「サリエリのオペラなど」
タラール
第1幕: タラールのアリオーソ Seigneur, si j'ai sauvé ta vie
サリエリのオペラ、『タラール』の台本を読んでいきます。素人なので間違いが多いと思います。ご参考程度にご覧ください。(スマホでご覧のかたはこちらのほうが見やすいと思います)
【第1幕】
オルムスの民兵の将軍、タラールは配下や国民から大人気。王のアタールはそんな彼を忌み嫌い、ついには彼の愛する女性アスタジーを部下に誘拐させ、『イルザ』と名付けて後宮に入れてしまいました。
悲しみながら王宮にやって来たタラールを、アタールは元気づけるふりをしつついたぶります。
続いてタラールのアリオーソです。4分の3拍子、アンダンテ。ニ長調。編成はヴァイオリン(二部)、ヴィオラ、フルート(二部)、コントラバス。
1分47秒くらいから。
ご主人さま、 Seigneur,
私があなたの命を救ったのなら、 si j'ai sauvé ta vie,
それを覚えていてくださるのなら、 si tu daignes t'en souvenir,
アスタジーの復讐をさせてください、 laisse-moi venger Astasie
彼女をさらったならずものたちに。 du traître qui l'osa ravir.
ホ長調か。
4分の4拍子、レチタティーヴォ・アカンパニャートに変わります。
お許しください、 Permets
翼を広げた que, déployant ses ailes,
小さな船に un léger vaisseau
運ばれて de transport
嬰ヘ短調。
また歌唱に戻ります。4分の3拍子、アンダンテ。
私が向かうことを、 me mène
ならずものたちのもとへ、 vers ces infidèles,
アスタジーを探すために、 chercher Astasie,
アスタジーか、さもなくば死を。 Astasie ou la mort.
アスタジーか、さもなくば死を。 Astasie ou la mort.
ニ長調に戻っておしまい。
タラールが王宮へやって来たのは、探索と復讐の旅に出る許可をもらうためだったようです。
レチタティーヴォ・アカンパニャートに。4分の4拍子、おそらくニ長調から。編成はヴァイオリン(二部)、ヴィオラ、コントラバス。
お前はどうしたい、 Que veux-tu,
カルピージ? Calpigi?
とりあえずカルピージに話を振るアタール。
理解できない。 sois inintelligible.
そして小声でこっそり呟きます。
ご主人さま、これがイルザでしたら、 Mon Maître, cette Irza
あなたが愛を向けられている…… si chère à ton amour...
おお、なるほど? Eh bien?
彼女は戻されるでしょう、 Elle est rendue
日の光の中へ。 à la clarté du jour.
割とギリギリの綱渡りのようなやりとりに感じます。
ハ長調、アレグロの短い間奏。
アタール様、 Atar,
あなたの偉大な精神は ta grande âme
感じやすいのですね、 est sensible,
喜びに輝いています、 la joie a brillé
あなたの目が。 dans tes yeux.
ヘ長調。
タラールはひざまずきます。
そのイルザ殿のために、 Par cette Irza,
スルタンよ、 Sultan,
ご寛容を。 sois généreux,
私の苦しみが à mes maux
おわかりになるかと。 deviens accessible.
フェルマータ。ニ短調か?
言ってくれ、タラール、 Dis-moi, Tarare,
お前はひどく不幸か? es-tu bien malheureux?
ト長調。
はい、そうです! ああ! Si je le suis! ah!
彼女はきっと死んだでしょう! peut-être elle expire!
イ短調か。
聞きたかったろう答えを得たアタールは言います。
祈ってくれ、私の前で Souhaite devant moi
イルザが私の望みに屈することを。 qu'Irza cède à mes vœux:
そうしたらしてやろう、 Je fais
きみの心が欲することを。 ce que ton cœur désire.
嬰ヘ短調か?
「そうしたら」は私の補訳です。
「きみの心が欲すること」を、タラールは「復讐の旅に出ること」だと取るでしょう。でもアタールは「イルザ=アスタジーが自分に屈すること」のほうの意味で言っている気がします。
ここでいったん楽譜が終わるのですが、その理由は「ちょうど段が終わったから」だけな感じがするので(一応パート終わりを示す和音はありますが、そのあとも普通にレチタティーヴォが続くので音楽上で楽譜を変える意味がない気がする)、紙が今より貴重だった時代ゆえのことだと解釈して次のセリフまで掲載。
偉大な神々よ! Grand Dieux!
私は恐ろしい男に仕えている。 Je sers un homme affreux.
フェルマータ。ロ短調か?
↑ ちょうど段が終わったからレチタティーヴォパートを終わりにした疑惑の楽譜。上の段がアタールのセリフで終わっています。次のカルピージのセリフが終わるまでオーボエは入ってこないので、曲的には楽譜を変えた意味はあんまりなさそうに見える。(素人判断です)
このまま、また歌唱パートに入りますが今回はここまでに。
お付き合いいただきありがとうございました。
=続きます=
【第1幕】
オルムスの民兵の将軍、タラールは配下や国民から大人気。王のアタールはそんな彼を忌み嫌い、ついには彼の愛する女性アスタジーを部下に誘拐させ、『イルザ』と名付けて後宮に入れてしまいました。
悲しみながら王宮にやって来たタラールを、アタールは元気づけるふりをしつついたぶります。
続いてタラールのアリオーソです。4分の3拍子、アンダンテ。ニ長調。編成はヴァイオリン(二部)、ヴィオラ、フルート(二部)、コントラバス。
1分47秒くらいから。
ご主人さま、 Seigneur,
私があなたの命を救ったのなら、 si j'ai sauvé ta vie,
それを覚えていてくださるのなら、 si tu daignes t'en souvenir,
アスタジーの復讐をさせてください、 laisse-moi venger Astasie
彼女をさらったならずものたちに。 du traître qui l'osa ravir.
ホ長調か。
4分の4拍子、レチタティーヴォ・アカンパニャートに変わります。
お許しください、 Permets
翼を広げた que, déployant ses ailes,
小さな船に un léger vaisseau
運ばれて de transport
嬰ヘ短調。
また歌唱に戻ります。4分の3拍子、アンダンテ。
私が向かうことを、 me mène
ならずものたちのもとへ、 vers ces infidèles,
アスタジーを探すために、 chercher Astasie,
アスタジーか、さもなくば死を。 Astasie ou la mort.
アスタジーか、さもなくば死を。 Astasie ou la mort.
ニ長調に戻っておしまい。
タラールが王宮へやって来たのは、探索と復讐の旅に出る許可をもらうためだったようです。
レチタティーヴォ・アカンパニャートに。4分の4拍子、おそらくニ長調から。編成はヴァイオリン(二部)、ヴィオラ、コントラバス。
お前はどうしたい、 Que veux-tu,
カルピージ? Calpigi?
とりあえずカルピージに話を振るアタール。
理解できない。 sois inintelligible.
そして小声でこっそり呟きます。
ご主人さま、これがイルザでしたら、 Mon Maître, cette Irza
あなたが愛を向けられている…… si chère à ton amour...
おお、なるほど? Eh bien?
彼女は戻されるでしょう、 Elle est rendue
日の光の中へ。 à la clarté du jour.
割とギリギリの綱渡りのようなやりとりに感じます。
ハ長調、アレグロの短い間奏。
アタール様、 Atar,
あなたの偉大な精神は ta grande âme
感じやすいのですね、 est sensible,
喜びに輝いています、 la joie a brillé
あなたの目が。 dans tes yeux.
ヘ長調。
タラールはひざまずきます。
そのイルザ殿のために、 Par cette Irza,
スルタンよ、 Sultan,
ご寛容を。 sois généreux,
私の苦しみが à mes maux
おわかりになるかと。 deviens accessible.
フェルマータ。ニ短調か?
言ってくれ、タラール、 Dis-moi, Tarare,
お前はひどく不幸か? es-tu bien malheureux?
ト長調。
はい、そうです! ああ! Si je le suis! ah!
彼女はきっと死んだでしょう! peut-être elle expire!
イ短調か。
聞きたかったろう答えを得たアタールは言います。
祈ってくれ、私の前で Souhaite devant moi
イルザが私の望みに屈することを。 qu'Irza cède à mes vœux:
そうしたらしてやろう、 Je fais
きみの心が欲することを。 ce que ton cœur désire.
嬰ヘ短調か?
「そうしたら」は私の補訳です。
「きみの心が欲すること」を、タラールは「復讐の旅に出ること」だと取るでしょう。でもアタールは「イルザ=アスタジーが自分に屈すること」のほうの意味で言っている気がします。
ここでいったん楽譜が終わるのですが、その理由は「ちょうど段が終わったから」だけな感じがするので(一応パート終わりを示す和音はありますが、そのあとも普通にレチタティーヴォが続くので音楽上で楽譜を変える意味がない気がする)、紙が今より貴重だった時代ゆえのことだと解釈して次のセリフまで掲載。
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↑ ちょうど段が終わったからレチタティーヴォパートを終わりにした疑惑の楽譜。上の段がアタールのセリフで終わっています。次のカルピージのセリフが終わるまでオーボエは入ってこないので、曲的には楽譜を変えた意味はあんまりなさそうに見える。(素人判断です)
このまま、また歌唱パートに入りますが今回はここまでに。
お付き合いいただきありがとうございました。
=続きます=
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~ Comment ~
NoTitle
タラールの方はアスタジーの復讐へ行く許可を得に来ていたのですね。
妻がさらわれたとなったら助けに行くなり、
復讐をしたいと思うのは自然なことですが、
さらった相手が自分の使えている王だと知ったら、
どういう反応をするのか気になりますね~。
妻がさらわれたとなったら助けに行くなり、
復讐をしたいと思うのは自然なことですが、
さらった相手が自分の使えている王だと知ったら、
どういう反応をするのか気になりますね~。
Re: ポール・ブリッツ さん
お久しぶりです。コメントありがとうございます^^
> アタール・モロボシ
笑いました!
これから頭にチラついちゃうじゃないですか(笑)
令和版アニメが YouTube で無料公開されていたのでチラチラ見ていたんですけれど、若いひとも見てくれているようで嬉しいですね。
おからだお大切に、ご無理なくお過ごしくださいませ(*^^*)
> アタール・モロボシ
笑いました!
これから頭にチラついちゃうじゃないですか(笑)
令和版アニメが YouTube で無料公開されていたのでチラチラ見ていたんですけれど、若いひとも見てくれているようで嬉しいですね。
おからだお大切に、ご無理なくお過ごしくださいませ(*^^*)
- #26182 椿
- URL
- 2023.11/09 12:36
- ▲EntryTop
Re: ツバサさん
コメントありがとうございます。
アタールは悲しむ彼を見て大喜びでしたが、
タラールはただ弱音を吐きに来ていたわけじゃないんですよね。
おっしゃるとおり、
真実を知ったらタラールがどうするのかが
これからのドラマの見どころのひとつに
なっていきます^^
いつもありがとうございます(*^^*)
アタールは悲しむ彼を見て大喜びでしたが、
タラールはただ弱音を吐きに来ていたわけじゃないんですよね。
おっしゃるとおり、
真実を知ったらタラールがどうするのかが
これからのドラマの見どころのひとつに
なっていきます^^
いつもありがとうございます(*^^*)
- #26183 椿
- URL
- 2023.11/09 12:39
- ▲EntryTop
NoTitle
>私は恐ろしい男に仕えている
臣下の名声がうらやましくて、その腹いせに奥さんをかっさらっちゃっうチンケな男じゃんヽ(゚∀。)ノ
臣下の名声がうらやましくて、その腹いせに奥さんをかっさらっちゃっうチンケな男じゃんヽ(゚∀。)ノ
- #26205 急に寒くて、おったまげー!なひゃく
- URL
- 2023.11/12 16:24
- ▲EntryTop
Re: 急に寒くて、おったまげー!なひゃく さん
コメントありがとうございます。
器の小さいひとが大きな権力を持っているほど恐ろしいことはないでしょう(^^;)
器の小さいひとが大きな権力を持っているほど恐ろしいことはないでしょう(^^;)
- #26233 椿
- URL
- 2023.11/13 00:28
- ▲EntryTop
NoTitle
う~~ん、適性ががない人が王様をやると
一発で国家がヤバいことになる典型って話なんですけど。。。
個人的には王政主義を絶対否定はしない人で、
有能な人が王様になると、
ビックリするぐらいに国家が立ち直るのが
歴史の証明するところ。
けど、王様の適性があるかないかなんて、
誰にも分からないから運要素高めすぎるから、
ほとんどの国家でやらなくなったってことですね。。。
この王様が主人公で国家が滅ぶ話とかしたら、
コメディで面白いんじゃないだろうか(笑)。
一発で国家がヤバいことになる典型って話なんですけど。。。
個人的には王政主義を絶対否定はしない人で、
有能な人が王様になると、
ビックリするぐらいに国家が立ち直るのが
歴史の証明するところ。
けど、王様の適性があるかないかなんて、
誰にも分からないから運要素高めすぎるから、
ほとんどの国家でやらなくなったってことですね。。。
この王様が主人公で国家が滅ぶ話とかしたら、
コメディで面白いんじゃないだろうか(笑)。
Re: LandM さん
コメントありがとうございます。
ヨーロッパはヨーロッパで、
こういう暴君キャラを定番として
育ててきたと思うと面白いですね(笑)
いや、定番暴君キャラというには
この王さまは愛嬌がありますが(^^;)
民意で選んでも王さまの適性があるかは
わからないところが難しいところですが、
血筋で選ぶだけよりは選択肢が広がるから
いいのかなあ……
ヨーロッパはヨーロッパで、
こういう暴君キャラを定番として
育ててきたと思うと面白いですね(笑)
いや、定番暴君キャラというには
この王さまは愛嬌がありますが(^^;)
民意で選んでも王さまの適性があるかは
わからないところが難しいところですが、
血筋で選ぶだけよりは選択肢が広がるから
いいのかなあ……
- #26249 椿
- URL
- 2023.11/14 21:39
- ▲EntryTop
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卜ラックバックURL
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ご無沙汰してます
・ハーレム
・ひどいやつ
というところから考えて、アタールの本名は、アタール・モロボシだ、という結論に達したので、たぶんいくらか自分も元気になってきたのではないかと思います。
それともまた病気が悪化してきたのかもしれませんが。
「ダーリン、電撃だっちゃ!」