ネット活用「黒票運動」 若者たちは訴えた これは嘘ニュースです
黒票になった投票用紙(見本)
彼らが「小さな抵抗」と呼ぶ黒票運動のきっかけは、政治に対するやり場のない不信感だった。
「確かに株価は上がった。けれど僕たちの生活は何も良くなっていない。」
黒票運動を呼びかけたインターネットサイト「ブラック・レジスタンス」管理人のエンクルマさんはそう語る。
エンクルマさんは25歳。大学卒業後、大手飲食チェーンに就職したものの、連日の深夜労働や休日出勤、読書感想文が課される業務に耐えられず、3か月で会社を辞めた。「このままでは会社に殺される」と思った。
この過酷な体験を自らのブログにつづったところ、同じような境遇の若者から共感の声が相次いだ。「一人では無理でも、数が集まれば声が届くのではないか」と考えたエンクルマさんは、自身の体験をまとめた本『俺の会社地獄すぎワロタwww』を自費出版。ハローワークに並ぶ同世代の若者たちに配って歩き、彼らの就職意欲を次々とくじいていった。
今回の参院選を自分たちの意思を表明する絶好の機会だと考えたエンクルマさんは、今年5月、インターネットサイト「ブラック・レジスタンス」を立ち上げ、そこで「黒票運動」を提案した。
「自民党にノー、野党にもノー。だったらどうすれば自分たちの怒りをぶつけられるか。投票用紙を真っ黒に塗りつぶしてやればおもしろいんじゃないか。」
何も書かない真っ白な白票を投じるのではなく、力一杯の怒りを込めて投票用紙を真っ黒に塗りつぶす――。
エンクルマさんたちは選挙期間中、ツイッターやフェイスブック、LINE(ライン)などSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)を通じ、多くの若者に投票に参加して用紙を真っ黒に塗りつぶすよう呼びかけた。この呼びかけは2週間で約10万人に拡散。これは20~30代の有権者の7割以上に相当する。
投票日の21日、エンクルマさんはメンバーと一緒に地元の投票所に赴いた。選挙区比例区とも記入欄には鉛筆2本を使い切るほど真っ黒に塗りつぶしたという。
「思い残すことはありません。あとはみなさんを信じるのみです。」
投票所を出て、すがすがしく話すエンクルマさんの声が印象的だった。この日エンクルマさんのツイッターには「紙が破けるほど真っ黒にしてやった」など1万件を超える活動報告が寄せられた。
日付が変わった22日未明、自民党比例区で一時落選が伝えられた元ワタミ会長の渡辺美樹氏(53)を当選に導いた決め手は、彼らが希望を託したこの1万票だった。