

「デビュー10周年に際し、2024年3月に幕張メッセでライブする夢もかなえ、バンドとして一つの完成形を見たこと。そして、今回がレーベル移籍第1弾アルバムであることを踏まえ、今の自分、10年前の自分と対峙するような作品を作りました」。過去と現在を見据え、バンドの歩みを未来へと進めるアルバム『Lab.』について、go!go!vanillasの牧達弥(Vo/G)はApple Musicに語る。ロンドンの名門スタジオMetropolis Studiosで録音され、小森雅仁、浦本雅史、渡辺省二郎ら、日本有数のエンジニアたちを迎えた本作は、“対峙”という言葉がふさわしいクリエイティブなエネルギーが濃密に渦巻いている。 今回『Lab.』と書いて「ラブ」と読むタイトルを付けた理由について、牧は振り返る。「研究者のような追究の精神と好奇心を持って作品を作り上げていく中で、頭の中に浮かんだ光景や制作の姿勢が研究室(Laboratory)での出来事のようなイメージだったのと、ダブルミーニングで音楽やファンへの愛を意味する“Love”も込めています」。ルーツであるロックンロールをモダナイズする多彩なアイデアと、バンドの進化の原動力である愛がほとばしる本アルバムについて、ここからはメンバー4人に楽曲を解説してもらおう。 Lab. 牧達弥(Vo/G):歌詞がない分、いろいろな音を混ぜてまさに研究しているようなメッセージを感じてほしいです。 HIBITANTAN 柳沢進太郎(G):「移り変わっていく音を切らないでほしい」という牧さんのオーダーを受けた1サビのコード弾きのパートが特に難しかった。ぜひ聴いてください。 クロスロオオオード 柳沢:この曲は自分の一番のお気に入りです。ブルースっぽい前半から、後半は自分の得意なフレーズでかなり攻めることができた。まさに「おいらのギターは天下一」という歌詞通りになりました。 来来来 牧:ライブが立て込んでいた2024年の夏前、作品の全体像も考えている中、北海道にある芸森スタジオにこもって制作に集中している時に、この曲のアイデアが降ってきました。思い出深い一曲です。 SHAKE ジェットセイヤ(Dr):この曲はベースとドラムがすごくフィーチャーされていて、ニュアンスや強弱を変化させながら曲の情緒を演奏するのが難しかった。過去10年と比べると、ロンドンで作った「SHAKE」以降、リズム隊を基軸にレコーディングやミックスにおける音作りのアプローチを変えて挑めるようになったと思います。録音したロンドンのMetropolis Studiosは初めて来た気がしない温かさがあるスタジオで、そこで全曲マスタリングしているのも今回のアルバムの素晴らしさにつながっているように思います。 Leyline 牧:アルバム制作の最初の方に録ったのですが、恐らく今後バニラズにとってのバラードはこの曲になるなと感じ、後で聴いてもちゃんと最新の自分を超えられるように、抑揚や表情も含め魂を込めて歌いました。ロンドンのプレイヤーが演奏してくれたストリングスもぜひ聴いてほしいです。 Super Star Child セイヤ:アルバムで自分が最も気に入っている曲です。今回、研究するようにいろんなことを試してきましたが、シンプルな8ビードで駆け抜ける感じ、そこから生まれる哀愁がすごく好きです。普通の8ビートと入れるところが異なるバスドラムのパターンにも注目してください。 Moonshine 長谷川プリティ敬祐(B):自分のお気に入りは2サビ前の決めです。抑揚が大きいので何回録っても自分の感情が2サビに乗ってきていると感じていました。この曲の歌詞は感覚的でありつつ、豊かな物語があって、アルバム最後の曲にふさわしく「死ぬまでやろう」というフレーズが感極まるように出てくるのが好きです。 牧:「エンドロールを奪って終いたくて」という歌詞には、毎回終わりを作りたくないという思いが表れています。10年前と同じ感覚でありながら新たな旅立ちとなる、バニラズ第1章のクライマックスとしてこの楽曲を最後に持ってきました。