【実践1】タイムマシンを使わずにバックアップする
ブート可能なバックアップ
タイムマシンバックアップの欠点の1つとして、バックアップディスクからMacをブートできないことです。内蔵ストレージがクラッシュした場合は、167ページで解説した方法でシステムの復元をしなければMacを使えません。これには数時間かかってしまいますし、直付けされているSSDストレージですとアップルによる修理も必要です。
そこで、万が一のときでもダウンタイムを最小にするために、起動ディスクのブート可能なクローンを作成しましょう。これさえあれば、外付けストレージからMacを起動して作業を継続できるので、仕事の納期が迫っているときでも安心です。
ただし、クローンをタイムマシンのような頻度で更新することは現実的ではないので、作業中のプロジェクトファイルは日ごろからアイクラウド・ドライブや「ドロップボックス(Dropbox)」などのクラウドストレージか、外付けストレージに保存するといった工夫も併用しましょう。
ブート可能なクローンを作るには、「カーボンコピークローナ(Carbon Copy Cloner)以下CCC」というサードパーティソフトを使います。標準のディスクユーティリティにも復元というクローン機能がありますが、macOSハイ・シエラの時点で起動ディスクの復元に失敗する不具合が直っていないため、現時点で確実なのはCCCしかありません。
もし不具合が解消されたとしても、ディスクユーティリティでの復元は、macOS復元からMacをブートする必要があるのでその間はMacが使えません。手順も完全に手動であり差分の更新もできません。その点CCCなら、自動バックアップ機能やバックグラウンドでの更新機能も備えており、とても便利なのでその価値があります。30日間の試用期間があるため、購入前に試すこともできます。
Carbon Copy Cloner 5
【発売】Bonbich Software, Inc.
【価格】4700円(30日間の試用期間あり)
ディスクユーティリティはダメ
ディスクユーティリティの[復元]でも起動ディスクのクローンを作成できるはずですが、最終段階で処理に失敗してしまいます。この不具合は、macOSハイ・シエラのリリース以来、1年以上放置されています。
CCCでバックアップ
Carbon Copy Clonerを公式サイトからダウンロードしてソフトを起動します。30日間の試用期間があります。
Carbon Copy Clonerのメインウインドウです。まずは[ソース]をクリックして[Macintosh HD]を登録します。
次に、[コピー先]をクリックしてブート可能なクローンを作成する外付けストレージを登録します。
スケジュールを設定します。万が一に備えての緊急用起動ディスクなら日単位や週単位、タイムマシンを置き換えるバックアップでしたら時間単位などにします。
スケジュールを有効にするためにはヘルパーツールのインストールが必要なのでログインパスワードで認証します。
セキュリティとプライバシーの設定でフルディスクアクセスを許可します。Carbon Copy Clonerのアイコンをシステム環境設定にドラッグします。
設定が済んだら初回コピーは手動で実行しましょう。タイムマシンの初回バックアップよりも高速なのもメリットの1つです。
[タスク履歴]を開くとバックアップの履歴やエラーを確認することができます。これもTime Machineにはない機能です。
バックグラウンドでバックアップタスクが完了すると、このように通知されます。
Carbon Copy Clonerでクローンしたディスクは、このようにシステム環境設定の[起動ディスク]パネルで確認すると、起動ディスクとして選べます。
実際にクローンの起動ディスクでMacをブートできました。ただし、外付けハードディスクからブートするとSSDに慣れたユーザはものすごく遅く感じます。
クラウドストレージでバックアップ
タイムマシンのメリットの1つにシステム全体をまるごと復元できることが挙げられますが、よく考えるとmacOSはインターネット経由でインストールできてしまいます。しかも、Macアップストアで入手したソフトも再ダウンロードが可能です。
また、アイクラウド・フォトライブラリを利用していれば、オリジナルがクラウド上に保存されていますし、音楽もアップルミュージックやiTunesマッチを利用していれば、アイクラウド・ミュージックライブラリにすべて保存されています。
さらに、アイクラウド・ドライブを使っていればデスクトップや[書類]フォルダもすべてクラウドに「バックアップされている」といっても過言ではありませんし、ドロップボックスや「ワンドライブ(OneDrive)」といったサードパーティのクラウドストレージを使っていれば、クラウドにコピーがあるのでバックアップ済といえるのです。
確かに、タイムマシンを使わずに作業環境を再構築するのは、なかなか面倒ですが、タイムマシンのための外付けストレージを用意したくない、1時間ごとの更新が煩わしい場合はクラウドストレージに頼るというアプローチもありかもしれません。
Macの電源を入れて[option]キー+[command]キー+[R]キーを押し続けると、インターネット経由でmacOSをインストールできます。
Mac App Storeで購入したソフトは、[アカウント]の[購入済]からいつでも再ダウンロードできるのでバックアップは必要ありません。
iCloudフォトライブラリを使っていれば、オリジナルの写真はクラウド上にあるので、やはりバックアップは不要です。
Apple Musicを使っていると、そもそも音楽ファイルを所有していないので、バックアップは不要です。
iTunes Matchを購読すると、iCloudミュージックライブラリが使えるようになり、所有するすべての音楽ファイルがクラウド上にアップロードされます。
iCloud Driveで[“デスクトップ”フォルダと“勝利”フォルダ]にチェックを入れると、ほとんどの書類をiCloudに保存されるようになります。
復元
ディスクユーティリティでは、起動ディスクをまるごとディスクイメージ化して保存することもできますが、ディスクイメージから内蔵ストレージなどへの復元がやはり失敗するので役に立ちません。
容量
iCloud Driveを使ってデスクトップや[書類]フォルダを同期するには、少なくともiCloudストレージプランを50GB以上にしなければ実用的ではありません。さらに、写真が多いユーザは50GBではやりくりが必要になるので、200GBプランがおすすめです。