使い勝手抜群で販売台数好調な3列シート車「トヨタ・シエンタ」【最新コンパクトカー 車種別解説 TOYOTA SIENTA】

大きなイメージチェンジを図った2代目と同様再びその印象を変化させて登場した3代目「トヨタ・シエンタ」。実用的かつデザイン的なプロテクションモールを施したボディは丸みとスクエアな形状でキュートさと安定した安心感を程よくミックスしている。2種類のパワートレインはそれぞれの魅力がひかり、18種のグレードでユーザーの選択をシンプルに導いてくれる。
REPORT:岡本幸一郎(本文)/小林秀雄(写真解説) PHOTO:平野 陽 MODEL:新 唯

絶妙ボディサイズで室内広々 合理的な後席は機能性も良好

最大で7人が乗れる3列シートミニバンの中で最もコンパクトなシエンタは、2022年夏にモデルチェンジした。以降は月販1万台を超たことの方が多く、23年には暦年で13万2332台を販売してランキング3位につけた。

エクステリア

スクエアなボディの角を丸くしたような、親しみやすいデザイン。「Z」系のBi-Beam LEDヘッドランプと、それ以外の2灯式LEDヘッドランプは見た目も大きく異なるため、グレード選びの基準になりそうだ。全車スチールホイールが標準装備だが、写真のアルミホイールもオプションとして設定。最小回転半径は5.0m。

特徴的だった2代目とはガラリと変わり、四角くて丸い万人向けのデザインとなったのは見てのとおりだ。コンパクトなサイズによる取り回しの良さこそシエンタの強みなので、車体形状が四角くなっても全長や全幅は従来から変更されていない。ボディの各部に配された黒い部分は、見た目のアクセントになるだけでなく、多少ぶつけてもキズを目立たないようにする効果もあるという。乗り込むと他の一般的ミニバンとは違って、コンパクトカーのようにフロアがサイドシルよりもずっと低い位置にある点が大きく異なる。

乗降性

フロアは低くても目線は程良い高さで見晴らしが良く、運転席からの視界も低いダッシュとフードの先端が高くて見切りが良いおかげで車両感覚がつかみやすい。小さくても車内は広々としている。すべてのウインドウが切り立っているおかげで頭まわりにも余裕がありスライドドア開口部の天地高も十分で乗り降りしやすい。車内は親しみやすい色使いでコーディネートされていて、ソファのような生地のシートの座り心地も良い。目に入りやすい場所にファブリックが張られていて、エントリーモデルながら安っぽさはまったくない。

インストルメントパネル

インパネも直線的かつ角を丸めたデザインで、「Z」系にはファブリック巻きを採用。2024年5 月の一部改良で、これまでオプションだった10.5インチのディスプレイオーディオが「Z」系に標準化された。

開放的な車内は左右にも前後にもウォークスルーできるほか、収納スペースが豊富で、ドリンクホルダーやフックやUSB端子が車内のいたるところに設けられている。後席の車内空間はこれまでどお合理的なつくりとなっている。3列目シートが不要なときには2列目の床下にもぐりこませておけば荷室を広く確保できる。いざとなれば小さい簡素なシートながら、意外と成人男性でも座るのは苦にならない広さが確保されており、本当に機能的に設計されていて感心する。

居住性

TANGAプラットフォームの導入も効いて、正確でしっかりとした手応えのあるステアリングフィールを実現しており、見た目からイメージするほど重心の高そうな感覚もない。乗り心地も快適で、走りの質がなかなか高いこともシエンタの魅力だ。3気筒になったエンジンの音や振動は好みが分かれそうだが、性能的には十分だ。ハイブリッドは出足が俊敏で力強く、どっしりとしたドライブフィールであるのに対し、ガソリンは軽快で、よりエンジンの吹け上がりを楽しめる味付け。どちらも燃費が良い点では共通している。

うれしい装備

7人乗りの場合は3列目シートを格納し、2列目シートをタンブルアップした状態でフラットなフロアを実現。身長にもよるが、対角線に寝転ぶようにすれば、ひとりでも車中泊可能な広さと言えそうだ。
月間販売台数     9735台(23年11月~24年4月平均値)
現行型発表      22年8月(一部改良 24年5月)
WLTCモード燃費    28.8 ㎞/ℓ※「HYBRID X」の5人乗り/FF車  

ラゲッジルーム

新型になってハイブリッドに設定された4WDは、後輪をモーターで駆動するE-Fourを採用する。その上質な走りは非降雪地のユーザーにも大いに薦めたいほどだ。先進運転支援装備も充実していて、歩行者や自転車を検知する性能も高く、安心して走れる。メーカーオプションのカーナビは画面が大きくて見やすく、このクラスでこれ以上はないほど機能的にも充実している。24年5月には一部改良が発表され、ボディカラーの新色追加や人気のメーカーオプションが一部標準化された。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.159「2024-2025 コンパクトカーのすべて」の再構成です。

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