「単独やるんかい」から行こうよ。

──「単独やるんかい」の話は最初にしておきましょう。

飯塚 単独ライブをあれだけ「やらない」ってこの連載で話してたじゃん。だから開催決定のニュース見て、「やるのかよ!」と思ったんだよ。なんかすごい……壁を感じた(笑)。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

──取材のときに教えてくれなかったので、我々は寂しかったです。

井口 あれ、言ってませんでしたっけ?(笑) よっぽど僕が単独ライブから目を背けたかったんでしょうね。やっぱり、やりたくはないので。まだ何も準備してないですし。

飯塚 単独ライブをやる話はいつ頃出たの?

井口 「やれよ」みたいな空気は「M-1」優勝してから漂っていて、なんとか逃げてきたけど、とうとうやるしかない感じになりました。「単独ライブ」とはわざわざ言わないくてもいいくらいなんですけどね。

飯塚 でも「単独ライブ」と言ったほうが「おっ!」となるもんね。みなみかわさん、岡野陽一さん、ウエストランドは“3大・人にやらされ単独ライブ”。みなみかわさんは奥さん、岡野さんは東京03の飯塚さん、ウエストランドは光代社長に言われてやってる。

井口 賞レースチャンピオン史上初の渋々単独ライブですよ。

飯塚 優勝者はみんな「ようやく賞レースから解放されて好きなネタができる」って言うのに(笑)。ここで下ろす新ネタはない?

井口 そうですね。完全な書き下ろしの新ネタじゃなくて、「漫才工房」で1回しかやってないネタとかもやる感じになると思います。「M-1」優勝前のネタなんてほぼ誰も見たことないと思うので。でも、何本やるかも何をやるかもまだ考えてないです。最終的にはマンパワーで押し切ります。

飯塚 せっかくだから、最後のネタでほっこり終わりとか、ネタとネタが繋がってて伏線回収……とかしてほしいな(笑)。厳しいお笑いファンも見に来て、分析してほしい。

井口 関係者には本当に来てほしくないとは思っているんですけど、そもそも芸能人は僕らの単独ライブに誰1人来ないんですよ。今のところ「観に行かせてください」と言ってきた後輩は1人もいないです。

飯塚 事務所には連絡来てるんじゃない? 言いづらいんだよ、井口くん本人には。

井口 みんなの動きを探ります。この記事が上がって誰が最初に言ってくるか。

飯塚 タイムレース?(笑)

井口 「M-1」のインタビューでは僕の悪口言ってるし。なんなんだよ。

M-1グランプリ2023「ストレッチーズ」直撃インタビュー

M-1グランプリ2023「さすらいラビ―」直撃インタビュー

井口はラッパー「RGあるあるライブ」

飯塚 「RGがあるある歌い続けウエストランドがあるなしクイズし続ける会」(※)が話題になってた。

※編集部注:来場者からもらったお題にまつわるあるあるをウエストランド河本が考え、井口が当てる「あるあるクイズ」を展開。あるあるはレイザーラモンRGが歌い上げる。河本があるあるで傑作を連発したのに加え、終盤は尾崎豊の曲に合わせて井口が悪口を述べるだけのソロステージが繰り広げられ、激情的なパフォーマンスに拍手喝采が沸き起こった。

「尾崎豊のカラオケにのせて井口が魂こめて悪口言うネタ」

井口 いろいろ反響ありましたけど、僕が何かすごいことをやったというよりは、RGさんのムーブがとにかくすごかったです。それまでやっていたことを急にスパッとやめて、「ここは井口だけにやらせよう」って即座に判断して。オチだけは事前に決まっていたんですけど、全部なしにしてやり切ったんですよ。RGさんってどんなイベントもあの嗅覚で盛り上げてるんだろうなって思いました。

飯塚 観に行った人たちがX(旧Twitter)で「伝説的な回だった」みたいに沸いてて、気になったんだけど配信がなくて。だから資料映像を見させてもらったら、確かにすごかった。

──今回の取材のために吉本興業さんに映像をお借りしました。

井口 そこまでして観るもんじゃないでしょ(笑)。何がよかったんですかね? 「伝説のライブだったんでしょ?」みたいに言われるんですけど、何がよかったのか自分でも説明できないんですよ。

飯塚 ポエトリーラップみたいだった。愚痴を言うのは井口くんの十八番だけど、ああやって音楽に乗せることで世の中に対するメッセージを発している感じが強まったし、それがまさに尾崎豊そのものというか、ヘンテコ尾崎というか(笑)。しゃべる内容も決められていないし、あのやり方を思いついたのもその場だったから、即興も即興のパフォーマンス。お客さんも、即興の笑いが生まれる瞬間に立ち会えた感動があったと思う。

井口 それこそ、本来のライブの醍醐味ですよね。

飯塚 「もう1回やって」と言われてやれるものでもないと思うけど、機会があったらやってほしい。

井口 ちょうどあのライブの次の日に「R-1」の芸歴制限がなくなる発表があって、「井口、R-1でできるじゃん!」っていう声もあったんですけど、どうやるの……?っていう(笑)。お客さんからお題をもらわないといけないし、曲も使えないし。

飯塚 確かに、曲が使えないとできないか。

井口 それっぽい曲をパーマ大佐に作ってもらうしかないです。作ってもらおうかな?

飯塚 井口くんの芸って、即興性と10年間の「ぶちラジ!」で培ってきた愚痴ストックの多さが強みだけど、これってMCバトルに似てるなと思って。ラッパーが今まで書いてきた自分のリリックやバトルで言ってきたフレーズを引き出しから出しつつ、本当に今即興で思いついたことと混ぜ込んで披露してる感じに近いというか。「フリースタイルティーチャー」(テレビ朝日、ABEMA)で崇勲に勝っただけある。3人抜きしたんだっけ?

井口 僕1人で裂固さん、DOTAMAさん、崇勲さんを倒したんですよ。けっこうなことしてるのにあんまり言われてないんですけど。

飯塚 とんでもないことだけどね。「KING OF KINGS」のチャンピオンと「ULTIMATE MC BATTLE」のチャンピオン。日本一のラッパーを倒してる。

井口 しかも、ただの悪口で(笑)。

「ジョンソン」期待のエースはともしげ

飯塚 10月にスタートした「ジョンソン」(TBS)はよしもと3組の中にモグライダーだけが他事務所から選ばれているのを不思議に思う人もいそう。

井口 ともしげさんが目立ちそうな気はします。ツッコミが面白い人が多いですし。

飯塚 仮に自分が「ジョンソン」の作家で「このメンバーで企画考えてください」って言われたら、一番思いつくのはともしげさんの企画だと思う。ヤンキーやギャルや東大生と絡ませたり。そういう人がいると番組に発展性が生まれるから。本人の負担はすごそうだけど。

井口 負担はすごいし、ともしげさんがそんなにうまく機能するかっていう。期待もありますけど、諸刃ではありますよ(笑)。

飯塚 2週目でいきなりともしげさんの大ドッキリ企画が仕掛けられていて。

井口 初回の「芸人大運動会」の次がもうそれですからね。ともしげさんがけっこうエースとして活躍するんじゃないですか?

飯塚 「ジョンソンメンバーに選ばれた」って話はともしげさんから聞いていたの?

井口 なんか、はしゃがないようにしてました。「やるんでしょ?」って聞いてもモゴモゴするだけで。「リンカーン」とは違う形の面白さになっていけばいいですよね。ダウンタウンさんはいないんだし。「芸人大運動会」だって、浜田さんが怖いからみんなががんばるっていう構図ができていたわけですから。

飯塚 この4組だったらお笑いファン的にはそれだけで注目の番組になるだろうけど、世の中を巻き込むには「リンカーンの後継番組」くらいハードルを上げないと、話題にするのは難しいんだなって思った。

井口 どうなるんでしょうね、ここから。

飯塚 「ともしげもういいよ!」ってなるかもしれないし、「ともしげすごい!」もどっちもある。

井口 「もういいよ!」は全然ありますからね(笑)。来年大スターになってくれていればいいですけど。

芸歴制限撤廃「R-1」出場を匂わせる

飯塚 「R-1」の芸歴制限撤廃をスポニチがすっぱ抜くっていう(笑)。「このスクープは我が社がどこよりも先に出しましょう!」みたいな会議が行われてたのか気になる。でもカンテレの発表では「芸歴撤廃」とは言っていたけど、「ネタ時間が4分になる」はスポニチが書いているだけだった。本当に延びるのかもしれないけど、正式にはまだわからない。

井口 確かに。そうなんだって思っちゃってました。いやーでも、10年以下の若手は本当に嫌な気持ちになってるでしょうね。

飯塚 嫌な気持ちになってるっていうポストは見かけた(笑)。でもこうなったらルシファーさんに優勝してほしいよね。

井口 ルシファーさん、芸歴制限がないときに5年連続決勝行ってますけど、今のほうが脂が乗ってて勢い的にはいい感じなので、当時より優勝の可能性はあると思うんですよ。まあ「R-1クラシック」(※)のときに動画審査で落とされるっていう謎の事件もありましたけど。そういう人のための催しじゃないのかよっていう(笑)。

飯塚 去年の準決勝のゲスト審査員もやっていたし。

井口 だから、「R-1」に振り回されてはいます。

飯塚 もし霜降り明星がまた決勝のMCをやるなら、出場者よりMCのほうが若いっていう大会になりそう。

井口 審査員も出場者より後輩になるかもしれないですよね。

※編集部注:2002年から2020年までに行われた「R-1ぐらんぷり」で準決勝進出実績のある芸歴11年以上の芸人たちによるネタの祭典。2021年3月に大阪で開催され、MVP(エムブイピン)はヒューマン中村が獲得した。

飯塚 どういう経緯で芸歴制限が設けられたのかはわからないけど、おそらく大きなリニューアルを至上命題として上層部から出されて、きっと現場の人はそれと戦いながら苦渋の決断で芸歴10年にしたと思うんだよ。どういう事情であれ、どうしても責められるのは大会側だからスタッフは大変だなと思う。

井口 ルシファーさん、おいでやす小田さん、ヒューマン中村さん、マツモトクラブさんが5、6回ずつ決勝出てましたもんね。

飯塚 でも、今調べたら去年は3500組くらいエントリーしているんだ。

井口 結局来ない人も多いと思いますけどね。1人だから自分の勇気次第で来ないこともできるので。

飯塚 「R-1」は来ない率高そう。

井口 「R-1」の1回戦はすごいですよ。1回でも準決勝に行ったら免除だから、面白い人がほとんど抜けていく。だからどんどんヤバい奴ばっかりに……(笑)。

飯塚 Xで話題になってたポストがあった。「本当にヤバいものを見たいんだったらR-1の1回戦に行け」「コンビを組めている時点でまともな人間だから」っていうポストに、いろんな人が見てきた「1回戦でこんな人いました」っていうビッグフットみたいな目撃情報が引用RPで寄せられていて(笑)。「R-1」怪談が集まってて面白かった。

──それで、井口さんは「R-1」出るんですか?

井口 いやー、これもまた匂わせていきますよ。

編集部注:井口は「M-1グランプリ2023」出場をエントリー締め切りギリギリまで匂わせていた。

「キングオブコント」の話

井口 「お笑いの日」(TBS)は僕らも「ザ・ベストワン」に出させてもらっていて。出番が早かったのでちょうど帰って「キングオブコント」観ましたよ。

飯塚 高円寺メンバーで観たの?

井口 はい。中野のレンタルルームを借りて。ここでも言っていた通り、ジグザグジギーとラブレターズを応援してました。すごいとは聞いていましたけど、トップバッターのカゲヤマさんが本当にめちゃくちゃ面白くて、どうなるんだろうって思っていたら残りましたからね。トップバッターからは優勝できないって言えなくなっちゃいますよ。

高円寺メンバーで「キングオブコント」鑑賞

飯塚 審査員ももう慣れてきているから、「このウケ方は95点だな」って心得ている感じはあった。慣れてないと「ひとまず90点くらいにしとこう」となりそうだけど。カゲヤマは、準決勝ではお尻が出てウケた感じだったけど、決勝ではふすまの向こうでバカでかい声で謝罪している時点でウケてた。声のデカさが決勝のほうがパワーアップしていた気がする。

井口 カゲヤマさん、今「声デカい人」になってますもんね。昨日収録でカゲヤマさんと一緒でしたけど、「声がデカい」っていうのでやってました。

飯塚 「キングオブコント」のあとの「コントNo.1決定戦2023アフタートーク」でも言っていたけど、担当のスタッフさんと話して「スピーカーぶっ壊すくらいデカい声で行きましょう!」ってやったのがプラスに働いたみたい。ウケだけで言ったら、ジグザグジギーもかなりウケてた。

井口 僕らも観てて、「これは行った!」と思ったんですけど、得点見て「まあ、確かにそうか……」と冷静になりました(笑)。でも、あれだけウケればいいですよ。ウケないのが一番しんどいですから。

飯塚 コントと漫才の違いかなという気がする。使えるものはなんでも使ってとにかく勝ち上がるウエストランドとか三四郎のネタって、もちろん芸風や技術もあって初めてできることだけど、漫才だからそれが許されるところがあると思う。でもコントは美学みたいなものがそれぞれ審査員にもあって、ウケてるけど自分の理想とするコント像とは合っていない、というのが点数に反映されやすいんだろうなと。

井口 めちゃくちゃウケましたけど、ジグザグジギーらしいネタかと言ったら別にそうではないじゃないですか。メタをやるイメージが固まらないといいですけど。今後、ネタ番組にたくさん出ていろんなネタをやっていって。

飯塚 でもトラウマじゃないけど、過去の「キングオブコント」の……。

井口 トラウマでしょ! デスダンス(※)なんだから。

飯塚 (笑)。ウケるんだって自信につながって、それを払拭できた大会になったと思う。あと、宮澤さんが「キングオブコント」の影響でけっこう「ラヴィット!」(TBS)とかバラエティに出てる。

井口 フィーチャーされてますよね。

飯塚 物珍しいのもあるのか、麒麟・川島さんも「社長」って呼んでいたり。宮澤さんのバラエティでの活躍もこれから見られたらいいよね。

※編集部注:2013年大会でジグザグジギーが披露したコント「犯人逮捕」。2人がリズミカルな動きを見せるシーンがあり、敗退後、芸人たちから「デスダンス」と呼ばれ親しまれている。

「お笑いの日」のTBSで揃ったジグザグジギー、ウエストランド井口、ラブレターズ。(写真は「キングオブコント」スタッフ提供)

「お笑いの日」のTBSで揃ったジグザグジギー、ウエストランド井口、ラブレターズ。(写真は「キングオブコント」スタッフ提供)

ゼンモンキーとおじさん審査員

井口 ゼンモンキーが最下位でしたけど、審査員がおじさんばっかりだから、おじさんにウケることをやらなきゃいけないのも勝つための要素の1つになっちゃっているのかなと思いました。若者を審査員に入れない限り、ああいうネタで勝つのは難しいのかも。

飯塚 でも出場者側が審査されるのに納得感のあるメンバーである必要もあるし、難しい部分もある。

井口 そこがジレンマですよね。審査員に若者の感覚を持つ人を入れるのが果たしていいことなのか、どうなのか。

飯塚 霜降り明星もYouTubeで言ってた。「審査員、おじさん多い」って。それもあって、どうしても芸人にウケるネタじゃないと勝てないっていうのは昔より顕著な気がする。

井口 一応言っておくと、荻野が自分であのネタ作って、(ヤザキに)「もうちょっと上に持ち上げろ!」とか指示してるわけですからね。それを思うと……ねえ?(笑)

飯塚 荻野くんの足バタバタをイジってるの井口くんだけだよ(笑)。「オトステ」のイベントでもやってたし、マヂカルラブリーのトークライブでもわざわざイス出してやってた。

井口 それはやっておかないと。

飯塚 でもゼンモンキーもいろんなネタがあるから。そこはきっと、世の中への初登場のつもりでわかりやすく自分たちのキャラが出るネタを選んだんだと思うよ。準決勝のウケ方もすごかったし。

井口 ライブではウケてるってことでしょ? だから、今度ナルゲキに行こうと思っているんですよ。「どうなってるんだ今?」っていうのをみんなに言っていきますよ。

足バタバタ

叫ぶ系じゃないサルゴリラが決勝で化けた

井口 なんとなく僕が思ったのは、準決勝でウケた人が決勝に勝ち上がっているから、叫ぶ系のネタが多かった。サルゴリラさんみたいな感じでも決勝に行ける雰囲気がもうちょっとあったほうがいろんな人が出てこられる気がしました。

飯塚 ニッポンの社長の2本目は叫ぶ系ではないけど独特な空気感のネタで、準決勝では逆に空間を支配してる感じもあった。

井口 かが屋みたいなタイプとか。

飯塚 そうだね。かが屋とか男性ブランコもめっちゃ面白かったけど、やっぱりでっかいセットとか、スケールのでかいネタが映えるっていうのはある。

井口 「M-1」もそうで、やっぱり賞レースの準決勝ってうわー!ってやるネタのほうがウケるから、広い会場になればなるほど見せる系のネタはウケにくいのかなって思いました。

飯塚 サルゴリラの優勝は、実は準決勝を全部観た人にとっては意外だったかもしれない。SNSを見るとファイナリスト予想にサルゴリラを入れてない人も多かった。もちろんちゃんとウケていたし、個人的にもすっごい面白かったけど。だから、こんなに決勝で化けるんだって驚いた人はいたと思う。赤羽さんのツッコまないツッコミがあんまり見たことがない種類のツッコミで面白かった。

井口 嫌な顔するっていうツッコミ。

飯塚 吐きそうな顔とかね(笑)。コントを見ているときに、「ツッコむの早いな」って思うことない? この面白いのをもっと見ていたかったのに、もうツッコんじゃった、みたいな。

井口 ああー。それで言うと堪能できましたもんね。赤羽さんが止めないから。

飯塚 「もっとくれ、もっとくれ」っていうこっちの欲を満たしてくれた。あと、1本目のネタも2本目のネタも、音楽があるから止められない空気ができるんだと思う。音楽が流れてなかったらいつでも「変ですよ」って言えるけど、もう始まっちゃってる感じがするから簡単に止められない。

井口 確かに、音楽のおかげで止められない大義名分というか、そういう形になりますよね。

あとから来るシカゴ実業の面白さ

飯塚 個人的には隣人がけっこう好きだった。チンパンジーの設定のネタが何個もあるらしくて、千原ジュニアさんのYouTubeで言っていたんだけど、1個面白いネタができると、その設定を生かしていっぱい作るっていうやり方をしているんだって。

井口 へえー。いいですね。新しい。

飯塚 「キングオブコント」の2本目もチンパンジーのネタだったし、去年の準決勝でも違うチンパンジーのネタをやってて。面白いなと思った。あと、1本目の「何日目でございます~」っていうのを準決勝で観たときすごくいいなと思ったんだけど、ビスケットブラザーズの原田さんのアドバイスらしくて。ビスブラがすごいっていうのも改めて思った。ビスブラってセンスとビジュアルが強みだけど、めちゃくちゃ細かい部分まで考え尽くしているんだよね。そういう部分も含めて、もっと評価されてもいいのになと思う。

井口 今回の王者が44歳じゃないですか。バイきんぐさんが優勝したとき、とんでもないおじさんが優勝したと思ったけど、当時37歳とかだったんですよね。今思えば若手も若手ですよ。

飯塚 今年で言うと、ファイヤーサンダーで35歳と32歳だからね。

井口 ファイヤーサンダーも面白かったですね。でも、なんかあんまり目立ってない気がしません? 3位と1点差で4位ってけっこうすごいのに。暫定ボックスにも座ったし。

飯塚 いろんな感想を見てるけどファイヤーサンダーを評価してない人はあまり見かけなかった。インパクトの笑いが続いたから、作り込まれてるネタが通用するのかなと思ったけど、そこでちゃんと審査員に評価されたのもよかった。もう1本のネタも面白かったから来年も決勝に来るんじゃないかなと思う。

──大会が終わった今だから言える、準決勝で印象に残った芸人を飯塚さんにお聞きしたいです。

飯塚 準決勝が終わって2週間くらい経ってから、「そういえばあのコント変だったな……」って思ったのは、シカゴ実業。よく考えたらすごい面白いなとあとからだんだん感じてきて。今年の春に大阪から東京に来た組の中ではまだそんなに知られていないと思うけど、相当面白い人たちなんだなっていうのは準決勝見た人には伝わったんじゃないでしょうか。

井口 でも大会全体がめちゃくちゃ面白かったですね。いい大会だったなーっていう。

飯塚 レベルが上がったとよく言われているけど、お笑い好きな人が好きなネタ、玄人好みするネタが増えているんだろうなって気はする。

心をなくした井口を感動させる企画がさっそく誕生

飯塚 U-NEXTで配信開始された「激闘の1日 ~キングオブコント2023の舞台裏に完全密着」に井口くんも一瞬出てて。

井口 そうだ。楽屋に行ったらちょうど撮ってたから、めっちゃずっと居座ったんですよ。ラブレターズが優勝すればガンガン使われるだろうと思って、出会いからたっぷり話したんですけど。

飯塚 出会いのところ使われてたね(笑)。優勝会見が終わって、赤羽さんが喫煙所でパンサー向井さんやジャングルポケット太田さんがサルゴリラ優勝に感動して泣いている動画見て号泣するシーンがクライマックスみたいになってた。

井口 優勝した瞬間は泣いてなかったからいいなと思ってたんですけど、泣くんかい。何の涙なんだよ。

──やっぱり泣く人に厳しいんですね。

飯塚 泣くと言えば、「チャンスの時間」でさっそく心をなくした井口くんを感動させる企画をやったんでしょ?

井口 前回ここで、僕がなんのエンタメにも感動しないとか泣かないって話をしたら、飯塚さんが即「チャンスの時間」に連絡してくれて。即決まって、即やって来ましたよ。

──どんな企画だったんですか?

井口 感動的な動画をいろいろ見せられて、僕が泣くかどうか試すっていう。

飯塚 ラブレターズも一緒だった?

井口 そうです、そうです。

飯塚 昔からの仲間たちに普通に仕事で会えるようになってきてるね。マヂラブのトークライブで井口くんが「つぶぞろい」(※)をまたやりたいって言ってくれていていたけど。

井口 前回は野田さんが出られなかったですから。

飯塚 「R-1」優勝してもらって、ルシファーさんも呼ぼう。もともと「つぶぞろい」に出てたメンバーではないけど(笑)。

井口 僕ら世代として。モグライダーとかルシファーさんに結果を出してもらって、またやりましょうよ。そういえば、この前営業でモグライダーが一緒だったんですけど、芝さんが体調不良で休みだったんですよ。ともしげさんが1人で舞台に出ていって、お客さん1400人いたんですけど、「すいません今日芝くんいなくて……」って言ったら普通にブーイング食らってました(笑)。

飯塚 え、ブーイング?(笑)

井口 「えー!?」みたいになってて。「ともしげを見に来た人ー?」って聞いたら1400人いて0でしたからね(笑)。でもそこからトークでめっちゃウケて、2公演目は味を占めたんでしょうね、めちゃくちゃスベってましたよ。全然噛まないし、変に慣れちゃって。

飯塚 トークうまくなっちゃったんだ(笑)。

井口 ともしげさんらしい感じはありましたね。

※編集部注:飯塚が2011年から自主開催していたお笑いライブ。三四郎、ウエストランド、ラブレターズ、ジグザグジギーらが出演していた。今年1月に10年ぶりとなる「つぶぞろい2023」がニッポン放送主催で開催された。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

トンツカタンのオマージュ芸

飯塚 あんまり注目されてないかもしれない話題で言うと、「有田ジェネレーション」(TBS)の「くりぃむしちゅーのネタ作ってきました!」という企画で人知れずトンツカタンが2連覇してるっていう。

井口 そうなんですか! それは本当に知らないなあ。

飯塚 トンツカタン森本くんがくりぃむしちゅーっぽいネタを作るのがめちゃくちゃうまくて。

井口 森本くんって上田さんになりたくて芸人になったんですもんね。

飯塚 森本くんが作って、お抹茶と2人で漫才するんだけど、確かに昔のくりぃむしちゅーがやってそうなネタなんだよ。2回とも有田さんに絶賛されているんだけど、あんまり観られてなさそうな気がしていて、ここで言ってみました。

井口 森本くんが実はオマージュ芸がうまいっていう。

飯塚 そうそうそう。だから、作家に向いてるのかも(笑)。

井口 いろんな人でやってほしいですね。

飯塚 じゃあ、トンツカタン森本がいろんな人の“っぽい”ネタを書くっていうのを「チャンスの時間」に提案しよう。

井口 本当にやるからなー、「チャンスの時間」は。すごいスピード感でやるから。

飯塚 あともう1つただの感想なんですけど、「有吉クイズ」(テレビ朝日)で凍ってるLINEグループにメッセージを送って既読が付くかっていう企画があって。ヒコロヒーが人のスマホで勝手に文章を作って送るんだけど、そのLINE文章芸が面白かった。ヒコロヒーって女優業とか執筆活動とかが粒立てられがちだけど、こういうのをやらせたら上手だなあと。ちょっと意地悪なことをやってふざけるヒコロヒーを見るのが好きだから、こういうふざけてるヒコロヒーをもっと見たいなーと思いました。

トークサバイバーの裏話

──前回、「大脱出」「横道ドラゴン」「Diego~ディエゴ~」など配信お笑い番組に井口さんが全部出ている、という話がありましたよね。Netflix「トークサバイバー!」も配信開始になったので、何か裏話があれば。

井口 「M-1」後のピークのときに撮影があって、拘束23時間くらい。酸素も薄いような気がしてきて、みんなぼーっともしてくるし、めっちゃ大変でした。1つあったのが、ダイアン・ユースケさんがトークをしていたんですけど、ハプニングがあって1回中断して、しばらくして改めてしゃべり出したらすっかり最初のキャラを忘れて、全然違うキャラでしゃべりだしたんですよ。それがもう面白すぎて。最初は「俺のおばあちゃんがよ……」みたいなハードボイルドな感じだったのに、次にしゃべりだしたら「あのね、おばあちゃんがね」って。そんなに忘れる!?(笑) でも、あのドラマの世界観は守らなきゃいけないから必死でこらえました。しんどかったですけど、みんなで戦ってるっていう一体感はありました。

飯塚 撮影からだいぶ経ってからの公開だと、どのトークをするか難しそう。その日は面白いけど、あとで見ても笑えるのか。

井口 そうなんですよ。僕が話したのもその時期のことだったので。あと、最初「トップバッター誰行く?」となったときに、僕が自ら「行きます」って言ってしゃべっているんですよ。それは書いておいてください。ヒコロヒーに会ったときに「井口さん、あれカッコいいと思いました」って言われたので。

──わかりました(笑)。

飯塚 井口くんの配信王ぶりはすごいよね。

井口 でも評価されてないんですよ。それと、裂固、DOTAMA、崇勲を倒したこと。

飯塚 じゃあ、12月26日(火)にやる「今月のお笑い」イベントで「なんで評価されてないんだ」ランキングやろうよ。

井口 ぜひやってください! 全部出てるんだから。

他の追随を許さないロンハー格付け最下位

飯塚 連日「アメトーーク!」と「ロンドンハーツ」(共にテレビ朝日)で井口くんを見る。

井口 (ロンハーの)「格付け」の下位をやるのが僕とみなみかわさんとお見送り芸人しんいちさんしかいないんですよ。

飯塚 わかりやすく嫌な奴とか、ネガな部分が浸透している人ってほかにいないからね。

井口 僕が「生まれ変わりたい男」上位なわけないじゃないですか。でもやんなきゃいけないからがんばる。で、また呼ばれて、最下位になって。なんなんだよ!

飯塚 「勝たせてみろよ!」って面白かった(笑)。とはいえ、しんいちさんはなんだかんだモテてるし、みなみかわさんは家庭があるけど、井口くんだけ本当に何もない。後ろ盾が。

井口 本当にそうです。絶望しかない。

飯塚 下位の質が違う。

井口 僕の格付け最下位は他の追随を許してないんで。

飯塚 そこ狙う人いないだろうね。チャンピオンで最下位。

井口 昨日、番組でサルゴリラさんと一緒だったんですけど、赤羽さんが僕らで言うともしげさん的な立ち位置なんだっていうことがわかったので、徐々にそういう部分が出てくるのかもしれないです。

飯塚 けっこう恋多き男なんだよね。

井口 もちろん本人が面白くしてくれますけど。それはともしげさんと違うところで(笑)。

飯塚 そこが難しいよね。単に嫌われてるだけじゃなくて、ちゃんと弁が立たなきゃいけないっていう。

井口 そうなんですよ。弁の立つ嫌われ者じゃないと。

飯塚 それなりに成功もしてないと言いにくいし。だから井口くんなんだろうね。「M-1」チャンピオンで、嫌われ者で、弁が立つ。

井口 ずっと僕なんですよ。

飯塚 不動のワースト(笑)。

井口 早く僕を超えるワースト芸人に出てきてほしいもんですよ。

井口のムカついた話

──そろそろお時間です。では井口さん、単独ライブに向けてがんばってください。

井口 あと、あれがムカつきましたけどね。ナタリーの見出しの「人の単独にごちゃごちゃ言っていたウエストランド」(参考記事:人の単独ライブにごちゃごちゃ言っていたウエストランド、5年ぶり単独ライブ開催決定)って、あれ僕のコメントなんですよ。記事を開けば書いてあるじゃないですか。なのに「ナタリーのセンスww」みたいなこと言ってる奴がいて。いや、そんなに読まない!? 一文字もお前ら読まないの? バカすぎるだろ! 「ナタリーにイジられてらあ」みたいに言ってるけど、僕のセリフだから! 勘弁してくれよ。

飯塚 表紙しか見てない。もう、1つのことにちゃんと時間をかけてやる日本人が少なくなってるんだろうね。TikTok化してる。側だけ見て、「イジられてる」って面白がってXに書いて、それが間違ってて指摘されても「そんなこと言いましたっけ?」みたいな。どんどん流れていくから覚えてない。

井口 記事を開いて読めよ! 「急にナタリーが失礼なこと言ってるぞ」「あ、井口のコメントか」ってならない浅はかさ。すごいですよ。もうちょっと脳みそ使え!

──前回の「ライブ!!今月のお笑い」でみんなが詐欺に遭わないよう啓蒙する井口さんを思い出しました。さて、12月26日(火)に東京・シアターマーキュリー新宿で「ライブ!!今月お笑い2」が開催されますので、みなさんぜひ来てください。チケットは11月11日(土)発売です!

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

ウエストランド井口(左)と飯塚大悟(右)。

ライブ!!今月のお笑い2~王者の1年、どうだった?~

日時:2023年12月26日(火)18:30開場 19:00開演
会場:東京・シアターマーキュリー新宿
料金:前売2500円
※有料配信も予定。
チケット:11月11日(土)12:00にローソンチケットにて一般発売。
<出演者>
ウエストランド井口 / 飯塚大悟
ほか

プロフィール

井口浩之(イグチヒロユキ)

1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)とウエストランドを結成。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年、2013年に「THE MANZAI」認定漫才師。「M-1グランプリ」では2020年に初の決勝進出を果たし、2022年に優勝! ラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeなどで配信中。タイタン所属。

飯塚大悟(イイヅカダイゴ)

1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」(TBS)、「ヤギと大悟」(テレビ東京)、「オドオド×ハラハラ」(フジテレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~」(扶桑社)。

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レイザーラモンRG @rgizubuchi

「RGがあるある歌い続けウエストランドがあるなしクイズし続ける会」の映像をわざわざ取り寄せたとは!変態! https://t.co/obujE1WmVu

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