2006年夏休み映画特集 ~第二次惑星開発委員会 2006-08-27T21:26:09+09:00 wakusei2ndmovie 第二次惑星開発委員会(http://www.geocities.jp/wakusei2nd/)による2005年夏休み映画特集ブログ Excite Blog 日本沈没 http://movie2nd.exblog.jp/4057926/ 2006-08-27T21:31:45+09:00 2006-08-27T21:26:09+09:00 2006-08-27T21:26:09+09:00 wakusei2ndmovie 日本沈没 <![CDATA[
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 小松左京の同名ベストセラー小説を映画化した1973年作品『日本沈没』を、『ローレライ』で長編監督デビューを果たした樋口真嗣が現代にリメイク。主演はSMAPの草なぎ剛と柴咲コウ。

【転叫院】 天変地異のインフレが下手糞  ★★★★ (4点)

 ご存知のように日本が沈没していく話であるわけですが、起こる天変地異のインパクトをインフレさせていくのが上手く行っていないと感じました。昔の岡田斗司夫なんかはパニック映画をジェットコースターの喩えで説明していたと思うんですが、後半のジェットコースターがそんなに凄くないんですね。前半のシーンのほうがエキサイティングに描かれていたと思います。冒頭で既に火山が溶岩噴出してます。前半のコンピュータシミュレーションの画面に出てくる「日本の近い未来の姿」なんて、その後の現実の映像以上に悲惨さのインパクトがありますし。最後の落としどころがあの結末であっても、そこに至るまでには、伏線を上回る天変地異を出さなきゃいけない。例えばだけれど(あくまで素人考えですよ)、予測にミスか何かがあって東京の人が避難する前に大地震が起こってしまうような場面に持って行っても、パニック映画としては十分アリでしょう?
 そこで、リアリズム同士の整合性、ということについて考えさせられました。たぶん、本作には三つのリアリズムがあって、政治的リアリズムとメロドラマ的リアリズムと、それにパニック映画的リアリズムが関係していると思うんです。で、このうち二つを両立させるのはよくあると思うのですが、三つとも一度にやろうとして、特に後半で政治的リアリズムが妙に絡んできちゃうせいで、パニックの強度が尻すぼみになってしまったのではないか、ということを思いました。]]>
笑う大天使 http://movie2nd.exblog.jp/4048456/ 2006-08-25T23:10:00+09:00 2006-08-25T23:12:22+09:00 2006-08-25T23:10:08+09:00 wakusei2ndmovie 笑う大天使 <![CDATA[ 
 川原泉の同名人気コミックを映画化した青春コメディ。超名門お嬢様学校“聖ミカエル学園”を舞台に、3人の“猫かぶりお嬢様”が繰りひろげる騒動をCGやワイヤーアクションを駆使して描く。監督はTVドラマ「ごくせん」などのVFXを手がけ、本作が長編初監督となる小田一生。
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【善良な市民】 稚拙な演出と愛すべきバカ路線 ★★★★★ (5点) 
 川原泉のファンが観に行くとあらゆる意味でブチ壊しなので、オススメしないが、B級お馬鹿映画としては値段分楽しめる作品。後半に向かうにつれ、スタッフがいい意味で悪ノリして、楽しんで作っているのが伝わってくる。ただ、所々どうしようもなくギャグを外している辛さは拭えないし、特技出身らしい監督の演出は基本的な部分で力不足を感じさせる。特に絵の粗さは致命的で、これはなんだかんだ言っても売り出し中の女の子がゾロゾロ出てくる準アイドル映画なんだから、もう少し綺麗に撮ってあげないとあまりに可哀想。総評を述べれば「気持ちよく笑って楽しめるバカ映画だが、作りが粗いので原作&特定の女の子ファンは避けたほうが無難」と言ったところだろうか。今回取り上げた中では(完成度はともかく)いちばん後味が良かった作品ではある。]]>
ハチミツとクローバー http://movie2nd.exblog.jp/4019047/ 2006-08-20T15:50:00+09:00 2006-08-20T15:51:17+09:00 2006-08-20T15:50:49+09:00 wakusei2ndmovie ハチミツとクローバー <![CDATA[
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 幅広い世代の支持を得る、羽海野チカの同名コミックを映画化した青春ラブストーリー。美大に通う男女5人を中心に、甘酸っぱい恋と青春の物語が展開する。主人公・竹本を演じるのは人気グループ「嵐」の櫻井翔。そのほか、『雪に願うこと』の伊勢谷友介、『花とアリス』の蒼井優、『花よりもなほ』の加瀬亮、『八月のクリスマス』の関めぐみがメインキャストに名を連ねている。スピッツとスガシカオがそれぞれ書き下ろした主題歌とエンディング曲も話題。

【善良な市民】 自意識が邪魔して大塚愛が聴けない人に ★★★★★ (5点) 
 『東京フレンズ』をすこしいじけた人向けに絞り込むとこの映画になる。「アーティストの自分探し=ニューヨーク」の等式が共通していることからも明らかなように、マーケティングが違うだけでこの二つの映画に本質的な差はない(まあ、マーケティングこそ本質かもしれないけど)。
 原作の味噌は「恥ずかしい青春語り」を、どうオシャレに見せるかというところにあって、大抵の作り手はそこにノスタルジィを代入して切り抜ける。この原作の場合、「この程度なら自分でも手が届きそうな」ヌル目のポップさと、やや抑え気味のアーティスト幻想をぶち込んでなんとかごまかしているわけだが、この映画版ではどうも配分に失敗したらしく後者が見事に足を引っ張っている。「ホンモノの才能がある人は違うよね」といった部分が目立つことで、随分とすっきりしない話になってしまった感は否めない。役者陣は概ね好演しているが、一部大学生には見えない老け方をしている人がいたのが残念(笑)。]]>
東京フレンズ http://movie2nd.exblog.jp/4019041/ 2006-08-20T15:49:00+09:00 2006-08-20T15:49:49+09:00 2006-08-20T15:49:03+09:00 wakusei2ndmovie 東京フレンズ <![CDATA[
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 シンガーソングライター(笑)としてカリスマ的な人気を誇る大塚愛が初主演を果たし、2005年に発売され大ヒットとなったオリジナルDVDドラマ「東京フレンズ」を映画化した青春ラブストーリー。「東京ラブストーリー」「ロングバケーション」など数々の高視聴率TVドラマを手がけた永山耕三が監督を務める。

【善良な市民】 「エイベックス魂」を吹き込む洗脳映画 ★★★★★ (5点)
 まるで大塚英志のレッスンを真に受けたような、あまりにもひねりのない(そして類型的な)ストーリーのおかげで、ビデオ版をまったく見ていない人間でも完全に内容を把握できるところがいろんな意味ですごい(笑)。プロットのみならず、ありとあらゆるセンスが徹底して通俗的(例:アーティスト崩れの自分探し=ニューヨーク)なので、「次はたぶんこうなるんだろうな」という予測はまず裏切られない。現代日本人(10代後半~30代)の最小公倍数的な想像力の見本として、非常に安心して観られる作品と言える(笑)。
 少し真面目に解説するなら(笑)、この映画のすべては武道館で山本耕司がヒロインの大塚愛に説教するシーンが物語っている。山本(業界では有名なFM局ディレクター)は、このシーンで大塚に、自己実現や自分探し、あるいはあくまで個人的な趣味として音楽を続けていくのはただの自己満足で、結局どんな音楽も伝わらなければ(売らなければ)意味がないのだ、みたいなことを言う。これは要するにこの映画の事実上の制作元であるエイベックスのポリシーそのものであり、つまるところ「田舎でバンドごっこやって満足している奴は負け組、とっとと上京して俺たちに搾取されろ!」というのがこの映画のメッセージなのだ(笑)。
 とりあえず、「エイベックス商法」の分析に興味がない人は観に行かなくていい映画だと思うが、恐るべきことに『ゲド戦記』よりは面白かった

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ゆれる http://movie2nd.exblog.jp/4019032/ 2006-08-20T15:47:18+09:00 2006-08-20T15:47:18+09:00 2006-08-20T15:47:18+09:00 wakusei2ndmovie ゆれる <![CDATA[
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 『蛇イチゴ』の西川美和監督が兄弟を主人公に、家族のきずなや絶望からの再生を描くシリアスドラマ。旧知の女性が転落死したことをきっかけに、法廷で裁判にかけられる兄と弟の姿を見つめる。

【善良な市民】 今年上半期屈指の良作 ★★★★★ ★★ (7点) 
 今年劇場で観た映画(30本ちょい)の中ではこれと「時かけ」が双璧。ドリカム状態(男二人は兄弟)が炸裂したサークルクラッシュ(殺人事件?)の真相と、互いにコンプレックスを抱く兄弟の葛藤を重ね合わせ、地味ながらも緊迫感のある演出で観ている人間を画面に釘付けにする。代わり映えしない「いつものオダギリ演技」をこなしているだけなのに、ピッタリとハマっている弟(オダギリジョー)と、中年非モテ男子の哀しみをそれっぽいアイテム(「オタクである」とか、「露骨に見た目が悪い」とか)抜きで表現しきっている兄(香川照之)のふたりが素晴らしい。「イマドキ」「リアリズムで」「地味な話をしっかり見せる」というシネフィル臭いひねくれ方をした企画ではあるのだが、同時にこれは実力のあるスタッフではないとできないひねくれ方でもある。オダギリ萌え映画と断じるのは早計。]]>
初恋 http://movie2nd.exblog.jp/4019028/ 2006-08-20T15:46:02+09:00 2006-08-20T15:46:02+09:00 2006-08-20T15:46:02+09:00 wakusei2ndmovie 初恋 <![CDATA[
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 日本犯罪史上最大のミステリーと言われる府中三億円強奪事件を題材に、中原みすずの同名原作を映画化した異色のラブサスペンス。実行犯が18歳の女子高生という大胆不敵な設定の中、迷宮入りとなった事件の真相を主人公自らが語り明かす。主演は原作を読んでヒロイン役を熱望した宮崎あおい。

【善良な市民】 ★★★★(4点)  全共闘的ナルシシズム全開の少女趣味 
 素材はすごく面白いのに展開が安直で雑。60年代末の最限度も決して高くはないのが残念。しかし最大の問題点は宮崎あおい演じるセーラー服少女に、全共闘的ナルシシズムを救済させようというこの絶望的なオヤジセンスでしょう(笑)。エンディングが「元ちとせ」というヌルさが象徴的ですね。こういう甘ったるい話、嫌いじゃないんだけど、冷静に評価しろと言われるとここを看過するわけにはいかない。言ってみればこれは中年向けのセカイ系のようなもので、宮崎あおいを安部吉俊のアニメ美少女に変えてアニメ化すれば、その手のファンが群がるんじゃないでしょうか(笑)。藤原伊織の小説を読んで気持ち良くなれる男性にはオススメ。

【河村信】 ★★★★★ ★★ (7点) かつての「青春映画」そのまま 
 韓国映画を分析して、現代ではありえない設定を「昔」を材料に上手く処理しています。バイクを練習する所、当日、何度もリハーサルしたのに、その通りにいかず、めげずに頑張ると上手くいってしまう所も、かつての「青春映画」そのままです。というわけで、本作は角川映画みたいなノリで楽しみましょう。出版メディアの風雲児だった角川春樹とUSENの宇野康秀の対比を考えてみるのも面白いかもしれません(二人とも二代目だし)。
 映像的には、病院の廊下で主人公の母親を写さないシーン。あと、屋外の階段で寄り添う二人を背後から撮った、やや長めのショットがあります。元ちとせの主題歌同様、何時でるか、見逃さないようにして下さい。

【くろばく】 ★★★★ (4点) ヒロインの魅力不足?
 いい話だと思うし、やりようによっては面白くなりそうな題材なのに、しっかり外している。荒唐無稽ながらも、舞台は60年代後半の現実の日本であり、スタッフは車やら衣装やらロケーションやらと、当時の再現に努めているのだが、どんなに頑張っても表面的になぞっているだけという感じは免れていない。そういう外面よりも、むしろ登場人物のドラマに力を入れるべきだが、新宿のバーに集まったメンツの強い絆が描かれているかというとそうではなく、キャラクターそれぞれの立たせ方も弱い。何よりも宮崎あおいが三億円強奪を決行するに至る心理がも一つ弱い気がした。はっきり言って、彼女のキャラクターには何の魅力も感じられなかった。

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轟轟戦隊ボウケンジャー THE MOVIE 最強のプレシャス http://movie2nd.exblog.jp/3963441/ 2006-08-10T00:51:00+09:00 2006-08-10T00:51:51+09:00 2006-08-10T00:51:27+09:00 wakusei2ndmovie ボウケンジャー <![CDATA[
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 ボウケンレッドを中心に、“プレシャス”と呼ばれる危険な秘宝を守り抜くため組織された秘密チーム“ボウケンジャー”の活躍を描く戦隊シリーズ30作目「轟轟戦隊ボウケンジャー」の劇場版。突如、街中に出現した巨大な岩山。そこに佇む謎の美少女、ミューズ。彼女は世界に向けて、メッセージを投げかける。「強き方よ、古代の素晴らしい宝を受け継いでください。私たちの文明の遺産…プレシャス」。ボウケンジャーたち、ネガティブ・シンジケート、そして、伝説のUMA(未確認生物)ハンター・明石虹一。彼らは一斉に岩山を目指し動き出す…。


【善良な市民】 ★★★★★ ★★ (7点)  會川昇なりの「響鬼」への返歌?

 毎回無難なつくりで楽しませてくれる夏の戦隊映画。今回もひねりはないがファン必見の番外編としてっよくまとまっている。レッドとその父親の関係というテーマから考えて、本作はたぶん会川昇なりの「響鬼」への回答なのだろう。個人的には、最後まで自分の手元に置いて可愛がるヒビキさんより、独り立ちさせるために突き放すレッド父の方が好ましく映るが、みなさんはどうだろうか?
 ……なんてことを考えなくても、いつもより大画面、大予算、大キャストでたっぷりと楽しめるアクション活劇として満点の出来。TVシリーズと同尺の番外編なのでこれを観に劇場へ行くのはさすがにもったいないかもしれないが、かなり良く出来ているので何かの機会にチェックしておくといいと思う。

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劇場版 仮面ライダーカブト GOD SPEED LOVE http://movie2nd.exblog.jp/3963434/ 2006-08-10T00:50:25+09:00 2006-08-10T00:50:25+09:00 2006-08-10T00:50:25+09:00 wakusei2ndmovie 仮面ライダーカブト <![CDATA[
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 隕石(いんせき)の衝突により地球消滅の危機が迫る中、仮面ライダーカブトが悪に立ち向かう。監督はテレビシリーズ同様石田秀範が務め、ヒーロー役はおなじみの水嶋ヒロがふんする。シリーズ初となる宇宙での戦闘シーンや、謎に包まれた“黄金の仮面ライダー”の出現など、見どころ満載。



【善良な市民】 ★★★★(4点)  アクションシーンが物足りず 

 今回の見せ場は宇宙空間での武蔵ライダーとの対決のはずなのだが、予算の関係か劇場版にしては安っぽくなってしまっているのが残念。2年遅れの「セカチュー」パロディも外している。せめて、オチの時間SFの部分が綺麗に決まっていればぐっと面白くなったのに、TV版と整合性のない(ように現時点では見える)ためにだいぶ損をしている。劇場版オリジナルライダーは一人でもいいので、もっと予算と時間をかけてたっぷりと見せるべきでは? とにかく「劇場版」ならではのゴージャス感に欠ける作品。役者では大和役の虎牙光揮がひとり輝きを放っていた。 ]]>
時をかける少女 http://movie2nd.exblog.jp/3963428/ 2006-08-10T00:49:00+09:00 2006-08-27T21:24:58+09:00 2006-08-10T00:49:04+09:00 wakusei2ndmovie 時をかける少女 <![CDATA[
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 筒井康隆の名作「時をかける少女」を、映画、TVドラマ、リメイクを経て、新たな構想で製作した劇場用アニメーション。監督は『ONE PIECE ワンピース THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』の細田守。声の出演は約200名超のオーディションで選ばれたヒロイン・紺野真琴役の仲里依紗をはじめ、『蝉しぐれ』の石田卓也が声優に挑戦するなどフレッシュな面々が集結した。恋に臆病な17歳の少女がタイムリープ(=時間跳躍)をする設定はそのままに、新たに用意された結末など見どころが満載。
 

【善良な市民】 ★★★★★ ★★★ (8点)  少女趣味はクドいが良作

 まあ、この無印良品センスの少女像に萌え狂う狂う「ゆうきまさみ症候群」には正直言って度し難いものを感じるが、作品自体は文句なしの良作。時間SFとしての仕掛けも割と気が効いているし、タイムリープという設定を生かして、「二度とは戻らない時間の愛おしさ」という主題を浮かび上がらせるやり口もきれいに決まっている。細田守は静かでリリックな演出と、ケレン味のあるエキセントリックな演出が両方高いレベルでこなせる稀有な人材なのだけど、本作はこの両者の配分が絶妙で、甘酸っぱい10代の夏を(その終わりも含めて)たっぷりと描き出せているのが素晴らしい。原作&大林版ファンをニヤリとさせる仕掛けも巧い。ヒロインの表情のつけ方がややクド目なのは気になるし、明らかに褒められすぎているオヤジ慰撫作品ではあるけれど、その辺を割り引いてみてもこの夏必見の一本であることも間違いない。


【くろばく】 ★★★★★ ★★★★★ (10点)  美しくまぶしい夏の情景! 

 筒井康隆の有名な原作のアニメ化と聞いて笑った人が多いようだが、細田守が作り上げたのはリメイクではなく、新しいオリジナルストーリーである(一応、原作のヒロイン芳山和子も出てくるが、これが憎い使い方)。
 テーマはズバリ「青春と時間」である。誰でも一度は、楽しい学生時代が永遠に続けばいいなあ、と夢想したことがあると思うが、今回のヒロイン紺野真琴はそれをタイムリープを使って解決しようとする。だが、時の流れは非情であり、誰も時間を止めることはできない。抵抗するのをあきらめ、時の流れを受け入れた彼女は大人への一歩を踏み出す。切なくホロ苦い青春映画の傑作である。
 クオリティの高い作画、小気味よいテンポ、独自のビジュアルなどアニメとしての完成度も素晴らしい。見終わったあと、美しくまぶしい夏の情景がしばらく頭から離れないだろう。



【転叫院】 むしろ映画的(脚本的)リアリティ ★★★★★ ★★ (7点)

 この作品の成功している部分というのは、演出の上手いところと脚本の上手いところとが、よく噛みあっているという部分だと思います。ところで脚本の途中では、タイムリープを使って同じ場面を原作以上に何度も繰り返させているわけですが、この作劇というのは脚本家の夢と言いますか、脚本の最終稿を作っていく作業によく似ていると思いました。どういうことかと言いますと、皆さんご存知のように脚本を作る作業では、各シーンのそれぞれについて何通りも案を作り、それを並び替えたり取捨選択したりするわけですね。だから映画になったものだけが全てでは当然なくて、脚本家の手元には何倍何十倍もの没になった断片があるわけです。普通の映画ではその中から一つの最終稿が択ばれるわけですが、本作の場合はそこで捨てられるような脚本や悪乗りして書いちゃったような脚本も含めて、最終稿になっています。だから、同じ場面を何度も繰り返しながら、一番もっともらしく「正しい」筋書きが択ばれていくわけなのですが、その流れがまるで脚本家がシナリオを推敲していく過程みたいだなあと思ったのです。たぶん、この原稿を書いているとき、脚本家はとても楽しんで書いていたんじゃないかなあというのが伝わってくるんですね。このリアリティは、新しいから良いとかいうものではなくて、ゲーム的とか言うよりはむしろ映画的とか脚本的なものではないかなと思います。
「やりなおしちゃえばいい」と「魔女おばさん」は言うわけですが、観客の我々はこの作品の落としどころが、「そうはいっても一つの人生を生きなくちゃいけないんだよ」であることを知っている。なぜ知っているのか、原作や旧作を知っているからかもしれないけれど、初めて観た人であってもその予感はきっと分かりますよね。やり直すことの出来ないかけがえのなさへの予感。タイムリープものって、視点の解釈がどうこう言い出すと泥沼で下らないことになってしまうのだけれど、それを気にすらさせないまでの、物語の力というのを感じさせる作品でした。
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ゲド戦記 http://movie2nd.exblog.jp/3963372/ 2006-08-10T00:43:00+09:00 2006-08-25T23:04:59+09:00 2006-08-10T00:43:03+09:00 wakusei2ndmovie ゲド戦記 <![CDATA[
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 アメリカの女流作家アーシュラ・K・ル=グウィンの「ゲド戦記」シリーズを、スタジオジブリが映像化したファンタジー・アニメ超大作。宮崎駿監督の実子である宮崎吾朗がメガホンを取り、少年アレンと大賢人ゲドの旅を通じて混迷する時代を生き抜くためのメッセージを投げかける。



【善良な市民】 ★★★★ (4点)  この夏最大の不良債権映画

 アニメ演出経験皆無の新人監督が手がけた割にはちゃんとした映画になっている。と、判官びいきをすればこの程度の苦しい褒め方はできなくもないが(笑)、冷静に出来だけを評価すればハッキリ言って落第点。まず演出が間延びしていて、ジブリの高い作画力がまったく生かされていない。そして、キャラ立ちの悪さ、状況説明とテーマを全部台詞で訴えてしまう陳腐さ(&映像に語らせることのできない力不足)、そして致命的な設定の説明不足!
 単純に出来の問題として、これがシナリオ&絵コンテの段階で止められなかったのはかなりマズイでしょう。あと、無理にフォロー入れるなら現代的な疎外感に対する批判的な視点は共感できましたよ。表現が拙すぎてウンザリしましたが(笑)。次回作に期待しろという方が無理な駄作にして、この夏最大の不良債権映画候補。とりあえず入る小屋に迷ったら絶対にこの映画だけは避けるべき。



【乙木一史】 ★★★ (3点)  鈴木Pや日テレの我慢比べに注目!

作品だけを評価するのであれば、「単純につまらないTVアニメSP」といえば一番分かり易いし、それで事足りるだろう。点数としては3点。意味不明といわれ続けているアレンの父殺しについても一応の説明は為されているが、そのシーンを入れる指示が鈴木Pから出ているなどという暗黒業界裏事情を知り始めると途端に面白くなってくる。
 もう少し駄作評価が無ければ、鈴木Pが「駿と吾朗の相克」みたいなものを、よりセンセーショナル&宣伝チックに語ったりして面白くなったかもしれないが、もはやその機会はないだろう。会社存続・後継者育成というアングルでアニメとしての出来を比べようとするなら、「時をかける少女」を持ち出すのは誤りで、原作がないのに会社の事情で続篇が作られた「ドラゴンボールGT」あたりが、間延びする演出面など含めて近いかもしれない。もしくは藤子F逝去後のドラえもん映画とか。それらと比べても出来の悪さは隠しきれないが……。問題はDVDの売れ行きにかかってくることになるだろうが、鈴木Pや日テレの我慢比べという段階に達しつつあるのが哀しい。
 騙されていく、ネタとして見に行くというのが正しいが、後者にしてもデビルマンほど残らない点で中途半端。


【くろばく】 ★ (1点)  崩れているのは「ジブリの均衡」 
 崩れているのは「世界の均衡」ではなくて「ジブリの均衡」なんじゃないの? 主人公が父親殺しっていう設定がイイね。文字どおり、吾朗は父親の築いた偉業を殺している。そうなると世界の王になろうとするクモは、鈴木Pか。彼は裏で吾朗を操っている。
 原作はどうなのか知らないが、このアニメには何の意外性もなく、予想通りの展開しかない。そもそも見せ場すらあまりなく、別に実写でも構わないような会話中心劇がだらだら続く。何より致命的なのは駿が得意としたアニメならではの、動きの面白さが全くないことである。飛行、溶解、変身といったモチーフはあるのにその魅力は少しも感じられない。「今はストーリーだけで精一杯…」って、か? 
 観客動員は相変わらずいいようだが、こうも期待を裏切る駄作が続くと、早晩ジブリは誰からも相手にされなくなる日が来ることだろう。


【転叫院】 ★★★★★ (5点)  去勢不安を描いた映画として興味深い 
 稀なる去勢不安映画、というのが率直な感想である。宮崎駿が過剰なリビドー――例えば性的なメタファーとも取れるような兵器のデザイン、どう考えても飛ぶはずの無いものが宙に浮かんでいるシーン(空を飛ぶというのは、少年期の淡い性欲のメタファーですね)に代表される――の作家であったのに対して、宮崎吾郎は逆に過小なリビドーを特徴とする作家であるように思われる。
 本作、ゲド戦記は、映画全般から去勢不安のメタファーが沢山見て取れる、まるで箱庭療法のような作品であった。象徴的なのは「魔法の剣」である。さやを抜くことができない。そしてその剣を手に入れたのが、父親殺しによってである、という筋書きはストレートすぎるほどにフロイト理論をなぞっている。
 剣を使っているシーンは三回出てくる。一回目はヒロインを助けるシーンだが、ここでヒロインに逃げられてしまい、剣は行方不明になる。そして剣を失った主人公アレンは、ひどく不安に苛まれるようになっていくのだが、本人は剣に執着を持たないので、剣を探そうともしない。この剣は、言うまでもなく、男性自身の象徴である。
ハイタカというのが精神科医の立場にあって、アレンを諭す言葉はまるでカウンセラーのようだ。そのハイタカによって魔法の剣は捜し求められる。ハイタカは精神科医だから、アレンに剣を届けなくてはいけないと分かっている。去勢不安との折り合いを付けさせるのが精神科医の役割だ。思い返すと、ハイタカ、テナー、テルーとアレンが暮らす家は、どこかサナトリウムを思わせる。
 二回目に剣を使うシーンは、クモの館。あの場面では、アレンはクモに篭絡されている。その前のベッドのシーンは、これが少年少女向け映画でなければ、性的な出来事の婉曲表現として読まれてもおかしくない。宮崎駿とは別の方向性で、パッシブなエロティシズムを感じる。その後、彼は偽ものの剣を振りかざして戦う。繰り返すが、剣は男性自信の象徴だ。
三回目のシーンは、クライマックスシーンだが、剣を届けてくれるのがヒロインである、というのが驚くべき去勢性である。主人公は相変わらず自分では剣を求めず、女の子に届けてもらうしかないのである。この受け身性、パッシブな男の子のある種の極北を描いているという点は興味深い。主人公は徹底的に去勢されているので、ヒロインと抱き合った後でないと、剣を抜くことができない。
 そしてラストでは、ヒロインが竜になってアレンを助け出すわけだが、朝が来ると同時に崩れ落ちる塔というのもまた、去勢不安の象徴に思える。
以上のように、私は本作『ゲド戦記』を、少年の去勢不安を描いた映画として、興味深く観る事ができた。]]>
亀は意外と速く泳ぐ   (善良な市民) http://movie2nd.exblog.jp/682801/ 2005-08-28T14:17:15+09:00 2006-08-10T00:21:51+09:00 2005-08-28T14:15:03+09:00 wakusei2ndmovie 2005年版 <![CDATA[
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 片倉すずめ(上野樹里)は23歳の平凡な主婦。海外に単身赴任中の夫にかわって、ペットの亀に餌をやり続ける単調な毎日を過ごしている彼女は、ある日ふとした偶然から某国のスパイを募集する広告を発見する。好奇心からスパイに応募してみたすずめは、その「得がたい平凡さ」から一発合格、晴れてスパイになるが、そのミッションはなんと「とりあえず目立たないように徹底して平凡な生活を送ること」だった……。

 日常のちょっとした「あるある」ネタ系の脱力ギャグを、客に飽きさせることなく巧妙に並べて90分間「それだけ」でやり通した怪作。監督は『トリビアの泉』『笑う犬の生活』で鳴らした三木聡と聞けばこのセンスも納得だろう。監督の前作『イン・ザ・プール』では、原作の3つのエピソードをうまくかみ合わせることが出来ずに辛くなっていたが、完全オリジナルの本作はそんなこともなく、この人のいい意味で「ショボい」笑いのセンスをたっぷり楽しむことができる。
 ただ、ネタ的にどうしても「クスクス」系の笑いにきれいに収まっていて、「映画館で映画を観た」とう満足感が欲しい人にはオススメできない。実際、一番笑ったのは本編ではなく、別の映画で流れていたこの映画の予告編だった(DVDに収録希望!)。
 それにしても上野樹里の「クエッ、クエッ、クエッ」という謎の笑いが耳にこびりついて離れない。
 
善良な市民のオススメ度 ★★★★

公式サイト
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劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征くもの  (善良な市民) http://movie2nd.exblog.jp/682765/ 2005-08-28T14:14:43+09:00 2006-08-10T00:21:51+09:00 2005-08-28T14:12:31+09:00 wakusei2ndmovie 2005年版 <![CDATA[ この作品のテレビ版はよくできていて、自分が中1くらいだったらたぶんすごく感動していたと思う。会川昇はアクが強すぎて、好きにやらせると書いている自分にしかわからない世界に旅立っちゃうけど、原作やスポンサーの縛りがかっちりしている場合ならむしろそのアクがいい塩梅に発揮される。
 で、この劇場版もそういう意味ではよく出来てはいるのだけど……結論から言えばもうちょっとはっちゃけても良かったんじゃない?と思った。

 あの衝撃のラストから約1年、少年少女諸君の「劇場版はすごいことになっていて、すべてが解決されるはず!」という妄想は臨界点に達していたはずで、その割には小さくまとまってしまった感が強い。ホムンクルスやホーエンハイムの後先もあれじゃあファンはがっかりだろうし、せっかくミュンヘン一揆が舞台なんだから、もっともっとエドが歴史に絡んだ方が面白かったと思う。まあ、「妄想にかられたヒトラーとエドが対決」みたいなことまでやると、かえって陳腐になるってのはよくわかるけど。

 ただ、会川の抱えているものというか、アンチセカイ系的なテーマはこの映画版の方がよく表現できている。世界との関わるということが、その成り立ちの秘密を知ることや陰謀に立ち向かうことではなく、あくまでそこに生きる人と関わることなのだという強い確信は、このやや拍子抜けする完結編(?……続編ありそうだけど)に一本、しっかりとした筋を通すことに成功している。

善良な市民のオススメ度 ★★★

公式サイト
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亡国のイージス   (善良な市民) http://movie2nd.exblog.jp/627925/ 2005-08-24T10:27:42+09:00 2006-08-10T00:21:51+09:00 2005-08-24T10:25:12+09:00 wakusei2ndmovie 2005年版 <![CDATA[ ハッキリ言ってこれは真田広之のアクション映画で、それ以上でもそれ以下でもない。だから、この映画に「熱い男の魂」だとか、「リアリティ抜群のポリティカル・フィクション」とか、「プチウヨ妄想全開の実写ガンダム」を期待していくとかなり裏切られる。もちろん、真田広之個人のファンなら十二分に楽しめるだろうし、千葉真一一家が好きな流れで彼も結構好きな僕はそれなりに楽しめたのだけど、単純に映画として観たらかなりの不良債権映画かもしれない。
 まず、クソ長い原作を無理矢理2時間にしているので、全体的に説明不足。特に悪役達の反乱の動機がかなりわからない。「そんなことで反乱起こすかよ?」とたぶん、この映画を観た人のほとんどが思うはず。敵の女兵士がなぜか味方サイドの若者と突発的にキスしているのも謎(笑)。そもそも臭い芝居を得意とする阪本順治にこういうアクションものを撮らせたこと自体が疑問。まあ、真田は老けたなりに滅茶苦茶がんばっているし、彼にまつわる人情話はそれなりに時間を割いているのだが。
 おそらくこれは真田広之話に絞って他は切り捨てた取捨選択の結果で、その意図は貫徹しているのだが、この戦略自体が間違いだったんじゃないだろうか。

善良な市民のオススメ度 ★★

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リンダリンダリンダ (成馬01) http://movie2nd.exblog.jp/597136/ 2005-08-21T23:49:32+09:00 2006-08-10T00:21:51+09:00 2005-08-21T23:47:13+09:00 wakusei2ndmovie 2005年版 <![CDATA[
 素人臭い手作り感が作品全体に流れていて、 この映画自体がまるで冒頭に登場する文化祭の記録映画のような朴訥とした雰囲気を感じさせて昨今の洗練された邦画とは真逆の心地よさを感じる。
 そして小手先の技術に頼らず撮られた学校周辺の風景の切り取り方はこれ以上なく美しい。
 ただ問題はラストのライブのシーンで、ここをどう思うかで作品に物足りなく感じるか、いとおしく思うかで別れると思う。
 俺の感想としてはライブの半端な盛り上がりが高校の文化祭の ノリをうまく表現していて、いいなぁと言うのと同時に、ここまで持ってきたんだから最後はアクセル踏んで盛り上げて欲しいという気持ちと二つあった。
 ただラスト誰もいない校舎の風景が次々と写る時、ある種の郷愁のようなものを感じさせ、この映画の主役は彼女たちでなく、文化祭の学校という空間だったのだなぁと思った。
 また台風クラブへのオマージュと思えるシーンが多々あり、そういう文脈で見ると冒頭での「意味なんてあるのかなぁ?」という言葉へどういう答えが出されているか自然とわかる作りになっていると思う。あと主役の4人がかわいかった!!!

成馬01 オススメ度 ★★★★★]]>
亡国のイージス   (くろばく) http://movie2nd.exblog.jp/551750/ 2005-08-18T05:16:55+09:00 2006-08-10T00:21:51+09:00 2005-08-18T05:14:17+09:00 wakusei2ndmovie 2005年版 <![CDATA[
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 『ローレライ』『戦国自衛隊1549』と続く福井晴敏シリーズの、現在のところ最後の作品。内容は海上自衛隊のイージス艦が某国のテロリスト(某国ってバレバレだけどな)に乗っ取られるが、艦内に残ったただ一人の自衛隊員(真田広之)の活躍を描く。まあ、平たく言えば海版の『ダイ・ハード』ですワ。
 上映時間は2時間7分もあるのだが、うまくまとめたとは言い難く、おそらく原作のダイジェストになっているだろうな、という印象。物語を語るのが精一杯で、登場人物や事件がじゅうぶんに描けていないのだ。アクション場面なんかに至っては手抜きとしか思えず、クライマックスのイージス艦も安CGバレバレの映像で腰くだけ。阪本順治監督には『KT』などの傑作があるのだが、ハリウッドの娯楽映画を意識した本作ではほとんど力を発揮できなかった。残念。

くろばくのオススメ度★

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