ロッキーオートがやってくれた! 公道走行可能なプリンスR380ならぬロッキー380完成! 【東京オートサロン2025】

旧車ショップとして有名な愛知県・岡崎市のロッキーオート。2024年はトヨタ2000GTを再現したロッキー3000GTで会場を沸かせてくれたが、2025年はさらなる衝撃をもたらしてくれた。なんと、プリンスR380を公道走行ができるように再現してしまったのだ!

PHOTO&REPORT●増田 満(MASUDA Mitsuru)
プリンスR380を再現したロッキー380。

東京オートサロン2025の会場で最も驚かされた1台がこのクルマ。1966年の日本グランプリで打倒ポルシェを目指して開発された日本初のプロトタイプレーシングカーがプリンスR380。スカイラインの開発者として知られる櫻井眞一郎氏が開発責任者を務め、初代スカイラインGT-Rに搭載された6気筒4バルブDOHCエンジンの元となったGR8型をミッドシップに搭載していた。プリンスR380はその年の日本グランプリで見事にポルシェ906を打ち破り砂子義一選手が優勝。2位にもR380が入りワン・ツー・フィニッシュを成し遂げた伝説的マシンだ。

低い車高ながら最低地上高はしっかり確保されている。

そのプリンスR380が東京オートサロン2025の会場にあったのだから驚くのも当然。ブースをよくよく見れば愛知県岡崎市の有名な旧車ショップであるロッキーオート。ということは、まさか? と思って渡辺喜也社長を捕まえ質問してみた。すると驚きの回答が得られた。なんとこのクルマは実車であるプリンスR380のボディをそっくりそのまま再現してあるのだという。どうしてそんなことができたのだろう?

こちらが本物のプリンスR380。

実はボディの金型が現存しているのだ。日産自動車を退社後、オーテックジャパンを経てエス・アンド・エスエンジニアリングの代表取締役に就任した櫻井眞一郎氏が、金型を日産から正式に譲り受けていたのだ。書類まで現存していたのだが、その後の所有者が持て余していた。なんとか再現したいが、普通には難しい。そこで相談したのがロッキーオートだったというわけなのだ。

フロントフードも本物さながらに再現されている。

正式な書類が残されているため、金型を使ってボディを作り出すことに問題はない。権利関係に抵触しないことを確認したうえで、渡辺社長は実車製作に踏み切ったというわけなのだ。ボディカウルは金型から作り出しているのでプリンスR380そのもの。だが、R380はブラバムを参考にしたスペースフレームシャーシ。そこでボディカウルから割り出した寸法と強度検討を行いパイプフレームから作り出してしまったのだ。

ミッドシップ車らしいリヤカウルの造形。

この状態での展示になるが、なんとこのロッキー380はナンバーを取得済み。つまり公道を走ることができるレーシングカーなのだ。最低地上高のほか灯火類、騒音などの問題をクリアして会場へ運ばれた。ただ、このままの状態で販売されることはなく、市販バージョンでは公道を無理なく走行できるように変更される予定。

ブレーキはブレンボ製を装着している。

どう変更されるのかといえば、モノコックフレームのボディと市販車のエンジンを組み合わせられる予定なのだ。だから市販バージョンは乗りやすさが与えられることになり、夢のようなマシンが完成する。現状で車両重量は680kg、予備検査も終了しているというから、早く市販バージョンを見てみたいものだ。

乗降性など無視したかのようなコクピット。

展示されたロッキー380はエンジンやミッションが異なるとはいえ、プリンスR380をそのまま再現したような内外装となっている。モノコックボディに変更される市販バージョンでは内装もより現代的にアレンジされることだろう。さすがにこのままのコクピットでは乗り降りするだけでも大変そうなのだから。

前後カウルの開き方も実車さながら。

展示されたマシンには無限製のレーシングエンジンがヒューランドミッションとともにミッドシップマウントされている。この状態で乗るとほぼレーシングカーそのものと渡辺社長は語ってくれたが、公道ではなくサーキット走行用に欲しくなる人がいるかもしれない。60年代の名レーシングカーが手に入るチャンスなのだから、憧れてきた人は必見だろう。

スペースフレームは新設計されたもの。

ロッキー380は受注受付中とのことだから、詳細はロッキーオートまで問い合わせていただきたい。ロッキーオートは完全予約制のため、フラリと足を運ぶわけにはいかない。まずはホームページなどから連絡方法を確認してほしい。2025年中には生産体制に入るそうだ。

エンジンは現状で無限製が積まれているが変更される可能性大。

とはいえ気になるのは販売価格だろう。渡辺社長は確定ではないものの5000万円前後を見込んでいるようだ。とんでもない価格ではあるものの、R380そのままの姿で公道を走ることができると考えたら止むを得ない価格設定であるとも言える。ため息が聞こえそうな1台に新春からノックアウトされてしまった。

ヒューランド製ミッションが現状は搭載されているが、これも変更される予定。

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著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…