Luminotes――wiki機能を併せ持つ操作性に優れたWebベースノートブック
TiddlyWiki と同様にLuminotesにおける個々のノートは、表示/非表示の個別切り替えが可能な独立したアイテムとして扱うことができる。つまりLuminotesとは、非線形的な思考をノート化する際の最適なツールとなっているのだ。
このようにTiddlyWikiとの間に若干の類似点を有してはいるものの、Luminotesの場合はwikiノートブックというコンセプトを基にした大幅な機能拡張が施されている。かいつまんで言うとLuminotesとはマルチユーザに対応したwikiノートブックであり、データの管理と格納に1つのデータベースをバックエンドにて使用するといった存在である。つまりLuminotesの場合は任意のコンピュータからアクセスできるため、そのデータを複数のユーザ間で共有することができるのだ。
Luminotesをして柔軟なアプリケーションとしているのは、各自の記入するノートをノートブックとして整理する機能である。例えばデフォルト状態のLuminotesには“my notebook”という名称のノートブックが用意されており、Add noteボタンをクリックすることで必要なノートをここに追加していくようになっているが、その他のノートブックを新規作成したり(追加数の上限は利用可能な空き容量でのみ規制される)名称の変更や削除も行うことができる。
Luminotesを使用する上でTiddlyWikiなどのwikiアプリケーションと大きく異なっているのは、マークアップ言語を新規に習得する必要がないという点である。例えば、番号付きリスト、箇条書きリスト、太字、斜体、下線などのフォーマット用オプションはメインツールバーからアクセスできるようになっている他、ここにはノートに添付させるファイルやリンクの作成用ボタンも用意されている。確かにこうした機能だけならそれ程珍しくないかもしれない。しかしながらLuminotesの場合は、ノート作成に必要なその他の操作も含めたすべての基本機能が、扱いやすいツール群という形態で提供されているのである。
またLuminotesには、特定のノートに対して施された変更内容を追跡する際に役立つ簡単なバージョニング機能も装備されている。現在表示中のノートにおける古いバージョンを確認するにはChangesボタンを押せばよく、これにより一覧される中から必要なバージョンをクリックすると、Luminotesはそれを独立したノートとして別途開いてくれるのである。もっとも複数ユーザによる使用を前提としたLuminotesにおいて、こうしたバージョン管理機能の存在は確かに便利なのではあるが、現状の機能にはかなりの制限も付随している。例えばLuminotesは変更された部分を強調表示してくれないので、個々の変更箇所はユーザが自力で探し出さなくてはならず、また2つのバージョン間を直接比較したり、現行バージョンを旧バージョンにロールバックすることもできない。
Luminotesの存在理由はユーザの持つ情報をノートとして整理することであるため、そうした作業を簡単かつ効率的に進めるための便利な機能が各種装備されている。例えば作成した新規ノートは自動的にAll Notesコンテナ(All notesのクリックで表示)に追加されるが、これは必要なノートに迅速なアクセスをするためのハイパーリンク化された目次として機能する。また当然ながらLuminotesには強力かつ操作性に優れたリンク機能も用意されており、Linkボタンをクリックすると空欄状態のノートに対するリンクが作成され、テキストを選択した状態でLinkボタンをクリックすると選択テキストをタイトルとしたノートが作成されるという仕様になっている。しかもそれだけではなく、例えば“Lorem ipsum”というタイトルのノートが既に存在している場合、他のノートにて“Lorem ipsum”と入力されたテキストを選択したLinkボタンをクリックすると、当該タイトルのノートに対するリンクが自動的に作成されるのである。
添付ファイルの追加も、ノート作成時に重宝する機能の1つだ。ここでのファイル添付では実質的にあらゆる種類のファイルやドキュメントをアップロードすることが可能で、これを現在表示中のノートにおける任意のテキストへのリンクとすることができる。またLuminotesでは削除したノートをゴミ箱(Trash)に移動する仕様になっているため、誰もが経験する“消すべきではないノートを削除してしまった”という操作ミスをしてしまった場合でも、速やかに削除前の状態に復帰させることが可能になっている。
Luminotesは他のユーザとの間でノート群を共有するためのアプリケーションでもあって、これを簡易的なコラボレーション用ツールとして利用することができる。ノートブックを共有するための手順は簡単で、Shareボタンをクリックして共有相手となるユーザの電子メールアドレスを登録し、最後にSend invitesボタンをクリックするだけである。その他にもLuminotesのノートブックは適切な書式設定の施されたHTMLファイル形式としてエクスポートさせることも可能で、これはバックアップ用コピーとして手元に保存するだけでなく、静的なHTMLページとして使用することもできる。
基本的にLuminotesはホステッドサービスとしての使用が想定されているが、このアプリケーション一式をダウンロードして手元のサーバにインストールすることもできるようになっている。ただしそうしたインストールを実行するにはある程度のスキルが必要であり、ダウンロードパッケージには詳細な解説が付属しているので、具体的な手順についてはそちらを参照して頂きたい。またホステッド版についても複数のバージョンが利用可能となっており、例えばフリーエディションにて使用できるストレージ空間は30MBまでで、自分以外のユーザは読み込み専用モードでのみノートブックを閲覧できるようになっているのに対し、月額5ドルにて利用可能なBasicプランでは250MBのストレージ空間が利用でき、他のユーザによるノート編集も行うことができるようになっている。また250MBでも不足というユーザの場合は月額9ドルのStandardプランにアップグレードすることで、ストレージ空間の500MBへの拡張を含めたその他の全機能が利用可能となる。
既に通常のwikiを利用中のユーザにとって、そこでの作業をLuminotesに置き換えるという選択肢は少々考えづらいだろう。しかしながら簡単にノートを作成することが可能で、複数ユーザ間で共有するコラボレーション用ノートブックという目的に絞った場合、現状でLuminotesに比肩するツールは存在しないはずだ。
Dmitri Popovは、フリーランスのライターとして、ロシア、イギリス、アメリカ、ドイツ、デンマークのコンピュータ雑誌に寄稿している。