安倍晋三前首相の後援会が開いた「桜を見る会」前夜祭を巡り、東京地検特捜部は24日、公職選挙法違反と政治資金規正法違反の両容疑で告発されていた安倍氏を不起訴処分(容疑不十分)とした。その一方で、公設第1秘書を前夜祭の収支計約3000万円を記載しなかったとして、政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴した。だがこの処分は妥当といえるのか。公選法の罰則規定に詳しい立命館大の松宮孝明教授(刑事法)は「略式起訴ではなく、起訴して裁判で実態解明を進めるべきだ」と指摘。検察の処分に疑問を投げかけた。松宮氏は今年9月、菅義偉首相から日本学術会議の会員任命を拒否された6人のうちの1人。【古川宗/統合デジタル取材センター】
「高いハードル」立件してこなかっただけ
――今回の東京地検の判断をどう考えますか。
◆まず、告発されていた二つの容疑のうち、収支報告書に記載しなかったという政治資金規正法違反だけの立件になったことに疑問を感じます。公選法は選挙人らへの供応接待や寄付を禁じており、その意味で安倍氏を立件できたと思うからです。
前夜祭に招かれていた人の多くは安倍氏の後援会員であり、安倍氏の地盤培養行為に当たるのは明らかです。前夜祭が行われた時期が選挙間近ではないため、公選法が禁じる「買収」には当たらないという見方がありますが、実は、選挙が直近かどうかは本質的な問題ではないのです。安倍氏側から「支援をしてほしい」という意味で利益供与があれば、公選法違反になる可能性が高いはずで、これを不問に付してしまうのは許されないと思います。
――公選法については、受け取った側に利益を受けた認識が必要など、立件のハードルが高いと言われます。
◆検察側が慣例的に今まで適用してこなかったから、「ハードルが高い」と言っているだけだと考えます。前夜祭に参加したのは、後援会員であり、明らかに会費を超える豪華な会食だったのですから接待を受けているという認識はあったと思います。ましてや、…
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