JR東・西武鉄道が技術分野で連携強化 鉄道ライターの私が今後を期待してやまない3つの理由
キャッチコピーを具現化した西武鉄道
西武鉄道はかつて所沢車両工場を構え、1954(昭和29)年から1999(平成11)年まで通勤形電車の多くを自前で用意していた。1987年以降は車両メーカーへの発注が増えたことから、2000年6月15日をもって閉鎖した。跡地は商業施設として再開発される。
21世紀に入ると新型車両の開発に女性社員が参画し、ユニークな車両が誕生した。その第1弾は30000系スマイルトレインで、たまごをモチーフに先頭車の前面は柔和な笑顔を浮かべた表情を見せ、車内は車体幅の拡幅と高い天井も相まって広い空間を創出。つり手はたまごをイメージしたかわいらしいものを採用した。小柄な人でもつかみやすいよう、高さを30ミリ下げている。荷棚も50ミリ下げて荷物を載せやすくしている。
優先席は背もたれにハートやスマイルを意識した模様を配し、つり手も。鉄道車両にありがちな質実剛健を脱却し、楽しい雰囲気に仕上がった。外部のデザイナーに頼らない車両としては傑作といえよう。また、鉄道車両では初めてキッズデザイン賞を受賞した。
第2弾は40000系で、10号車の乗務員室寄りをパートナーゾーンに充てて、車いすやベビーカーが利用しやすいようにした。幼児が車窓を楽しめるよう、側窓の大きさを拡大。簡易的なロングシートを設けることで、車いすの介助者、ベビーカーを押す保護者の負担を軽減している。乗客の目線で設計された40000系はキッズデザイン賞の最優秀にあたる内閣総理大臣賞を鉄道車両では初めて受賞した。
特急形電車では、著名な建築家とデザイナーの計4人による合作の001系ラビューが登場。弾丸のような先頭形状、一部を除きタテ1350mm、ヨコ1580mmの超大型側窓、リビングのような居心地の良い空間が強烈なインパクトを放ち、鉄道友の会ブルーリボン賞、キッズデザイン賞、グッドデザイン金賞(経済産業大臣賞)をそれぞれ受賞し、“三冠王”に輝いた。
一方、ハード面ではパイプ状ドアパネルを用いた軽量型ホームドアを開発し、国分寺駅の多摩湖線ホームに設置された。従来のホームドアとは異なり、車両側に設置された非常ボタンがホーム側でも押しやすい。列車内で非常事態が発生した際に押すことで、乗客がホームに避難しやすくなるのではないだろうか。