雑種路線でいこう

ぼちぼち再開しようか

至言「そもそもネットって訴えられるもの」

はてブで読めるところがまた面白いんだが、これって著作権法的にどうなんだろう。魚拓をしらみつぶしに消すことは現実的じゃないし、活字媒体と違ってネット媒体で記事を取り下げるというのは、却ってアテンションを高める点で、記事を取り下げて欲しい関係者にとっては残酷だ。この記事も取り下げられたことで、却ってアテンションを高めてしまう訳だ。
普通こんな赤裸々なやりとりって、記者が自己規制して記事にしないよね。よくデスクを通ったよな。日経の記者が平場で率直な質問をしたことにも驚いたが。いうまでもなくひろゆきの問題は訴えられていること自体よりは、裁判で賠償命令が出ても払わなければいいという彼の主張が反社会的だということだ。けれども彼の姿勢が社会で幅広く受け入れられていることこそミステリアスで研究の価値がある。

星正道氏(日本経済新聞社): 裁判問題を解決していただかないと、日経新聞でひろゆきさんをご紹介できないんです(笑)。ご意見頂戴したいのは山々なんですけれども…。
西村博之氏: 日経でも訴えられてない会社の方が少ないと思いますよ。楽天がプロ野球チーム買うときに、「うちは訴えられてません」って言ってたんですけど、僕の知り合いの弁護士が訴えてましたからね。そういう意味でミクシィも訴えられてますし、そもそもネットって訴えられるものだと思いますよ。

ニコニコ動画のようなYoutubeを超え得るイノベーションが日本から出てきたのは、ひろゆきというリスクテイカーの存在なしでは考え難い。普通の動画投稿サイトだっておっかなびっくり運営されているのに、同一性保持権とか利用者による中傷とか、法的観点で考え始めるときりがないのだから。
著作権法とか電波法とか、法律を破らなきゃ何も新しいことをできないような硬直的な法制度を放置したままWinnyやライブドアで見せしめ的な逮捕を行って、法の下の平等も何もあったものではない我が国から優秀な技術者がどんどん米国へと逃げている。ひろゆきのような法的責任のラストリゾートがいることで、優秀な技術者が日本に留まってネット系のイノベーションに邁進できるのであれば、素直に国はそれを感謝すべきではないか。
無論ひろゆき的なるものに縋るよりは正面から著作権法なり電波法を改正すべきだが、Googleが創業10年になろうという時に検索エンジンの合法化を議論しているような不甲斐なき政府に、いったい何を期待しろというのか。訴えられながら世間と持ちつ持たれつ、ノラリクラリとリスクを引き受けるひろゆきの方が、よほど世のためヒトのための仕事をしているではないか。
別にひろゆきの肩を持つつもりはないし、彼がいまのようにノラリクラリできてしまうことを公言したまま安穏とできるようでは、司法制度の沽券に関わるだろうし、目立ち過ぎると江戸の敵を長崎で討たれてしまうんでないかとか心配ではある。彼のようなバランス感覚があれば破局の前に落とし処をつくれるかも知れないが。
まあ彼の生き様が高い国民的支持を得て、経営者たちさえ一目を置かざるを得ない状況について、もうちょっと危機感を持って、規制なり制度の正当性を主張できるくらいの仕事はして欲しいものである。「そもそもネットって訴えられるもの」とか「そもそも法律を破らなきゃ新しいサービスが組み立たない」とか「確かにそうだよね」って話になっては本来まずいんじゃないかな。