Lewis Taylor『Lewis Taylor』

 

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 イギリスのアーティストの、セルフタイトルのデビュー作(96年)。9月にピッチでSunday Reviewにて取り上げられていたのがきっかけで聴きました。1月にディアンジェロがラジオ番組にて本作の日本盤ボーナストラック「I Dream the Better Dream」を流したこと、8月にイギリスのBe With Recordsが本作をレコードでリイシューしたこと、極めつけとして6月にインスタでアーティスト本人から「年内に新作出るかも!?」という投稿があったようで、今年はなんというかLewis Taylorの流れがあったようです。

 

 ぶっちゃけめちゃくちゃ良い作品です。リッチな質感の夜向けネオソウル(ネオソウルはだいたい夜向けか…?)。これは感覚的なもので伝わるかわからないんですけど、"黒い"というよりは"暗い"サウンド、音響です。なにに由来するものなのかうまく言語化できてないんですけど、これがツイートに書いた「トリップホップみたいな」という表現に繋がってます、自分の中で。

 

 一番の特徴は超ドラマティックなソングライティング。リードトラックである「Bittersweet」が典型ですけど、普通にヴァース・コーラスを繰り返した後に、楽曲の終盤に「キメの大サビ」とでも言うか、それまでの流れをすべてひっくり返すような感動的なパートがね、あるんですよ…。伝わる人には伝わると思うんですけど、例えるなら七尾旅人「コナツ最後の日々。」または「「思いつき!思いつき!!」 なに? 「キャトル・ミューティれるの。」」みたいな感じです(改めてすごい曲名だ…)(ぜひ聴き比べてみてください)。

 

 アルバムは最初から名曲が続く。「Lucky」はジェフ・バックリィの「Grace」と構造が似ています。Bittersweetの感動的なラストパートの勢いのまま突っ込む「Whoever」は作中で一番キャッチーな曲かも。曲構造も比較的シンプルです(といっても最後はやはりドラマティックに転調して終わるのですが)。4曲目「Track」もBittersweet的なドラマティックな構造。なんかこう連発されると感覚がマヒしてきますが、ハチャメチャな構成力がなきゃこんな曲は作れないと思います。続く「Song」もすごい入り組んだ、ドラマティックな曲です。ここまでくるともう無敵だなという感じ。#8「Right」は珍しくレイドバックした風味の曲でリラックスできる。

 

 

 

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 そしてお気に入り最後の曲#9「Damn」がまたすごい…。マクロな構造はそんな特筆することもない…こともないか、6分のうち後半の3分ほどは「曲の終わり」というよりは「アルバムの終わり」を演出するためのパートで、ループしながらどんどん盛り上がっていくのですが、そこは個人的な本題じゃないので置いといて。コーラス部分のコードの流れ・響き、メロディーの絡みが、もう単純に「今まで聴いたことがない」。なんだこれ?という。非常に不思議かつスウィートな感覚があります。ぶっちゃけ何が起こってるのかよくわからないので誰かに分析してほしい(似たような曲があったらそれも教えてほしい)。主要なメロディーもエレピとバックコーラスと本人のボーカルがうねうねと絡まっていて、それらを追っているうちによくわからーん、けど気持ちいい~~~となる。個人的には不思議感なら「左腕◇ポエジー」とかザッパの「Little Umbrellas」「It Must Be  A Camel」とかが通じてる……ような気がしないこともないみたいな感じなんですが。

 

 振り切れた楽曲構成力が堪能できる名盤だと思います。普通にJeff Buckley『Grace』と同じくらい評価されるべきな気がする。めちゃ濃いのでなかなか気が重いけど他のアルバムも聴こうな。何も考えずに書いてますがここまで書くなら記事単発で上げればとか思う。