日経メディカルのロゴ画像

TOP
  • 事例研究
  • レポート
  • ニュース
  • インフォメーション
『医療とIT』は2012年4月1日より『デジタルヘルスOnline』に全面移行しました

慈恵医大が5月中に試験運用開始、iPhone対応脳血管障害治療支援システム「iStroke」

2010/05/18
本間康裕

3Dの画像を8方向に回転させて閲覧できる

 東京慈恵会医科大学附属病院(慈恵医大)は、iPhoneを活用した脳血管障害治療支援システム「i-Stroke」を導入する。5月中に試験運用を開始し、秋ころに本格稼働を予定している。慈恵医大の村山雄一教授と高尾洋之氏が、医用システム構築・コンサルタントのトライフォーと共同で開発した。

 この「i-Stroke」は、救急患者に対応する病院向けのシステムで、脳卒中など脳血管障害に対して脳外科医の医学的判断を支援するのが目的。医師が病院の外でも、ソフトバンクの3G網や無線LAN網を経由して、iPhoneで患者のCTやMRIの画像を閲覧し、治療に判断を下せるようにする。高尾氏は「5月中に試験導入を開始して、8月には細かい修正を実施。9月~10月には実用に移したい」と語る。
 
 具体的には、連絡を受けた医師はiPhone上で専用ソフトを起動させ、パスワードを入力して画像をダウンロードする。通常の2次元画像に加えて、3D画像を8方向に回転させて閲覧できるほか、動画(mpeg形式)の閲覧もできる。また、血栓を溶解するtPA治療法における禁忌項目のチェックなど、治療支援のためメディカル情報もiPhone上に提供する。iPhoneの固有のIDであるUDID(Unique Device Identifier)を、あらかじめ本体のデータベースに登録したiPhoneのみが、サーバーにアクセスできる仕組みになっている。
 

禁忌項目のチェックリスト。該当している場合はアラートが表示される

 通常は、頭痛を訴えている患者が運び込まれるとまずCTやMRI検査を行い、脳外科の専門医が画像を見て診断して処置を行うが、医師が帰宅や出張などで不在の場合は、電話で呼び出して病院に戻ってもらう必要がある。しかし、スタッフがCTやMRIの画像を、iStrokeを利用して専門医のiPhoneに送信すれば、(1)早急に専門医の一次診断を仰げるためすぐに適切な処置ができる、(2)専門医自身が病院に戻るべきかどうか判断を下せるため意義の薄い過重労働を防げる、という2つのメリットがある。

 i-Strokeは、もともとトライフォーの開発したiPhone対応医用画像遠隔閲覧システム「ProRad Diva」に、3D画像や動画閲覧などのi-Stroke専用機能を追加したもの。システム形態はProRad Divaとほぼ同じで、専用サーバーとUPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)、クライアント端末、VPN接続のためのルーターからなる。

 専用サーバー は、PACSサーバーとネットワークを中継する。DICOM形式で保存された画像は、サーバーでjpeg形式に変換した上で、zipファイルに圧縮して送信される。「どのメーカーのPACSサーバーとも接続できるのが強み」(トライフォーの広瀬勝巳社長)だという。また、個人情報を取り扱うため、セキュリティ面にも配慮している。例えば、配信の際にシステム側で患者名や患者番号を消すことができるのに加えて、ダウンロードした画像を指定した日時、あるいは一定時間で強制的に自動削除するように設定できる。

 トライフォーによると、i-Strokeを導入するのは現段階で慈恵医大病院のみ。ProRad DiVaは、京都の洛和会音羽病院、大阪府立急性期・総合医療センターなど11カ所(導入済みと導入決定の合計)となっている。
(増田克喜=日経メディカルオンライン委嘱ライター、本間康裕=医療とIT 企画編集)

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ