目次
■サニーをベースにローレルのイメージを纏ったローレルスピリット
1982(昭和57)年1月12日、日産自動車はサニーとローレルの中間層をターゲットにした「ローレルスピリット」を発売。人気の高かった5代目サニーの基本的な機能部分を流用し、内外装は4代目ローレルのデザインを取り入れて高級感を演出したのだ。
ベースとなった5代目サニー(B11型)と4代目ローレル(C31型)
ベースとなったサニーは、1981年にデビューした5代目である。最大の特徴は、それまでのFRからFFへ変更されたこと、そのFFのメリットを最大限生かすためにすべての基本設計が一新された。
エンジンを横置きとし、ワイドトレッド&ロングホイールベース化することによって、クラストップの室内空間を実現。パワートレインは1.3L(75ps)/1.5L(85ps)直4 SOHCエンジンと、3速ATおよび4速/5速MTの組み合わせが用意された。
一方の1980年にデビューした4代目ローレルは、それまでのアメ車風から直線基調の欧州車風スタイリングに変わったのが特徴。
初代ローレル(C30型)は、「ブルーバード」と「セドリック」の中間に位置するアッパーミドルセダンで、“ハイオーナーセダン”というキャッチコピーを掲げて1968年4月に誕生した。
その後、1972年の2代目(C130型)は、プラットフォームが4代目「スカイライン“ケンメリ”」と共通となり、全体の雰囲気もケンメリ風になった。1977年には3代目(C230型)に移行し、高級車をイメージさせる重厚なスタイリングとなり、さらに豪華で落ち着いたインテリアが特徴だった。
小さな高級車ローレルスピリット誕生
1982年1月のこの日、日産はサニーとローレルの中間を埋めるためにローレルスピリットをデビューさせた。大衆車として人気を獲得していた5代目サニーをベースに、エンジンやサスペンションなど基本的な部分は流用し、主として内外装をローレル風に仕上げたのだ。
スタイリングは、ローレルと共通イメージの格子型グリルや異形ヘッドライトに加えて、メッキ仕上げのフェンダーミラー&ドアハンドル、サイドモールなどで高級感を演出。サニーとはまったく異なる、落ち着いた上質な雰囲気をアピールした。
パワートレインは、1.5L直4 SOHCのキャブ(最高出力85ps/最大トルク12.3kgm)と電子制御噴射弁(95ps/12.5kgm)の2仕様のエンジンと、4速/5速MTおよび3速ATの組み合わせ、駆動方式はFFである。
車両価格は、99.1万~124.7万円に設定。当時の大卒初任給は12.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約182万~229万円に相当する。経済性に優れた1.5Lモデルでありながらローレルを思わせる装備を備えた小さな高級車として一定の評価を集めたが、1990年にベースのモデルチェンジを機に生産を終えた。
他にもある小さな高級車をアピールしたクルマ
過去には、小さな高級車をコンセプトにしたモデルはいくつか登場している。
1980年に登場した日産「ラングレー」は、当時の5代目「スカイライン」を彷彿させるデザインで、ヘッドライトにはスカイラインのものをそのまま流用。真正面からみると一瞬スカイラインかと思ってしまうようなフロントマスクが特徴だ。
小さな高級車をキャッチコピーとしたトヨタ「プログレ(1998年~)」は、全長は「クラウン」より300mmほど短いが、全長の割にホイールベースは長く、余裕のある室内スペースを確保。直6 DOHCの2.5Lと3.0Lエンジンを搭載し、静粛性や乗り心地もクラウンなどの高級車と遜色のないレベルだったが、1世代で生産を終えた。
また2004年に登場したマツダ「ベリーサ」も、“シック・クオリティ・コンパクト”をキャッチコピーとして、小さな高級車というフレコミで登場した。1.3L&1.5L直4 DOHCエンジンを搭載したコンパクトカーだが、他のコンパクトカーとは比べ物にならない上質さを追求したが、人気は限定的で1世代で終えた。
最近では、2023年にプレミアムだがカジュアルでコンパクトなSUV「レクサスLBX」がデビューして話題となっている。好調に滑り出したようだが、高級コンパクトカーというコンセプトがどこまで浸透するか楽しみだ。
・・・・・・・・・
ユニークな発想のローレルスピリットだったが、デビューのタイミングが悪かった。1980年代の日本経済は絶好調でちょうどバブル好景気を迎えようとしていた頃、見せかけの高級感よりも本当の大きな高級車を選ぶ人が増え、高級車がバンバン売れていた時期だったのだ。
毎日が何かの記念日。今日がなにかの記念日になるかもしれない。