「古池や…」 ニホンザル、5年がかりで芭蕉詠む これは嘘ニュースです
ソラが打った文字列。反転部に「ふるいけや」がある。
ニホンザルに芭蕉の句を詠ませる「芭蕉プロジェクト」は、千葉電波大学理学部と同園の共同研究。サルにタイプライターの鍵盤を打たせ続けると、極めて低い確率でシェイクスピアの文学作品と同一の文字列になると考える「無限の猿定理」の実証実験として2012年に始まった。
定理を証明する第一段階として、研究グループはシェイクスピアより字数が少ない俳句を選択。「あ」から「ん」まで、ひらがな46文字を配置した特製キーボードをサル山の一角に設置し、いつでも打てる状態にした。特に興味を持ったオスのソラは「ぬをそかわにかとのへへすとけおやし」など飽きることなく打鍵を続けたが、最初の5文字すら一致しない日が続いた。
研究の長期化が危ぶまれる中、14年4月には「すすめのこそこのけそこのけおうまかとおる」という文字列が見つかったが、芭蕉の句ではなかったため実験は継続。今月15日、前日の打ち込み記録をチェックしていた飼育員が、文字列の中に「ふるいけやかわすとひこむみすのおと」を発見した。
この句が完成する確率は1.8×10の28乗分の1。1秒に1文字ずつ入力しても6垓年(垓は1兆の1億倍)かかる組み合わせで、開始5年目での達成は極めて早い。
ソラは昨年12月、サル山の頂上から転落して頭を強打した後、何かに目覚めたような行動の変化が見られ、1月には「ふるいけやかわすとひこほらえのこふ」、2月3日には「ふるいけやかわすとひこむみすのおて」と一字違いまで到達していた。打鍵を続けるうちに正解に近づいていったことから、学習を伴わないランダムな文字列を仮定した「無限の猿定理」は今後一部見直しを迫られそうだ。
芭蕉の句を見つけた飼育担当の沙張さんは「ニホンザルが俳句が得意なフレンズだったとは」と驚きを隠せない。
翌16日、同園で成功記念イベントが開かれ、多くの来場者が拍手でソラの快挙を祝った。ごほうびとして芭蕉にちなんだバナナを与えられたソラは偉業達成もどこ吹く風と、この日も「いさたくてしたらかここてけすた」と機嫌良さそうに打鍵していた。