「桜を見る会」前夜祭の費用を巡る問題で、安倍晋三前首相が不起訴とされたことについて、検察審査会が「不当」と議決した。
そもそも、東京地検特捜部が、前夜祭の収支を政治資金収支報告書に記載しなかった罪で秘書を略式起訴しただけで、捜査を終えたこと自体がおかしいというのが国民感情だったのではないか。
公選法違反を問わなかった検察捜査
もともと私がこの問題を最初に国会で取り上げた時も、公職選挙法違反の寄付行為の疑いがあるという指摘をした。前夜祭という宴会の費用補塡(ほてん)があったことを認めながら、「政治資金収支報告書に記載していなかったので、修正した」というだけで済まされてしまったら、多くの人が「それはないでしょう」と受けとめるだろう。
安倍前首相は昨年12月25日の議院運営委員会で、費用を補塡したのは会場費だから公選法違反にはあたらないと主張した。最初からそういう考えのもとで費用補塡したというのではなく、「こう説明すれば違反にならない」と入れ知恵されたとしか考えられない。まるで捜査側と打ち合わせたかのような決着だった。
確認しない捜査当局の怠慢
公選法は、政治活動についての費用補塡について寄付行為の例外規定を置いているが、前夜祭は宴会であり、しかも安倍氏は「私はゲストとして参加した」という答弁を繰り返しており、その費用補塡が公選法に違反しないなどありえない。
本当に会場費の補塡なのかも、明細書をホテルから押収すればすぐに確認できる。安倍氏側のだれがホテル側と打ち合わせをしたのか、単価設定もふくめてすべてわかるはずだ。疑惑が物的証拠によって説明できるようになる。しかし、その捜査もせずに政治資金規正法の問題だけで終わらせようとしたのは、捜査当局の怠慢ではないか。
安倍氏の答弁は「自分たちは当時は全く問題ないという認識だったが、捜査当局から指摘を受けたので、改めた」ということの繰り返しだ。収支報告書の記載に落ち度があると言われたから修正したということで終わりだ。
むしろ、なぜ記載しなかったのかを考えれば、宴会の費用補塡は、地元の有権者への利益供与に当たると認識していたからではないのか。本質は、公選法違反であり、収支報告書という現象面だけに問題を矮小(わいしょう)化して終わらせることは許されない。
説明がつかない補塡の原資
補塡の原資も説明のつかないことだらけだ。事務所で管理している安倍氏の個人的な口座からお金を出して払ったと言う。これも捜査当局から言われたからだと思うが、後援会が支払うべきものを「立て替えた」と説明している。
しかし、その立て替えたという言い分に従って修正された、安倍晋三後援会の収支報告書を見ると全く説明がつかない内容だ。訂正可能な5年前にさかのぼって、突然繰越金が増える、どこからふってわいたお金なのか全くわからない、そして5年かけて前夜祭への支出にあわせて繰越金が減っていって最終的に帳尻が合う。
安倍氏のお金で地元有権者をおもてなし
つまり数字のつじつまを合わせただけで、収支報告書の本来の趣旨である、お金の出入りの説明になっていない。安倍氏のポケットマネーで費用を補塡していた、それを立て替えたことにしただけだ。結局は安倍氏個人のお金で地元の有権者をおもてなししていたということではないか。
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