研究テーマを探している学生のときに考えた事
「どうしたら研究ができるようになるのか?」
身近な話で恐縮ですが、大学には研究者の卵である学生もおおぜいいて、数多くの悩みや、疑問や、文句を日々いろんなところから聞きますが、突き詰めればそれはこの質問に集約されます。
「研究」「リサーチ」を始めるときは、どこか小説を書く作業に似ていて、いつ終わるともしれない千里の旅の一歩を踏み出すような当ての無さがあります。わくわくもしますが、間違いやすく、不安な一瞬でもあります。
なので、「何を研究すればいいのかわからない」「どこから始めればいいのかわからない」「すべてが手を付けられている気がする」 という怨嗟の声がよく聞こえてくる訳です。自分も普通の人の倍近い時間をかけて博士号をとったので、これはよく自問自答していました。
いまでは自分なりの研究テーマの探し方が確立できましたが、こうした戦略は身に付く前は地道ですが次のような方法で興味の対象を絞るという作業を繰り返していました。
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二つか三つ、キーワードを選ぶ: 「地球温暖化と日本」といった感じで興味のあるものを二つか三つのキーワードで限定します。キーワードを2、3個選ぶ事で「興味の地平」ができあがります。
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Google Scholar でそのキーワードを検索し、定番といわれている論文を20本ほど取得。一つ一つを読んで理解した点を論文1本につき、カード1枚にまとめる。
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カードを並べて、知識のつながり、体系を一つの物語にする。「論文 A がこの概念を提唱し、論文 B がそれを拡張した。しかし論文 C がそれにアンチテーゼを提出している」という具合に。
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洗い、すすぎ、繰り返し
要になっているのは3のステップで、学問大系の物語には必ず穴があるはずだという思いで作り始めるのが重要です。人間がやるものである以上、かならず不備や、不完全な点があります。些末な問題点ならいいのですが、論文同士のつながりの悪さ、はぎれの悪さ、論理の飛躍には必ず、
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情報収集が不完全
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研究そのものが不完全 (←チャンス!)
という状況があるはずです。経験では、若い学生が「研究ができない」と一歩も進めずにいるのは前者で、情報収集が不完全で不安症候群に陥っている場合がほとんどだなと思っています。
なかには、あきらかに自分の情報不足を自分の能力不足と勘違いしている場合もあって、惜しいところで空回りしている場合も見受けます。Google を使うのは、同じところで回転している自由度のない0次元の自分に、興味のベクトルという新たな次元を与えて、視座を得るためでもあるのです。
この話、研究スタイルを確立する前の若い研究者のためのものですが、新しいビジネスを開拓する場合、新しい企画を作る場合にも言えるのではないでしょうか?
つくずく、どこに行っても求められるスキルというのは似ているものですね。