団体交渉でやってはいけない対応

団体交渉でやってはいけない対応

突然、労働組合から団体交渉を申し入れられるということは、どこの会社でも起こり得ることです。その際、何もしなくて大丈夫だろうと考えて放置したり、感情的になって団体交渉を拒否したりすることは避けなければなりません。

ここでは、団体交渉に関し、やってはいけない対応という観点からご説明いたします。

団体交渉の対応で会社が注意すべきこととは?

どこで団体交渉を行うか、誰が参加すべきかなど、注意すべきことは多岐に渡りますが、最も注意すべきは、不当労働行為に該当する行為をしないということでしょう。不当労働行為に該当すると判断された場合、労働委員会は、救済命令を出すことができます。

この救済命令にまで違反すると、刑事罰が科されることがあります。また、不当労働行為を理由として、損害賠償請求等が認められることもあります。

団体交渉における不当労働行為

不当労働行為に該当する行為は、労働組合法7条に明記されています。具体的には、労働組合の組合員であるという理由で不利益な取り扱いをすること、正当な理由なく団体交渉を拒否すること、労働組合の運営のために経理上の援助を与えることといったものがあります。

団体交渉で会社がやってはいけない対応

繰り返しになりますが、団体交渉において、不当労働行為に当たる行為は避けなければなりません。団体交渉の申し入れを無視することや、必要な資料を提示しないなど不誠実な態度に終始するということはやってはいけない対応といえます。

また、いたずらに団体交渉を先延ばしにすることも、実質的に団体交渉拒否したと判断される可能性がありますので、注意が必要です。

団体交渉における会社側の対応が問題となった判例

ここでは、正当な理由なく団体対交渉拒否をしたと判断された裁判例を紹介します。なお、争点は多岐に渡りますので、ここでは会社側が日程調整をしなかったことに関する問題に絞って記載いたします。

事件の概要

本件は、労働組合が病院に対して、団体交渉を申し入れ、実際に、何度か団体交渉が行われましたが、労働組合が病院に対して、次回の協議の場を設けるよう求めたのに対し、病院は、「いろいろ調査検討中」などとして、約2か月の間、協議の日程調整を行いませんでした。

これに関し、労働組合が労働委員会に対して救済の申立てを行ったところ、労働委員会は、10月1日以降団体交渉を開催しなかったことが不当労働行為に該当するとして救済命令を発しました。病院側は、これを不服として、救済命令の取り消しを求める訴訟を提起しました。

裁判所の判断(大阪地方裁判所令和5年9月6日裁判令和3年(行ウ)第156号)

裁判所は、日程調整をしなかった対応が団体交渉拒否といえるか、その団体交渉拒否に正当な理由があるかという2点に分けて検討をしています。

まず、裁判所は、「原告は、補助参加人ら(注:組合)の求めにかかわらず、約2か月の間団体交渉の日程調整に応じず、さらに、一度設定した協議日程を一方的に延期したというのであるから、かかる一連の経緯に照らし、団体交渉を拒否したものといえる。」として日程調整をしないことを団体交渉拒否と判断しました。

その上で、正当理由の有無については、「原告側の説明の準備が整っていないことのみを理由とし、かつ、日程調整を行えない具体的な理由を説明することのないまま日程調整を行わなかったことについて、正当な理由があるということはできない。」として、団体交渉拒否の正当理由も否定しています。

ポイント・解説

本件は、一度設定した協議日程を一方的に変更し、また、2か月の間、団体交渉の日程調整をしなかったという一連の行為に関して、不当労働行為と判断されています。

会社側の都合や準備もあると考えられます。また、準備ができていない団体で団体交渉をしたとしても、実質的な話し合いも出来ないでしょうから、準備のために、団体交渉の日を先にするという対応が直ちに問題ということはできないと考えられます。

もっとも、準備に時間を要するのであれば、労働組合に、その具体的な理由を説明すべきであるといえます。また、場合によっては、準備状況を報告する場として、団体交渉の場を設けることも検討すべきです。本件からも分かるとおり、団体交渉においては、日程調整も含めて誠実に対応をする必要があります。

団体交渉の対応に関するQ&A

以下で、団体交渉の対応に関するご質問に回答いたします。

団体交渉の申し入れ時に協議を求められました。その場で応じるべきでしょうか?

その場で応じる必要はありません。正当な理由なく団体交渉を拒否することはできませんが、これは労働組合が求めたときに団体交渉を行わなければならないという義務ではありません。
会社側にも準備や都合があり、申し入れ時に協議ができないことは当然のことです。別日に団体交渉を実施すれば、団体交渉を拒否したともいえませんので、日程の変更を求めていくのが良いと考えられます。

1回目の団体交渉には応じるが、2回目以降は拒否するというような対応は、不当労働行為に該当しますか?

不当労働行為に当たる可能性が高いと考えられます。正当な理由なく団体交渉を拒否することは不当労働行為にあたりますが、これは、2回目以降の団体交渉であったとしても同じことです。
通常、1回の団体交渉では、十分に協議をしたとはいえませんので、2回目以降ということを理由として、団体交渉を拒否することはできないと考えられます。
したがって、2回目以降の団体交渉を拒否するという対応は不当労働行為に該当する可能性が高いといえます。

所定労働時間内に団体交渉をするよう要求されました。団体交渉中の賃金を支払う必要はありますか?

所定労働時間内であったとしても、団体交渉中は就労をしているわけではありません。そのため、ノーワークノーペイの原則から、賃金を支払う必要はありません。
ただし、労働時間における団体交渉に対して、賃金を支払うとの労働協約を締結している場合は、賃金を支払う必要があります。

団体交渉が平行線で合意に至らない場合、会社側から打ち切ることは可能ですか?

団体交渉が平行線になっており、交渉が行き詰っている場合、それ以上の団体交渉に意味がないこともあるでしょう。
そのような場合であれば、団体交渉の拒否に正当な理由があるといえますので、打ち切ることも出来ると考えられます。
ただし、団体交渉の開催場所、参加人数などに関して平行線になっている場合や、必要な資料提示などを行わないために平行性になっている場合には、十分に団体交渉が行われているとはいえません。
このような場合には、団体交渉拒否に正当な理由が認められないと考えられます。上記のとおり、状況によっては団体交渉が平行性になっていることを理由として会社側から打ち切ることは可能です。
もっとも、実際に打ち切るか否かは、慎重に検討をすべきといえます。

労働組合に加入したことを理由に解雇した場合、不当解雇となるのでしょうか?

不当解雇にあたります。労働者が労働組合員であることを理由として解雇することは不当労働行為に当たるとされています(労働組合法7条)。
そもそも、労働組合に加入したことをもって解雇することは許されていないため、ご質問の理由で解雇することは不当解雇に当たるといえます。

団体交渉には応じるが、資料や書類などを一切提示しないとすることは可能ですか?

団体交渉に応じたとしても、必要な資料や書類などを一切提示しなければ、十分な協議を行うことができません。
必要に応じて資料や書類などを提示すべきであり、一切提示しないという対応は、誠実交渉義務に違反すると考えられます。
なお、資料の中には個人情報や企業秘密の記載があり、開示が困難な資料があることも考えられます。その場合には、協議に不必要な部分を隠して提示したり、秘密保持に関する合意書を取り付けた上で提示するなどの対応を取ることが考えられます。

団体交渉の場で協議を行わず、全て社内に持ち帰って確認するという行為は、不誠実な交渉とみなされますか?

ご質問を、2つに分けて考えます。つまり、①団体交渉の場で協議を行わないことの是非と、②すべて社内に持ち帰って確認することの是非に分けて考えるのがよいといえます。
まず、①について、団体交渉の場で協議を行わないとなると、団体交渉の場を設けた意味を没却しかねません。そのため、このような対応は、不誠実な交渉に当たると考えられます。
次に、②について、団体交渉にあたっては、慎重に検討をしなければならないことが多々あります。そのため、社内に持ち帰って確認すること自体は問題ではないと思われます。
もっとも、確認対象の内容、性質、重大性などを無視して、一律に、全てを社内に持ち帰るという対応は、さすがに硬直的過ぎる対応であり、不誠実な交渉に当たると思われます。

団体交渉の内容を録音・録画することは可能でしょうか?

団体交渉時の様子を録音するなどといったことは、良く行われています。録音の開始前に、労働組合側の了承を得ることが望ましいですが、団体交渉の内容を録音・録画することは可能といえます。

訴訟中の事項について団体交渉を要求された場合、応じる必要はありますか?

訴訟中の事項であっても、団体交渉に応じる必要があります。訴訟は、過去の事実関係を基にして、法的な適否を判断するものです。
それに対し、団体交渉は将来に向けてどのように解決するのかという点に主眼があります。それぞれの制度の趣旨や目的、機能が異なっていますので、訴訟中ということを理由として、団体交渉を拒否することはできないとされています。

子会社の団体交渉に親会社が参加することは認められますか?

親会社が子会社の労働環境に大きな影響を及ぼす場合、子会社の団体交渉に親会社の参加が必要となることがあります。そのため、子会社の団体交渉に親会社が参加することは可能といえます。
もっとも、親会社として、子会社の団体交渉に参加すべきなのかは十分に検討をすべきです。
親会社といえども子会社の労働環境に影響を及ぼしていない場合、団体交渉に参加しても意味がなく、不必要な負担を負うだけです。
そのため、まずは、親会社として団体交渉に参加すべきかを検討し、必要であれば、参加するという対応を取るべきでしょう。

不当解雇について団体交渉の申し入れを受けましたが、既に雇用関係にない場合でも応じる必要はあるのでしょうか?

応じる必要があります。今回の団体交渉の申入れは不当解雇に関する件ですが、仮に、不当解雇に当たる場合、当該解雇は無効であり、現時点でも雇用関係が継続していることとなります。
そのため、既に雇用関係のない者に関する団体交渉とはいえませんので、団体交渉に応じる必要があります。

団体交渉で会社が誤った対応をしないよう、弁護士が最善の方法をアドバイスさせて頂きます。

ここでは、団体交渉でやってはいけない対応という観点からご説明をさせていただきました。団体交渉の申し入れは、突然なされるものであり、焦って適切な対応が出来ないということは十分にあり得ます。

団体交渉の対応に関して、お困りのことがありましたら、弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。適切な対応が出来るよう、可能な限り、サポートさせていただきます。

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会社と労働者との間での紛争が生じた場合、労働組合から団体交渉が求められることがあります。

団体交渉は、主に労働組合と会社との間で、労働条件等の問題に関して行われる交渉です。

団体交渉は、憲法や労働組合法で保障されており、団体交渉を申し入れられた会社は、正当な理由なく団体交渉を拒むことができません。また、労働組合から求められた際に団体交渉において協議しなければならない内容があります。

以下では、団体交渉での協議すべき事項や内容について、解説していきます。

団体交渉ではどのようなことが協議されるのか?

そもそも、団体交渉において協議される内容は、後述のとおり、労働組合が要求すればその問題について交渉に応じる義務を負う交渉事項がありますが、労働組合が協議を求める内容については、制限がありませんので、個々の団体交渉では、様々な内容が取り上げられます

労働条件やその他の待遇に関する事項や人事権・経営権に関する事項も団体交渉により、協議されることもあります。

具体的な内容について、説明していきます。

労働条件やその他の待遇に関する事項

団体交渉で協議される事項として挙げられるのが、労働条件やその他の待遇に関する事項で、会社で働くうえで必要な事項が、労働条件やその他の待遇に関する事項に含まれます。

このような内容については、後述のとおり、義務的団交事項に該当します。このため、会社としては、このような協議を求める団体交渉を求められた際には、正当な理由なく団体交渉を拒否することができませんので、注意が必要です。

人事権・経営権に関する事項

人事権や経営権に関する事項が団体交渉の対象とすべきか、争いとなることがあります。

このような事項は、専ら会社が判断すべき事項に該当することです。このため、人事権や経営権に関する事項については、団体交渉の対象とすべきではない、という判断をすることも考えられます。

もっとも、人事権や経営権に関する事項でも、労働条件に関わってくることがあります。

労働者の採用の仕方に不合理な差別が無いか、配置転換の仕方に合理的な理由があるのか、解雇が不当ではないか、労働者が上司によるパワハラを受けている場合にパワハラをしている上司の処遇をどのようにして被害を受けている労働者の職場環境に整えるか、という点など人事にもかかわってくるようなことでも、労働者の処遇・労働条件に密接に関連する内容を含む内容については、「1-1」と同様、義務的団交事項に該当してきます。

このように、具体的な内容が労働者の処遇に影響するかを広く視野に入れて、団体交渉の対象とすべきか考えていくことが必要ですので、注意が必要です。

協議内容に法律上の制約はあるのか?

協議に応じるべき事項がありますが、協議内容に法律上の制約はあるのでしょうか。

法律上、団体交渉での協議内容については、制約がありません。このため、労働組合は、労働者の処遇に関係しない内容の協議を要求してくることも想定されます。

団体交渉の申し入れに対しては、正当な理由なく拒否することができませんので、労働者の処分に関係しない内容の協議が要求された際に、拒否をする場合には、丁寧に説明をすることが必要です。

例えば、団体交渉として求められているテーマが、労働者の処遇などに関係ないなど、団体交渉のテーマとなっている事項が団体交渉により解決するのにそぐわないなどの事情を説明して、団体交渉の要求に応じないと説明することなどが重要です。

義務的団交事項について

先ほどから何度か出てきましたが、団体交渉として重要なこととして、義務的団交事項ということがあります。重要な内容ですので、改めて、説明していきます。

義務的団交事項とは、労働組合が団体交渉を申し入れた場合、使用者が団体交渉を行うことを法的に義務付けられる、つまり、正当な理由なく団体交渉を拒否することができない事項です。

法律上、明確に義務的団交事項が定められているのではありませんが、賃金、労働時間、休日、休暇、職場環境、勤務地、勤務内容、福利厚生など労働条件その他の待遇、団体的労使関係の運営に関する事項であって使用者による処分可能な事項が含まれます。

労働条件であれば、広く義務的団交事項に含まれてきますので、前述のような、労働条件その他の処遇について広く義務的団交事項となります。

団体的労使関係の運営に関する事項としては、団体交渉を進めるにあたってのルールや労働組合に対する便宜供与などが該当します。

また、使用者に対応不可能な事項は団交事項ではありませんので、他社の労働条件に関する事項や政治的事項などについては、義務的団交事項には含まれません。

団体交渉は、労働条件を対等な立場で決定、その基盤となる労使関係を形成する意味がありますので、このような基盤を確保するために、上記のような事項が義務的団交事項とされています。

団体交渉に応じる義務のない事項とは

上記のような義務的団交事項の他に、任意的団交事項、ということがあります。これは、義務的団交事項ではなく、法的な団体交渉義務とは無関係に、当事者が任意に団体交渉の対象として取扱う事項です。

例えば、次期代表取締役社長の選任、会社の社会文化貢献活動、社員のプライバシーに関する事項が含まれる場合など、様々な内容です。

任意的団交事項であれば、応じなくとも不当労働行為とはなりません。

もっとも、非正規労働者や管理職など組合員の労働条件に関する事項について、就業規則変更による労働条件変更の場合は、過半数組合への意見聴取の対象となり、意見を求めなければなりませんので、断行を行う、というケースもあります。

任意的団交事項でも、労働者の労働条件に影響するような事項であれば、義務的団交事項となり得ますので、このような団体交渉に応じないというご対応をされる場合には、注意が必要です。

社員のプライバシーに関する事項が含まれる場合

団体交渉の目的として、他の社員の賃金・賞与、評価など、社員のプライバシーに関する事項が含まれることがあります。

また、直接の目的でなくとも、協議のなかで、社員のプライバシーに関する事項が含まれる資料の開示が求められることがあります。

このような場合に、開示をしてしまうと、他の社員のプライバシー侵害に該当してしまいますので、注意が必要ですし、プライバシー侵害となることを拒否するという対応が考えられます

義務的団交事項の該当性が問われた判例

これまで解説しましたように、義務的団交事項に該当する場合には拒否をすることができませんが、義務的団交事項に該当するのかどうか、争いとなることがあります。

実際に、裁判で争われた例として、東京地裁の平成20年2月27日の判決を見ていきましょう。

事件の概要

事案の概要としては、会社分割について団体交渉の対象となった事案です。具体的には、新設分割により設立された会社の経営の見通し(収益見込み)が団体交渉の対象となっていました。

しかし、会社は、経営見通し(収益見込み)を説明しなかったことについて、判断がされました。

裁判所の判断

会社分割後の会社の経営の見通しや収益見込みについては、経営判断として、専ら会社の専権的事項に該当し得るところですが、裁判所は、「会社分割後の原告X1(注:会社)の経営見通し(収益見込み)等は,その内容及び根拠等によっては,将来原告X1(注:会社)の従業員となる補助参加人分会の分会員(注:組合員)の労働条件に影響を及ぼすといえるから,原告X1(注:会社)の経営見通し(収益見込み)等は,労働条件の維持及び向上という観点から,団体交渉の対象となるというべきである。」と判断しました。

そのうえで、財務諸表等の客観的な資料を提示するなどして、誠実に説明しなければならなかったとし、誠実な説明を怠った会社の対応や他に争われた点などを理由に、会社の対応を不当労働行為と判断しました。

ポイント・解説

本判決では、経営に関する事項でも、労働条件に影響する影響を及ぼす可能性のある事項として、義務的団交事項にあたると判断しました。

経営見通し・収益見込みについては、労働者の賃金を含む待遇に影響してくることがありますので、会社分割など会社の資産に影響があるような場合の団体交渉については、会社として注意が必要です。

団体交渉の協議事項に関するQ&A

以下では、団体交渉の協議事項として、よくある質問について、回答していきます。

義務的団交事項について、団体交渉を拒否するとどうなりますか?

義務的団交事項に該当内容での交渉が申し入れられた場合、使用者は、団体交渉を行うことが法的に義務付けられ、正当な理由なく団体交渉を拒否すると、不当労働行為となります。

不当労働行為に該当する場合、労働組合は、不当労働救済申立てをして、労働委員会に判断がされます。不当労働行為がある場合には、労働委員会は、労働組合が申し入れた団体交渉に応じなければならない旨の内容などの救済命令を発します。

このほかにも、団体交渉を求める地位の確認のための訴訟や団体交渉の実現ができないことでの損害が発生する場合には、損害賠償請求がされることがあります。

「任意的団体交渉事項」にはどのようなものが該当しますか?

任意的団体交渉事項とは、義務的団交事項に該当する事項以外の事項です。

使用者では処分できない内容、労働条件に関係のない経営専権事項、労働条件に関係のない労働組合の政治的信条や社会的使命に基づく要求事項などについて、任意的団体交渉事項となります。

もっとも、労働条件に影響してくる内容の場合には、義務的団交事項に該当しますので、注意が必要です。

安全衛生や災害補償に関する事項は、義務的団交事項に該当しますか?

安全衛生や災害補償に関する事項についても、労働条件などに関する事項として、義務的団交事項に該当します。

他社との合併について団体交渉を要求されました。会社は団体交渉を拒否できますか?

合併については、会社の経営判断による事項として、義務的団交事由に該当しないとも考えられます。

しかし、一見して経営判断に該当するような事項でも、労働者の労働条件や待遇に関する事項であれば、義務的団交事由に該当することがあります。

合併においては、合併の対価のように、経営判断的事項に該当する事項もあれば、組合員が勤務し続けられるかどうか、合併後の労働条件などの事項もあります。このうち、組合員の労働条件に影響してくるような内容であれば、義務的団交事項に該当しますので、注意が必要です。

団体交渉の手続きに関する事項が、団体交渉の協議内容になることはありますか?

義務的団交事由には、団体交渉を進めるにあたってのルールも含まれますので、労働組合が、義務的団交事由に該当するとして、団体交渉の手続きに関する事項を団体交渉の協議内容として求めてくることもあります。

労働組合が要求する事項について、会社は全て応じなければなりませんか?

労働組合が協議を要求する事項は、大きく、労働組合が要求してきた場合に団体交渉を行うことが法的に義務付けられる義務的団交事項と法的に義務付けられない任意的団体交渉事項があります。

労働組合が要求する事項が、義務的団交事由に該当する場合には会社は団体交渉に応じなければなりませんが、任意的団体交渉事項に該当するのであれば、必ずしも、労働組合が要求する事項について、会社が団体交渉に応じなければならないということではありません。

もっとも、義務的団交事項に該当するのか否かについては、明確に割り切れないこともありますので、義務的団交事項に該当しないとの判断をする際には注意が必要です。

団体交渉申入書に具体的な協議事項が記載されていない場合、団体交渉を拒否することは可能ですか?

具体的な協議事項が明記されていない場合、協議すべき事項が明確ではなく、協議に向けてどのような準備をすべきかもわからない状況となりますので、拒否したいと考えられるかもしれません。

しかし、団体交渉の拒否には正当な理由が必要となります。抽象的であることをもって拒否した場合、正当な理由の有無などが訴訟などで争いとなることもあります。

そのため、まずは、団体交渉申入書に具体的な協議事項が記載されていない場合には、どのような協議を求めるのか、労働組合に対して、説明を求めるということが考えられます。

説明を求めるなかで、労働条件に関する事項の協議が求められたのであれば義務的団交事由に該当しますので、団体交渉に応じなければなりませんし、義務的団交事由に該当しないのであれば、内容に応じて適切か否かということを判断するのがよいです。

団体交渉の協議内容が、義務的団交事項に該当するか判断できない場合はどうしたらいいですか?

義務的団交事項に該当するかどうかの判断は、一見して難しいことがあるかと思います。

この場合、一見して賃金、労働時間、勤務場所など労働条件に関わるような内容でない場合には、団体交渉を拒否する、という選択をとる、ということも考えられますが、このように、労働条件に直接かかわるような内容でなくとも、労働条件に影響する内容の協議が求められてくるということも出てきます。

他方で、義務的団交事項に該当するにもかかわらず、団体交渉を拒否した場合には、労働委員会による救済の申立や訴訟等で争いとなるなど、大きな負担が生じてきます。

実際に、義務的団交事項に該当する事項としては、広く解されていますので、拒否をした場合に上記のような負担が生ずるリスクが顕在化しやすくなると考えられます。

そこで、まずは、団体交渉に応じていただき、協議の内容として、労働条件に関わる内容以外の事項が協議事項となることが明確になった段階で、義務的団交事項に該当しない、という判断をされるということがよいでしょう。

団体交渉の協議事項を、第三者に口外することは認められますか?

団体交渉の協議事項を第三者に口外することについて、明確に制限する規定があるのではありませんが、特に、組合員のプライバシーに関わる事項が含まれることが多いと思われますので、第三者への口外については、避けることがよいでしょう。

個別の組合員の昇進・昇格に関する事項は、団体交渉の対象となりますか?

組合員の昇進・昇進昇格に関する事項は、労働条件やその他の待遇に関する事項ですので、団体交渉の対象となります。

また、個別の組合員に関する事項であっても、一人の組合員のみならず、会社に勤める労働者全体に影響する一般的な基準・制度に関わるものが含まれることもありますので、基本的には、団体交渉の対象となると考えておくことがよいでしょう。

団体交渉対策でお悩みの会社は、労働問題を得意とする弁護士にご相談ください。

これまで説明しましたように、団体交渉といっても、団体交渉に応じなければならないのか、慎重な判断が必要となることがあります。

特に、義務的団交事項が協議の対象とされているにも関わらず、団体交渉を拒否するような場合、労働委員会の救済申立てがされるなど、会社にとって大きな負担となってきます。

団体交渉においては、誠実に交渉をすることが必要です。誠実な交渉がされていない場合にも、不当労働行為として、救済の申立てがされることがあるなど、負担が増大することがあります。

このように、団体交渉に対しては、慎重に対応していただくなども必要ですが、他方で、労働組合が提示した条件や提案に対して、必ず応じなければならないということもなければ、必ず譲歩しなければならないというものでもありません。

団体交渉においては、慎重な対応をしつつ、現実的な法的リスクやメリットを見極めながら現場で交渉していくことが必要です。弁護士法人ALG&Assocates名古屋法律事務所においては、団体交渉に関するご相談やご依頼を多数お受けしており、団体交渉での対応について精通した弁護士が複数所属しております。

団体交渉の申し入れがされた際や団体交渉での対応でお困りの際には、ぜひ、ご相談ください。

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労働組合から団体交渉を申し入れられた場合、会社はどのように対応すべきなのでしょうか。

会社が、正当な理由なく団体交渉に応じない場合、不当労働行為に該当するとして労働委員会から団体交渉に誠実に応じるように救済命令が発せられたり、労働組合から団体交渉の拒否によって生じた損害について、不法行為として損害賠償を求められることがあります。

本記事では、労働組合から団体交渉を申し入れられた場合に会社がどのように対応すべきなのかについて、解説していきます。

団体交渉の流れと進め方について

団体交渉の申し入れがあった場合の初動対応

会社は、正当な理由なく、労働条件その他の経済的地位に関する事項(賃金、労働時間、安全衛生、労災補償、職場環境、人事考課、人事異動、懲戒、採用・解雇、福利厚生、企業年金など)及び労使関係の運営に関する事項(組合員の範囲、ユニオン・ショップ、便宜供与、団体交渉・労使協議のルール、争議行為の手続など)で、使用者としての立場で支配・決定できるもの(以下「義務的団交事項」といいます。)について、団体交渉を拒むことができません(労働組合法7条2号)。

そのため、労働組合から団体交渉の申し入れがあった場合には、申し入れられた事項が義務的団交事項に該当するかについて検討し、該当する場合には団体交渉を拒否することはできないため、以下のような準備を行うべきです。

団体交渉の事前準備と予備折衝

労働組合から会社に対する団体交渉の申し入れは、「団体交渉申入書」という団体交渉の日時や場所、会社に対する要求事項などが記載された書面によってなされることが一般的です。

会社としては、団体交渉申入書に記載されている要求事項を確認し、要求事項に曖昧な点がある場合には労働組合に対し、具体的な説明を求めるべきです。

また、団体交渉の前に労働組合との間で要求事項を確認し、今後の交渉をどのように進めていくかについて話し合う「予備折衝」を行うこともあります。

団体交渉に向けて決めておくべき事項

団体交渉の出席者・発言者

会社としては、団体交渉における交渉事項について、実質的な交渉権限・決定権限を有する者を出席させなければなりません。

個人企業であれば個人事業主、法人企業であれば役員、あるいは使用者に代わって交渉権限・決定権限を与えられた者を出席させなければなりません。

また、団体交渉の発言者については、発言者による意見の相違が生じることを防ぐために、出席者の中から1名に決めておくべきです。

団体交渉の場所

団体交渉の場所については、会社外の貸会議室等を利用すべきです。

労働組合は、会社内の施設や労働組合の事務所での交渉を求めてくることがあります。

しかし、このような施設を使用して団体交渉を行うと交渉の予定時間を過ぎても話し合いを続けられてしまい、会社側の出席者がいつまでも解放されないというリスクがあります。

団体交渉の日時

団体交渉の日時については、業務時間外に行うべきです。

業務時間中に団体交渉を行うと、会社は組合員に対し団体交渉をしていた時間についても賃金を支払うのかという問題が生じかねません。

なお、必ずしも労働組合から指定された日時で交渉に応じなければならないものではありません。

会社としては、たとえ労働組合から日時が指定されていたとしても、団体交渉の準備の都合やその他の理由により合理的な範囲であれば別の日時を指定することができます。

団体交渉の費用負担

団体交渉の場所として、貸会議室等を利用する場合の費用については、会社が負担すべきです。

費用について、会社が負担したとしても会社内の施設や労働組合の事務所で団体交渉を行うよりも予定時間で団体交渉を終わらせることができるなどのメリットあると考えられます。

弁護士への依頼の検討

労働組合から団体交渉を申し入れられた場合には、弁護士へ依頼することも検討すべきです。

弁護士に依頼して、労働組合からの要求事項を法的に検討することで、労働組合との間で不利な内容の合意をしてしまうことを防ぐことができます。

また、団体交渉の担当者の負担を減らし、適切な事前準備によって早期に解決することが可能です。

団体交渉当日の進め方

団体交渉の協議内容

団体交渉において、会社が協議に応じなければならない内容は、「義務的団交事項」に限られます。

「義務的団交事項」とは、使用者としての立場で支配・決定できる①労働条件その他の経済的地位に関する事項(賃金、労働時間、安全衛生、労災補償、職場環境、人事考課、人事異動、懲戒、採用・解雇、福利厚生、企業年金など)及び②労使関係の運営に関する事項(組合員の範囲、ユニオン・ショップ、便宜供与、団体交渉・労使協議のルール、争議行為の手続など)で、使用者としての立場で支配・決定できるものをいいます。

なお、会社組織の変更、事業場の移転、生産方法の変更など経営上使用者が専権的に決定すべき事項であっても、従業員の待遇や労使関係の運営に関連するときには、義務的団交事項に含まれます。

録音や議事録の作成

団体交渉の場では、労使双方の了解のもと、交渉状況について録音したり、協議の経過や内容に関する議事録を作成すべきです。

交渉がどのように行われたか、どのような内容が話し合われたのかについて、客観的な資料を残しておくことで、後の紛争を未然に防ぐことにつながります。

団体交渉の場で会社がやってはいけないこと

団体交渉の場において、労働組合から提出された書類への署名・押印をすることは控えるべきです。

仮に署名・押印をしてしまった場合には書類に記載されている内容が会社と労働組合との間で合意の成立した「労働協約」であると主張されてしまうリスクがあります。

そのため、一度書類を持ち帰ったうえで、書類に記載されている内容を精査し、署名・押印しても問題がないかについて検討すべきでしょう。

労働組合との団体交渉の終結

労使間で合意に至った場合

団体交渉の結果、労使間で合意に至った場合には合意した事項については、文章化され、労使双方の代表者による署名または記名押印がなされることによって、使用者と労働組合の合意である労働協約として有効に成立します。

なお、合意が成立したにもかかわらず、合理的な理由なく、使用者が合意の内容について、労働協約化を拒否することは、団体交渉拒否の不当労働行為に当たると考えられているため、注意が必要です。

団体交渉が決裂した場合

会社が労働組合の要求に対し、客観的な資料や根拠を示しながら合理的な説明を尽くしたにもかかわらず、結果的に労働組合との間で合意に至らなかった場合には、団体交渉を打ち切ったとしても誠実交渉義務に違反することにはなりません。

ただ、団体交渉を打ち切る際には、交渉の経緯や合意に至らなかった理由などについて、議事録に記載しておくべきでしょう。

団体交渉に関する裁判例

団体交渉に関する近時の最高裁判例として山形県・県労委(国立大学法人山形大学)事件(最二小判令和4年3月18日民集76巻3号283頁)について、解説します。

事件の概要

国立大学法人が、55歳を超える教職員の昇給を抑制すること及び給与制度の見直しによる賃金の引下げに関する団体交渉において、不誠実な態度で交渉を行ったことが労働組合法7条2号の不当労働行為に該当するとして、労働組合から県労働委員会に対し救済申立てがなされました。

県労働委員会は、法人に対し、適切な財務情報を開示するなどして誠実に団体交渉に応ずべき旨を命じ(団交応諾命令)、これに対し、法人から団交応諾命令の取消しを求める訴訟が提起されました。

原審(仙台高判令和3年3月28日労判1241号41頁)は、団交応諾命令が発せられた当時、昇給の抑制や賃金の引下げの実施から4年前後が経過し、関係職員全員について、これらを踏まえた法律関係が積み重ねられていたこと等からすると、その時点において本件各交渉事項につき団体交渉をしても有意な合意を成立させることは事実上不可能であったと認められるから、県労働委員会が本件各交渉事項について更なる団体交渉をすることを命じたことはその裁量権の範囲を逸脱したものといわざるを得ないと判断し、団交応諾命令について違法であるとして、団交応諾命令を取り消しました。

これに対し県から最高裁に対し上告受理申立てがなされました。

裁判所の判断(事件番号・裁判年月日・裁判所・裁判種類)

令和3年(行ヒ)第171号・令和4年3月18日・最高裁判所第二小法廷・判決

「……そうすると、合意の成立する見込みがないことをもって、誠実交渉命令を発することが直ちに救済命令制度の本来の趣旨、目的に由来する限界を逸脱するということはできない。

また、上記のような場合であっても、使用者が誠実に団体交渉に応ずること自体は可能であるから、誠実交渉命令が事実上又は法律上実現可能性のない事項を命ずるものであるとはいえないし、上記のような侵害状態(注:不当労働行為によって発生した侵害状態)がある以上、救済の必要性がないということもできない。

以上によれば、使用者が誠実交渉義務に違反する不当労働行為をした場合には、当該団体交渉に係る事項に関して合意の成立する見込みがないときであっても、労働委員会は、誠実交渉命令を発することができると解するのが相当である。」

ポイント・解説

本判決は、使用者が誠実義務に違反する不当労働行為をした場合には、当該団体交渉に係る事項に関して合意の成立する見込みがないときであっても労働委員会は誠実交渉命令を発することができることを最高裁として初めて明らかにしたものです。

会社(使用者)としては、たとえ団体交渉を求められている事項について、いかなる内容の合意も成立する見込みがない場合であったとしても労働組合との団体交渉を拒否することはできず、誠実に交渉に応じなければならないことを示しています。

早期解決には冷静かつ粘り強い交渉が必要

団体交渉において、冷静さを欠いた状態では、適切な対応ができず、協議を進めることはできません。

また、感情的に合意してしまうと、会社にとって不利益な内容で合意をしてしまう可能性もあります。

労働組合からの要求について会社がそのまま受け入れることが可能である場合はほとんどありません。

双方が納得できる条件で折り合うためには、粘り強い交渉が必要です。

そのため、団体交渉の早期解決のためには冷静かつ粘り強い交渉が不可欠といえます。

団体交渉の進め方に関するQ&A

団体交渉にかかる回数や期間はどのくらいですか?

団体交渉は、1〜2か月の間に1回のペースで行われ、平均して3〜4回の交渉が行われることが多いようです。

そのため、期間としては3か月から半年程度が一つの目安になると思われます。

双方の主張が平行線で合意に至らない場合、何か解決策はありますか?

労働組合からの要求に対し、会社側が誠実に交渉に応じたにもかかわらず、双方の主張が平行線で合意に至らない場合には、団体交渉を打ち切ったうえで、各都道府県の労働委員会に対しあっせんを申立て、あっせん手続の中で解決を目指すことが考えられます。

2回目以降の団体交渉の日程は、どのように決定するのでしょうか?

2回目以降の団体交渉の日程については、①1回目の団体交渉の場で決定する、②1回目の交渉後、書面によって申し入れることが考えられ、いずれの方法によっても団体交渉の日程を決定することができます。

団体交渉は業務時間中に行わなければならないのでしょうか?

団体交渉について、業務時間中に行わなければならないものではありません。

業務時間中に団体交渉を行ってしまうと、会社は団体交渉をしていた時間についても賃金を支払うのかという問題が生じます。

そのため、団体交渉は、業務時間外に行うべきでしょう。

労働組合からの要求は、団体交渉の場で回答しなければならないのでしょうか?

労働組合からの要求について、必ずしも団体交渉の場で回答しなければならないものではありません。

検討が不十分なまま回答することは会社にとって不利益になる場合があります。

そのため、その場で回答したとしても問題ないことが明らかな場合を除き、一度持ち帰ったうえで、書面あるいは次回の交渉の場において回答すべきでしょう。

団体交渉を会社の施設で開催するよう要求されましたが、拒否することは可能ですか?

団体交渉の開催場所について、法律上の規定は存在しないため、会社の施設で開催するよう要求されたとしても拒否することができます。

会社の施設で団体交渉を開催してしまうと交渉の予定時間を過ぎても交渉を続けられてしまい、会社側の出席者がいつまでも解放されないというリスクがあるため、会社外の貸会議室等で開催すべきでしょう。

労働組合側の参加人数が大人数である場合、どのような対応が必要ですか?

労働組合側で団体交渉の権限を有するのは、労働組合の代表者または労働組合の委任を受けた者に限られます。

そのため、労働組合側で団体交渉における担当者が定められておらず、不特定多数の組合員が交渉を担当する場合や担当者の統制を受けずに多数の組合員が交渉に参加する場合には団体交渉に応じる義務はありません。

このような場合には、労働組合に対し団体交渉の権限を有する者を参加させ、組合員に対する統制を図るよう申し入れましょう。

一方で、合理的な理由なく労働組合側の出席人数を制限することは団体交渉拒否の不当労働行為に当たる可能性があるので注意が必要です。

会社が団体交渉を打ち切ることができるケースについて教えて下さい。

会社と労働組合の双方が、交渉事項についてそれぞれ自らの主張および説明を出し尽くし、これ以上交渉を重ねても議論は平行線をたどったまま合意に達する見込みがないといえる段階に至った場合には、誠実に交渉がなされているといえ、会社は団体交渉を打ち切ることができます。

上記のような段階に至ったといえるためには、主張を根拠づける客観的な資料の提示や交渉の回数、交渉時間、交渉の経緯などが考慮されることになります。

団体交渉に向けて、事前に想定問答集を作成することは認められますか?

団体交渉に向けて、事前に想定問答集を作成することも認められています。

むしろ、充実した協議を行うためには回答内容やその根拠について事前に準備した想定問答集を作成したうえで団体交渉に臨むべきです。

社長の代わりに、部長や課長などの管理職が団体交渉に出席することは可能ですか?

実質的な交渉権限を与えられていれば、社長の代わりに、部長や課長などの管理職が団体交渉に出席することも可能です。

また、交渉権限について与えられている者は、決定権限を有していないことを理由に交渉を拒むことはできず、労働組合との団体交渉に応じたうえで、合意の成立や労働協約の成立に向けた適切な対応を取らなればなりません。

団体交渉で労働協約を締結した場合、現在の就業規則はどうなりますか?

就業規則は、当該事業場に適用される労働協約に反してはならないとされています(労働基準法92条1項)。

すなわち、労働協約の効力は、就業規則に優先します。

そのため、現在の就業規則の中で労働協約に反する部分は無効になり、それ以外の部分の就業規則については有効になります。

団体交渉を有利に進めるためには、専門的な知識が必要となります。まずは弁護士にご相談下さい。

団体交渉を有利に進めるためには、労働法分野に関する専門的な知識が求められ、日常の業務と並行して適切な準備をすることは決して簡単なことではないと思われます。

そのため、労働組合から団体交渉の申し入れを受けた場合には、まずは一度弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。

団体交渉の早期解決に向けてご尽力させていただきます。

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団体交渉でやってはいけない対応団体交渉の協議事項・内容団体交渉を申し入れられた場合の初動対応議事録・録音・録画の必要性団体交渉で弁護士を入れることのメリット

団体交渉を申し入れられた場合、法律上会社がとってはならない行動がいくつかあります。しかし、企業内労働組合が減少した昨今では、その適否を判断できないことも多いでしょう。

会社にとって不利な対応をとってしまわないよう、団体交渉の申入れがあった場合の会社側のとるべき対応についてご説明いたします。

団体交渉の申入れがあったとき企業はどう対応すべきか?

団体交渉の申入れがあった場合、まずは、申入れの内容を確認する必要があります。

当該申入れについて、労働者側の要求を受け入れるのか、拒否するのか、一部譲歩を求めるのか等どのように交渉を進めていくのか会社内で方針を検討していただく必要があります。

団体交渉を拒否することはできるのか?

正当な理由なく団体交渉を拒否することは、労働組合法7条により禁止されています。

すなわち、会社が団体交渉を拒否するためには、「正当な理由」が必要となります。「正当な理由」なく団体交渉を拒否した場合には「不当労働行為」として違法と判断される可能性があります。

なお、「正当な理由」には、会社が繁忙期である等という理由は含まれませんのでご注意ください。

使用者が負う誠実交渉義務

会社は、労働組合から団体交渉を申し入れられた場合に交渉を拒否することが、不当労働行為として違法となるのは、上記のとおりですが、形式的に交渉に応じればよいというものではなく、合意達成の可能性を模索して誠実に交渉をする義務があります。

団体交渉の申入れられたときの初動対応

団体交渉申入書に対する回答書の作成

団体交渉の申入書に対して、交渉事項のどの項目に対する交渉に応じるのかの回答をする内容の書面を作成して労働組合に回答する必要があります。

また、申入書に団体交渉の日程や場所についても記載している場合には、それに対する回答をする必要もあります。

交渉事項については、労働者の就労環境、労働条件、労働者の地位・身分に関する事項、労働組合そのものに関する事項(義務的交渉事項)については、団体交渉に応じる義務が生じますが、使用者に対処できない事項、経営・生産に関する事項、施設管理等に関する事項等については、団体交渉に応じなくとも不当労働行為にはならない可能性があります。

日程等については、申入れの日時の変更を求めることは可能ですが、いたずらに先の日程を指定することは、上記の誠実交渉義務に反すると判断される可能性があるためご注意ください。

弁護士への相談

労働組合は日ごろから、団体交渉を行っており、知識・経験を積んでいますが、昨今企業内労働組合が減少していることも影響して、社内に団体交渉に精通している社員が少ない企業も少なくないと思われます。

そのため、知識・経験の差で不利な合意を結ばないため、早期に団体交渉の経験がある弁護士に相談の上、対応を検討することが会社の利益のためにも肝要と言えます。

団体交渉の対応に関する裁判例

地方公共団体がその雇用する常勤講師、非常勤講師等の雇用継続を求める団体交渉の申入れを受け、これを拒否したことが不当労働行為に該当するとされた事例があります(東京高判平成26年3月18日)。

事件の概要

地方公共団体に雇用される常勤講師及び非常勤講師を構成員とする労働組合が組合員の継続雇用を求める団体交渉行ったところ、地方公共団体側から常勤講師及び常勤講師の個別の任用に関する交渉要求については、交渉事項ではないため、応ずることはできない、として交渉に応じませんでした。

これに対して、労働組合は、労働委員会に対して救済申立をしたところ、最終的に労働委員会から救済命令が発令されました。

そこで、地方公共団体側は、救済命令の取り消しを求める訴えを提起し、常勤講師、非常勤講師の雇用継続が義務的交渉事項に該当するか否かが争われました。

裁判所の判断

義務的団交事項とは、団体交渉を申し入れた労働者の団体の構成員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なものというと解されるところ、本件断交事項は、任用が繰り返されて実質的に勤務が継続されている実態を踏まえて、任用の継続を前提とする勤務条件の変更または継続を求めるもので、それが処分可能なものであるから義務的団交事項に属すると解するのが相当だと判断しています。

ポイント・解説

義務的団交事項に関する団体交渉を正当な理由なく拒否することは、不当労働行為に該当します。

公務員である地方公共団体の教職員は、民間企業と同一に捉えられないことが多いですが、本件では、地方公共団体において、常勤講師、非常勤講師が学校運営上不可欠であり、期限の定めのある労働者同様、任用の更新が予定されており、実際に繰り返して任用して、勤務を継続していることを踏まえ、任用の継続を前提とする勤務条件の変更または継続を求めるものと判断した上、義務的団交事項の一般的な定義に照らして、義務的断交事項に該当すると判断しました。

団体交渉に関するQ&A

団体交渉の申し入れを放置した場合、会社にはどのようなリスクが生じますか?

上記のとおり、団体交渉を申し入れられた場合、正当な理由なくこれを拒否(放置して対応しないことも含みます。)することは不当労働行為と判断される可能性があります。

この場合、労働組合が労働委員会に救済申し立てをし、労働委員会が救済命令を発したにもかかわらず、これに応じなければ、50万円以下の過料、救済命令に対して会社が取消訴訟を申し立てたものの、敗訴して救済命令が確定したにも関わらず、これに応じなかった場合には、1年以下の禁固若しくは100万円以下の罰金またはこれらを併科される可能性があります。

また併せて、労働者個人や労働組合に損害が生じた場合には、損害賠償請求をされる可能性があります。

労働組合が、違法な組合活動を行う恐れがある場合の対処法を教えて下さい。

労働組合が団体交渉の席上その他労使間の折衝の場において会社側に対して暴力的言動を繰り返し、将来行われる団体交渉の場においてその代表者等が暴力を行使する蓋然性が高いと認められる場合には、過去の暴力行為の陳謝や将来において暴力を行使しない旨の保証のない限り、使用者が、その労働組合との団体交渉を拒否することは正当な理由があると認められる可能性があるため、当該労働組合がそのような対応をしない限り、団体交渉を拒否する、という対応が考えられます。

団体交渉の対応について弁護士に相談する場合、どのような資料が必要ですか?

団体交渉の対応について弁護士に相談いただく場合には、まず団体交渉の申入書をご持参ください、併せて、申入書記載の交渉事項に関する資料をご持参いただきたく思います。

例えば、未払い残業代に関する交渉事項であれば、雇用契約書、就業規則、タイムカード等、労働者の契約上の地位(解雇関係)であれば、解雇の原因のわかる資料(過去の懲戒に関する資料、勤怠のわかる資料、業務態度等がわかる資料等)をご持参ください。

団体交渉申入書で、団体交渉の場所について指示がありました。会社はこの指示に応じる必要がありますか?

団体交渉の場所については、必ずしも指定された場所でしなければならないわけではなく、別の場所を希望すること自体は可能です。

しかし、労働組合側にあまりに不利益な場所を指定すると、団体交渉を実質的に拒否したものとみられかねませんのでご注意ください。

団体交渉申入書が届きましたが、誰が組合員なのか分かりません。団体交渉に応じるべきでしょうか?

団体交渉は、労働組合が主体となって申入れをしますので、必ずしも組合員が誰であるかを明確にする必要はありません。そのため、組合員が誰であるか不明であることを理由に団体交渉を拒否することは不当労働行為と判断される可能性があります。

団体交渉の初動対応を誤らないよう、労使問題に強い弁護士がアドバイスさせて頂きます。

団体交渉は、正当な理由なく拒否することが許されていません。交渉に応じたとしても対応によっては、誠実交渉義務に反するとして「不当労働行為」に該当すると判断される可能性もあります。

会社の対応一つで、会社に過料、罰則、損害賠償請求等不利益が生じてしまう可能性があります。このような事態を防ぐため、団体交渉に臨むにあたっては、専門的な知識と経験を有する弁護士に対応を依頼することをお勧めいたします。

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団体交渉でやってはいけない対応団体交渉の協議事項・内容団体交渉の進め方議事録・録音・録画の必要性団体交渉で弁護士を入れることのメリット

団体交渉は、複数回開催されることが多く、適切に協議を続けていくために、議事録や録音・録画により記録を残しておくことが必要といえます。ここでは、団体交渉に関する記録について、ご説明します。

団体交渉の内容を記録する必要性

通常、団体交渉は、1回では終わらず、何度も行われます。また、その協議も数時間に及ぶこともあります。記録を付けておかないと、団体交渉の経緯や内容が分からなくなり、適切な協議を行えなくなってしまいます。そのため、適切な団体交渉を行うために、団体交渉の内容を記録に残すべきです。

団体交渉において議事録は作成すべきか?

団体交渉の内容を記録に残す方法は、いくつか考えられます。正確な記録のために、録音をして記録に残すことも大切ですが、通常、理路整然と話をすることは困難です。そのため、後から聞き返しても、話の内容を掴めないということが起こり得ます。また、話合いが長時間に及ぶと、録音を聞き返すことは容易ではありません。

そのため、録音だけでなく、議事録を作成して、団体交渉の内容をまとめておくのが良いといえます。

議事録の作成目的

上記のとおり、議事録は、備忘録としての役割を果たしますが、議事録を作成する目的は、それだけにとどまりません。議事録は、何らかの問題が起きた際の証拠にもなります。備忘録や証拠として使用できるように議事録を作るべきといえます。

議事録に記載する内容

上記のとおり、議事録は備忘録としての役割と、証拠としての役割があります。いつ、誰が、どのような内容を話したかという記録を残すべきですので、議事録には、日時、参加者、協議内容を記載するのが良いでしょう。

また、次回の団体交渉までに検討すべき事項が設定されることもあります。その際には、検討事項の記録も残しておくのがよいといえます。

議事録へのサインについて

労働組合から、作成をした議事録にサインを求められることがあります。しかし、正確ではない議事録にサインをしてしまうと事実と異なる協議がなされたという証拠になってしまいます。また、場合によっては、議事録にサインしたことで労使協定が成立してしまうこともあります。

そのため、いくら議事録という表題になっているとしても、安易にサインをしてはなりません。サインをしなければならないとしても、慎重に検討をした上で、行うようにしましょう。

団体交渉の内容を録音・録画する必要性と注意点

議事録によって、団体交渉の協議の内容等を記録に残すことができますが、一言一句間違いのない記録を付けることは不可能です。正確な記録を残すために、議事録を付けるとともに、録音等も残しておくのがよいといえます。

録音をする際には、「録音します」などと、一言、断ってから録音を開始するのが良いでしょう。また、録音機器は、机上に置いて録音するのがよいと考えられます。机上の方がクリアに録音できる上、乱暴な発言も抑止できる効果を期待できます。

団体交渉の記録が争点となった判例

ここでは、団体交渉に関する議事録の信用性が否定された事例を紹介します。

事件の概要

議事録に関する部分に絞って記載をします。組合と被告(医療法人)とが団体交渉をしていたところ、当時、録音しないことが合意されていました。そして、第2回の団体交渉において、組合は議事録を作成したものの、被告には、内容の確認を求めておらず、労使双方の確認を得た議事録は作成されていないという状況でした。

このような状況において、原告は、第2回の団体交渉において、「過半数代表の選出に管理監督者である事務長が関与しないように求めたのに対し、被告が無理である旨の回答をした」との主張をし、団体交渉時の議事録が証拠の一つとして使用されていました。他方で、被告は、「事務長に関する要求はなかった」との主張を行っていました。

裁判所の判断(令和2年(ワ)第32845号・東京地方裁判所・判決)

裁判所は、「本件組合の作成した議事録は、被告の確認を経ていないものであるから…、その内容が交渉内容を正確に反映したものであるとまでは認め難い。また、第2回団体交渉は、録音がされていなかった…。そうすると、本件組合が具体的にいかなる要求をし、被告がこれにいかなる回答したのかについては判然としないといわざるを得ないから、本件組合が同団体交渉において過半数代表者の選出に事務長が関与しないよう求めたのに対し、被告が無理である旨回答した事実については、これを認めことはできない。」とし、議事録を証拠として、原告の主張を認定することは出来ない旨の判断を下しました。

ポイント・解説

裁判所は、被告の確認を経ていないことを理由として、議事録が交渉内容を正確に反映したとまでは認めがたいとの判断を下しています。当然ですが、議事録を片方のみで作成した場合、内容を自由に記載することができます。そのため、自ずと、議事録の信用性は落ちることとなります。

今回は、録音しないとの合意がなされており、議事録を裏付ける証拠もない状況でした。このような場合において、一方が議事録を作成したときは、他方の確認を得ておくのがよいと考えられます。

よくある質問

以下では、よくある質問にご回答します。

団体交渉における議事録の作成について、法的義務はあるのでしょうか?

団体交渉において議事録を作成すべき法的義務はありません。もっとも、議事録は、備忘録としても、証拠としても、重要な役割を果たすと考えられます。そのため、法的義務がないとしても、議事録を作成しておいた方が良いでしょう。

労働組合側から録音・録画の要求があった場合、会社側も録音・録画すべきでしょうか?

労働組合側から録音・録画の要求があった場合には、会社側も録音・録画をしておいた方が良いでしょう。録音・録画に関しては、後から一部を切り取られて証拠として利用される可能性があります。そのような場合に、会社側にも録音・録画があれば、提出されていない部分を証拠として提出することができます。
労働組合側から録音・録画が求められた場合には、会社側においても録音・録画をしておくべきでしょう。

団体交渉時の内容を無断で録音することは違法ですか?

録音は、団体交渉の場で話をしたことを記録に残す行為です。団体交渉の場で話をした内容は、その相手には、伝わっており、録音は、その内容を記録に残すだけであるため、無断で録音をしたとしても、直ちに違法とはいい難いところです。
もっとも、秘密で録音をしたことがトラブルの原因になりかねません。そのため、断りを入れてから録音をすべきでしょう。

労働組合側の録画で、会社側にだけカメラを向けられることは問題ないのでしょうか?

録画をすべき義務も、録画を禁止する義務もありませんので、どのように録画をするかは自由といえます。そのため、会社側にだけカメラを向けられるということが直ちに問題とは考え難いところです。
もっとも、会社側にだけカメラが向けられている場合、労働組合の行動などを記録に残すことはできません。双方が映るようにカメラの向きを調整するよう申し入れたり、会社側でも、録画するなどして対応をした方がよいといえます。

録音・録画した団体交渉の内容は、文章に起こして保管しておいた方が良いですか?

裁判において、録音・録画を証拠として使用する場合、その内容を反訳して提出する必要があります。この点から考えると、録音・録画の内容を文章に起こしておいた方がよいと言えます。
もっとも、実際に裁判になった際に、反訳をするということでも問題はありません。そのため、無理に、文章に起こす必要はないといえます。

労働組合から団体交渉時の録音・録画を求められました。拒否すると不当労働行為にあたりますか?

団体交渉において、必ずしても、録音等は必要ではなく、これを拒否したというだけで、直ちに不当労働行為に当たるとは考えられません。ただし、会社側が、録音等を理由として、団体交渉自体を拒否した場合には、不当労働行為に当たると考えられます。
録音等によって、団体交渉の内容を記録に残すことができるというメリットもありますので、双方が録音等をする形で団体交渉を実施するのがよいと考えられます。

労働組合が作成した議事録にサインをしてしまいました。後から取り消すことはできますか?

原則として、一度、サインしたものを後から取り消すことはできません。場合によっては、議事録が労使協定になるということもありますので、サインをする場合には、慎重に行うべきです。

議事録の内容を、会社の顧問弁護士に開示しても問題ないですか?

議事録の内容を、会社の顧問弁護士に開示することは問題ありません。弁護士は、代理人として、団体交渉に参加することも可能であり、議事録の記録があれば、これまでの団体交渉の結果を踏まえて対応を考えることも可能となります。弁護士に相談する際には、議事録の内容を見せた方が良いでしょう。

労働組合側の暴言・脅迫行為を録音することができれば、団体交渉を打ち切ることは可能ですか?

確かに、暴言・脅迫行為があった場合には、団体交渉を打ち切る理由になり得ます。ただし、団体交渉の打ち切りが認められるためには、暴言・脅迫行為が継続する見込みが高いことが必要となります。まずは、暴言・脅迫行為を止めるように伝え、それでも暴言・脅迫行為が続く場合に、団体交渉を打ち切ることを検討しましょう。
なお、暴言・脅迫行為があった場合、一旦、冷静になる時間を設けるということは問題ないと考えられます。冷静に話が出来そうにないときは、休憩時間を設けたり、後日、話をするなどの対応を取ることが考えられます。

団体交渉時の録音データを改ざんした場合、会社はどのような責任を問われますか?

例えば、裁判において、録音データを改善して、証拠として提出した場合、違法な行為として損害賠償義務が課される可能性があります。また、改ざんが発覚した場合、その録音データの証拠能力は否定されます。加えて、仮に、改ざんデータで勝訴判決を得て、それが確定したとしても、後々、改ざんしたことが発覚すれば、その裁判がひっくり返る可能性もあります。

議事録は、労働組合側と使用者側で別々に作成すべきでしょうか?

労働組合側と使用者側とで一緒に議事録を作成できれば、より信用性が高い議事録を作成することができます。しかし、議事録の内容に関して意見の対立が生じる可能性もあります。また、双方が議事録にサインをすると、労使協定が成立したと判断される可能性もあります。そのため、労働組合側と使用者側で別々に議事録を作成した方がよいと考えられます。

団体交渉の記録で不備が無いよう、人事労務を得意とする弁護士がサポートさせて頂きます。

ここでは、団体交渉に関する記録についてご説明しました。団体交渉の記録は、備忘録としても、証拠としても重要なものです。長期間にわたる団体交渉において、重要なものであり、記録に不備がある場合、後々、証拠として使用できないということも起こり得ます。
弁護士法人ALG&Associatesは、人事労務に関して、多数の経験を有しています。お困りのことがありましたら、ぜひご相談ください。

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団体交渉でやってはいけない対応団体交渉の協議事項・内容団体交渉の進め方団体交渉を申し入れられた場合の初動対応団体交渉で弁護士を入れることのメリット

団体交渉には専門的な知識と経験が必要

団体交渉は、従業員の雇用関係について生じた問題や、労使関係の規律について、労働組合と協議することになります。取決めについては、労働基準法、労働契約法等の労働関係法規で認められた範囲内で行うことが必要となるため、協議の前提として労働関係法規の知識が必要となります。

また、労働関係法規の知識を前提として、労働条件について交渉することになります。交渉は、経験により差がつきますので、団体交渉の場で交渉をするのは、団体交渉の経験のある者が対応することをお勧めします。

有利に進めるには弁護士の関与が不可欠

上記のとおり、団体交渉をするにあたっては、労働関係法規の知識と団体交渉での交渉経験が必要となります。そして、これらを備えた上で、提案された条件が会社にとって有利であるのかどうかの判断は、とても難しいものです。
弁護士であれば、知識、経験及び経験に基づく条件の有利不利の判断をすることも可能であるため、団体交渉においては弁護士の存在が不可欠と言えるでしょう。

団体交渉における弁護士の役割

団体交渉にあたっては、交渉の窓口として立つ以外にも、交渉方針を定める際、協議の成立時の法的助言をすることにあります。

団体交渉で弁護士に依頼することのメリット

団体交渉で弁護士に依頼することのメリットを以下具体的に説明いたします。

経験に基づく交渉戦略の立案

通常の交渉は、「交渉に応じない」という選択肢がありますが、団体交渉においては、会社に誠実交渉義務が課せられているため、「交渉に応じない」という選択肢をとることは出来ません。
そのため、交渉の結果、協議が成立するかどうかは別として、交渉に応じることが必要になります。交渉に応じることと、相手方(労働組合)の要求をすべて受け入れることは別問題です。

したがって、交渉に応じるにあたって、相手方の要求をどの程度受け入れるのか、受け入れないのか、こちらから条件を提示するのか、どのよう条件を提示するのか等どのように交渉を進めるかという交渉戦略を立てることが必要となります。
弁護士であれば、それまでの経験から、会社と打ち合わせの上、適切な交渉戦略を立てることが可能となるでしょう。

迅速な対応と最良な解決策の提案

団体交渉は、通常労働組合から開催、日程等の申入れを受けます。日程については、会社の担当者の予定もありますので、調整を申し入れることは可能ですが、あまり先の日程にすることは、事実上団体交渉を拒否していると主張される可能性があります。

そのため、団体交渉を申し入れられた場合には、迅速に準備を整えて対応することが必要になります。
弁護士が関与していれば、迅速に準備を整えて団体交渉に臨むことも可能となります。

事態の悪化・会社の不利益を防ぐ

特に従業員の解雇や残業代の請求をされている場合には、団体交渉で協議が成立せず、労働審判や訴訟手続に移行してしまった場合、未払賃金が嵩んだり、残業代に付加金が追加されたりする可能性があり、団体交渉の時点で解決した方が会社の不利益を最小限にできる場合があります。
弁護士であれば、団体交渉のその後の手続に進むことによるメリット・デメリットを助言することも可能です。

弁護士が味方につくことで冷静な話し合いができる

当事者同士の交渉は、どうしても客観的に判断をすることが難しく、感情的になってしまいがちです。これは、会社対労働組合という組織同士の交渉であったとしても、交渉にあたるのが人間同士である以上同様です。
弁護士であれば、感情的対立の無い第三者として、冷静な話し合いをすることができます。 

交渉中止や和解の落としどころを判断できる

団体交渉は、会社には交渉に誠実に応じる義務があるものの、労働組合の要求を全て受け入れることを求められているわけではありません。そのため、誠実に交渉した結果、交渉が成立しないと判断できる場合には、交渉決裂として、団体交渉を終了させることも可能です。

もっとも、会社側が誠実に交渉したと思っていても、労働組合側が会社の誠実交渉義務を尽くしていないと主張する可能性、上記のとおり、交渉を決裂させた結果、かえって会社に不利益が生じる可能性等考えられます。
このような可能性をできるだけ避けるため、弁護士を関与させれば、合理的な交渉の終了時期、交渉の落としどころを判断することができます。

労務トラブルを未然に防ぐ体制づくりをサポートするためにも顧問契約の締結を

上記のとおり、団体交渉をするにあたり、弁護士を関与させることにはメリットがあります。
しかし、本来は、労働組合から団体交渉の申入れを受ける前に問題を解決する、そもそも問題を発生させないということが望ましい形です。

そのためには、日常的に弁護士に相談し、労務トラブルが発生しにくい体制を作っていく、問題が発生した場合には、早期に対応をするといった形をとるために、弁護士と顧問契約を締結し、日ごろからすぐに弁護士に相談できる体制を作ることが有用であると考えます。

団体交渉に関するQ&A

団体交渉に関してよくあるご質問について以下お答えいたします。

団体交渉を申し入れられた場合、会社は必ず応じる必要があるのでしょうか?

会社は、労働組合からの団体交渉の申入れに対して、法的に誠実に対応する義務が課されています(労働組合法第7条第2号)。そのため、正当な理由なく団体交渉を拒否することは出来ません。
もっとも、どのような内容の団体交渉の申入れにも上記のような義務が生じるものではありません。
内容によっては、団体交渉に応じなくとも問題ない場合がありますので、労働組合の要求を正確に把握し、弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

恫喝まがいの団体交渉を受けたとき、弁護士に対応してもらうことは可能ですか?

恫喝等をするような相手方の請求は、正当なものである可能性は低いため、弁護士を入れて交渉をすべきと考えます。

団体交渉が裁判に発展した場合、弁護士に代理人として出廷してもらうことは可能ですか?

裁判に発展した場合、会社が直接対応する以外、第三者に代理人にしてもらう場合には、弁護士であることが必要となります。
むしろ、司法書士、社会保険労務士、会計士などでは、裁判の代理人になってもらうことは出来ないのでご注意ください。                       

団体交渉申入書の回答書の作成方法についてもアドバイスして頂けますか?

申入れ書に対する回答の内容はもちろん、交渉場所、交渉事項の選別等の判断は、その後の交渉の流れに影響します。そのため、初動の段階で弁護士に相談して、対応をすることをお勧めします。

団体交渉を弁護士に依頼した場合、解決までの期間はどれくらいかかりますか?

団体交渉は、期間に制限があるわけではありません。そのため、交渉の状況によって長期にも短期にもなります。短期であれば1か月から2か月程度、場合によっては半年以上かかる場合もあります。

弁護士に依頼することで、団体交渉による不当労働行為を回避することは可能ですか?

上記のとおり、会社は団体交渉において不当労働行為(労働組合法7条2項)に該当する行為をしないように注意することが必要となります。団体交渉の申入れを受けた段階だけではなく、交渉の終了する段階でも注意をする必要があります。 どのような場合に不当労働行為に当たるのか否か微妙な判断をするためには弁護士にご依頼いただくことが有用です。

弁護士に団体交渉を代理出席してもらった場合、社長本人の出席は必要ですか?

団体交渉に社長本人が出席することは必須ではありません。
社長がいれば、団体交渉において検討な必要について、その場で決定することができるかもしれませんが、その場ですぐに決定してしまうことが交渉経過として適切とは限りません。戦略上出席するか否かは、交渉を担当する弁護士と相談する必要があります。

労働者側の交渉担当者についても、弁護士が担当することがあるのでしょうか?

労働組合も弁護士に依頼して、弁護士に交渉を担当することは可能です。そのため、労働者側(労働組合側)の交渉担当者が弁護士であることも十分あり得ます。

弁護士と顧問契約した場合、就業規則の整備についても相談することは可能ですか?

弁護士は、団体交渉に限らず、日常の労務相談や就業規則の作成・改定等の依頼をすることは可能です。

団体交渉のトラブルは深刻化する恐れがあります。早期解決のためにも弁護士に依頼することをお勧めします。

上記のとおり、団体交渉には知識や交渉経験が必要となり、現場での微妙な判断が必要となることもあります。対応を間違えると、会社にとって不利益になったり、紛争が悪化してしまう可能性があります。
そのような事になることを防ぐために、団体交渉を申し入れられた場合には、弁護士に依頼することを強くお勧めいたします。