勝間和代の隠したい過去を検証

勝間和代の隠したい過去

2006年9月にJPM証券のアナリスト時代の楽天リポートで大ポカをやり、会社からアナリストレポートを取り消される。その結果会社にはいられなくなり事実上の解雇。金融業界で働く人はみんなこのことを知っているので彼女のことなんて誰も信用してはいない。騙されているのは一般大衆と不勉強なマスコミだけ。

という噂が流れている。上のソースの要点をまとめると以下のようになる。今日はこいつを検証していこうと思う。

  1. 勝間はJPモルガンのアナリストだった
  2. 2006年9月19日付レポートで事実誤認に基づいた分析から楽天を「売り推奨」とする。
  3. それがもとでJPMを解雇された。

まずは1から。勝間和代はJPMのアナリストだったことは間違いない。ITと通信セクター担当のシニアアナリストで、2006年3月の日経の人気アナリストランキングでは通信セクターで11位 ITセクターで17位となっている。
次、2。後述するが確かに勝間女史が9月に楽天の投資判断を引き下げている。しかし、彼女はこの年はITセクターの多くの銘柄の投資判断を下げている。なので楽天だけ投資判断を下げたわけではないことは留意が必要だ。例えば6月にはサイバーエージェントを2段階(強気→弱気)に下げ*1、楽天を9月に売り推奨*2、10月に一休を中立から弱気に*3(6月にも強気から中立にしている)、10月に新聞社の取材に対して新興ネット企業の成長に疑問符を投げかけ*4インデックスを11月に弱気に据え置き*5にするなどかなり派手に投資判断を下げていたようだ。
そして、問題となっているのは9月に投資判断を引き下げた楽天を10月に突然カバレッジを中止して投資判断を無効にしたという事件だ。そのことを報じている日経金融新聞によると

楽天株「売り推奨」突然中止、JPモルガンに批判、楽天「事実誤認」と反論。
企業の圧力に屈したのか――。楽天株の売り推奨をしていたJPモルガンが十二日に突然、意見表明をやめ、さまざまな憶測を呼んでいる。「目標三万五千円」が消えて株価は急反発したが、新興市場の指標銘柄だけに振り回された投資家も多く、企業とアナリストへの批判がくすぶる。
 楽天株は四月三日に十一万円の戻り高値を付けた後、下落傾向をたどっていた。株価動向に経営陣も神経質になっているところに、JPモルガンが三万五千円という目標株価を掲げて売り推奨を始めたのは、九月十九日のことだった。
 八月十八日の中間決算発表を受け、目標株価を六万六千円から五万四千円に引き下げていたのだが、さらに「成長の勢いが鈍ってきた」と、大幅な下方修正をした。
 その九月十九日付リポートでは五万四千円と三万五千円との差について、「永久成長率を二%から一・五%に下げたことで一万円、楽天市場の成長率の下方修正で七千円、楽天KCその他の事業の下方修正で二千円の低下」と説明した。
 以後のリポートでは目標株価を変えずに、楽天への批判のトーンを強めた。楽天が九月二十九日に過去の決算内容を訂正した後の十月二日付リポートでは「ほとんどの訂正が楽天にとって不利な訂正。社内の管理体制で、より楽観的な視点から経営判断がされてきた可能性があることを懸念する」という具合。
 ただ、関係者の話を総合すると、楽天が「事実誤認がある」とクレームを付けたのは、次の四日付リポートが発信された後の一回だけだった。
 四日付では楽天が前十二月期決算に債権流動化益を計上したことに「(他社に計上例は見当たらず)妥当だったのか」と疑問を呈したり、楽天の会計処理の妥当性について「精査する材料が不足している」と書いたりした。これに担当者が冷静に反論したという。
 債権流動化益はクレディセゾンでも過去に計上していた。JPモルガンは「訂正が必要な重大なミス」と判断。六日付で「一部当社の理解不足があった。(楽天の情報開示が不十分との印象を与える)不適切な表現があった」と訂正した。
 さらに十二日になって「調査部で検討した結果、現時点で当社は深い理解に基づいた調査・分析を行える立場にないと判断した」として突然、楽天を分析対象から外した。三万五千円の目標株価も無効、つまり、売り推奨を消したのだ。
 市場には楽天がJPモルガンに強い圧力をかけたのではないかとの見方も出ていた。JPモルガンは圧力の存在を否定、楽天も「JPモルガンの中止決定は寝耳に水」と話していた。
 なぜ自ら調査対象から外したのか、十二日付の文書だけではわかりにくい。調査・分析ができないのは「アナリストの能力不足」が理由なのか、「頻繁な決算の修正など分析者泣かせであること」が理由なのか……。
 JPモルガンでは「楽天の事業がノンバンクなどに広がるなか、通信担当のアナリストが懸命に勉強しても追いつかない」という実態を言いたかったようだ。もう一度、勉強し直して分析を再開する方針だという。
 楽天はJPモルガンからリポートの品質管理の不備について直接、謝罪を受けたもよう。ただ、一般の投資家はカヤの外で振り回されただけ。有力銘柄に重ねて売り推奨を出しながら、突然、調査対象から外す証券会社の行動を無責任と受け止めても仕方がない。楽天の度重なる決算訂正も不信感を招く一因だ。
 両社は市場に正確な情報を流すという点で、緊張感を欠いていたと言わざるを得ない。「決算の修正は単純ミス」(楽天)、「調査対象銘柄の変更はよくあること」(JPモルガン)というばかりでは、幅広い投資家の信頼は得られない。(編集委員 前田昌孝)
2006/10/25 日経金融新聞

以上のように報じている。JPが理解不足があったと認めているあたり、まあミスがあったんだろう。ただ、上の報道はなんか楽天にも厳しい印象を受ける。
さて冒頭の勝間の過去の噂を述べているブログではこれが原因となって勝間女史は解雇されたとするが、問題から1カ月後の11月24日にもインデックスの投資判断を発表(上述)するなどそれまで通りの仕事をしている。それ以後アナリストとしての投資判断に関する記事は主要紙からは見当たらないが、翌年1月7日の毎日新聞にも「外資系証券のアナリスト」という肩書で登場している*6ので会社を退いてはいないようだ。その後、主要紙で勝間女史の存在を確認できず3カ月後の4月には「外資系証券会社を経て独立」という肩書をもち、急にメディアへの露出が増えているのでおそらく2、3月あたりに退社したのだろうと思う。
以上が楽天-勝間事件の前後である。事実関係をまとめてみると

  • 勝間女史はJPMのアナリストであった。
  • 楽天の投資判断の引き下げは勝間女史のレポート(2006å¹´9月19æ—¥)によるものである。
  • JPモルガンがそのレポートで「一部理解不足」を認め、投資判断の撤回をした(2006å¹´10月12日)。
  • 勝間女史はその後もJPモルガンでふつうに仕事をしている(2006å¹´11月24日のインデックスの投資判断)。
  • さらに数ヵ月後の翌年2007年の2-3月に退社している(少なくとも1月までは外資系証券会社アナリストの肩書で活動)。

ということになる。私の結論を言えば、勝間女史になんらかのミスがあったことには間違いがなさそうだが、解雇になるような重大なものではない、ということだ。外資証券の体質から考えて、重大なミスがあったのにも関わらず数カ月も放置しておくのは考えにくい。ましてや外資系では多大なボーナスのでる12月をまたいでから解雇というのはあり得ない。切るなら12月の前だ。だから重大なミスでもないし、空売りをしてたなんてのは論外である。まあ、ミスが尾を引き勝間女史からボーナス受け取り後の年明けに辞めたというのも考えられなくもないが、その辺はもはや検証のしようがない。想像の世界だ。しかしいずれにせよこの退社は彼女のキャリアにとって大成功であったことは疑いのない事実である。

*1:2006/06/16, 日経金融新聞, 20ページ「サイバーエージェント(4751)、投資判断下げで反落」

*2:2006/10/25, 日経金融新聞「楽天株「売り推奨」突然中止、JPモルガンに批判、楽天「事実誤認」と反論。」

*3:2006/10/03, 日経金融新聞, 20ページ「一休(2450)、投資判断下げで大幅続落」(前略)JPモルガン証券が投資判断を3段階の真ん中から最下位に、目標株価を20万円から14万円に引き下げたことがきっかけとなった。JPモルガンの担当アナリスト、勝間和代氏はリポートの中で(後略)

*4:2006/10/31, 日経金融新聞「ミクシィなど新興ネット株軟調――成長持続力に疑問符、広告依存懸念も。」(前略) JPモルガン証券の勝間和代シニアアナリストは「国内のネットユーザーだけが対象では、売上高を百億円規模に拡大するのは不可能」と言い切る。勝間氏の計算では、ブログサービスの運営者は、百万人のネット利用者が一年間、毎日三十三ページのブログを閲覧することで、やっと十数億円規模の広告収入を得られる。国内のネット接続人口数が飽和状態のなか「乱立する個人メディア間で閲覧数の獲得競争が激しくなれば、CGMの収益成長性にも限界が訪れる」(勝間氏)という。(後略)

*5:2006/11/24, 日経金融新聞,「インデックス――今期予想達成濃厚に、海外の収益改善」(前略)JPモルガン証券の勝間和代アナリストは「弱気」の立場。前期の後半に付けた目標株価五万五千円を据え置いた。(後略)

*6:2007.01.10 毎日新聞 東京朝刊「政治に思う:トップランナーからの提言/4 育児サイト主宰・勝間和代さん」