かたつむりは電子図書館の夢をみるか(はてなブログ版)

かつてはてなダイアリーで更新していた「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」ブログの、はてなブログ以降版だよ

第1回ARGフォーラム 「この先にある本のかたち:我々が描く本の未来のビジョンとスキーム」


すでに多くの方がレポートをアップされてもいますし、Twitterはじめリアルタイムで情報配信されてもいましたが、第1回ARGフォーラムに行ってきました!


これだけ更新されていれば・・・と言う気もしますが、「Twitterの140字じゃあ出来ないことを見せてやんよ!」ってな感じで以下、いつもの通りメモです。
メモといいつつ津田さんのところとか完全にテープ起こしみたくなっていますが。


例によってmin2-flyの聞き取れた範囲・理解できた範囲・書きとれた範囲での内容となっています。
「ここはそんなこと言ってない!」とか「ニュアンスが違う!」等の指摘がありましたら、コメント欄等でいただければ幸いです。


では、以下レポート。




開会の挨拶(全体司会:内田麻理香さん(サイエンスコミュニケーター/東京大学工学部))

  • 来場出来なかった地方の方向けにUstream配信するよ
  • Twiter利用者はついっこアカウント:@arg_forum, ハッシュタグ:#arg_forumを活用して
  • 今日のフォーラムは書籍化を予定しているよ

基調報告 「ディジタル時代の本・読者・図書館:我々の創造性を高めるために」(国立国会図書館長・長尾真さん)

  • インターネットの時代・・・すべての人が情報の受信者・発信者である
    • 一部の著作者がクリエイティブな仕事をし、他の人が受け手である一方的な流通の時代から完全に変わった
    • 情報はネットで利用できるし、編集者のようなチェックを受けていない。信頼性の問題がある
  • 図書館も電子図書館の方向に移りつつある
    • 世界的な方向。いろんな国がいろんな努力をしている
    • ひとつは出版物のデジタル化。紙のものをデジタルにする。
    • もうひとつは最初からデジタルのみで発行する。ケータイ小説や学術雑誌の電子ジャーナル
    • ネット情報の収集・利用の重要性。いろいろな情報を全部集めるのが適当かどうか?
      • 今年7月に国会図書館法改正。web情報を許諾なく集められるが、範囲は国・地方公共団体・国立大学・独立行政法人等のwebサイトに限られる。これをNDLが蓄積し利用に供することができるように。
    • 著作権法も改正。国会図書館は著者の許諾なしですべての書物をデジタル化できる。
      • 目的は書物の保存。資料の利用で1冊しかない本が傷むのは問題なので、デジタル化して複写・コピーはデジタルなものからできるように。
      • 外国ではすでにやっているところは多い。日本でもできるようになった。
  • 電子図書館の利点・・・いつでもどこでも利用可能になるべき
    • 現時点では公衆送信権の問題で実現できず。著作権が切れているものはデジタル化して配信しているが、著作権のあるものは遠いところからは利用できない。NDLに来てもらわないといけない。出版社の経済活動を考えるとやむを得ない段階。
    • 書誌情報はデジタル化すれば自動的に付与できる。現在の図書館の手間のかなりの部分が自動化できる(一部は人手の判断もいる)。
    • キーワードの自動抽出・自動分類・関連図書のリンク付けなどもできる。
  • 電子図書館で一番注目しなければならないこと・・・検索の単位が従来の図書館と全く違う
    • 従来の単位・・・本1冊、資料の1つずつ
    • 電子図書館・・・本の単位を超えて章・節・パラグラフ・文・図の単位で引っ張り出せる。
    • 現在、目次検索は一部の図書館で出来るが、その「目次検索」とは目次中の単語を検索できるというだけ。私(長尾館長)が考える目次検索とは目次に従い構造化された図書を検索して、必要な章や節だけ、索引語のあるページやパラグラフ、文だけ取り出せる検索。検索単位は利用者の必要に応じて自由に設定できる。
  • テキスト検索の種々
    • 書誌事項、シソーラス等によるあいまい検索、目次階層構造検索(Aという単語が出てくる章の、Bという単語が出てくる節だけ取り出す、とかができるように)
      • 地震について書かれた章の、洪水について触れた節を取り出す、とか
      • 研究上は開発したが実用化はされていない。電子図書館が立派なものになっていく上ではこういう検索が実用化される?
    • 学術書については何百ページもの本を全部読む必要はないし読む人もいない、必要な部分を取り出して読むわけで、それに貢献できる
  • 自然言語処理技術によって色々なことができる
    • 自然言語を用いた質問や対話型検索もできるように。
    • 電子図書館が利用者にとって身近なものに。自由に使いこなせるシステムになって行く。
  • そう考えると、書物の解体を考えざるを得ない。
    • 著者にとっては書物は1冊のもの。最初から最後まで一貫して書かれている。
    • 利用者の立場にとっては(小説は別にして)最初から最後まで読む人もいるだろうが、必要なところだけ取り出して使ったりアレンジしなおす(再編集)。
      • 学術書の大部分はそう。他者の引用の間に自分の意見を埋め込む。実質的には書物は解体して思うストーリーに従って並べられながら議論に使われている。
      • 電子図書館の実現はそれをスムーズに、自由にできるようにする。
    • 学術図書、論文は過去の成果の上に作られていく・・・書物の解体・再構成ができるようになることで非常にうまくできるようになる。
    • こういうことを言うとオリジナルの著者は、自分の著書を切り刻まれることに怒るかとも思うが、学問研究や著作業は今までだってそう言う風にやっている。それをコンピュータの世界で自由にやれるようにするだけ。憤慨されるのもわかるが、次の人たちの創造性のためにはやむを得ないこと。
  • 情報検索は本の単位からより細かい単位へ・・・情報検索から事実検索あるいは知識検索へ
    • 検索した時に出てくるのが「この本のどこかに書かれています」から「この本のこのページのここに載っていました。今、それを面前に見せています」と言う風になる。
    • まだ実現はしていないが研究している人間は何人もいる。私は自分自身で研究する時間がなくてやれていないが、若い友人諸君はそういう方向でやっているし、外国でも注目し始めている人が出てきている。
    • Wikipediaのようなものを検索すると知識をどんどん取り出せる。それを構造化して自分なりの、自分のための知識システム・百科事典を作ることもできる。自分の見方で知識全体を再構成できる。
  • 知識を蓄積・構造化するのは人工知能研究の一つの理想だが、難しい。知識の構造化には「どういう観点が」というのが欠かせない。自然科学の知識ならニュートラルに構造化できるが、人文科学的なものは簡単にニュートラルに構造化できないし、できたとしても個人の見方と一致するとは限らない。
    • 電子図書館の事実検索である種の構造化を作り、それに自分の見方を投入することで作りなおす、それによって自分の見方による構造化ができる
    • 日々の考え方の違いに合わせてダイナミックに変わっていくことも実現出来る?
  • 電子図書館がそうなると・・・出版事業が成り立たなくなる
    • ただで見られると本が売れなくなる。出版者・著作者が生きていけなくなる。
    • 利用者と提供者の双方が妥協もしくは満足できるある種の閲覧ビジネスモデルを作ることが大事
    • 一つのモデルを提案(長尾先生のいつものモデル)
      • 遠隔利用者は読書端末から図書館資料を借り出して読む、図書館は無料で貸し出すがアクセス料金(従来における交通費に相当)を支払う、それを出版・著作者に還元するモデル
      • このモデルが唯一のモデルではないが、なんらかの形でお金の動きを考えないと成り立っていかない
      • 図書館は無料サービスに徹しないといけないが、利用を考えたときに出版者にいくばくかのお金を払うモデルを実験的にやってみて、いくらの金額なら成り立つかを確かめる必要がある
  • これからの電子図書館についてはやるべきことが非常にたくさんある。方向は未知、やってみないとわからないことも多いが、世界的に見て図書館の電子化、いつでもどこでも誰でも人類の知的資産を活用できる環境は作らなければいけないし、情報技術の発達を考えれば出来る。

指定討論・質疑応答(司会:岡本真さん(ACADEMIC RESOURCE GUIDE))

金正勲さん(慶應義塾大学)

    • 長尾先生から技術的なお話があったが、これまでの電子図書館は肝心な問題に触れないままできた。そこにメスを入れて具体的な実現案を考えるべき時期にきた。
    • 3つのコメントをする。
      • 電子図書館の形態を分類するときにどういうのがありうるかの話
      • Google Book Search問題について。事前許諾は必要なのか、オプトアウトにするのかの考え方
      • 法廷許諾制度によるオプトアウトで権利者の保護が弱くなる。それに対し補償金制度を導入している韓国の事例を紹介する
    • 電子図書館の分類軸
      • 推進するのは公共? 民間?
      • 営利? 非営利?
      • 集中? 分散?
      • オープンアクセス? 閉鎖的なアクセス?
      • この4つの軸で電子図書館の形態分類ができるのでは?
      • ex) 民間・中央集権・営利・閉鎖・・・商用データベース
      • 民間・中央集権・営利(広告収入と利用記録の利益)・オープン・・・Google Book Search
      • 民間・中央集権・非営利・オープン・・・Internet Archive
      • 民間・分散・非営利・オープン・・・Wikipediaとか
      • 公共・中央集権・非営利・オープン・・・NDLとか
    • Googleのオプトアウト方式に対する著作権制度の対応
      • オプトイン:事前に許諾を得たものをデジタル化して提供、オプトアウト:許諾なしでデジタル化して提供・著作権者は拒否したいときには自分から申し出る
      • 従来の電子図書館プロジェクトはほとんどオプトイン。Googleはオプトアウト。
      • オプトインは利用者の負担が大きい、オプトアウトは権利者の負担が大きい。
      • 取引費用から比較すると・・・
        • オプトイン:検索費用+許諾意向確認費用+交渉費用が利用者(電子化推進者)側に発生。大規模な図書のデジタル化・提供は出来ない。
        • オプトアウト:監視費用+通知費用+交渉費用が権利者側に発生。
        • 費用負担主体が変わっている。両方式の費用と便益を比較した上で制度判断する必要がある。
    • 著作権の権利処理における選択肢
      • 個別交渉
      • フェアユース(アメリカなど)
      • 集中権利管理
      • 図書館への特例的免責条項を新設する
      • 法廷許諾精度+補償金制度の導入(事前に著作権者の許諾がいらない代わりに補償金が支払われる)
    • 補償金制度を導入した韓国の事例
      • 2000年の著作権法改正・・・図書館内・図書館間の複製・伝送を区分せず図書館側の免責を無制限容認(著作権者の権利はほとんど認めない!)
        • 1997-1998の金融危機から国家としてデジタル化しないと先がない、との思い
      • 無制限はさすがに・・・ってことで2003年の再改正で利用と保護のバランスを取ることに
        • 図書館間の伝送が論点に
        • 販売から5年以内は図書館間の伝送は禁止。5年過ぎたら容認。図書館内は発行直後から許諾なしでデジタル化・複製できる。その代りに補償金の支払いがいる。
        • 館内での同時閲覧者数も無制限⇒所蔵数もしくは許諾された数のみ、に
        • 出力も補償金支給でOKに
        • 非販売図書は補償金なし
    • 図書館補償金制度とは?
      • 権利者の許諾なしにデジタル化等ができるが補償金を支払う
      • 目的は電子図書館構築推進と権利者への正当な代価
      • 複製は無料、出力する際(プリントアウト等)に補償金が発生
      • 1ページ5ウォン、1ファイル20ウォン
      • 徴収と分配は韓国複製伝送権管理センターが担当
      • 政策目的と提言
        • 目的:デジタル化と著作権者の権利保護のバランス
        • 提言:公共図書館による電子図書館事業へのオプトアウト方式の適用+補償金制度の導入で権利者への正当な代価を確保

津田大介さん(ジャーナリスト)

    • 金先生から具体的な話があったので、僕からは自分の経験から考える本の未来について語りたい
    • 僕がいま35歳。物書きになりたいと思ったのは高校生のときで、新聞部で原稿書いて読んでもらうのが楽しいと思っていたころ。そのころ『別冊宝島』で『ライターの事情』という本が出た。かなり面白くてライターを面白そうだと思って、大学を卒業したら出版社に行ってライターになろうと思った。そのときの本の中にライターがぶっちゃけトークをする座談会があって、その中で40歳を超えたフリーライターがどうやって生きるかという話があった。雑誌の編集者は年上のライターを使いたがらないし、徹夜できなかったり機動力がなくて40過ぎたライターは仕事が減る。それに対する対策は、作家になるか、分野を絞った専門分野の第一人者になるか、編集プロダクションの経営者になるかしかないと言われていた。
    • その後、大学からバイトでライターをしながら業界に入ったが、実際40を過ぎるとなかなか仕事がなくなっていく。一緒に働いていた人がある日ぱたんと消えたり。構造的な問題。
    • 27の時に独立してからずっと物書きをしているが、3つの道のどれかをやりたかったので最初から小さいけど編集プロダクションとしてやってきた。実用系のライターとしてキャリアを始めたこともあったので、プロダクションの収入もあってよかった。それが2001年くらいにどんどん雑誌が潰れて仕事も減ってきた。明らかにピークを越えている。じゃあどうしようか・・・と考えて、2002年くらいから自分のやりたい専門分野のサイトを作った。
    • 名前を出して(webで)ものを書くきっかけは1999年にNapsterが公開されてすぐに触ったこと。聞きたい曲を誰かがアップしていて、検索してダウンロードして聞ける。音楽業界のビジネスモデルを変える直観があった。
      • 音楽業界はデジタル化も早くて、そこで置きたことは他にも波及する。出版界も逆らえないだろうと思った。
      • デジタルがコンテンツビジネスをどう変えるのかの取材活動を始めたきっかけ。
    • インターネットで書くだけでは名前が売れない⇒単行本を出した。そこまでヒットはしなかったがそこそこ売れた。
      • コスト的にきつい。雑誌のライターは食べるのには困らない。
      • 単行本は腰を据えてやると雑誌の仕事が止まるし、収入が減る。今の単行本は初版5,000部だから印税70〜80万円。かけた労力に見合わない。
      • 名刺みたいなものなので単行本は必要だが、それだけで食うのは厳しい環境。
        • 売れない本を作る著者が悪いとも言えるけど、それ以上に出版業界の構造に単行本を書いても売れない問題がある。
        • そこから先がどう変わるのか? 著者はどうやって生きていけばいいのか?
        • 半年〜1年かけて本を書くのは大資本に守られた、新聞社とかテレビ局なら出来るが、フリーの個人だと生活を賭けてやらないといけない。難しい。
    • 40を超えて仕事の転換点を迎える著者を出版業界で殺さないためには? 若い書き手をどう取り込むのか?
    • 2006〜2007年ころに同業者が食えなくなって出版業界を去っていく
      • スキルを活かせる別業種、携帯電話の情報サイト編集者や企業のプレスリリースの書き手等に移っていく
      • 出版界のスキルがITに流動化
    • 書き手が食える収入をどう確保するのか? かつ出版社が潰れないためには?
    • 音楽と出版との違いについてコメントをいただいたが・・・
      • 音楽業界のビジネスモデルの基本はCDを売ること、パッケージを売ること。それは出版にも近い。最近音楽配信や電子図書が売れてきているのも似ている
      • 大きく違うのはコスト構造。
        • CDは3,000円のうち物理コストは60円。2,900円の付加価値。利幅も多い。
        • 本は紙代・印刷代が高い。30〜50%は物理コスト。いくらヒットしても利益率が大きく違う。
      • 一方本の強み・・・CDはCDそのものに需要があるわけではない/本は電子図書とはパッケージと非パッケージの差が大きい。コピーもしづらい(本1冊コピー機でコピーしたら買うより高い)
    • これからの本の未来・・・
      • 情報に対して人々がどう接するかの観点から。
      • Twitterで情報を流していて思ったのは、リアルタイムでしか流れていない情報がテキスト化されて流通するのは非常に価値があるということ。これからの出版者の役割は自分の興味があることや著者の活動についての情報のファンクラブみたいなこと。ある出版者はこういう著者を抱えていて著者のネットワークも持っていて、それをファンクラブ化して情報を欲しがっている読者にプッシュして課金していくとか。情報の仲介業。著者・出版者しか持っていない専門家の知識をつなげてネットワーク化して、どうビジネスにつなげていくか。
      • 素材の話もけっこう大きい。紙はこれから高くなる一方。それに代わる新素材の何かが作れて、それに電子データを埋め込めて・・・みたいな使い方ができるとか。そういうものを作ることができないか。
      • iPodが売れたのはCDを全部データ化して外で聞けるというライフスタイルを提案して、それが受け入れられたから。本もそれをデジタル化するとライフスタイルが変わることの提案を業界で考えなおす必要がある

橋本大也さん(IT起業家、ブロガー)

    • 自然言語処理とか検索履歴のベンチャーをやっている。長尾先生のお話を聞いて自分の方向は正しいんだ、と心強く思った。
    • ベンチャー企業の創設や大学の授業を教えたりしている。いくつか著書もあるので書き手かつ読み手。
    • 今日はたぶん書評ブロガーとして呼ばれたんだと思う。今までに1,200冊を超える本を紹介、「クローズアップ現代」に取り上げられたり書評集を出したり。新聞にも取り上げられたり。
    • 年に500冊、買うか貰うかする。献本もどんどん来る。年300冊読んで200冊紹介、アフィリエイト収入もけっこうある
      • 様々なフィードバックをもらう面白さもある
    • 長尾先生のブループリントを見て・・・
      • 世界最大の電子図書館はインターネットそのもの。
      • webの数は1兆ページを超えているとも。
      • 民間企業と市場原理で書籍デジタル化も確実に進んでいく。
      • 図書館、出版者、著者の役割の再定義が求められている?
      • 私自身は出版にどっぷりではないので客観的な立場(?)で問題提起
    • "教会"としての物理的図書館
      • 帰国子女だった自分は日本の学校になじめなくて、地元の図書館に逃げてそこで大検を知った。
      • 居場所として使えることのありがたさ。万人を迎え入れて、静かに放っておいてくれる。
      • 公共性はマイノリティや弱者を救済することに意味がある。図書館に救われた。
      • キリスト教における教会的な物理空間としての公共図書館。それっぽさを感じさせる空間としてあり続けてほしい。
    • 著者の印税が9割になる出版モデル
      • 年7万点を超える出版物・・・うち9割は数千部以下。学術書だと数百部とか。今の印税率だと1冊書いても100万円入らない。
      • 身のある本なんて1年に1〜2冊しか書けない。10冊以上書く人もいるが中身はうっすい。書いている人いたらごめんなさい。
      • インターネットやブログで情報頒布のチャンネルが増える。著者の取り分1割の構造が変えられるかも?
        • 搾取の構造とは言わないが、流通パワーに頼らなくても売れる本もあるかも。デジタルで直販するなら著者取り分9割とか。それなら1冊で900万円貰える。
      • 著述で生計を立てる人が増えるのがコンテンツ立国の第一
    • 有益な書評がすぐに見つかる仕組みの構築
      • セマンティック・ウェブの取組み
      • å¹´500冊以上読む、多読である分はずれを引きたくない。そこで書評は重要だが、いい書評はなかなかない。
        • 一般の新聞はそこそこいいが、アカデミズムの人は一般の参考にならないことが多い
        • Amazonのレビューは信者がいたり数人の偏った連中が不当に評価を下げたりする
        • 本の面白さ・・・動機づけが十分で、未知の内容が書かれていて、難易度や趣味が自分に合致する本が「面白い本」。えらい先生の書評よりも感性の近い友人や先輩の方がいい。
        • ネット情報だとTwitterã‚„SBMがあるが、紙の本にはそういうのがない。デジタル化で出来るといい。
    • 著者により多くの感想・反響フィードバックがある世界
      • 読者からの感想・フィードバックは紙媒体だとなかなか得られない。よほどの大作家じゃないといただけない。
      • ブログは著者と読者の連続的な共振で面白いコンテンツができることがある。最高のプロダクションシステムに進化しつつある。そういうダイナミズムが紙の本には薄く、著者の勘違いが良くも悪くも是正されない。
      • ネットだと感想が可視化されやすい。出版は×
    • 永久アーカイブとしての国立国会図書館
      • ブログは今や大切な人生の記録。未来の世代に読まれるかも、と思うと背筋を伸ばして書いている。
      • Internet Archiveを見て感動。Internetすべてのバックアップを取ろうというのをはじめてみたとき、「国立国会図書館みたい!」と思った。
      • 一部の出版物の著者だけではなく、国民の記憶と記録の永久電子アーカイブは大きな意味を持つのでは?
        • jpドメインとか日本語のコンテンツは自動的にアーカイブされて日本国に保存されるとか。そうすれば外国人ですら日本語で書きたいと思うかも!
    • 一番重要なのは・・・
      • 図書館、出版、新聞、書籍のユーザは高い年代が多い。本当に未来を決めるのはデジタルネイティブ。そこの意見をもっと聞くのが重要では?
      • 個人的には2010年くらいにすぐれたデジタルデバイスが出て紙は徐々に消えていくのかと思う。

パネルディスカッション(司会進行:岡本真)

    • 岡本さん:今日は私はコーディネータに徹したいと思うが、冒頭の方でTwitterに全体の趣旨を問う意見があった。そこでまず今回の趣旨を説明した上でパネルディスカッションに入りたい。
    • 岡本さん:なぜARGフォーラムをやりたいかというと、もともと私は出版業界にいて出版業界あほらしくなってやめてYahoo! Japanに入った。出版業界だめだと思うのは今さらGoogleの和解問題を取り上げて直接的な対応の話ばかりしている。もっと未来を考えるべきではないか。正直、出版関係のイベントで壇上に上がっている50代はデジタルがどうなろうがwebがどうなろうが関係ないだろうが、30代の編集者や書き手、あるいはもっと下の世代にとってはどうか。だから若い世代をそろえた。それから文化論や産業論に終始しない、執筆経験があって産業構造も分かっていて情報技術にも明るいが情報強者にならないような人を集めて、長尾先生のご意見に対してどういうことを逆提案できるかということで1セッション持った。ではまず長尾さんから3名の方へのコメントから。
    • 長尾さん:まず金先生のことについて。オプトアウト・オプトインはもっともっと議論すべきと思う。韓国のモデルも確かに一つの生き方だが、日本の場合は補償金を国が出せるようなシステムにするのがなかなか難しい。金銭的な予算もだが、権利者や社会全体のコンセンサスを得られるかどうか。時間もかかるし大きな問題である。社会的な議論が要る。それに対してJASRACのように音楽についてはビジネスモデルが出来ているので、それに類似したモデルを本で作れないか。ただ、音楽は図書館がない世界でモデルを作っているが、本の場合は図書館を含んだある種のビジネスモデルを考える必要がある。そのとき韓国のモデルをそのまま持ち込むことができるのかどうかももっと議論をする必要があるし、なるべく早くやらないとGoogleとかがどんどんデジタル化を進めてしまう。日本の知的資産を日本国内がきっちりデジタル化できなくなる、それは大きな問題。
    • 長尾さん:津田さんのお話についても、どういう流通モデルを考えたらいいか。これが著者がうまく生きるための一番大事なモデル。紙のコストが高いことは事実なので、なんとかコストを下げた形の出版モデルを考えていく必要がある。特に、新聞とか、紙を大量に消費する場合には森林を伐採したり印刷にもエネルギーを使う。流通のためにトラックも使う。そういったことを考えると環境問題・エネルギー問題としても紙の世界からデジタルに移ることは必要なんじゃないか。著者や出版者も生きていけるようなうまいモデルを考える必要がある。
    • 長尾さん:橋本さんの5つの提案は非常に興味がある。最後の永久アーカイブとしてのNDLの件だが、ブログ等を永久保存することも確かに大切で、NDLとしては数年前にInternet Archiveと同じように網羅的収集できるように検討を進めた。しかしwebサイトの中にはいかがわしいものもあるし、問題になるようなものもある、それも集めていいのかとかいろいろな意見が出てきて、国立国会図書館法の改正に持って行けなかった。その結果、一番安全と言うか信頼できる国に関係したwebサイトは許諾なしに集めることができるようにしたが、本当を言えば網羅的に収集したいし、やる必要がある。やることで日本の文化が半永久的に保存されて後世の人に利用されると思っている。が、現時点での社会情勢だと国がなんでもかんでもというのはいかがなものか、という意見の人がけっこういて、それを無視することができない。法律で強制するところに持って行けないでいる。
    • 岡本さん:では指定討論参加者の中で再コメント、あるいは他の方へのご意見等あれば。
    • 金さん:長尾先生の話について。オプトアウト方式がいいというよりは、となりの国で9年前に議論もあって6年前に試行錯誤もしていたのに、日本は今スタートに立った。この9年間のタイムラグが問題。また、図書館補償金は利用者側がお金を負担するモデル。政府の予算負担はない。3つ目にこれらのモデルが日本の現行体制で合意形成できるかは懸念されるところだが、長尾先生のおっしゃるように議論を続けることにプラスして、最終的な政治的・政策判断が必要。日本はすべての領域で完全な合意形成ができないと政策判断をしないが、立法府がしっかりした立法能力を持つのを待つのも難しいので政策的な働きかけをしていくことが必要では?
    • 津田さん:日本のwebのアーカイブとかで邪魔してくるのは「権利」。Google Book Searchも象徴的だが、自分は発表のあったその日に著者登録するくらい大歓迎だったが、これから情報流通の環境が変わっていく中で既存の制度や権利の中では追いつかないビジネスモデルやシステムが出てくる。そういうときに権利を捨てる必要はないが、流通させるためにいったん保留しませんか、ということは思う。いったん保留して、ビジネスモデルとしてうまくいくものがあればのっていく。そういうことは政策的にも求められている。逆を言うとGBSしかああいうのがないのが不健全なので、似たようなビジネスモデルを構築しないと。第2、3のGBSが出た時に「1番条件いいところだけ契約します」ってのがあってもいい。Googleに全部持っていかれるということにならないように出版業界から日本版のGBSのようなものが出てこないのが残念。政策で何ができるかと言えば、情報環境が変わるものに対しての対応力を広めること。原理が邪魔をしないで流通できるモデルをいろんなチャレンジャーができるモデルを作るのが政策的なところ。もうひとつはコスト削減。人間が介在する部分のコストは下げるべきではないが、物理的なコストを下げるための補助は産業的な視点から考えるべき。紙に代わる新素材の発見を出版業界を挙げて国にお願いするとか。コスト削減のために業界全体で何ができるのか。
    • 橋本さん:金さんのお話はまったく知らなかったので興味深かった。Google Book Searchは凄いと思ったが意外に自分では使っていない。普通のGoogleの方を使う。書籍が網羅的じゃないせいかもしれないが、もしかすると書籍はランダムアクセスに向いていなくて、途中でキーワードでひっかかっても意外に利用しなくないか? ものすごい文化の脅威とかじゃないのかも、と思ったりする。韓国で図書館の電子化が進行したというが、文化・社会・ビジネス的な成果とかってなにか起きている?
    • 金さん:一つの図書館が今までの50〜100の図書館の機能を果たせる。地方の蔵書の少ない図書館でも、どこに住んでいても最も豊富な情報へのアクセスが可能になる。もともと図書館はユニバーサル・サービスの保障が重要な役割と思うので、デジタル図書館でそういう目的に近くなるのではないかと思う。
    • 岡本さん:えんえんと同じ議論をするのは避けたい。話の論点、今後こういうフォーラムを持ったり人と話すときの論点を持つのが重要ではと思う。オプトイン・オプトアウトについては数年前に国会図書館の近代デジタルライブラリーには15〜16万冊の本がデジタル画像として読める。これは著作権者を調査して、どうしてもわからないものは文化庁裁定で入れた。そのコストが、著者1人あたり2,300円くらいかかったとのこと。オプトイン・アウトを考える際もこういう実証データを見ながら考える必要があるのかと思う。が、そこにあまり細かく入っても「本の未来」って割に現実的すぎる気はするので、橋本さんがおっしゃっていた「著者が90%」、あれはいい。津田さんがお話のビジネスの構造としても重要。9割ならきっと書く。(今は)本を書くよりARGフォーラムの方がベネフィットになりそうだが、それが変わるかも。あるいは人気ブログ著者を出版者側がネットワーク化する話とかをもっと。
    • 橋本さん:マドンナがコンサート主体で稼ぐようになったっていう話もあるが、基本的にはブログやインターネットを通じてファンを集めることから始まる。自分でファンとスターの関係を築いて会員組織を作れれば9割直販もできるかも。もう1つは専門に特化してとか、学術書・専門書・サブカルチャーはニッチテーマでも濃い読者を集める可能性がある。とにかく自分が掴んだファン層をコミュニティとして維持することが近道。津田さんなんかそのあたり近くない? Twitterの・・・
    • 津田さん:TwitterにURLはると1,000〜2,000クリックされる。(話題変わって)9割著者モデルは著者が自分で作るならできると思うが、僕は出版者や編集者の意義を感じている。9割とは言わないが、50%-50%のモデルが出来ないかとは思う。フェアで対等な関係を作ることがこれから考えないといけないこと。著者は原稿書くけど、取材や販売のために編集者が必要だったり、コネクションだったり、訴えられりするリスクのセキュリティだったり・・・出版者の役割も個々人の属人性に頼っていたところを機能化して、著者は信頼できる出版・編集と組んで出来るように、とか。著者に対してのエージェント機能を果たしたうえで、パブリッシングとマネタイズをする機能を提供すればインターネットにも対応できる。もちろん何部出すかのサイズにもよるが、既存の出版業界とは違う対抗軸として、50%-50%のもうけにするモデルができないかは考えている。
    • 金さん:私は90-10でも99-1でも、市場原理に基づいた割り当て方なら問題ないと思う。著者が出版者なしで力を証明して、出版者に90の価値がないことを示せばそれがメインストリームになる。成功すればフォロワーが増える。今の90-10を感情論的に議論しても意味がないかも。
フロア質疑
    • カゲヤマさん(?):今Scribdとかで有料で出してたり、出版者使わなくてもって点では金さんがおっしゃったように出してお金取れるんだったらいいじゃないというような。iPhoneのアプリでも電子出版やっていたりするし、ああいった流れは今後加速するだろうと思っているが、9割とは言わなくてもiPhoneなら7割、Scribdなら10割取れるし、そういうのが進んでいくのでは?
      • 橋本さん:でも実際には電子書籍で儲けるのって大変で、情報商材みたいなのを除くとまだまだ難しい。でもたとえばファンクラブみたいなのはいっぱいあるし、出版者は気付かないモデルもいっぱいある気がするが、出版者は介在しないから気付かない(笑) 自分のホームページで、見たいのは増えていくかも。あとは課金できるかが問題になってくる。個人でコンテンツを売りたい人が課金できるようなモデルとか。これまでマイクロペイメントとかは成功していないが・・・何かのプラットフォームの中で出来るとうまくいくかも。あとはおすすめって重要。Amazonは統計的なおすすめだけど、親しい先輩や恩師からのおすすめみたいのがあってお金が動くといいかな、と。
    • カゲヤマ(?)さん:アプリとかで本当に儲かってる人はみんな黙る、って言う話がある。でも言わないとメジャーにならない。
      • 橋本さん:身近にも儲かってそうな人は多いけどあまり言わない。
    • (?)さん:津田さんの出版者のエージェント機能の話。欧米はそうだし、自分でもそうしたいが、現状を見ると新人の方をベストセラーにしても一瞬で他社からオファーが来てぱっと色々な出版者で出す。お金をかけて相談にのってイベントをやってあげてもまた他から持って行かれたり。最初の契約がしっかりしていないので難しい。著者の立場からするとどういったことがあったら特定の出版者とエージェント関係を持つのか、出版者が投資に見合うようにできるのか?
      • 津田さん:プロ野球みたいに1年縛りとか、緩い縛りなら著者も飲めると思う。本を書く人って出版者が何をやってくれているかわかっていない人の方が多い。担当編集がやってくれたりやってくれなかったりもするし、著者と出版者の関係でそう言うところが見えない。全部オープンにして、関係性がオープンになれば・・・著者間で情報も共有されるようになっていくと適正な競争が働くのかと思う。クローズドにやっているが故にかっさらわれたりもする。オープンになることで「ここはこうなんだな」とわかるというのがあると思うので、クローズドになっていたところをオープンにした上で著者と付き合うしかないのかな、と。
    • (?)さん:オープンにして新しい契約を結んでみたいと思う。

閉会の挨拶(全体司会:内田麻理香さん(サイエンスコミュニケーター/東京大学工学部))

  • 登壇者に盛大な拍手を!



いやあ・・・面白すぎだろうこのフォーラム・・・なんだこれ・・・。
「著者9割」のところについては美どりさんのブログでコミケでの同人誌について触れられていますが、付け加えるならDLsite.com(DLsite:同人誌、同人ゲームからPCソフト、コミックまで二次元総合ダウンロードショップ | DLsite 総合トップページ)等のダウンロード販売だと印刷・製本費用のところなども解決できてますますそれっぽい気がするんですがそのあたりどうなんでしょうね?
フロアディスカッションで「儲かってる話は表に出ない」という指摘がありましたが、同人のダウンロード販売での儲けがどうなっているのかとかもフォローしていけると電子書籍関係の話としては面白そうだな、とかなんとか。


そのほかの感想や考えたことについては後日あらためて。




# 2009-08-22 02:27追記

1度ならず何度も出版「者」になってるのが…眼が引っかかるよ…

出版「社」になっているときの方が自分的にはミスです>id:yuco さん
明確に経済活動をプッシュされている場合は商業出版社としてとらえてよいのでしょうが、そうでない場合については別に営利企業でなくても出版してりゃ出版者なので・・・ってことでむしろレポート取ってる最中は「出版社」になってしまうのを必死こいて「出版者」に直してました。
それでも何箇所か「出版社」になっているところが確認したらありましたが・・・(汗)