業種別リリース https://kyodonewsprwire.jp Fri, 27 Dec 2024 15:00:00 +0900 hourly 1 \【1月5日、6日開催】令和6年能登半島地震「復興応援フェア in 丸の内」(中小機構)/ https://kyodonewsprwire.jp/release/202412252290 Fri, 27 Dec 2024 15:00:00 +0900 中小機構 独立行政法人中小企業基盤整備機構(理事長:宮川正 本部:東京都港区)は、能登半島を中心とした地震発生から間もなく1年が経過する石川県、富山県、福井県及び新潟県の食品事業者の復興を応援するために、「復興... <![CDATA[  独立行政法人中小企業基盤整備機構(理事長:宮川正 本部:東京都港区)は、能登半島を中心とした地震発生から間もなく1年が経過する石川県、富山県、福井県及び新潟県の食品事業者の復興を応援するために、「復興応援フェア in 丸の内」を2025年1月5日(日曜)と6日(月曜)の2日間限定で開催します。
 復興応援フェア in 丸の内は、令和6年能登半島地震の復興支援活動として北陸4県(石川県、富山県、福井県、新潟県)から56者、約170商品の特産品をご紹介します。ぜひこの機会に商品をお手に取っていただき、商品購入で被災地域を応援するとともに、現地の味をご賞味ください。併せて、地震や豪雨による被災地域の被害の様子や中小機構の災害復興支援への取組をパネルで展示します。
 

 
■「復興応援フェアin丸の内」開催概要
 実施日時:2025年1月5日(日曜)、6日(月曜)11時00分~19時00分
 開催場所:東京都千代田区丸の内二丁目7番2号
      KITTE地下1階 東京シティアイ パフォーマンスゾーン
      (東京駅丸の内南口より徒歩約1分)
 開催内容:(1)復興応援フェア:石川県、富山県、福井県、新潟県の食品を販売
      (2)パネル展示:被災地域の様子、中小機構の災害復興支援への取組
 主  催:独立行政法人中小企業基盤整備機構 
 後  援:石川県、富山県、福井県、新潟県
 
<地域活性化パートナー制度>
 中小機構では、大都市圏や全国規模で活動する小売、卸売などの流通業、情報サービス業、観光関連等の企業・団体を「地域活性化パートナー」として登録し、その「地域活性化パートナー」と連携して、新事業展開に取り組む中小企業の市場評価やマーケティング、販路開拓等に関する支援企画を実施しています(2024年12月時点202社登録)。
地域活性化パートナー制度の詳細:https://www.smrj.go.jp/sme/new_business/product/index.html
 
<独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)>
 中小機構は事業の自律的発展や継続を目指す中小・小規模事業者・ベンチャー企業のイノベーションや地域経済の活性化を促進し、我が国経済の発展に貢献することを目的とする政策実施機関です。経営環境の変化に対応し持続的成長を目指す中小企業等の経営課題の解決に向け、直接的な伴走型支援、人材の育成、共済制度の運営、資金面での各種支援やビジネスチャンスの提供を行うとともに、関係する中小企業支援機関の支援力の向上に協力します。
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【注意喚起】NO MORE ボンベ破裂 https://kyodonewsprwire.jp/release/202412181907 Thu, 26 Dec 2024 14:00:00 +0900 製品評価技術基盤機構(NITE) カセットこんろを2台並べて使用してカセットボンベが破裂した様子 【撮影協力:神戸市消防局】 家族団らんの機会が増える年末年始の到来です。カセットこんろは、お鍋や焼肉などの調理はもちろん、防災用品として... <![CDATA[
       カセットこんろを2台並べて使用してカセットボンベが破裂した様子
                 【撮影協力:神戸市消防局】
 
 家族団らんの機会が増える年末年始の到来です。カセットこんろは、お鍋や焼肉などの調理はもちろん、防災用品としても使用できる大変便利なものですが、使用方法を間違えると重大な事故につながるおそれがあります。独立行政法人製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、年末年始に向けて「カセットこんろの事故※1」を防ぐために注意喚起を行います。
 
 NITEに通知があった製品事故情報※2では、2014年度から2023年度までの10年間にカセットこんろの事故は91件ありました。そのうち、調査が完了した86件の中では、使用者の誤使用・不注意が推定されるもの※3が約4割となっています。その中でも特に多いのが「カセットボンベが異常に熱くなるような誤った使い方をした」もので、過熱されたカセットボンベが破裂して死亡事故ややけどなどの人的被害にも発展しています。
 災害時に命を守る防災用品としても重宝されるカセットこんろですが、燃料となるカセットボンベの中には可燃性ガスが使用されており、正しく取り扱わないと命を脅かすおそれもあります。事故を防ぐための3つのポイントを日頃から実践し、自分や大切な家族の命を守りましょう。
 
(※)本資料中の全ての画像は再現イメージであり、実際の事故とは関係ありません。
(※1)本資料では、カセットこんろに装着されていないカセットボンベ単体の事故もカセットこんろの事故として含めます。
(※2)消費生活用製品安全法に基づき報告された重大製品事故に加え、事故情報収集制度により収集された非重大製品事故やヒヤリハット情報(被害なし)を含みます。
(※3) 事故原因の特定までには至っていないが、使用者の誤使用・不注意が要因の一つとして推定される事故も含みます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
カセットこんろの事故を防ぐための3つのポイント ①カセットこんろにカセットボンベを確実にセットする。  カセットこんろにカセットボンベを装着する場合は、取扱説明書の指示に従って確実に装着してください。カセットボンベの装着を誤った状態で使用すると、ガス漏れが生じて火災に至るおそれがあります。装着後に異音や異臭などが生じた場合は、ガス漏れのおそれがありますので、直ちにカセットボンベを取り外して使用を中止してください。
確実にセットする様子
(画像提供:一般社団法人 日本ガス石油機器工業会)
 
 
②カセットこんろを正しく使う。  カセットボンベの中には液化石油ガスが液体と気体に分かれて入っています。カセットボンベが過熱されてしまうと液化石油ガスが液体から気体になろうと膨張し、カセットボンベの内圧が上昇して限界を超えると破裂します。カセットこんろを使用する際は、取扱説明書の注意事項を守って使いましょう。

           カセットボンベが異常に熱くなるような誤った使い方の例
 
 
③カセットボンベはカセットこんろから取り外して、室内の40℃未満の場所に保管する。  カセットボンベをストーブやこんろ、こたつなどの熱源のそばに放置してしまうと破裂のおそれがあり、大変危険です。カセットボンベのガスの出が悪くなったからといって、意図的に温めることも絶対にやめてください。カセットこんろ使用後は、カセットボンベを取り外し、室内の40℃未満の涼しい場所に保管するようにしましょう。

              カセットボンベを熱源のそばに放置する例
 
 
 
 
年度別の事故発生件数  年度別のカセットこんろの事故発生件数を図1に示します。近年まで件数は減少傾向にありましたが、2022年度からやや増加傾向に転じています。今後もカセットこんろの使用機会が増えることで事故が増加するおそれがあるため、注意が必要です。

 
 
 
原因別の事故発生件数  調査中の5件を除いた86件の事故について、原因別の事故発生件数を図2に示します。「誤使用・不注意が推定されるもの」が原因の約4割となっており、事故を未然に防ぐために正しい使い方を確認することが大切です。

 
 
 
誤使用・不注意が推定される事故の内訳  「誤使用・不注意が推定されるもの」33件について、事故事象別の被害状況を表1に示します。「カセットボンベが異常に熱くなるような誤った使い方をした」ことでカセットボンベが破裂したり、「カセットボンベの装着が不十分等でガスが漏れたまま点火した」ことで漏れたガスに引火したりして、事故に至っています。

 
 
 
事故事例 ■カセットボンベの装着が不十分でガスが漏れたまま点火した
事故発生年月 2020年12月(香川県、80歳代・女性、軽傷)
【事故の内容】
 カセットボンベを装着して点火したところ、建物4棟を全焼する火災が発生し1名がやけどを負った。
【事故の原因】
 原因の特定には至らなかったが、カセットボンベの装着が不完全であったため、カセットボンベ接続部でガスが漏れ、点火操作時の火花が漏れたガスに引火したものと推定される。
NITE SAFE-Lite検索キーワード例】カセットこんろ カセットボンベ 装着
 
■カセットボンベが異常に熱くなるような誤った使い方をした
事故発生年月 2017年4月(宮崎県、年齢・性別不明、軽傷)
【事故の内容】
 屋外でカセットこんろを使用中、カセットボンベが破裂し、6名がやけどを負った。
【事故の原因】
 カセットこんろを2台並べ、一方のこんろのごとくを裏返してセットし、それぞれに比較的大きな鉄板を用いて調理していたため、ごとくを裏返した方のカセットボンベが過熱され、カセットボンベの内圧が上昇して破裂したものと推定される。
NITE SAFE-Lite検索キーワード例】カセットこんろ カセットボンベ 鉄板
 
■カセットボンベを熱源のそばに放置した
事故発生年月 2018年8月(神奈川県、70歳代・男性、軽傷)
【事故の内容】
 カセットボンベが破裂する火災が発生し、9名がやけどを負った。
【事故の原因】
 燃焼中の業務用こんろのそばにカセットボンベを放置したため、カセットボンベが過熱され、カセットボンベの内圧が上昇して缶が破裂し、噴出したガスにこんろの炎が引火して、事故に至ったものと推定される。 
NITE SAFE-Lite検索キーワード例】カセットボンベ 破裂 業務用こんろ
 
 
 
 
 「NITE SAFE-Lite(ナイト セーフ・ライト」のご紹介  NITEはホームページで製品事故に特化したウェブ検索ツール「NITE SAFE-Lite(ナイト セーフ・ライト)」のサービスを行っています。製品の利用者が慣れ親しんだ名称で製品名を入力すると、その名称(製品)に関連する事故の情報やリコール情報を検索することができます。

https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/safe-lite.html
 
今回の注意喚起動画はこちら >>カセットこんろ「2台並べたカセットこんろの破裂3」

 
 
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 製品安全センターの概要  NITE 製品安全センターには、消費生活用製品安全法などの法律に基づき、一般消費者が購入する消費生活用製品(家庭用電気製品やガス・石油機器、身の回り品など)を対象に毎年1千件以上の事故情報が寄せられます。製品安全センターでは、こうして収集した事故情報を公平かつ中立な立場で調査・分析して原因究明やリスク評価を行っています。原因究明調査の結果を公表することで、製品事故の再発・未然防止に役立てています。
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“ホタルの光”を簡便に合成する方法を開発! https://kyodonewsprwire.jp/release/202412191984 Wed, 25 Dec 2024 19:00:00 +0900 産総研 【本研究のポイント】 ・ ホタルの発光物質ルシフェリンの簡便で実用的な合成法を初めて開発。 ・ ワンポット(one-pot)合成)により廃棄物の排出が非常に少なく環境にやさしい。 ・ ホタルとほとんど... <![CDATA[ 【本研究のポイント】 ・ ホタルの発光物質ルシフェリンの簡便で実用的な合成法を初めて開発。
・ ワンポット(one-pot)合成)により廃棄物の排出が非常に少なく環境にやさしい。
・ ホタルとほとんど同じ原料を使い、反応は常温常圧で進行する安全性も高い合成法。
・ この合成法によりルシフェリンの合成コストが削減されるため、ホタル発光系を使った
分析法のより広範な利用が期待される。
 
【研究概要】 名古屋大学大学院生命農学研究科の西川俊夫 教授、加藤まりあ 博士後期課程学生、土橋一耀 元博士前期課程学生は、産業技術総合研究所生物プロセス研究部門の蟹江秀星 主任研究員、中部大学応用生物学部の大場裕一 教授との共同研究で、ホタルの生物発光で使われる発光物質ルシフェリンの実用的なワンポット合成に成功しました。
 
ホタルは、発光物質D-ルシフェリンと酵素ルシフェラーゼとの反応によって発光します。この発光反応はノイズが少なく、高感度で検出できるため、病原菌などの簡便・迅速な検出法や、生命科学研究における遺伝子組換え実験やバイオイメージング)で欠かすことのできない技術として広く利用されています。しかしルシフェリンは、現在多段階の環境負荷の高い方法での化学合成によって供給されており非常に高価です。
 
本研究グループは2016年に、このルシフェリンの生合成の研究過程で、L-システインとベンゾキノンを中性緩衝液中で撹拌するだけで、L-ルシフェリンがごくわずかに生成する非酵素的反応を発見・報告しました。その収率は約0.3%と低く、実用的ではありませんでしたが、今回、この反応機構の詳細な解析からヒントを得て、D-ルシフェリンの実用的なワンポット合成法の開発に初めて成功しました。この合成法は、総収率46%で高純度のD-ルシフェリンを得られます。原料はすべて市販されている安価なもので、反応は全てが常温、常圧という温和な条件で進行します。ワンポットプロセスのため、後処理や精製によって生じる廃棄物が非常に少なく、グリーンプロセスであるという大きな特徴があります。そのため、今後、商業ベースの生産だけでなく、合成化学者でなくても気軽に使える合成法として、広く使われることが期待されます。
 
本研究成果は、2024年12月25日19時(日本時間)付英国ネイチャーパブリッシンググループ『Scientific Reports』オンライン版に掲載されます。
 

 
プレスリリースの詳細はこちら
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241225/pr20241225.html
 
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材料データを秘匿しながらベイズ最適化を行う材料探索アプリを開発 https://kyodonewsprwire.jp/release/202412232155 Tue, 24 Dec 2024 10:00:00 +0900 産総研 ポイント ・ 物性データを秘匿しながらベイズ最適化を行うアプリを開発し磁石化合物での化学組成の最適化に成功 ・ 情報漏洩のリスクが低い秘密分散技術と、データを無意味化して計算する秘匿計算技術を併用 ・... <![CDATA[ ポイント
・ 物性データを秘匿しながらベイズ最適化を行うアプリを開発し磁石化合物での化学組成の最適化に成功
・ 情報漏洩のリスクが低い秘密分散技術と、データを無意味化して計算する秘匿計算技術を併用
・ 秘匿計算を前提としたデータ共用が促進され、マテリアルズ・インフォマティクスが加速されると期待
 

 
概 要 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター(以下「CD-FMat」という) 深澤太郎 研究チーム付らは、産総研サイバーフィジカルセキュリティ研究センターで理論設計された手法に基づき、秘匿計算を用いてベイズ最適化の計算を行うアプリを開発しました。
 
近年、既存の膨大な物性データを活用した機械学習により新しい機能性材料の探索を行う手法が注目を集めています。この手法の効率を高めるためには、多くのデータを蓄積することが重要です。
 
今回、材料探索で実績のあるベイズ最適化と呼ばれる計算を、データを秘匿しながら実行可能な技術を開発し、アプリに実装しました。これには情報漏洩のリスクが低い秘密分散技術と、データを無意味化して計算する秘匿計算技術を利用しており、活用される物性データの秘密を守りながら計算できます。実際に、開発したアプリを使用して、磁石化合物の化学組成の最適化に成功しました。
 
この技術を使うと、新規材料探索のための拠点にデータを集約する際に、独自に取得した物性データを他者に知られることがないため、所有者がデータを共用する際のハードルが低くなります。そのため、共用できるデータが増え、材料探索がより加速することが期待されます。
 
なお、この成果の詳細は、2024年12月24日(日本時間)に「Journal of the Physical Society of Japan」に掲載されます。
 
下線部は【用語解説】参照
 
開発の社会的背景 近年、既存の膨大な物性データを活用した情報科学的手法により新しい機能性材料の探索を行うマテリアルズ・インフォマティクスが注目を集めています。この手法は、機械学習などの技術を用いて高速かつ効率的に材料開発を進めるためのものであり、他の分野におけるAI技術と同様に、膨大なデータを必要とします。論文や特許等で公開されているデータだけでなく、ラボスケールで個別に取得されているデータを拠点に集約することでその効果が高まります。
 
しかし、独自に取得したデータは、他者と共有化されることで取得者の優位性が損なわれる可能性があります。それを避けるためには、データ漏洩のリスクを回避し、データを無意味化して「秘匿計算」できるようにし、データ所有者の権利を守る必要があります。秘匿計算の技術は、材料探索以外の分野においても開発が進められており、実用化されているものもあります。しかし、現状では秘匿計算は線形回帰などの比較的簡単な計算に限られており、ベイズ最適化などの複雑な計算を用いる材料探索の分野においてはまだ実用化されていません。
 
研究の経緯 産総研は、AIを活用した材料設計技術の開発を推進し、企業コンソーシアム等において産業界への普及に努めています。この際に問題になるのは、企業が持つデータの秘匿性の担保です。企業が安心して安全にデータを流通させるための技術開発と社会実装環境の整備が切望されています。そこで、産総研サイバーフィジカルセキュリティ研究センターが国立研究開発法人科学技術振興機構JST-AIP加速課題「秘匿計算による安全な組織間データ連携技術の社会実装」等を通じて開発してきた秘匿計算技術をベースに、マテリアル分野での課題に対応するための「材料データ秘匿計算」の手法開発と、そのプラットフォーム化を現在、進めています。本研究はその一環として、マテリアルズ・インフォマティクスで用いられるベイズ最適化に対する秘匿計算技術の開発と、モデルケースとなる材料応用を実施しました。
 
なお、本研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「マテリアル事業化イノベーション・育成エコシステムの構築」(研究推進法人:国立研究開発法人物質・材料研究機構)によって実施されました。
 
研究の内容 今回の開発ではデータを無意味化して分散する秘密分散技術と、データを無意味化したまま計算を行う秘匿計算技術をベースとしています。秘密にしておきたいデータはまず単独では意味をなさない形にして分散させて保管します(図1―①)、そしてこのデータの利用を認められたユーザーは必要な計算を指示することができますが、その際データは復元されることなく結果だけが伝えられます(図1―②)。このような秘匿計算では通常の計算よりも多くの計算量を必要とし、データの秘密を保ってやり取りするための通信量も多くなります。そのため複雑な計算を行うためには効率よく計算するためのさまざまな工夫が必要となります。その工夫には計算量やデータの通信量が少なくなるアルゴリズムを採用することや、精度を犠牲にして計算の高速化を行うことが含まれます。このような手法を用いて実際に材料開発に使えるアプリを開発するためには、材料探索の実際を踏まえた問題設定を行い、アプリがその答えを提供できるものであることを確かめなくてはなりません。
 

 
そこで本研究では実践的な探索目標の一つとして、第一原理計算と呼ばれるシミュレーション手法で取得した132個の磁性材料候補の中から、データを秘匿しながら磁化が最高になるものを探すというタスクを設定しました。本アプリではこのタスクをベイズ最適化と呼ばれる手法を用いて実行します。ここでは組成データと物性データを使って探索を進めますが、組成データは復元を許し、物性データは秘匿して探索を行います。ベイズ最適化では既存のデータを基に不確定性を考慮した予測を行い、これを利用した効率的な探索を行うことができます(図2)。この材料探索アプリを用いると、データを秘匿しないものと比べると計算速度は遅いのですが、1つの探索候補を導くのに5分程度待てば計算が完了します。そしてこのタスクでは10回未満の探索でほぼ最高の磁化をもつ探索候補を90%の確率で見つけることができることがわかりました。これはデータを秘匿しない計算手法とほとんど遜色がありません。
 

 
さらに本研究ではデータを秘匿したままの共用が探索効率を向上させられることを示すために、次のような問題設定でもベンチマークを行いました:A社はある磁性材料データのグループ中から磁化が高くない(=有望でない)データを3点提供し、異なるデータを有するB社も同じように別の磁化が高くないデータを3点提供します(図3)。これらは磁化の点では不成功のデータと言えますが、このようなデータのことをネガティブデータと呼びます。この2社はデータそのものは開示しませんが、共用は認めます。
 

 
その共用データを用いて、A社とB社に同意を得た別の会社C社が最高磁化を探す前述のタスクを行います。C社が新たに得たデータを追加しながら本アプリで探索を進めると、その探索回数はデータ共用がない場合と比べて圧倒的に少なく済むことがわかりました。本研究ではA社、B社のデータについて400通りの提供パターンを試行しましたが、そのすべての場合で探索回数7回以下で最高磁化のものを見つけ出すことに成功するという結果になりました(図4)。これはネガティブデータであっても「その物質によく似た候補は磁化が高くならないだろう」という推定がうまく働くからだと考えられます。(図3)
 

 
これらによりネガティブデータの共用が材料探索に役立つという概念が成立することを示し、さらに本アプリはデータを隠したままにしながらこのような材料開発に実際に使えるものとして有用性があることを示しました。
 
今後の予定 より多くのデータや候補点を取り扱えるように、アプリを高速化します。また、今回のタスクではデータを隠す対象として物性データのみを扱いました。今後は、組成データなどにも秘匿計算を行えるようなアプリを開発し、より高い安全性でデータを取り扱うシステムを構築する予定です。本アプリはCD-FMatが運用する材料設計プラットフォームの一部として活用されます。また今後、磁性材料以外にも適用できるよう汎用性を確認・高度化し、共同研究などを通して利用を広げていく考えです。
 
論文情報 掲載誌:Journal of the Physical Society of Japan
論文タイトル:Materials secure computation with secret sharing: a Bayesian optimization scheme and its performance
著者:Taro Fukazawa, Tsutomu Ikegami, Masaaki Kawata, Takashi Miyake
DOI:https://doi.org/10.7566/JPSJ.94.013801
 
用語解説 ベイズ最適化
ベイズ推定を用いた最適化手法。ベイズ推定ではデータを基にして、材料特性値などのスコアの予測を確率分布の形で導出することが可能である。ここでの最適化とはスコアの高いデータを得ることであり、ベイズ最適化ではベイズ推定による予測を用いて次に取得するべきデータ点の提案を行う(図2も参照)。様々なモデルを用いることができるが、本研究ではガウス過程回帰を用いた非線形モデルを用いており多くの計算量が必要となる。
 
秘密分散技術
秘密にしておきたい情報を隠しながら分散させて保管する技術。情報は無意味な断片に分割され、このうちの一定数の断片を揃えないと情報を復元することができない。このため分散された断片の一部が漏洩しても、必要数に足りなければ元の情報は全く秘密のまま保つことができる。
 
秘匿計算技術
データの中身を隠しながら様々な計算を行う技術。データそのものを隠したまま見せることなく計算できるため、個々のデータの秘密は守られたまま種々の分析を行うことが可能になる。秘密計算技術とも言う。
 
マテリアルズ・インフォマティクス
材料分野のデータに情報科学の知見を用いることで、これまでに知られていない材料の発見・開発や、既存材料の高性能化、材料に関する新たな知見などを得ようとする研究分野のこと。
 
線形回帰
ある目的とする変数(目的変数)を、その変数のふるまいを説明するための別の変数(説明変数)と誤差とによって表すことを回帰と呼び、このうち目的変数と説明変数の関係が、線形と呼ばれる数学的に取り扱いやすい形式であるものを線形回帰と呼ぶ。線形回帰では比較的少ない計算量しか必要としないが、予測モデルは大きく制限される。
 
磁化
ここでは磁石としての性質をもつ物質が単位体積あたりに持つ磁力の大きさのことを表す。永久磁石においては磁化が大きく、その磁化と磁力の向きが外部の磁場の影響を受けにくいことが重要な性能の指標となる。
 
 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241224/pr20241224.html
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リハビリはアシストのタイミングが肝心! https://kyodonewsprwire.jp/release/202412191965 Mon, 23 Dec 2024 14:00:00 +0900 産総研 ポイント ・ 適切な外力をタイミングよく身体に加えて運動訓練の効率を向上 ・ 運動訓練の効率を上げる外力の加え方とタイミングの組み合わせを解明 ・ 動作アシストするロボットの制御方法の設計や徒手的な補... <![CDATA[ ポイント
・ 適切な外力をタイミングよく身体に加えて運動訓練の効率を向上
・ 運動訓練の効率を上げる外力の加え方とタイミングの組み合わせを解明
・ 動作アシストするロボットの制御方法の設計や徒手的な補助を行う運動訓練法の改善に向けた指針
 

 
概 要 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)人間情報インタラクション研究部門 金子秀和 主任研究員と人間拡張研究センター 鮎澤光 上級主任研究員は、リハビリテーション(以下、リハビリ)において、運動訓練中のラットを対象にアシスト動作の方法とタイミングが訓練効率に与える影響を明らかにしました。
 
ロボット技術を用いて被訓練者の身体に外力を加えるリハビリを想定し、訓練中のラットにアシスト動作の方法とタイミングを変えた4種類の介入を行い、訓練効率の評価を行いました。その結果、同じアシスト動作の方法でもタイミングが異なれば訓練効果に差が生じることを明らかにしました。
 
この知見は、ロボット技術をリハビリに応用する際のアシスト動作機器の制御方法の設計や徒手的な補助を行う運動訓練法を改善するための指針を与えるものです。
 
なお、この技術の詳細は、2024年12月13日に「IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering」に掲載されました。
 
下線部は【用語解説】参照
 
開発の社会的背景 脳血管疾患の患者数は約170万人にのぼり(厚生労働省「患者調査」令和2年患者調査)、多くの患者が、脳機能障害で失った身体機能を回復するためにリハビリ訓練を必要としています。さまざまなリハビリ訓練法が提案されていますが、その中の一つに理学療法士などの訓練者が被訓練者(患者)の動きを補助する「徒手療法」という手法があります。その効果は、個々の訓練者の技量に大きく依存しているのが実情です。これは、訓練者ごとに介入方法やそのタイミングが微妙に異なり、再現性の低いことが原因と考えられます。この問題を解決するためには、タイミングよく身体に外力を加えることが可能なロボット技術の活用が有効です。
 
これまで、ロボット技術を用いたリハビリ訓練法では、アシスト的な介入が効果的であると考えられていました。しかし、どのタイミングでどのような外力を身体に加えると訓練効果が高まるかについては科学的に解明されておらず、一般に定まった方法は知られていません。
 
研究の経緯 産総研は、ニューロリハビリ技術の研究開発の一環としてロボティックリハビリ技術の高度化を目指し、片側大脳皮質損傷モデルおよび健常モデルに対して、アシスト動作機器の効果を評価できる学習実験モデルを用いて検討してきました(文献[1][2]および2017年1月13日 産総研プレス発表)。これまで、訓練者が被訓練者の動きをサポートする徒手療法を想定して、運動訓練中のラットの前肢に正解となる動作を妨げるような外力を加えると運動訓練の効率が高まることを明らかにしてきました。
 
今回、徒手療法よりも精度よく被訓練者の動作タイミングに合わせて介入可能なアシスト動作機器を用いた訓練を導入して、ラットの動作タイミングを予測し、それに合わせて外力を与えた場合の効果についても、これまでの結果と合わせて検証しました。
 
なお、本研究開発は、独立行政法人 日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業 JP22500495、JP26350648、JP18K10808、 JP21K11331」による支援を受けています。
 
研究の内容 図1に本研究で用いたラット用学習実験装置を示します。訓練を始めるにあたり、ラットに前肢を使って左右2本のレバーを同時に押し下げさせ、報酬用飲口を咥えさせた状態で待機させます。ラットの前肢が置かれるレバーには押力センサーが備わっており、ラットがレバーから前肢を離そうとするタイミングを検出できます。また、レバー駆動装置によって前肢を強制的に持ち上げることが可能です。これらの機構を使って、アシスト動作を加えた訓練を実施しました。
 
訓練は以下の手順で行います。まず、ランダムに左右どちらか一方の前肢に空気を吹きかける空圧刺激を与えます。空圧刺激に対して、ラットが正解となる側の前肢をレバーから持ち上げて離せば報酬として砂糖水を与え、反対側の前肢を離した場合は不正解として報酬を与えません。また、不正解だった場合、訓練を促進させるためにもう一度同じ側の前肢に空圧刺激を与えた後、レバー駆動装置を用いてラットの前肢のいずれかを強制的に持ち上げるアシスト動作を行います。なお、1匹のラットに対し、刺激を与えた側の前肢を持ち上げた場合を正解とする訓練、および逆側の前肢を持ち上げた場合を正解とする訓練を、それぞれエラー率が15%未満となるまで実施し、訓練が進捗する様子を観察しました。
 

 
実験ではアシスト動作として、2種類の動作と2種類のタイミングを組み合わせた4通りの条件を設定しました。アシスト動作の一つは、正解の側の前肢を持ち上げる動作で、もう一つは逆側の前肢を持ち上げる動作です。タイミングについては、一つは空圧刺激を与えた一定時間(約0.2秒)経過後にアシスト動作を行い、もう一つは、刺激を受けたラットが自発的に前肢を持ち上げようとする応答動作を押力センサーで検知し、それに同期したタイミングでアシスト動作を行いました。
 
訓練4日目および5日目のデータから算出された成績を図2に示しました。一定時間経過後のタイミングで正解側と逆のアシスト動作を行った場合(●、赤囲い)と、ラットの応答動作に同期したタイミングで正解側のアシスト動作を行った場合(△、青囲い)に、エラー率の低下と応答時間の短縮といった訓練成績の向上が見られました。
 

 
タイミングの違いで、訓練成績を向上させるアシスト動作が正反対になるという結果は、アシスト動作がどの神経活動を活性化するかを考え、条件付け理論に基づいて空圧刺激と応答動作の関係がどのように変化するか考えることによって解釈できます。
 
まず、ラットが自主的に前肢を上げてレバーから離す場合、反対側の前肢ではバランスを取るためにレバーを押し下げる神経活動が活性化されます。一方、レバー駆動で強制的に前肢を持ち上げると体幹が後ろに動かされ、反射経路を通して、持ち上げられた前肢ではレバーを押し下げる神経活動が活性化されます。同時に、反対側の前肢ではその自重によって前肢が引き伸ばされて前肢をレバーから持ち上げる神経活動が活性化されます(図3)。つまり、レバー駆動によって正解のアシスト動作が入ると正解と逆の動作を起こす神経活動が活性化され、逆に、正解と逆のアシスト動作が入ると正解の動作を起こす神経活動が活性化されることになります。
 

 
次に、条件付け理論では、ある刺激と身体の反射応答を引き起こす別の刺激を一定の時間間隔で与えていると、ある刺激を与えるだけで反射応答が引き起こされるようになります。この理論にしたがえば、空圧刺激から一定時間経過後のタイミングで正解と逆の動作を繰り返し強制することで、正解動作を起こす神経活動が活性化され、訓練成績が向上したと考えられます(図2および図4の赤囲い)。一方、ある刺激と反射応答を引き起こす別の刺激を無秩序な時間間隔で与えていると、ある刺激を与えた際に生じていた反射応答が起きにくくなります。したがって、ラットの応答動作に同期したタイミングで正解動作を繰り返し強制することで、空圧刺激後から無秩序な時間間隔で正解と逆の動作を起こす神経活動を活性化したことになり、不正解動作を起こしにくくなることによって、訓練成績が向上したものと考えられます(図2および図4の青囲い)。その他のアシスト動作では不正解動作が起きやすくなる効果(図2の○)、正解動作を起こしにくくなる効果(図2の▲)を生じることによって訓練が遅延したと考えられます。
 

 
今回得られた知見は、効果的なアシスト動作機器の制御方法を設計する上で、重要な指針となります。この知見は、これまで訓練者の技量に頼っていた徒手的な運動療法において、訓練法の最適化および再現性の向上につながります。この指針に基づき、リハビリ訓練の効率が向上すれば、回復期間の短縮や介入方法の見直しによる訓練効果の向上が期待できます。
 
今後の予定 今後は、脳活動を計測することによって神経メカニズムを解明し、得られた知見をヒトにも適用可能となるリハビリ機器の開発を進めて行く予定です。また、これまでは単純な応答動作を対象としてきていますが、単純な動作が組み合わされた複雑な動作に対しても、同様の介入方法が有効であるかを検証します。これらにより、神経科学的な知見を活かしたニューロリハビリ技術の確立に貢献します。
 
論文情報 掲載誌:IEEE Transactions on Neural Systems and Rehabilitation Engineering
論文タイトル:Forced Movements Facilitate Reversal Learning in Rats: Findings from a Rat Robotic Rehabilitation Model
著者:Hidekazu Kaneko and Ko Ayusawa
DOI:10.1109/TNSRE.2024.3506600
 
参考文献 [1] H. Sano, H. Kaneko, Y. Hasegawa, H. Tamura, and S. S. Suzuki, "Facilitation of learning and rehabilitation in rats by inducing response-like movement", Adv. Biomed. Eng., vol. 2, pp. 72–79, 2013.
[2] H. Kaneko, H. Sano, Y. Hasegawa, H. Tamura, and S. S. Suzuki, "Effects of forced movements on learning: Findings from a choice reaction time task in rats", Learn. Behav., vol. 45, pp. 191–204, 2017.
 
用語解説 アシスト動作機器
身体を動かしたいと思ったとき、その動きを手助けしてくれるような機器。被訓練者があまり力を発揮しなくても所望の動作を行える。
 
徒手療法
訓練者が被訓練者の身体運動を補助したり、負荷を与えたりして、身体運動の訓練効果を高めようとする機能回復訓練法。
 
ニューロリハビリ技術
神経科学的な知見を活かして、脳や脊髄などの神経系の損傷による後遺症としての身体機能や認知機能の低下を、効率良く回復させようとするリハビリ技術。
 
ロボティックリハビリ技術
ロボット技術を用いて、患者の身体に外力を加えるなどしてリハビリ訓練の効果を得ようとするもの。
 
片側大脳皮質損傷モデル
左右片側の大脳皮質において、前肢の感覚機能や運動機能を司っている領域を損傷したラット。脳損傷がある側とは反対側の前肢への感覚刺激に対する反応やその前肢を動かして応答しなければならない課題の学習が遅くなる。
 
押力センサー
ラットが前肢でレバーを押し下げる力を計測するためのセンサー。
 
レバー駆動装置
ラットの前肢に上向きの外力を加えて強制的に応答動作を引き起こす装置。課題遂行中、ラットはレバーを押し下げた状態から、空圧刺激後に前肢を上げてレバーから離す動作で応答するが、応答する前に押し下げられている状態のレバーを上向きに押し上げる装置。
 
条件付け理論
”ベルを鳴らした後に犬に餌を与えることを繰り返すと、ベルを鳴らしただけで犬は唾液を分泌するようになる(パブロフの犬)”という現象がある。これは、餌とは関連しない刺激であるベルの音と餌に対して唾液を分泌するという反射応答との関係が獲得されて起こるもので、逆に両者の同時性や時間的な一定性が崩れると関係が弱まる。ここでは、空圧刺激とレバー駆動によって引き起こされる反射経路を通じた神経活動との間に一貫した時間的関係がなりたつ場合とそうでない場合とで両者の関係が強まったり弱まったりすることが想定される。
 
反射経路
筋肉や腱などの末梢器官への刺激がきっかけとなって比較的短時間に生じる身体応答を反射と呼ぶ。そのような反射には、脊髄内の少数の神経細胞を介して伝達されるものと、より高次の中枢の複数の神経細胞を介して伝達されるものが両方含まれている。反射経路は、このような反射に関わる神経活動の伝達経路のこと。ここでは、レバー駆動装置によって前肢を急に持ち上げたとき、それによって引き伸ばされた筋肉を自ら収縮させようとする伸張反射に関わる経路。
 
 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241223/pr20241223.html
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第5回「アトツギ甲子園」の地方大会出場者が決定! https://kyodonewsprwire.jp/release/202412191995 Fri, 20 Dec 2024 13:00:00 +0900 経済産業省 団塊世代が75歳以上の高齢者と言われる2025年が迫る中、 喫緊の課題である“早期事業継承”を後押しする全国ピッチイベント! 中小企業・小規模事業者の後継者が既存の経営資源を活かした 新規事業アイデア... <![CDATA[  
 
団塊世代が75歳以上の高齢者と言われる2025年が迫る中、 喫緊の課題である“早期事業継承”を後押しする全国ピッチイベント!   中小企業・小規模事業者の後継者が既存の経営資源を活かした 新規事業アイデアを発表するピッチイベント 第5回「アトツギ甲子園」の地方大会出場者が決定! 新たに各ブロックの地方大会に経済産業局長賞を創設します 
 
      ✔189名のエントリー者の中から、書類選考の上、地方大会出場者90名を決定。
      ✔全国6ブロックで地方大会を開催し、決勝大会(2025年2月20日@東京)に進む
       上位3名のうち1名に経済産業局長賞、2名に地方大会優秀賞を授与します。
 
 中小企業庁は、全国の中小企業・小規模事業者の後継者が、既存の経営資源を活かした新規事業アイデアを競い合うピッチイベント第5回「アトツギ甲子園」において、全国からエントリーのあった189名の後継者による、既存の経営資源を活かした新規事業アイデアについて、書類審査の結果、地方大会に進む90名の出場者を決定しました。
 

 
 地方大会は北海道・東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州・沖縄の6ブロックでピッチイベントを開催し、各ブロックの上位3名が決勝大会に進出します。
 
 今回から、各地方大会において、決勝大会に進む上位3名のうち1名に経済産業局長賞、2名に地方大会優秀賞を授与します。
 
 なお、決勝大会では、最優秀賞受賞者には経済産業大臣賞を授与し、非常に優れた者に中小企業庁長官賞、優秀賞等を授与します。
 
 団塊の世代が75歳以上の高齢者になると言われる2025年が迫る中、事業承継は喫緊の課題です。これまで、主に現在の経営者に対して様々な支援を実施してきたところですが、一層早期の事業承継を進めるため、後継者に対しても十分な後押しを実施することが重要です。
 
 本大会は、後継者によるチャレンジを後押しすることを目的に、早期の事業承継の実現と企業の成長の促進を図るために実施しております。
 
1. 第5回「アトツギ甲子園」地方大会について ① 2025年1月17日(金)/九州・沖縄ブロック 
■会場:アクロス福岡(福岡) ■九州・沖縄ブロック出場者一覧(以下URL参照)
https://atotsugi-koshien.go.jp/pdf/koushien_5_kyushu-okinawa_chirashi.pdf
 
② 2025年1月21日(火)/中国・四国ブロック 
■会場:岡山コンベンションセンター(岡山) ■中国・四国ブロック出場者一覧(以下URL参照)
https://atotsugi-koshien.go.jp/pdf/koushien_5_chugoku-shikoku_chirashi.pdf
 
③ 2025年1月24日(金)/近畿ブロック 
■会場:神戸駅前研修センター(兵庫) ■近畿ブロック出場者一覧(以下URL参照)
https://atotsugi-koshien.go.jp/pdf/koushien_5_kinki_chirashi.pdf
 
④ 2025年1月31日(金)/中部ブロック 
■会場:ウインクあいち(愛知) ■中部ブロック出場者一覧(以下URL参照)
https://atotsugi-koshien.go.jp/pdf/koushien_5_chubu_chirashi.pdf
 
⑤ 2025年2月4日(火)/関東ブロック 
■会場:航空会館ビジネスフォーラム(東京) ■関東ブロック出場者一覧(以下URL参照)
https://atotsugi-koshien.go.jp/pdf/koushien_5_kanto_chirashi.pdf
 
⑥ 2025年2月7日(金)/北海道・東北ブロック 
■会場:ハーネル仙台(宮城) ■北海道・東北ブロック出場者一覧(以下URL参照)
https://atotsugi-koshien.go.jp/pdf/koushien_5_hokkaido-tohoku_chirashi.pdf
 
※各ブロックは現地観戦とYouTube配信オンラインで開催予定です。
下 記リンク下部にある一般観覧受付より事前に申し込みください。
(ブロックごとに事前申込の締切が異なります)
アトツギ甲子園地方予選大会一般観覧申込 https://x.gd/ey9yu 
2. 第5回「アトツギ甲子園」地方大会へのご取材について
各地方ブロック大会への[取材案内状]につきましては、
開催1週間前ごろに改めてご案内させて頂きます。
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地下微生物が天然ガスの起源を偽装!? https://kyodonewsprwire.jp/release/202412171819 Fri, 20 Dec 2024 04:00:00 +0900 産総研 ポイント ・ 天然ガスには、微生物が作る「生物起源」と地下の熱によって発生する「熱分解起源」の2種類が存在 ・ 地下のメタン菌が熱分解起源の天然ガスの「指標」を生物起源のものに上書きする現象を発見 ・... <![CDATA[ ポイント
・ 天然ガスには、微生物が作る「生物起源」と地下の熱によって発生する「熱分解起源」の2種類が存在
・ 地下のメタン菌が熱分解起源の天然ガスの「指標」を生物起源のものに上書きする現象を発見
・ 天然ガスの資源量推定や探査方法の見直しを促し、新しい天然ガス鉱床の発見を後押し
 

 
概 要 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は、マサチューセッツ工科大学と共同で、地下に生息するメタン生成古細菌(以下「メタン菌」という)が、熱分解起源の天然ガスの「指標」を生物起源のものに変えてしまうことを発見しました。これにより、これまでの天然ガスの起源や資源量に関する情報が大きく変わる可能性があり、これまで見落とされていた新たな天然ガス鉱床の発見につながることが期待されます。
 
天然ガスの主成分であるメタンがどこでどのように作られているのかを理解することは、地球全体の天然ガス資源量を評価するために重要です。これまで、メタンの生成起源を見分けるために「安定同位体シグナル」が重要な指標として使われてきました。しかしこの識別法は、地下でメタン菌が作る生物起源メタンの安定同位体シグナルを実験室でのメタン菌培養では再現できないという、半世紀近く解決されていない大きな問題を抱えていました。今回、地下の環境を忠実に模擬可能な高圧培養装置を開発したことで、世界で初めて、地下で作られる生物起源メタンの安定同位体シグナルを実験的に再現することに成功しました。さらに本研究では、熱分解起源メタンがメタン菌と共存した場合、その安定同位体シグナルがメタン菌によって生物起源のものに上書きされてしまうという驚くべき現象を発見しました。この発見は、熱分解起源メタンの存在量が実際よりも少なく見積もられている可能性と現在推定される天然ガス鉱床の成因を大きく見直す必要性を示すものです。それにより、天然ガス鉱床の探査方法の再考が促され、今まで見落とされていた新しい天然ガス鉱床の発見につながることが期待されます。
 
この成果の詳細は、2024年12月19日(米国東部時間)に米国科学誌「Science」にオンライン掲載されます。
 
下線部は【用語解説】参照
 
※本プレスリリースでは、化学式や単位記号の上付き・下付き文字を、通常の文字と同じ大きさで表記しております。
正式な表記でご覧になりたい方は、産総研WEBページ
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241220/pr20241220.html )をご覧ください。
 
研究の社会的背景 天然ガスは石油や石炭に比べてクリーンな化石エネルギー資源であり、世界の総エネルギー消費の約24%を担っています*。一方で、天然ガスの主成分であるメタンは強力な温室効果ガスでもあり、地球規模でのメタンの発生や移動、集積、拡散のメカニズムを理解することは、天然ガスの資源量を正確に評価することだけでなく、気候変動問題への対応にもつながります。
 
地下環境で作られるメタンは、地中温度が80 ℃以下の比較的浅い地層で微生物が作る「生物起源」と、それよりも高温・高圧の深部地下で有機物の熱分解により生成する「熱分解起源」に大別されます。これらはメタン(分子式:CH4)の炭素や水素の安定同位体シグナル(例えば、12Cと13C、1Hと2Hの割合)を指標にすることで生成起源や生成温度を推測することが可能で、メタンハイドレートなどの天然ガス鉱床の探査や湖沼・水田などのメタンガス発生源の特定などに広く使われてきました。しかし、地下の生物起源メタンの安定同位体シグナルが実験室でのメタン菌培養で再現されたことはなく、同位体地球化学と微生物学との解釈が一致しないという本質的な問題がありました。
 
研究の経緯 産総研では、油田・ガス田・石炭層を対象に地下微生物による天然ガス生成ポテンシャルの評価とその生成メカニズムの解明を目指す研究を行ってきました(2016年10月14日2013年6月13日 産総研プレス発表)。
 
そこで今回、産総研では地球化学の専門家チームを擁する地圏資源環境研究部門と微生物学の専門家チームを擁する生物プロセス研究部門がタッグを組み、エネルギープロセス研究部門(研究開始当時はメタンハイドレート研究センター)の協力の下、15年の研究期間をかけてこの問題の解決に取り組みました。
 
なお、本研究の一部は、独立行政法人 日本学術振興会 科学研究費補助金(18H05295, 20H00366, 21H04670, 22H05152, 23H00387, 24H00765)による支援を受けて行いました。
 
研究の内容 メタン菌の一般的な培養実験は、密閉可能なガラス製容器に栄養源を含む培養液とメタン菌を添加し、気相にメタン生成の基質となる水素を大量に充填し、ほぼ大気圧下で実施されます(図1)。これは地下環境に特徴的な条件、すなわち高静水圧・低水素濃度条件とはかけ離れています。そこで本研究では、深海底下のメタンハイドレートを研究する専門家チームが中核となって、地下環境を忠実に模擬するメタン菌培養装置を開発しました。この装置は、メタンハイドレート合成実験に用いられるステンレス製の耐圧容器や圧力ポンプを微生物培養用に改良したもので、地下環境と同等の静水圧(~150気圧相当)下でメタン菌を培養可能なシステムです(図2)。加えて、水素を培養開始時に添加するのではなく、有機物を分解し緩やかに水素を生成し続ける細菌をメタン菌とともに共培養させることで、地下環境に特徴的な低水素濃度条件を再現しました。
 

 

 
こうした条件下で生成されたメタンの安定同位体シグナルは大気圧条件や高水素濃度条件で作られるものとは大きく異なり、これまで再現できなかった地下の生物起源メタンの安定同位体シグナルと明確に一致しました(図3)。これは、静水圧条件で培養したことによって培養液中に溶存するメタンの濃度が増加し、メタン生成反応の逆反応が加速化して、最終的に正反応と逆反応がほぼ釣り合った状態、すなわち平衡に達したためであることが明らかになりました。
 

 
さらに詳しく、溶存するメタンの濃度の増加に伴う安定同位体シグナルの経時変化を観察すると、メタン菌は溶存メタン濃度が低い間は非平衡の安定同位体シグナルを示すメタンを作るのに対し、溶存メタン濃度が高くなるにつれてシグナルが平衡に達することを発見しました。そこで次に、培養容器に熱分解起源メタンを加えた状態でメタン菌の培養を開始したところ、添加した熱分解起源メタンの安定同位体シグナル(図4でαH2O-CH4 = 1.14付近)がメタン生成に伴って生物起源のシグナルに平衡化する現象を観察しました。この結果は、メタン菌が熱分解起源メタンの安定同位体シグナルを生物起源のものに上書きすることを示しています。世界各国の天然ガスの安定同位体シグナルのデータを見返すと、このようなメタン菌による安定同位体シグナルの上書き現象は世界中の天然ガス鉱床で実際に起こっていると推察され、今後は地球規模で天然ガスの起源や成因について再評価を行う必要があります。
 

 
研究の社会的意義 生物起源の天然ガスは比較的浅い地層にのみ存在します(下図1)。一方で、熱分解起源の天然ガスはより深い地層で発生し、その一部が浅い地層に移動し天然ガス鉱床を形成します。従って、熱分解起源の天然ガスが浅い地層で発見された場合、より深い地層にはより大きい天然ガス鉱床が存在する可能性があります(下図2)。しかし、浅い地層に移動してきた熱分解起源の天然ガスがメタン菌によって生物起源の天然ガスに上書きされた場合、より深い地層に存在する熱分解起源の天然ガス鉱床を見落とすことになりかねません(下図3)。今回の発見は、天然ガスの生成起源や生成プロセスを正確に推定するための基盤的知見として、天然ガス鉱床の探査方法について再考を促すことで、今まで見落とされていた新しい天然ガス鉱床の発見につながることが期待されます(下図4)。
 

 
今後の予定 メタン菌は利用できる基質(餌)によって大きく3種類(水素資化性・酢酸資化性・メチル化合物資化性)に分類されます。今回は水素資化性メタン菌による安定同位体シグナルの上書き現象を観察しました。次は、酢酸資化性やメチル化合物資化性メタン菌でも同様の現象が起こることを検証し、今回の発見の普遍性について明らかにする予定です。
 
研究チーム 産総研
地圏資源環境研究部門 眞弓 大介 主任研究員、坂田 将 客員研究員
バイオメディカル研究部門 鎌形 洋一 招へい研究員
生物プロセス研究部門 玉木 秀幸 副研究部門長、加藤 創一郎 上級主任研究員、五十嵐 健輔 主任研究員、佐藤 朋之 産総研特別研究員(研究当時)
エネルギープロセス研究部門 皆川 秀紀 テクニカルスタッフ(研究当時:メタンハイドレート研究センター 研究チーム長)、西川 泰則(研究当時:メタンハイドレート研究センター テクニカルスタッフ)
 
マサチューセッツ工科大学
Department of Earth, Atmospheric and Planetary Science Ellen Lalk 大学院生(研究当時)、小野 周平 教授
 
論文情報 掲載誌:Science
論文タイトル::Hydrogenotrophic methanogens overwrite isotope signals of subsurface methane
著者: Daisuke Mayumi*†, Hideyuki Tamaki†, Souichiro Kato†, Kensuke Igarashi†, Ellen Lalk, Yasunori Nishikawa, Hideki Minagawa, Tomoyuki Sato, Shuhei Ono*, Yoichi Kamagata*, and Susumu Sakata*
*Corresponding author
†These authors contributed equally to this work.
DOI:10.1126/science.ado0126
 
用語解説 メタン生成古細菌
メタン菌、メタン生成アーキアともいう。細胞内に核をもたない原核生物の仲間で、生物学的にはバクテリア(細菌)ではなくアーキア(古細菌)に分類され、酸素がない嫌気環境下で有機物分解の最終過程を担う。メタン生成古細菌が利用できる基質(餌)は主に水素+二酸化炭素や酢酸、メタノールなどのメチル化合物に限られている。
 
天然ガス資源量
天然ガスの埋蔵量とは、現在の技術と価格を前提に、採掘が経済的に見合う条件を満たす天然ガスの量を指す。これに対し、資源量は、その存在が確認もしくはほぼ確実に想定できるもの全体を指す。
 
安定同位体シグナル
メタン分子(分子式:CH4)の炭素と水素にはそれぞれ異なる安定同位体(12Cと13C、1Hと2HまたはD)がある。メタンの炭素や水素の安定同位体比(13C/12C、2H/1H)やメタン分子内の安定同位体比(δ13CH3D)、もしくはメタンとその前駆物質である二酸化炭素や水の同位体分別係数(αCO2-CH4やαH2O-CH4)などはメタンが生成された環境やその生成過程を示すシグナルとして使われる。
 
メタンハイドレート
メタンハイドレートは、低温・高圧下で水分子がメタン分子を取り囲み、氷のような構造を作った物質。主に海底や永久凍土に存在し、1立方メートルから気体換算で約160立方メートルのメタンを取り出せるため、将来的な天然ガス資源として注目されている。また、温暖化により分解すると大量のメタンが放出されるため、気候変動への影響が懸念されている。
 
平衡・非平衡
化学反応における平衡とは、反応が進む速度と逆反応の速度が等しくなり、反応物と生成物の濃度が一定に保たれる状態。このとき、見かけ上は反応が止まったように見えるが、実際には反応が両方向で同じ速度で進行し続けている。この状態を化学平衡と呼ぶ。非平衡とは、反応が一方向に進み続け、平衡状態に達していない状況である。これに対し、同位体平衡は分子間の双方向の同位体交換反応の速度が同じ状況、非平衡は速度が異なる状況を指す。メタンと二酸化炭素の間の炭素の同位体平衡であれば
13CH4 + 12CO2 ⇌ 12CH4 + 13CO2
メタンと水の間の水素の同位体平衡であれば
CH3D + H2O ⇌ CH4 + HDO
の双方向の速度が同じとなる。メタン分子内の炭素と水素の結合は切れにくいため、通常これらの同位体交換速度は非常に遅い。しかしメタン菌が存在する場合、メタン生成とその逆反応が促進されるため、同位体交換反応も速やかに進行する。メタン生成反応に対する逆反応の速度比が上昇すると安定同位体シグナルの値も変化する。最終的に化学平衡(メタン生成反応とその逆反応の速度が等しい状態)に達すると、同位体平衡も達成される。同位体平衡における安定同位体シグナルの値は温度で一元的に決まる。
 
注釈 *「令和5年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2024)」(経済産業省資源エネルギー庁)より
 
 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241220/pr20241220.html
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北海道の人気温泉宿の宿泊券が当たる♪ ペア宿泊券プレゼントキャンペーンのお知らせ https://kyodonewsprwire.jp/release/202412171836 Thu, 19 Dec 2024 14:00:00 +0900 北海道観光機構 HOKKAIDO LOVE!公式Xで応募 北海道の人気温泉宿の宿泊券が当たる♪ ペア宿泊券プレゼントキャンペーン 北海道の観光情報などを投稿している「HOKKAIDO LOVE!公式X」で参加する温泉... <![CDATA[  
HOKKAIDO LOVE!公式Xで応募 北海道の人気温泉宿の宿泊券が当たる♪ ペア宿泊券プレゼントキャンペーン
 
北海道の観光情報などを投稿している「HOKKAIDO LOVE!公式X」で参加する温泉宿ペア宿泊券が当たるキャンペーンを実施中です。
 

 
キャンペーン概要

・名称 ペア宿泊券プレゼントキャンペーン
・実施期間 2024年12月13日(金)~2025年1月12日(日)
・プレゼント品 洞爺湖万世閣ホテルレイクサイドテラス ペア宿泊券
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▽HOKKAIDO LOVE!公式Xはコチラ
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プリンターで作成できる液滴レーザーディスプレイの開発に成功 https://kyodonewsprwire.jp/release/202412181897 Thu, 19 Dec 2024 14:00:00 +0900 産総研 レーザー発光する液滴をインクジェットプリンターで吐出させ、高速かつ大量にレーザー光源を作成する手法を開発し、この液滴に電場を加えることにより、発光のON/OFFの切り替えが可能なことを見いだしました。... <![CDATA[ レーザー発光する液滴をインクジェットプリンターで吐出させ、高速かつ大量にレーザー光源を作成する手法を開発し、この液滴に電場を加えることにより、発光のON/OFFの切り替えが可能なことを見いだしました。また、この液滴を基板上に並べた小さなレーザーディスプレイの作成に成功しました。


テレビやパソコン、スマートフォンのディスプレイは絶えず進化しており、画質や鮮明さ、そしてエネルギー効率が日々向上しています。その次世代型として期待されているのがレーザーディスプレイで、特に輝度と色再現度の面で、有機ELや液晶ディスプレイといった従来の発光素子の原理的な限界を突破することができます。しかしながら、ディスプレイとして利用するためには、現在実現されている以上に素子を微細化し、高密度かつ大量に敷き詰めることが必要です。
 
本研究では、インクジェットプリンターで吐出した有機色素を添加したイオン液体の液滴が光励起によりレーザー光を発すること、およびその液滴に電場を印加することでレーザー光のON/OFF切り替えが可能なことを見いだしました。液滴の直径は30 µmと非常に小さく、また4cm2ほどの大きな領域に高密度かつ大量に敷き詰めることができます。この液滴を電極で挟んで電場を印加したところ、球体の液滴が楕円球体へと変形し、それに伴いレーザー光の放出が止まったことから、この液滴が電気的にスイッチ可能な「レーザーピクセル」として振る舞うことが明らかになりました。また、この液滴を2x3の配列に並べたデバイスにおいても、各ピクセルのレーザー発光をON/OFFできることが分かりました。
 
今後、電気的なデバイス構成やレーザー性能の向上により、実用的なレーザーディスプレイの実現に寄与すると期待されます。
 
※本プレスリリースでは、化学式や単位記号の上付き・下付き文字を、通常の文字と同じ大きさで表記しております。
正式な表記でご覧になりたい方は、産総研WEBページ(下記)をご覧ください。
 
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241219/pr20241219.html
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「つながる特許庁 in KANSAI」2025/1/22(水)開催! https://kyodonewsprwire.jp/release/202412031008 Thu, 19 Dec 2024 10:00:00 +0900 特許庁 【開催のお知らせ(大阪府大阪市)】 スタートアップの成長戦略 -ビジネスモデル、無形資産と資金調達- 知財などの無形資産の活用戦略と資金調達をテーマにスタートアップの成長戦略について解説します。全国... <![CDATA[ 【開催のお知らせ(大阪府大阪市)】  スタートアップの成長戦略 -ビジネスモデル、無形資産と資金調達-  知財などの無形資産の活用戦略と資金調達をテーマにスタートアップの成長戦略について解説します。全国9都市で地域と特許庁を結ぶイベント「つながる特許庁」 は、知的財産の活用によるビジネスチャンスの拡大をサポートします。 「つながる特許庁 in KANSAI」 テーマ:スタートアップの成長戦略 -ビジネスモデル、無形資産と資金調達- ●日時:令和7年1月22日(水)13:00~18:00 ●場所: オービックホール 【参加無料:事前申込制(定員120名)、オンライン配信も実施】  
 特許庁は、ビジネスにおける知的財産の活用をサポートするイベント「つながる特許庁」を開催します。開催地域の企業や支援機関による先進的な取組事例の紹介や、各分野で活躍している専門家による知的財産活用の気づきとなるセミナーを行います。また、知的財産や経営におけるさまざまな情報・意見交換ができるよう交流会を開催いたします。
 
 令和6年9月、高知県高知市での開催を皮切りに、令和7年2月までに全国9都市にて順次開催を予定しています。
 
 令和6年度第7回となる「つながる特許庁 in KANSAI」では、セッション①講演:今後スタートアップを目指す人たちへ セッション②講演:私たちが成功した理由と今後の展望 セッション③パネルディスカッション:関西のスタートアップ成長戦略 をテーマに関西圏の企業等の取組について情報発信します。
 


1.「つながる特許庁」開催予定
 
全国9都市でテーマを設定し、リアル開催に加え、全国にオンライン(YouTube Live)で配信を行いますので、開催地域以外の方もご視聴いただけます。なお、イベント終了後は期間限定でアーカイブ配信をします。
 
<開催都市>
①高知県高知市(令和6年9月5日(木)) 
②岩手県盛岡市(令和6年9月19日(木))
③北海道札幌市(令和6年10月4日(金)) 
④山梨県甲府市(令和6年11月1日(金))
⑤島根県松江市(令和6年11月28日(木)) 
⑥佐賀県佐賀市(令和6年12月17日(火))
⑦大阪府大阪市(令和7年1月22日(水))
⑧岐阜県大垣市(令和7年2月13日(木))
⑨沖縄県宮古島市(令和7年2月26日(水))
 
イベントの詳細や参加申込み方法(会場参加・オンライン参加)は、以下の各ホームページから御覧いただけます。
 
■つながる特許庁 特設ホームページ
https://tsunagaru-tokkyocho.go.jp/
■つながる特許庁 特許庁ホームページ
https://www.jpo.go.jp/support/chusho/tsunagaru-tokkyocho.html
ご参考までに過去の開催実績等を掲載しています。
 
2.「つながる特許庁 in KANSAI」のご案内
 
令和6年度「つながる特許庁」第7回は、大阪府大阪市で開催します。
 
 

 
メインテーマ:スタートアップの成長戦略 -ビジネスモデル、無形資産と資金調達-
 
第1部 
セッション1
【講演】 今後スタートアップを目指す人たちへ
吉野 巌氏 マイクロ波化学株式会社代表取締役社長CEO
 
セッション2
【講演】 私たちが成功した理由と今後の展望
垣内 俊哉氏 株式会社ミライロ代表取締役社長
 
セッション3
【パネルディスカッション】 関西のスタートアップ成長戦略
モデレーター:小林 誠氏 株式会社シクロ・ハイジア 代表取締役CEO
パネリスト:吉野 巌氏 マイクロ波化学株式会社 代表取締役社長CEO
パネリスト:垣内 俊哉氏 株式会社ミライロ 代表取締役社長
パネリスト:廣田 翔平氏 グローバル・ブレイン株式会社 パートナー/弁理士
 
第2部
交流会(日本弁理士会主催)
セッション登壇者や参加者同士がコーヒー片手に情報交換できる出会いの場
 
※セッションの内容は予告なく変更の可能性があります。
 
○つながる特許庁 in KANSAI
■開催日 :令和7年1月22日(水) 13:00~18:00
■開催会場:オービックホール
      〒541-0046 大阪府大阪市中央区 平野町4丁目2-3オービック御堂筋ビル2F
■定員  :120名 ※参加無料、オンライン配信も実施
■主催  :特許庁、中小企業庁、近畿経済産業局
■共催  :(独)工業所有権情報・研修館(INPIT)、日本弁理士会、産経新聞社
■後援  :大阪商工会議所、大阪府、(一社)大阪発明協会、(公社)関西経済連合会、関西商工会議所連合会、京都府、滋賀県、全国商工会連合会、全国中小企業団体中央会、(独)中小企業基盤整備機構、奈良県、(一財)日本規格協会、日本商工会議所、(一社)日本知的財産協会、日本弁護士連合会、日本弁理士会関西会、(独)日本貿易振興機構、(公社)発明協会、(一社)発明推進協会、兵庫県、福井県、弁護士知財ネット、和歌山県 【50音順】
 
■参加申込:以下の「つながる特許庁」ホームページからお申込みください。
 https://tsunagaru-tokkyocho.go.jp/kansai.html
 ※現地参加、オンライン参加ともに事前申込が必要です。
 
■問合せ:「令和6年度 つながる特許庁」運営事務局
  [email protected](10:00~17:00)  
 
○開催プログラム
 
※タイムスケジュールは変更になる場合がございますので、最新情報はホームページでご確認をお願い致します。
第1部 オープニング
13:00~13:20
・主催者挨拶
・来賓挨拶
セッション1
13:20~14:10
【講演】 今後スタートアップを目指す人たちへ
吉野 巌氏 マイクロ波化学株式会社代表取締役社長CEO
セッション2
14:20~15:10
【講演】 私たちが成功した理由と今後の展望
垣内 俊哉氏 株式会社ミライロ代表取締役社長
セッション3
15:25~16:45
【パネルディスカッション】 関西のスタートアップ成長戦略
モデレーター:小林 誠氏 株式会社シクロ・ハイジア 代表取締役CEO
パネリスト:吉野 巌氏 マイクロ波化学株式会社 代表取締役社長CEO
パネリスト:垣内 俊哉氏 株式会社ミライロ 代表取締役社長
パネリスト:廣田 翔平氏 グローバル・ブレイン株式会社 パートナー/弁理士
第2部 17:00~18:00 交流会(日本弁理士会主催)  
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未来を開くフードテック!広報誌「とっきょ」63号のテーマは「食の社会課題に知財で挑む」12/17(火)発行 https://kyodonewsprwire.jp/release/202412161739 Tue, 17 Dec 2024 12:00:00 +0900 特許庁 特許庁は、幅広い層に知的財産への関心を持っていただくため、知的財産活用の成功事例や特許庁の最新ニュースをお届けする広報誌「とっきょ」を発行しています。 2024年12月17日発行の63号では、増え続け... <![CDATA[ 2024年12月17日
経済産業省 特許庁
 
 
特許庁は、幅広い層に知的財産への関心を持っていただくため、知的財産活用の成功事例や特許庁の最新ニュースをお届けする広報誌「とっきょ」を発行しています。
 
2024年12月17日発行の63号では、増え続ける人口と気候変動の激化によって、世界の食料生産システムが大きな曲がり角に差し掛かっている中で、タンパク質不足や海の生態系変化といった「食」の社会課題の解消のために、特許技術とそれを活用した枠組の構築に取り組む先進的な事例を紹介します。


 
 
 
特集1:NUProtein株式会社 代表取締役 南 賢尚氏 インタビュー
 

 
タンパク質危機を乗り越える解の一つとして期待される培養肉。バイオベンチャーのNUProtein株式会社は、技術ライセンスプログラムを発表して特許技術の普及を促すかたわら、培養肉のコストを流通可能なレベルまで下げるための研究開発を続けて、市場の拡大に取り組んでいます。
 
特集2:合同会社シーベジタブル 共同代表 友廣 裕一氏 インタビュー



「海藻」の力で海の生態系回復や食文化創造を目指す合同会社シーベジタブル。特許技術による海藻の陸上栽培や漁業者との協業を見据えた海面栽培など、知財を活用した事業展開をしています。
 
 
特許庁広報誌「とっきょ」とは
広報誌「とっきょ」は、今やビジネスにおいて避けては通れない「知財」について、その経営上の位置づけをトップに伺うことで、知財部員のみならず広い層のビジネスパーソンにまで知財の重要性を訴求することを狙いとしています。
また、これまで知財に関心のなかった方々にも興味を持ってもらえるよう、取材企業の選定や、特集コンテンツについて工夫を凝らし、制作しています。
知財にまつわる情報を様々な角度から学び、楽しめる一冊になっていますので、是非ご覧ください!
 
掲載内容
(特集1)タンパク質危機の克服を狙う「植物分子農業」 「NUProtein株式会社」
(特集2)「海藻」の力で海の生態系回復や食文化創造を目指す 「合同会社シーベジタブル」
(マンガ)知財戦略どうやって取り組んでいるの? 「ナオライ株式会社」
(支援事例紹介)知財支援はINPITにおまかせ! 「株式会社SORENA」
(解説)知財TOPICS 「本格江戸前寿司が味わえる「解凍寿司“シャリは人肌”」 特許新製法の容器で、握りたてのような味を再現した冷凍寿司」
(マンガ)イラストレーターパパンがゆく! 「近畿経済産業局知的財産室の取組を取材!」
(お知らせ)特許庁からのお知らせ 「特許庁職員がインタビュー 知財担当のリアルな現状の発信をスタート!」、「大阪・関西万博 知財に関する展示・体験・ステージイベントを開催!」
(事例紹介)ふくしまイノベーション企業ファイル 「合同会社楽膳」
(事例紹介)こころと体にうれしい知財セレクション 「豆の香りを凝縮し閉じ込めて「飲む」ではなく「食べる」コーヒー(UCC上島珈琲株式会社)」
 
■広報誌「とっきょ」掲載先
https://www.jpo.go.jp/news/koho/kohoshi/index.html
 
広報誌「とっきょ」を通して、幅広い層に、ビジネスや暮らしにおける知財の関わりについて、関心を深めていただければ幸いです。
 
特許庁公式Xでは、最新情報を発信しています。
是非フォローしてチェックいただけますと幸いです。
https://x.com/jpo_NIPPON/
 
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腸内菌が脳に果たす新たな役割を発見 https://kyodonewsprwire.jp/release/202412101390 Mon, 16 Dec 2024 14:00:00 +0900 産総研 ポイント ・ 腸内菌叢の存在が大人の脳で新しく作られた神経細胞の正常な発達に必要であることを発見 ・ 3種のプロバイオティクスで腸内菌叢の担う神経発達調節の役割を補えることを示唆 ・ プロバイオティク... <![CDATA[ ポイント
・ 腸内菌叢の存在が大人の脳で新しく作られた神経細胞の正常な発達に必要であることを発見
・ 3種のプロバイオティクスで腸内菌叢の担う神経発達調節の役割を補えることを示唆
・ プロバイオティクスによって増加する血中代謝物はヒト神経幹細胞の分化と発達を促進
 

 
概 要  国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)バイオメディカル研究部門 波平昌一 研究グループ長、室冨和俊 主任研究員と、国立大学法人 東京大学大学院農学生命科学研究科 平山和宏 教授は、東亜薬品工業株式会社と共同で、腸内菌(腸内菌叢)が脳に果たす新たな役割を発見しました。
 
大人の脳が新しく神経細胞を作り出す「成体神経新生」と呼ばれる現象は、記憶や感情の調整に関わるとされています。われわれは、新たに生まれる神経細胞の正常な発達に腸内菌叢の存在が必要であることを発見しました。また、3種類のプロバイオティクスの摂取によって、成体神経新生において腸内菌叢が担っている役割を補えることと、神経細胞を作り出す神経幹細胞の数を通常飼育下のマウスよりも増やせることも発見しました。この成果は、プロバイオティクスが脳の健康維持に貢献できる可能性を示唆しています。
 
なお、この成果の詳細は、2024年12月16日に「STEM CELLS」に掲載されます。
 
下線部は【用語解説】参照
 
開発の社会的背景 成体神経新生は、大人になってからも脳が新しい神経細胞を作り出す現象のことです。哺乳類では、特に海馬という脳の領域で起こることが知られています。ここで新しく作られた神経細胞は、記憶や学習だけでなく、感情のコントロールにも関わるとされています。そのため、成体神経新生の異常が、アルツハイマー病や統合失調症、うつ病などの精神疾患の原因や進行に影響している可能性が指摘されています。
 
海馬の成体神経新生は、運動や食事、ストレスなどの外部環境に大きく影響されます。最近の研究では、腸内に存在する菌叢(腸内菌叢)が腸と脳をつなぐ「腸脳相関」を通じて、成体神経新生に影響を与えることが明らかになっています。しかし、腸内菌叢がどのような仕組みで成体神経新生を調節しているかについては、まだ完全には解明されていませんでした。
 
また、腸内菌として知られる乳酸菌(Enterococcus faecium T-110)、酪酸菌(Clostridium butyricum TO-A)、および、糖化菌(Bacillus subtilis TO-A)の3種類のプロバイオティクスの投与が、統合失調症患者の症状を緩和したという報告があります。しかし、それらのプロバイオティクスが実際に脳にどのような影響を与えるかについては詳細に解析されていません。
 
研究の経緯 産総研は、高次脳機能のメカニズム解明のための基盤技術の開発を目指し、ヒト由来の神経幹細胞の長期培養技術を確立しました(2016年3月28日 産総研プレス発表)。今回の研究では、この培養技術と、マウスの成体脳に存在する神経幹細胞の動態を明らかにする組織解析技術を組み合わせました。この技術の融合により、今回、腸内菌叢の存在が正常な成体神経新生を促す重要な鍵であり、いわゆる「キープレイヤー」として働く可能性があることを見いだしました。さらに、上記の3種類のプロバイオティクスのみで、腸内菌叢が担っているその役割を補うことができることも発見しました。
 
研究の内容 今回われわれは、成体神経新生における腸内菌の役割を明らかにすることを目指しました。そこで、特定の病原性微生物を保有しない通常飼育下のマウス「SPFマウス」と、全ての腸内菌を持たない「無菌マウス」を用意しました。それらに加えて、無菌マウスに上記の3種類のプロバイオティクスを定着させた「プロバイオティクスマウス」(以下「ProB3マウス」という)も用意しました。これらのマウスにおいて、海馬領域の神経細胞を生み出す神経幹細胞の数を調べました。その結果、ProB3マウスにおいて、神経幹細胞の数が他のマウスと比較して最も多くなっていることがわかりました(図1)。このことは、3種類のプロバイオティクスには神経幹細胞の増殖を促す効果があることを示しています。
 

 
さらに、神経幹細胞から作られたばかりの未発達な神経細胞の数を調べました。その結果、無菌マウスにおいては、未発達な神経細胞の数がSPFマウスと比較して増加していました。一方、長く分岐した神経突起を持つ発達した神経細胞の割合は、SPFマウスと比較して減少していました(図2)。このことは、無菌マウスにおいては、正常な神経細胞の発達が阻害されているため、未発達の神経細胞がSPFマウスよりも多く残されることを示唆していました。ProB3マウスにおいては、発達した神経細胞の割合はSPFマウスと同程度となっていました。このことは、無菌マウスで認められた神経細胞の発達阻害が、たった3種類のプロバイオティクスで解消されることを示唆しています。
 

 
われわれは、メタボローム解析という手法を用いることで、無菌マウスと比較して、ProB3マウスの血中で増加した代謝物を16種類同定しました(図3A)。その中には、マウスを用いた研究で、加齢や精神疾患などで衰えた脳機能を改善する効果があると報告されているテアニン、3-ヒドロキシ酪酸(以下「3-HB」という)、カルノシン、アンセリンが含まれていました。ヒト由来の神経幹細胞を用いてそれらの代謝物の効果を調べたところ、テアニン、カルノシン、3-HBが神経幹細胞から神経細胞への分化を促進することがわかりました(図3B)。さらに、アンセリンが、神経細胞の発達を促進することもわかりました。これらの結果は、3種のプロバイオティクスがそれらの代謝物の増加を介して、成体神経新生に影響を与えていることを示唆しています。また、これらの結果から、3種のプロバイオティクスは、マウスだけでなく、ヒトの成体神経新生も促す可能性があることがわかりました。
 

 
今後の予定 今回の研究から、3種類のプロバイオティクスの投与により、ヒトの成体神経新生に対しても促進効果がある可能性が示唆されました。近年、精神疾患モデルマウスや老齢マウスの成体神経新生の能力を促進させることで、加齢によって衰えた記憶力が改善したという報告もあります。今後は、成体神経新生の解析と合わせて、ProB3マウスの行動解析を行い、記憶力や不安様行動を評価することで、プロバイオティクスの脳の健全性維持への有効性を詳細に検討する予定です。
 
論文情報 掲載誌:STEM CELLS
論文タイトル:Combination of 3 probiotics restores attenuated adult neurogenesis in germ-free mice
著者:Masakazu Namihira, Nana Inoue, Yohei Watanabe, Takuto Hayashi, Kazutoshi Murotomi, Kazuhiro Hirayama, Naoki Sato
DOI:10.1093/stmcls/sxae077
 
用語解説 腸内菌(腸内菌叢)
ヒトの腸内には1000以上の菌種、約100兆個の菌体が存在すると考えられており、その様子をお花畑や叢(くさむら)に例えて「腸内フローラ」や「腸内菌叢(または腸内細菌叢)」と呼んでいます。「腸内菌」は宿主の腸内に生息している菌のことを指します。細菌分類学における腸内細菌科 (Enterobacteriaceae) との誤認を避けるため、本稿では「腸内細菌」ではなく「腸内菌」と表現しています。
 
成体神経新生
成体の脳で新しい神経細胞(ニューロン)が作られる現象です。これは特に記憶や学習に関わる「海馬」という脳の部分で起こります。かつては、脳の神経細胞は生まれた後には増えないといわれていましたが、近年の研究で、成人してからも新しい神経細胞が作られることがわかりました。このプロセスは、ストレスや運動などの要因に影響され、脳の健康や老化とも関連しています。
 
プロバイオティクス
アンチバイオティクス(抗生物質)に対して提案された用語で、「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える生きた微生物」(出典:R Fuller, Probiotics in man and animals. J Appl Bacteriol, 1989)と定義されています。
 
神経幹細胞
神経幹細胞は、新しい神経細胞や、グリア細胞といった神経細胞をサポートする細胞を作る能力を持つ未分化な細胞です。神経幹細胞は、発達中の脳で多く見られますが、成体の脳の特定の場所、特に海馬や脳室下帯にも存在し、必要に応じて神経細胞やグリア細胞に変化します。これにより、脳の学習、記憶、回復に役立つ新しい細胞が供給されます。神経幹細胞は、自己複製と分化の能力を持ち、脳が柔軟に環境に適応する手助けをしています。
 
SPFマウス
「SPF」は、「Specific Pathogen Free(特定病原体不保持)」の略で、SPFマウスは、特定の病原体が存在しないように管理された環境で育てられたマウスのことです。これらの病原体には、ウイルス、細菌、寄生虫などが含まれ、SPFマウスはそれらの感染がないことが保証されています。SPFマウスは、免疫系や生理的な研究において、実験の正確さを保つために使われます。病原体が存在しないことで、感染や炎症の影響を排除し、標準的な条件下での研究が可能になります。SPFマウスは清潔な環境で育てられ、実験の精度や再現性を高めるために広く使用されています。
 
メタボローム解析
メタボローム解析は、細胞や体内で生じる「代謝物」を網羅的に調べ、どんな物質がどれくらいあるかを解析する手法です。代謝物にはアミノ酸、脂質、糖などが含まれ、これらはエネルギー生成や細胞の働きに重要です。この解析を行うと、細胞や組織の「代謝プロファイル」を知ることができ、健康状態、病気の進行、栄養の影響を評価する手がかりになります。よく用いられる手法として、質量分析(MS)や核磁気共鳴(NMR)などの技術が使われ、サンプル中の代謝物を高精度で検出・測定します。
 
 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241216_3/pr20241216_3.html
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英国のCPTPP加入議定書が正式発効 https://kyodonewsprwire.jp/release/202412091367 Sun, 15 Dec 2024 00:01:00 +0900 駐日英国大使館 新たな自由貿易を通じ、日英戦略的パートナーシップをさらに強化 英国 CPTPP 加入により参加国合計 GDP が約 25%増加 英国の CPTPP 加入議定書が正式発効 2024年12月15日(日)午... <![CDATA[ 2024年12月15日日曜日
駐日英国大使館
  新たな自由貿易を通じ、日英戦略的パートナーシップをさらに強化 英国 CPTPP 加入により参加国合計 GDP が約 25%増加
英国の CPTPP 加入議定書が正式発効  
 
2024年12月15日(日)午前0時(日本時間)、英国のCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)加入議定書が正式に発効しました。これにより、英国は日本、シンガポール、チリ、ニュージーランド、ベトナム、ペルー、マレーシア、ブルネイと共にCPTPPの枠組みを利用することが可能となり、更なる国際経済活動の強化を図ることが出来ます。また、12月24日(火)にはオーストラリアでも発効が予定されており、カナダおよびメキシコについては、それぞれの批准から60日後に発効する予定です。
 
ジュリア・ロングボトム駐日英国大使 コメント:
「日本は、英国のCPTPP加入作業部会の議長を務め、英国のCPTPP加入に際し、先導的な役割を果たしてくださいました。今後は協定の拡大やその高い水準の維持、ビジネスが協定の利点を最大限に活用できるよう、日本と共にCPTPPの未来のために協力していきます。英国のCPTPP加入は、日英戦略的パートナーシップがこれまで以上に強固なものとなっていることを象徴しています。CPTPPを通じ、二国間の貿易関係を一層深め、日本との強固な協力関係による日英戦略的 パートナーシップの進化へ向けて引き続き尽力して参ります。」



CPTPP参加国の総人口は約5億8000万人、合計GDPは世界の約15%に相当する約2200兆円(12兆ポンド)規模の経済圏に拡大します。英国は、CPTPP参加国において日本に次ぐ第2位のGDP規模を持ち、参加国全体のGDPを約25%押し上げることになります。英国のCPTPP加入により、同協定はアジア太平洋地域を超えた真のグローバル協定へと進化することが期待されています。
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「表層土壌評価基本図~中国地方~」を刊行 https://kyodonewsprwire.jp/release/202412111481 Fri, 13 Dec 2024 14:00:00 +0900 産総研 ポイント ・ 中国地方で採取した土壌試料の化学特性を分析し、重金属類の濃度分布を作成 ・ ヒトへの健康影響を評価してリスクレベル情報を提供 ・ 社会インフラ整備や環境保全などの基礎資料として活用可能 ... <![CDATA[ ポイント
・ 中国地方で採取した土壌試料の化学特性を分析し、重金属類の濃度分布を作成
・ ヒトへの健康影響を評価してリスクレベル情報を提供
・ 社会インフラ整備や環境保全などの基礎資料として活用可能
 

 
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は、中国地方の表層土壌調査に基づく地球化学情報およびそれらの自然由来バックグラウンド情報と共に、それらを基にヒトへの健康影響リスクを可視化した表層土壌評価基本図~中国地方~を刊行しました。表層土壌評価基本図は、四国地方、九州・沖縄地方の整備が完了しています。今回、中国地方が整備されたことにより、付加体地質構造を有する西南日本の土壌バックグラウンド情報が明らかになりました。中国地方は、かつては多数の金属鉱床の採掘が行われてきた歴史があり、それに起因する鉱害防止対策が行われてきました。過去に銅、ヒ素、カドミウムなどが鉱山活動により農用地などを汚染した履歴もあり、ヒ素に関しては人的被害が報告された地域もありました。表層土壌中の重金属類の含有量分布は母材である付加体堆積物もしくはその後の鉱山活動で集積した地域に高濃度に賦存する傾向にありますが、移行性の高い有害元素は河川下流域で溶出量のみを高く示す傾向にあります。このような土壌化学成分のバックグラウンド情報および算出したヒトへの健康影響リスク情報は、各種インフラ整備時の環境対策や土壌汚染が発覚した際の浄化活動に活用できます。
 
下線部は【用語解説】参照
 
メンバー  原 淳子(産総研 地圏資源環境研究部門 地圏環境リスク研究グループ 研究グループ長)
 土田恭平(産総研 地圏資源環境研究部門 地圏環境リスク研究グループ 研究員)
 川邉能成(早稲田大学 創造理工学部 環境資源工学科 教授)
 
入手先 本評価基本図は、産総研地質調査総合センターのホームページ(https://www.gsj.jp/Map/JP/soils_assessment.html)からダウンロード可能です。
 
用語解説 RfD(Reference Dose)
この量以下を摂取しても⽣涯にわたり毒性が現れないと予測される閾値で、参照⽤量と定義されます。
 
自然由来バックグラウンド情報
天然の岩石や堆積物中に含まれる重金属類の含有量や溶出量の情報。産業活動などで環境中に放出される人為的原因による重金属類と区別されます。
 
表層土壌評価基本図
表層土壌(表層50㎝以内の土壌)を対象とした調査結果である土壌化学データ、各成分の分布図、有害金属類のリスク評価図の3種の図表のこと。PDFファイルおよび位置情報を有するKMZファイルとして公開しています。調査ポイントは、土壌区分、表層地質、河川分水界の情報を基に同種の土壌が分布する領域に区分し、各領域内の土壌を評価することで、地域特性を示しています。また、土壌中の12成分(クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、ヒ素、セレン、カドミウム、アンチモン、鉛、ウラン)について、大気、農作物、地下水を介した摂取経路モデルよりヒトへの健康影響リスクを評価し、環境基準のみでは判断しにくい安全性の評価を示しています。これまでに宮城、鳥取、富山、茨城、高知の5県の詳細図と、四国、九州・沖縄地方および今回の中国地方の広域図がシリーズとして刊行されています。
 
付加体
海洋プレートが海溝において大陸プレートの下に沈み込む際、海洋プレート上の堆積物や火山岩などが大陸地殻側に付加された地質体です。
 
 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241213/pr20241213.html
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モビリティサービスを使いやすく https://kyodonewsprwire.jp/release/202412111474 Thu, 12 Dec 2024 14:00:00 +0900 産総研 ポイント ・ 人や車、台風など時間によって変わる移動体の位置やさまざまな属性情報にインターネットを介してアクセスするための標準的な方法を提供 ・ 異なるデータソースからの情報を組み合わせた高度な分析を... <![CDATA[ ポイント
・ 人や車、台風など時間によって変わる移動体の位置やさまざまな属性情報にインターネットを介してアクセスするための標準的な方法を提供
・ 異なるデータソースからの情報を組み合わせた高度な分析を容易に
・ スマートシティの実現や災害対応の高度化など、持続可能な社会の構築に貢献
 

 
人や車、台風など移動体の位置や属性など、時間の経過と共に変化する移動体データ(Moving features data)を照会し、また、それにアクセスするための標準インターフェースを規定した国際規格OGC API - Moving Features - Part 1: Core(以下「本規格」という)が発行されました。OGC(Open Geospatial Consortium)は企業、研究機関、政府機関、非営利団体など多様なステークホルダーが参加し、地理空間情報の相互運用性を促進するオープンな国際標準化団体です。地理空間データの交換形式やサービスインターフェースなどの共通基盤となる規格を策定し、製品およびサービスの開発者と利用者に向けた重要な標準を提供しています。
 
移動体データは、移動の位置だけでなく、特定の時間における台風の中心気圧やタクシーの乗車人数の情報など、さまざまな現象を表すことができます。これらのデータを活用することで、交通管理、災害対策、環境モニタリングなどの分野への応用が期待されています。本規格の制定により、大規模な移動体データへのアクセスが容易になることで、新しいモビリティサービスの展開や、スマートシティの実現を通して、持続可能な社会の構築に貢献し、多様な価値創出が促進されます。
 
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)は2007年よりAssociate memberとしてOGCの活動に参加しています。今回、移動中の位置と時間を組み合わせた軌跡などの移動体データに関する国際標準を策定する作業グループであるOGC Moving Features Standards Working Group(以下「OGC MF SWG」という)と協力して、移動体の位置情報を円滑に流通させるためのウェブサービスインターフェース仕様を開発し、本規格の発行を主導しました。
 
下線部は【用語解説】参照
 
社会課題の解決 近年、測位技術の進歩により、人や車、台風など移動体の時間によって変化する位置情報が大量に収集・蓄積されています。これらのデータは、公衆衛生管理、災害時の効率的な避難誘導、ライドシェアサービスなど、多岐にわたる活用が期待されています。今までに発行された移動体に関するデータ構造の国際規格ISO 19141およびOGC Moving Features Accessのデータアクセス仕様は、移動体の位置情報に関するデータモデルや、特定の時間を指定して位置情報にアクセスするためのインターフェースについて抽象的な仕様が定義されました。しかし、その仕様を実装するための具体的な技術的方法は提示されていませんでした。そのため、異なるソフトウエアやシステム間で相互に通信できず、企業や組織で独立したサービスが運用され、相互の連携や情報共有が困難でした。
 
本規格は、他のOGC APIサービスと相互連携しつつ、移動軌跡や移動方向、移動速度などの移動体の属性を取得する操作や、指定した空間および時間範囲に基づいて移動体を検索する操作といったコア機能を定義し、データ表現、アクセスプロトコル、制約などを明示しています。特に、データ表現にOGC MF-JSON形式を採用することで、さまざまな種類の移動体に対する動的属性情報を記述できるようになりました。サービス利用者は、複数のデータソースから移動体の位置情報、時間情報、属性情報を、統一されたインターフェースで簡便に検索・取得できるため、移動予測、衝突検知・回避、移動最適化などのより高度で詳細なデータ分析や統合が可能になります。サービス提供者は、自社のニーズに応じて必要な機能を柔軟に選択し、効率的な実装を行うと共に異なるシステムやプラットフォーム間での一貫性のあるデータ処理が可能になります。
 
規格発行までの道のり 産総研は、2016年からOGC MF SWGのワーキンググループ共同議長として、2017年3月のOGC Moving Features Access(OGC 16-120r3)発行、2020年6月のOGC MF-JSON形式(OGC 19-045r3)発行など、移動体データの流通を促進する国際標準規格の開発に大きく貢献してきました。特に、移動体の情報を活用するデータモデルや、サービスインターフェース、データ品質管理などの標準化活動を推進しています。2022年度から台湾、ベルギーとの国際連携により、移動体の時空間データおよびサービスの相互運用性を提供するため本規格のドラフトを提案し、このたびOGC標準に採択されました。
 
 
今後の予定・波及効果 OGC移動体のサービスインターフェースは4つのパートの標準化を推進しており、今後は残っている3つのパート「ストリーム」、「フィルター」、「プロセス」に関する開発チームを構成し、規格開発を目指します。また、標準の普及促進活動、海外展開に向けたISO、IECなど国際標準化団体における活動と共に、次世代モビリティサービスの市場拡大に貢献します。
 
規格の概要 OGC API - Moving Features - Part 1: Core (OGC 22-003r3)
移動地物 第1部: コア
 
この規格は、OGC移動体のサービスインターフェースシリーズの一部として、車両や人、船舶などの移動体データへのアクセス、操作、共有を効率的かつ標準的に行うためのウェブサービスインターフェース仕様を規定する。仕様には、具体的なデータモデルや、実装ルール、アクセスプロトコルが含まれる。
 
メンバー
Taehoon KIM(情報・人間工学領域 人工知能研究センター 研究員)
Kyoungsook KIM(情報・人間工学領域 人工知能研究センター 副研究センター長)
Mahmoud SAKR(Université libre de Bruxelles)
Martin Desruisseaux (Geomatys)
 
用語解説 OGC API (Application Programming Interface)
OGCが開発している、地理空間データや位置情報サービスにアクセスするための、RESTアーキテクチャに基づいて標準化されたAPI仕様。
 
モビリティサービス
人々や物の移動を支援するサービス全般を指し、従来の公共交通機関やタクシーに加え、ライドシェア、自動運転などの新しい技術やビジネスモデルを活用した移動手段が含まれる。
 
OGC Moving Features Standards Working Group
OGC内の標準規格を開発する作業部会で、移動体に関する応用分野のための標準の開発・改良を担当するグループ
 
ISO 19141
地理情報に関する国際標準を開発するためのISO技術委員会(ISO TC211)で発行した地理情報のスキーマの一部として、移動体の位置情報の変化を表現するための幾何学的表現を中心にデータモデルを定義した規格。
 
OGC Moving Features Access
移動体の位置情報に関するデータモデルや、特定の時間を指定して位置情報にアクセスするためのインターフェースに対し、データを検索・取得するための抽象的な仕様。2016年にOGCが策定した(関連情報:2017年3月13日産総研プレス発表)。
 
OGC MF-JSON(Moving Features Encoding Extension - JSON)
移動体のデータをJSON形式で表現するための標準フォーマット。2016年にOGCによって定義された(関連情報:2020年6月2日産総研プレス発表)。
 
 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241212/pr20241212.html
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東京下町の地盤を形成する有楽町層から自然由来のヒ素が溶出する仕組みを解明 https://kyodonewsprwire.jp/release/202412051180 Mon, 09 Dec 2024 14:00:00 +0900 産総研 国立大学法人東京農工大学大学院農学研究院の橋本洋平准教授と、国立研究開発法人 産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門の保高徹生研究グループ長、井本由香利主任 研究員、西方美羽研究員らで構成される研究チ... <![CDATA[ 国立大学法人東京農工大学大学院農学研究院の橋本洋平准教授と、国立研究開発法人 産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門の保高徹生研究グループ長、井本由香利主任 研究員、西方美羽研究員らで構成される研究チームは、以前から自然由来のヒ素が含まれることが知られていた東京低地の地下に広がる沖積層(有楽町層)において地盤ボーリング調査を行い、ヒ素が土壌溶出量基準を超過して溶出することや、ヒ素がラズベリー様の黄鉄鉱(フランボイダルパイライト)に局在していることを明らかにしました。 さらに、有楽町層中のヒ素は、鶏冠石や硫砒鉄鉱に類似した複数の化学形態を有していることを明らかにし、フランボイダルパイライトがヒ素の集積と溶出に関わる重要な鉱物であることを明らかにしました。本研究の成果は、有楽町層と類似の性質を有する沖積層において、大規模なインフラ工事などで大量に発生する建設発生土の適切な措置や処分の ための技術開発、ならびに持続可能な汚染土壌の管理に活用されることが期待されます。
 
本研究成果は、Journal of Hazardous Materials(2025年2月15日付、Volume 484)の掲載に先立ち、12月4日にオンラインで公開されました。
 
論文タイトル:Unveiling the potential mobility and geochemical speciation of geogenic arsenic in the deep subsurface soil of the Tokyo metropolitan area
URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304389424031595
 
 
プレスリリースの詳細はこちら
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241209_2/pr20241209_2.html
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大雪でソーラーパネルの破損事故が急増! https://kyodonewsprwire.jp/release/202412051157 Mon, 09 Dec 2024 12:00:00 +0900 製品評価技術基盤機構(NITE) 独立行政法人 製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、電気事業法に基づく電気工作物に関する事故情報データベースを用いて、2019年度から2023年度... <![CDATA[  独立行政法人 製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、電気事業法に基づく電気工作物に関する事故情報データベースを用いて、2019年度から2023年度の5年間に発生した氷雪による電気事故を分析しました。その結果、積雪による太陽電池発電設備(太陽光発電設備)の破損は、大雪が観測された年に急増していることが分かりました。また氷雪による事故においては、ソーラーパネルだけでなくソーラーパネルを支える架台の損傷を伴うことが多く、破損事故のうち、約9割を占めていることが明らかになりました。

[図1]  積雪による太陽電池発電設備の破損
出典:「地上設置型太陽光発電システムの設計ガイドライン2019 年版」
(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
 
 NITEは、氷雪による太陽電池発電設備の事故の分析結果を公表するとともに未然防止の対策をお知らせいたします。設置者の方々は巡視や除雪を行うなど、早い段階での対応をお願いいたします。
 
 
積雪への対策
▌① 設置時からの対策
  積雪量の多い地域ではJISやガイドライン等に従い、気象条件に応じた架台の設計、設置をしてください。
(地域毎に定められている想定積雪量が異なります。ご注意ください。)
  積雪がソーラーパネルから落ちやすくなるようなパネル傾斜角の設計をしてください。パネル軒先に荷重が集中することを軽減するため、パネルから落ちた雪が軒先まで達しないような架台の高さの設計を施してください。
 
▌② 保安監督業務担当者(電気主任技術者、設備管理会社の担当者)等との事前相談
  積雪が予想される場合には、事前に太陽電池発電設備の保安業務を行っている電気主任技術者等と対策を協議してください。
 
▌③金具や接合部の点検
  ソーラーパネルを固定する金具や、架台の接合部のボルトを点検し、緩んでいないことを確認してください。
 
▌④巡視点検・除雪の強化
  事前に除雪計画を策定し、監視カメラによる積雪量の監視や定期的な巡視点検、除雪を行ってください。特に雪がたまりやすい箇所を重点的に除雪する計画を事前に立ててください。除雪機材を常備するとともに、必要に応じて、優先的に除雪してもらえるように除雪業者と契約を結んでおくことも有用です。
 
 
ソーラーパネルが破損した場合
 氷雪によってソーラーパネルなどが破損した場合は、感電の危険性があるので、関係者以外の方が不用意に近寄らないようにする、破損したソーラーパネルを速やかに回収する等の対策を行ってください。
 また、復旧作業時は適切な安全装備を身につけた上で、専門家の判断の下、行ってください。

[図2] 太陽電池発電設備の破損事故と感電のイメージ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
事故情報に基づく氷雪起因の太陽電池発電所被害の分析結果 1. 事故の発生状況 ~ 氷雪による破損事故件数 ~  2019年度から2023年度の5年間に、氷雪※1による被害は56件報告されています。12月から4月の間に発生しており、1月、2月が最も多くなっています。また地域別に見ると東北地方、北海道、中部地方の順に多くなっており、積雪量の多い時期、地域に事故が多い傾向です。
 
※1 電気事故の報告(詳報)において、事故の原因分類が「氷雪」となっていたもの。
[図3] 月別の事故発生件数(2019年度-2023年度)
 
 
[図4] 地域別の事故発生件数(2019年度-2023年度)※2
 
※2 2019年度の事故発生件数は0件になります。
 
 また、氷雪による事故においてはソーラーパネルを支える架台の損傷を伴うことが多く、破損事故のうち、約9割を占めています。架台を適切に設計することや、雪かき等によって架台にかかる負担を減らすことが重要です。
 
[図5] 架台損傷の有無
 
 
 
2.事故事例  ~氷雪による太陽電池発電設備破損事故~  ▌事例1 事故発生年月 2022年2月(関東地方)
【被害の状況】
当該太陽電池発電所において、積雪の影響によりソーラーパネル用架台が倒壊したため、破損事故になった。
【事故の原因】
当該太陽電池発電所において、発電量を確保するために特定エリアの除雪を優先したことにより、優先エリア外を中心に積雪沈降力の発生・解放が生じて架台の倒壊に至ったものと推定される。
 
▌事例2 事故発生年月 2023年3月(東北地方)
【被害の状況】
当該太陽電池発電所の運転中に地絡警報が発報され、現地調査の結果、ソーラーパネル及び架台の破損が確認されたため、破損事故になった。
【事故の原因】
当該太陽電池発電所において降り続いた雪が例年より多く、急激な積雪に除雪作業が追いつかず、架台に設計荷重を超える積雪荷重がかかったため、破損に至ったと推定される。
 
▌事例3 事故発生年月 2023年1月(中部地方)
【被害の状況】
当該太陽電池発電所において、大雪と強風の後、架台全体の倒壊及びソーラーパネルの落下が確認されたため、破損事故になった。
【事故の原因】
当該太陽電池発電所において、架台上部の設計基準を上回る50cmの積雪が発生し、更に強風の影響を受けて架台が倒壊したため、ソーラーパネルの落下に至ったものと推定される。
 
▌事例4 事故発生年月 2024年3月(東北地方)
【被害の状況】
当該太陽電池発電所のソーラーパネル架台が、積雪の影響により曲がり、破損事故になった。
【事故の原因】
当該ソーラーパネル上に積もった雪は逐次自然落下し、地面に堆積していたが、ある時点で堆積した雪の高さがソーラーパネル下部と同程度になり、それ以上ソーラーパネルから落下ができなくなったため、架台前方に積雪荷重を上回る湿った雪が堆積し、その重さで鋼製の架台がパネル前方へ曲がってしまったと推定される。
 
 
 
3.立入検査の結果  NITEでは2021年度より太陽電池発電所などを中心に電気事業法に基づく立入検査を実施しております。
2021年度は17事業場、2022年度は59事業場、2023年度は50事業場の太陽電池発電所への立入検査を実施し、結果は以下のようになりました。
 
▌3-1 改善必須事項
 検査の結果、法令に違反するため事業者の対応が必須とされた事項になります。23事業場で指摘項目があり、項目毎の指摘件数は以下の表1の通りでした。
(1つの立入検査先で複数の指摘があった場合や、複数項目にかかる指摘については、それぞれの項目でカウントしています。)
 
表1 指摘項目まとめ※

 
※JIS、電気設備に関する技術基準を定める省令(電技省令)、及び電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)については建設時の基準を適用。また、氷雪にかかる主な指摘項目は黄色ハイライト部分になります。
 
 上記の指摘項目のうち、氷雪への備えとして以下のような指摘事例がありました。垂直積雪量を適切に設定し、架台を設計しないと、積雪時に破損するリスクが大きくなります。適切に見積もるようにしてください。(地域毎に定められている垂直積雪量(想定積雪量)が異なります。ご注意ください。)
改善必須事例: 氷雪対策に関する主な指摘事項は以下のとおり。
・架台強度計算に用いる垂直積雪量について、計算書は垂直積雪量を70cmとして計算しており、技術基準に適合しない。JIS C 8955:2017 6 c 計算式によっても160cm以上である。(発電用太陽電池設備に関する技術基準を定める省令第4条)
・平常時、事故時、その他異常時における設備の操作手順及び運転方法が定められていなかった。(保安規程の遵守を命じる改善指示)
・杭柱のフランジが変形しており、ボルトの締結が正しく施工されていないため、接合部の安全性が確認できない。 (JIS C 8955:2004での該当箇所:8.3 部材の接合)
積雪の状況によっては、フランジの接合部から破断する場合もあります。
 
[図6] 接続部の破断
 
 
▌3-2 改善推奨事項
 設備設置後の基準改訂により、対応が必須ではないものの、改善を推奨される事項として指摘されたものになります。49事業場で指摘があり、項目毎の指摘件数は以下の表2の通りでした。
(1つの立入検査先で複数の指摘があった場合や、複数項目にかかる指摘については、それぞれの項目でカウントしております。)
 
表2 改善推奨事項まとめ※
 

 
※JIS、電気設備に関する技術基準を定める省令(電技省令)、及び電気設備の技術基準の解釈(電技解釈)については建設時の基準を適用。また、氷雪にかかる主な指摘項目は黄色ハイライト部分になります。
 
上記の改善推奨事項のうち、氷雪への備えとしては以下のような指摘事例がありました。
垂直積雪量を適切に設定し、架台を設計しないと、積雪時に破損するリスクが大きくなります。適切に見積もるようにしてください。
(地域毎に定められている垂直積雪量(想定積雪量)が異なります。ご注意ください。)
改善推奨事例: 氷雪対策に関する主な指摘は以下のとおり。
・垂直積雪量が JIS C 8955:2004(16)式から求めた値よりも過少に評価されているため、設計荷重(積雪荷重)の妥当性が確認できない。
・構造計算書において、設置場所の地方自治体が求める値に対して、垂直積雪量が過小に見積もられており、安全性が確認できない。(JIS C 8955:2004での該当箇所:6.積雪荷重)
・構造計算書において検討すべき荷重の組合せがされていない。(JIS C 8955:2004 での該当箇所:6.積雪荷重、等 )その他、JIS C 8955:2004  6.積雪荷重に関連して、以下の様な指摘がありました。
・各部材に生じる応力が許容応力度以下であるか確認できない。
・各接合部の安全性が確認できない。
・基礎の安全性が確認できない。
[図7] 架台破損リスクのイメージ
 
 
 
4.事故を防ぐためのポイント 未然防止に有効と考えられる対策を以下に示します。
新規設置時や再築時においては、地域の気象条件に応じて、要求事項を満たした設計を行うようにしてください。
また積雪による太陽電池発電設備の破損事故を防ぐには、ソーラーパネルや架台が破損しないよう定期的な巡視点検や早い段階での除雪を行うことが大事です。また積雪が予想される場合、保安業務を行っている電気主任技術者等との事前相談も重要です。
 
○特に積雪が多い地域においては、設置時から対策をしてください。
 ・積雪量の多い地域ではJISやガイドライン等に従い、気象条件(要求事項)に応じた架台の設計、設置を行う。
  (地域毎に定められている想定積雪量が異なります。ご注意ください。)
 ・積雪がソーラーパネルから落ちやすくなるようなパネル傾斜角の設計(図8)。
 ・パネル軒先に荷重が集中することを軽減するため、パネルから落ちた雪が軒先まで達しないような架台の高さの設計を施す。
 
 
[図8] パネル傾斜角、架台高さの増加イメージ
 
○点検・除雪の強化
 ・除雪計画の作成やマニュアル化を行い、月間・週間天気予報や発電所の監視結果などを参考に、架台やソーラーパネル及びパネルの軒下、接合部、現地への通路も含め、予防点検や除雪を行う。
   ・ソーラーパネルを固定する金具や、架台の接合部のボルトを点検し、緩んでいないことを確認する。
 ・構内の地形や周辺環境を確認し、雪がたまりやすい箇所を重点的に対策する。
 ・冬期は除雪機材を常備する、もしくは優先して実施してもらえるよう除雪業者と契約する。
 ・既に大雪が発生している地域では、(可能な範囲で)積雪後の巡視や除雪等を強化する。
事故発生後に実施された点検・除雪強化の例
① 監視カメラを設置し、積雪量を監視。
② 現地確認を増やした(監視カメラの設置だけではレンズに雪が付着すると映像が確認できない場合があるため)。
③ 積雪高さが分かるようにスケールを設置し、基準積雪量に達した際、除雪を実施するようにした。
④ 除雪作業を優先して実施してもらえるよう除雪業者と契約。
⑤ 自社の社員に小型重機の資格を取得させ、自ら除雪作業できるようにした。
⑥ モジュール面を除雪するとモジュール面に傷がつくため、モジュール上面の専用除雪機を導入。
⑦ 除雪計画を作成し運用。
⑧ 冬期は除雪車を常備。
⑨ 除雪の予算をあらかじめ組む。
 ・対策を行わない場合、堆積した積雪等の荷重に耐えられず破損する可能性があります。(図9)
 

 
[図9]  積雪により太陽電池発電設備が損壊するイメージ※
出典:積雪による太陽電池発電設備の損壊事故防止について
(中部近畿産業保安監督部近畿支部)
 
 
 
※当該プレスリリースにおいては、太陽電池モジュールのことはソーラーパネルと表記しています。
 
(参考リンク)
※積雪による太陽電池発電設備の損壊事故防止について(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2021/12/20211201-1.html
※積雪による太陽電池発電設備の損壊事故防止について(中部近畿産業保安監督部近畿支部)
https://www.safety-kinki.meti.go.jp/electric/syobun/2022/chuikanki-solar-snow.html
※2024年度冬季の自然災害に備えた電気設備の保安管理の徹底について(経済産業省)
https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2024/10/20241030-2.html
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
参考情報
 
〇詳報公表システムについて
 詳報公表システムは、電気事業法に基づく電気工作物に関する全国の事故情報(詳報)が一元化された国内初のデータベースです。本システムは、電気事業者をはじめ、どなたでもご自由にお使いいただけます。事故情報を条件やキーワードで簡単に検索することができ、抽出されたデータはCSVファイルとしてダウンロードすることも可能です。
 
詳報公表システム >>https://www.nite.go.jp/gcet/tso/kohyo.html
 
[図10]  詳報公表システム概要
 
〇NITE 電力安全センターについて
 NITE電力安全センターは、経済産業省(原子力発電設備等以外を所掌)からの要請を受け、電気保安行政(電気工作物の工事、維持及び運用における安全を確保するため行政活動)を技術面から支援するために、2020年5月、電気保安業務の専従組織として発足しました。現在、NITEがこれまで培ってきた知識や経験を活用し、経済産業省や関係団体と連携しながら、電気保安の維持・向上に資する様々な業務に取り組んでいます。
 
NITE電力安全センターの業務紹介 >>>https://www.nite.go.jp/gcet/tso/index.html
 
 
 
 
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シリコン量子ビット素子の特性が長い周期で変化する主な原因を特定 https://kyodonewsprwire.jp/release/202412051156 Sun, 08 Dec 2024 06:30:00 +0900 産総研 ポイント ・ シリコンFin型量子ビット素子における長周期の特性変化を解析 ・ 絶縁膜/半導体界面における電子のトラップ現象が特性変化の原因であることを初めて特定 ・ 量子コンピューターの利用可能時間... <![CDATA[ ポイント
・ シリコンFin型量子ビット素子における長周期の特性変化を解析
・ 絶縁膜/半導体界面における電子のトラップ現象が特性変化の原因であることを初めて特定
・ 量子コンピューターの利用可能時間を制限する各素子の状態診断・調整作業の軽減に前進
 

 
概 要 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)先端半導体研究センター 新原理シリコンデバイス研究チーム 岡 博史 主任研究員、浅井 栄大 主任研究員、加藤 公彦 主任研究員、森 貴洋 研究チーム長は、東京電機大学 森山 悟士 教授らと共同で、シリコン量子ビット素子の長周期の特性変化の原因を初めて特定しました。
 
量子コンピューターの基本素子である量子ビットは、数十秒や数時間以上の長い時間が経過した後に特性が変化し、時間がたつと元の特性に戻ることを繰り返す、といった長周期での特性変化が生じることが知られています。実運用されている量子コンピューターでも、時間単位での長周期の特性変化が観測されています。量子ビットの特性が変化した状態で計算を行うとエラーが生じるため、定期的な状態の診断と調整が必要です。調整作業には数時間を要する場合もあり、量子コンピューターの利用可能時間を制限しています。高集積量子コンピューターに向けて開発が進むシリコン量子ビット素子においても長周期の特性変化が生じますが、その原因は未解明でした。本研究では、シリコン型の中でも高集積化への期待が高いFin型量子ビット素子に生じる特性変化の原因が、絶縁膜/半導体界面の欠陥であることを世界で初めて特定しました。本成果により、シリコン量子コンピューターの安定動作に向けた量子ビット素子の製造技術開発に関する指針が得られました。この技術の詳細は2024年12月7日から米国サンフランシスコで開催される国際会議「IEEE International Electron Devices Meeting 2024」で発表されます。 
 
下線部は【用語解説】参照
 
開発の社会的背景 量子コンピューターは量子重ね合わせ状態など量子力学的な現象を積極的に利用した計算機であり、量子化学計算や組み合わせ最適化問題など、社会的に重要な特定の問題を現代コンピューターより高速に計算できることが理論的に証明されています。量子コンピューターの基本素子である量子ビットには超伝導型やシリコン型などさまざまな方式がありますが、数十秒や数時間程度以上の長い時間が経過すると特性が変化し、さらに一定の時間がたつと元の特性に戻ることを繰り返す、といった長周期の特性変化が生じます。例えば、現在実運用されている超伝導型量子コンピューターでも時間単位での長周期の特性変化が観測されています。状態が変化したままで計算を行った場合、量子ビットが意図した状態にないため、計算結果にエラーが生じます。このエラーの発生を防ぐためには、特性変化の周期を考慮して定期的に状態を診断し、その調整作業を行う必要があります。この診断・調整作業は現在のところ、高い頻度かつ場合によっては数時間などの長時間を要するものであるため、ユーザーが量子コンピューターを利用できる時間を制限しています。
 
高集積量子コンピューターに向けて研究開発が盛んに進められているシリコン量子ビット素子においても、長い周期で電流-電圧特性が変化する現象が観測されています。シリコン型の中でも、Fin型(チャネルが立体的で魚のヒレに例えられる形状)のシリコン量子ビット素子は高集積化への期待が一段と高く、世界的に研究開発が進められているものの、長周期の特性変化の原因については未解明で、実験的な検証も十分に進んでいません。高度で実用的な量子計算を可能にする高集積量子コンピューターの安定な動作に向けて、シリコンFin型量子ビット素子における長周期特性変化の原因解明が待たれていました。
 
研究の経緯 産総研は、高集積量子コンピューターの実現に向けて、シリコン量子ビット素子およびその制御用エレクトロニクスとしてクライオCMOS回路・デバイスの研究開発に取り組んでいます。クライオCMOSデバイスの研究開発としては、これまでに極低温動作トランジスタのオン電流制限要因の理解(2022年国際会議VLSIシンポジウム発表)や回路の正確な設計に向けた極低温でのスイッチング特性の決定要因解明(2023年12月10日 産総研プレス発表)、極低温でのノイズ増大メカニズムの解明(2020年国際会議VLSIシンポジウム発表)、ノイズ発生源の特定(2023年6月12日 産総研プレス発表)など、世界をリードする研究成果を挙げてきました。
 
産総研 先端半導体研究センターは、シリコン量子コンピューターに向けた量子ビット素子の研究開発を進めており、今回、これまでに取り組んできたトランジスタの評価・解析手法を応用し、シリコンFin型量子ビット素子の長周期特性変化の主な原因を突き止めました。
 
なお、本研究開発は、文部科学省光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)「シリコン量子ビットによる量子計算機向け大規模集積回路の実現(2018~2027年度)」(JPMXS0118069228)による助成を受けています。
 
研究の内容 シリコンFin型量子ビット素子では、数十秒程度の間隔で電流値が変化しては元に戻る、といった周期的な特性変化が観測されます(図1)。この周期的な変化が存在する状態で計算を行うとエラーを生じますが、原因の特定は容易ではありませんでした。シリコンFin型量子ビット素子は、量子情報を担う電子をシリコン中に閉じ込める必要があるため、多数のゲート電極を利用します(図2左図)。それぞれのゲート電極には異なる電圧を設定する必要があるため、 周期的な特性変化をもたらす要因がどのような電圧条件で生じるかの特定は、量子ビットの動作原理上、非常に困難でした。そこで、シリコンFin型量子ビット素子と同じ材料・構造で、ゲート電極が一つしかない素子としてFin型のトランジスタの利用を考案しました(図2右図)。この場合、ゲート電圧条件を変えながら、電流値の時間変化の追跡が可能となります。今回、ゲート電極をFinの上部にのみ形成することで、Fin型量子ビット素子と同じゲート構造としました。本研究ではこの方法で、周期的な特性変化の原因の特定に世界で初めて成功しました。
 

 
 

 
図3左図は、作製したFin型トランジスタの極低温(4 K)におけるドレイン電流-ゲート電圧特性を示しています。ゲート電圧を大きくすると、電流値が増大し、オフ領域からオン領域に移ります。オフ領域とオン領域の間の状態をサブスレッショルド領域と呼びます。各領域において一定の電圧下で、電流値の時間変化を追跡した結果が図3右図です。この結果から、オフ領域(図3右図(1))とオン領域(図3右図(3))では電流値が安定していますが、サブスレッショルド領域(図3右図(2))の電圧条件においてのみ、電流値が数十秒間隔で増大と減少を繰り返す、周期的な変化が現れることがわかりました。これは、Fin型量子ビット素子における周期的な特性変化が、サブスレッショルド領域の特定の電圧条件において生じていることを示唆しています。
 

 
 

 
サブスレッショルド領域の電圧条件では、トランジスタの特性はバンドギャップの内部ではなく、バンドギャップの端(バンド端)に近い部分の影響を強く受けます。そのため、これらの結果は、バンド端に電流値の変化を引き起こす要因として、電子をトラップする準位が存在することを意味しています。実際に、周期的振幅を従来のモデルに基づいて計算すると実験値を再現できませんが、バンド端にトラップ準位が存在すると仮定すると、実験データとの一致が確認できました(図4)。これまでのわれわれの研究から、典型的なトランジスタの場合、バンド端のトラップ準位は絶縁膜と半導体の界面の欠陥に由来することがわかっています(2023年6月12日 産総研プレス発表)。この研究は、トランジスタにおけるスイッチング特性の劣化原因について明らかにしたもので、今回はこの知見が生かされました。この知見に基づくと、観測された長い周期での特性変化は、トランジスタのスイッチング特性の劣化と類似して、絶縁膜と半導体の界面で生じる電子のトラップ現象が原因であることがわかりました。これは、量子ビット素子の長周期特性変化の原因を初めて実験的に解明したものです。量子ビット素子そのものではなく、トランジスタに関する過去の研究があったからこそ明らかになった事実です。今回の研究から、周期的な特性変化の抑制には界面の品質が鍵であることが明らかになり、その向上がシリコン量子ビット素子の安定動作につながるという製造技術に関する指針が得られました。本知見により、シリコン量子コンピューターの研究開発の加速が期待されます。
 
今後の予定 今回得られた成果はシリコン量子ビットの安定動作に向けた素子製造技術の開発指針を与えるものであり、今後は、得られた知見に基づき、シリコンFin型量子ビット素子の試作と動作検証、界面の高品質化を含めたプロセス技術の開発を進めます。
 
学会情報 学会名:IEEE International Electron Devices Meeting 2024
タイトル:Origin of Long-period Electrical Instability in Silicon Fin-type Quantum Dots
著者:H. Oka, H. Asai, K. Kato, T. Inaba, S. Shitakata, S. Iizuka, Y. Chiashi, Y. Kobayashi, H. Yui, S. Nagano, S. Murakami, Y. Iba, M. Ogura, T. Nakayama, H. Koike, H. Fuketa, S. Moriyama, and T. Mori
 
用語解説 シリコン量子ビット素子
半導体材料であるシリコンを用いて製造される固体の量子ビット素子。シリコン量子ビットにはスピン量子ビットや電荷量子ビットの方式がある。
 
Fin 型量子ビット素子 
半導体微細加工プロセスにより製造されるシリコンが立体的で魚のヒレに例えられる形状をもつ量子ビット素子のこと。
 
超伝導型量子ビット素子
超伝導材料を用いて製造される固体の量子ビット素子。超伝導型量子ビットには磁束量子ビットやトランズモン量子ビットの方式がある。
 
ゲート電極
ゲート電極/絶縁膜/シリコン(Metal-oxide-semiconductor, MOS)構造により、ゲート電極に電圧を印加することでシリコン中の電子や正孔の密度を制御する役割をもつ。
 
トランジスタ
現代の電子回路において、信号を増幅したりスイッチングしたりするための素子。
 
トラップ準位
本稿でのトラップ準位は、バンドギャップ中に形成されるエネルギー準位を指し、電子や正孔の捕獲・放出の原因となる。絶縁膜/半導体界面の未結合手などの欠陥は、トラップ準位の成因となる。
 
スイッチング特性
トランジスタがオフ状態からオン状態になる際の電流の立ち上がり性能のこと。
 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241208/pr20241208.html
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液体合成燃料の低コストな製造技術への挑戦 https://kyodonewsprwire.jp/release/202412051174 Fri, 06 Dec 2024 15:00:00 +0900 産総研 ポイント ・ SOEC共電解とFT合成を組み合わせたエネルギー効率の高い液体合成燃料製造方法 ・ 二酸化炭素と水から液体合成燃料を一貫製造するベンチプラントを開発して連続運転に成功 ・ 化石燃料依存度... <![CDATA[ ポイント
・ SOEC共電解とFT合成を組み合わせたエネルギー効率の高い液体合成燃料製造方法
・ 二酸化炭素と水から液体合成燃料を一貫製造するベンチプラントを開発して連続運転に成功
・ 化石燃料依存度を減らし、カーボンリサイクルの促進に貢献
 

 
概 要  国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)エネルギープロセス研究部門 望月 剛久 研究グループ長、エネルギー・環境領域 高木 英行 研究企画室長(ゼロエミッション国際共同研究センター 兼務)、省エネルギー研究部門 田中 洋平 主任研究員らのグループは、一般財団法人 カーボンニュートラル燃料技術センター(以下「JPEC」という)と共同で、二酸化炭素と水から液体合成燃料を一貫製造するベンチプラントを開発し、連続運転に成功しました。
 
液体合成燃料はガソリン、軽油、ジェット燃料など内燃機関向けの燃料を代替可能なことから、既存のインフラを有効活用できます。そのため、二酸化炭素を利用して液体合成燃料を製造することはカーボンニュートラルを実現するための有力な技術として注目されています。
 
今回開発した一貫製造ベンチプラントはSOEC共電解とFT合成を組み合わせた製造プロセスを採用しており、従来のプロセスに比べて、より高い効率で液体合成燃料の製造が可能となります。SOEC共電解を用いたシステムとしては国内初の一貫製造ベンチプラントであり、その連続運転の成功により、製造コストの高さが課題であった液体合成燃料の実用化と社会への普及に向けて、さらなる研究開発の促進が期待されます。
 
下線部は【用語解説】参照
 
※本プレスリリースでは、化学式や単位記号の上付き・下付き文字を、通常の文字と同じ大きさで表記しております。
正式な表記でご覧になりたい方は、産総研WEBページ
https://www.aist.go.jp/aist_j/news/announce/pr20241206.html )をご覧ください。
 
開発の社会的背景 日本は2050年に二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と吸収量の合計をゼロにするカーボンニュートラルを目指しています。その実現のためには、バイオマス発電などの再生可能エネルギーの利用拡大、二酸化炭素の直接回収、貯留、利用といったカーボンリサイクル技術の普及が必要不可欠です。カーボンリサイクル技術のうち二酸化炭素と水素を合成して製造される液体合成燃料は、ガソリン、軽油、ジェット燃料など内燃機関向けの化石燃料と同等の高いエネルギー密度を持ちます。液体合成燃料は、自動車や航空機、船舶といった輸送用燃料や工場、発電施設で使用される産業用燃料を代替可能なため、既存のインフラや内燃機関を有効活用できるという利点があります。一方で、製造コストが大きな課題となっており、エネルギー効率の高い製造システムの構築が求められています。
 
開発の経緯と内容 二酸化炭素から液体合成燃料を製造するためには、まず安定な二酸化炭素を反応性の高い一酸化炭素と水素の混合ガス(合成ガス)に転換し、その後触媒を用いてFT合成により合成ガスを化学反応させて合成燃料にします。この時、水素の製造に多くの電力が必要となりますが、電解技術の中で水蒸気を高温で電気分解させる固体酸化物形電解セル「SOEC」を用いるとセル電圧 1.3 V程度で電解運転が可能であり、従来の2.0 V付近で作動する水電解技術よりも大幅な消費電力抑制が可能です。
 
二酸化炭素から合成ガスを製造する手法としては、熱化学的な触媒反応である逆水性ガスシフト反応(CO2 + H2 ⇔ CO + H2O)が一般的に用いられていますが、本反応は平衡制約を受ける吸熱反応であることから高温での反応が必要です。そこで、これまで別々に行っていた水電解による水素製造と逆水性ガスシフト反応による高温での合成ガス製造を同時に行うことで高いエネルギー効率が期待できるSOEC共電解に注目しました。しかしながら、SOEC共電解には電解システムの大型化、電解運転による装置の劣化や部材の高温腐食の課題があり、メタン生成及び炭素析出を抑制するために、常圧、熱力学的炭素析出温度よりも高温で運転する必要があります。そこでSOEC 共電解による合成ガス製造能力および基本特性の把握、電解スタック安定性・耐久性などを検討してきました。
 
一方、合成ガスから液体燃料を製造するFT合成反応は、メタンからワックスまで幅広い炭化水素が生成する特徴があり、目的生成物を高い割合で得ることが困難でした。産総研はJPECらと協力して、FT合成触媒に酸触媒を組み合わせたハイブリッド触媒を開発し、液体合成燃料の収率を向上させることに成功しました。
 
今回、国内初となる両装置を組み合わせた一貫製造装置を産総研つくばセンター西事業所内に導入し、二酸化炭素と水から連続的に液体合成燃料を製造することに成功しました。今回開発したSOEC共電解とFT合成を組み合わせは一貫製造装置(図1)により、最大で200 ml/hの液体合成燃料が製造可能です。
 
本研究開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託事業「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発/液体燃料へのCO2利用技術開発/次世代FT反応と液体合成燃料一貫製造プロセスに関する研究開発(2020~2024年度)」による支援を受けています。
 

 
今後の予定 今回の開発により、ベンチスケールでのSOEC共電解とFT合成を組み合わせた液体合成燃料の一貫製造が可能となりました。今後は、パイロットスケールのシステムを構築し課題抽出を行うなど、早期の社会実装を目指した取り組みを進めていきます。
 
用語解説 液体合成燃料
二酸化炭素と水素を原料として人工的に合成された液状の燃料です。石油とほぼ同じ構造を有しており、ガソリンや灯油、軽油、ジェット燃料などの代替燃料として、用途に合わせて自由に利用できます。また、ガソリンスタンドなど既存のインフラをそのまま利用することができるため、製造技術が確立されれば早期の普及が可能となります。
 
SOEC(固体酸化物形電解セル)共電解
固体電解質を用いた固体酸化物形電解セルにより、二酸化炭素と水蒸気を同時に高温で電気分解させることで、一酸化炭素と水素の混合ガスを製造可能な技術です。この合成ガスは合成燃料の製造に利用できます。
 
FT(フィッシャー・トロプシュ)合成
一酸化炭素と水素を触媒の存在下で化学反応させ、液体炭化水素やワックスなどを生成するプロセスです。現在は天然ガスや石炭由来のガスが用いられていますが、バイオマスや二酸化炭素を原料とすることで二酸化炭素の排出削減が期待されます。
 
酸触媒
酸性の特性を持ち、化学反応を促進する役割を果たす触媒の一種です。特にプロトンを供与して反応物の活性化を助けることで、脱水、異性化、アルキル化などの反応を効率よく進行させます。ゼオライトや硫酸などが代表的で、石油精製や有機合成、バイオマス変換など幅広い分野で利用されます。
 
 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/news/announce/pr20241206.html
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最終氷期(2万年前)の日本海水温復元に成功 https://kyodonewsprwire.jp/release/202411280761 Thu, 05 Dec 2024 12:00:00 +0900 産総研 ポイント ① 日本海の水温は日本海側の冬季豪雪など日本列島の気候に大きな影響を及ぼしますが、最終氷期(2万年前)の日本海水温は復元できていませんでした。 ② 微小なプランクトン化石群集を用いた新しい水... <![CDATA[ ポイント
① 日本海の水温は日本海側の冬季豪雪など日本列島の気候に大きな影響を及ぼしますが、最終氷期(2万年前)の日本海水温は復元できていませんでした。
② 微小なプランクトン化石群集を用いた新しい水温指標を確立し、最終氷期(2万年前)の日本海水温復元に成功しました。
③ 日本海の長期水温復元記録は、日本列島の風土が最終氷期からどのように移り変わって現在へ至ったのかを知るための重要な情報となります。
 
概要 水深の浅い海峡で他海域とつながる日本海は、海面が100 m以上低下した最終氷期(2万年前)に対馬暖流が流入できなくなり低塩分化が進みました。過去の海水温復元に使用される既存の古水温指標が低塩分環境で使えないため、最終氷期の日本海水温が何℃だったのかわかっていませんでした。
 
本研究では、新たに確立した水温指標を用いて過去2万年間の日本海における年平均水温変化を復元し、最終氷期の水温が北海道西方で約4℃(現在10℃)・福井沖で約5℃(現在18℃)と、現在のオホーツク海並みであったことを明らかにしました。
 
九州大学大学院理学研究院の岡崎裕典教授、理学府修士課程(研究当時)の谷崎恭平氏、西園史彬氏、江頭一騎氏、友川明日香氏、国立研究開発法人海洋研究開発機構の小野寺丈尚太郎主任研究員、金沢大学の佐川拓也准教授、富山大学の堀川恵司教授、国立研究開発法人産業技術総合研究所の池原研首席研究員の研究グループは、ガラス質の骨格をつくる珪質鞭毛藻というプランクトンに注目し、現在の北太平洋に生息する珪質鞭毛藻種の分布と水温の関係を、日本海の北海道西方と福井沖で採取した海洋コア試料中の珪質鞭毛藻群集に当てはめることで、過去2万年間の水温変動を復元しました。
 
日本海の水温は、日本海側の降水・降雪をはじめとした日本列島の気候に重要な役割を果たしています。今回の研究成果は、私たちが暮らす日本列島の気候や自然が過去2万年間にどのような移り変わりを経て現在へ至ったかを知るための基礎的な情報の一つとなるものです。
 
本研究成果は、日本地球惑星科学連合のProgress in Earth and Planetary Science誌に、2024年12
月5日(木)正午(日本時間)までに掲載されます。
 

 
 
プレスリリースの詳細はこちら
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241205/pr20241205.html
 
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低消費電力なメモリデバイスに貢献する新材料の開発に成功 https://kyodonewsprwire.jp/release/202412020922 Wed, 04 Dec 2024 14:00:00 +0900 産総研 ポイント ・ 強誘電体メモリに使用する新材料として、窒化ガリウム(GaN)に金属添加物(Sc)を従来より高濃度に添加した、GaScN結晶を開発 ・ 開発したGaScNでは、従来の窒化物材料と比べ、メモ... <![CDATA[ ポイント
・ 強誘電体メモリに使用する新材料として、窒化ガリウム(GaN)に金属添加物(Sc)を従来より高濃度に添加した、GaScN結晶を開発
・ 開発したGaScNでは、従来の窒化物材料と比べ、メモリ動作に必要な電圧が6割減となる
・ 不揮発性メモリを使ったデバイスの低消費電力化に期待
 

 
概 要 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)センシングシステム研究センター 上原雅人 主任研究員、秋山守人 首席研究員、平田研二 主任研究員、Anggraini Sri Ayu 主任研究員、山田浩志 チーム長、国立大学法人東京科学大学 物質理工学院 材料系 舟窪浩 教授の研究チームは、強誘電体メモリの材料の候補であるGaScNの弱点である動作電圧の高さを改善した新材料を開発しました。
 
IoTやAIの普及に伴い、情報機器に搭載されるデバイスの低消費電力化がより一層求められています。次世代の低消費電力の不揮発性メモリとして強誘電体メモリが期待されていますが、中でもGaScNは安定な結晶であり、耐熱性に優れていること、大きな残留分極値をもつこと、また簡便な方法で薄膜が作製できることからその有力な候補です。しかし、材料内部の分極を反転させるためには大きな電界が必要となるため、GaScNを用いた強誘電体メモリの動作電圧が高くなる点が、本材料の弱点でした。GaScN結晶内のSc濃度を高くすることで低電圧化が図れますが、現在実現されている44%がその濃度の限界と考えられていました。
 
今回、統計学的手法を駆使して作製プロセスの条件を見直すことで、Sc濃度を53%まで高めたGaScN結晶を開発しました。その結果、分極を反転させるために必要な電界を下げることに成功し、GaScNを用いた強誘電体メモリの動作電圧を従来の6割減できる見通しを得ました。この技術により、窒化物を用いた低消費電力不揮発性メモリの実用化が期待されます。
 
なお、この研究成果の詳細は、2024年12月2日に「APL Materials」に掲載されました。
 
下線部は【用語解説】参照
 
※本プレスリリースでは、化学式や単位記号の上付き・下付き文字を、通常の文字と同じ大きさで表記しております。
正式な表記でご覧になりたい方は、産総研WEBページ
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241204_2/pr20241204_2.html )をご覧ください。
 
開発の社会的背景 IoTやAIの普及が進むにつれ、使用されるデバイスの消費電力やCO2排出の増大が懸念されており、デバイスの低消費電力化が求められています。ストレージクラスメモリと言われるデバイスもその一つで、低消費電力の不揮発性を有する強誘電体メモリの活用が期待されています。
 
ストレージクラスメモリ用の強誘電体メモリに使用する材料として、さまざまな元素添加したHfO2(HfO2系)が有力視されています。HfO2系は残留分極の大きさが20 µC/cm2程度です。しかし、耐熱性に直結する結晶の安定性や作製プロセスのコスト・環境負荷の高さなどのさまざまな課題があります。
 
一方、GaScNは安定な結晶で耐熱性に優れており、分極値がHfO2系の4倍以上と強誘電体の中でも最大級の分極値をもつこと、また、GaScNはスパッタリング法という簡便な方法で環境負荷も比較的小さな方法で作製できることから、GaScNを用いた優れたメモリデバイスの実現が期待されています。しかし、分極を反転させるのに必要な電界強度(抗電界)が、HfO2系よりも2倍程度大きいことが、GaScNの弱点でした。この電界強度は、GaScNを使った強誘電体メモリの動作電圧と比例するため、抗電界の低減は解決すべき重要な課題です。この弱点を克服するには、GaScN結晶内のSc濃度を高めることが効果的だとこれまでの研究成果から考えられています。しかし、Sc濃度を高めると結晶性が低下し強誘電性を示さなくなります。これまでの実験では強誘電性を維持できるSc濃度の上限は44%であり、Sc濃度をできるだけ高めつつ結晶性を下げずに強誘電性を発揮させることが求められていました。
 
研究の経緯 産総研では優れた圧電材料として、世界に先駆けて窒化アルミニウム(AlN)にスカンジウム(Sc)を混ぜたAlScN(2008年11月21日産総研プレス発表)や窒化ガリウム(GaN)にScを混ぜたGaScNを開発してきました(2017年8月31日産総研プレス発表)。最近、これらが強誘電性を示すことが明らかになりました。強誘電体は分極と呼ばれる特徴をもっていて、その分極は電気的に制御(=書き込み)したり、計測(=読み取り)したりできるため、不揮発性メモリの材料として利用されています。2019年に東京工業大学(現 東京科学大学)と共同でAlScNやGaScNの強誘電性について研究を開始し、2020年には厚さ9 nmのAlScN薄膜における強誘電性の実証に世界で初めて成功し、デバイス化への可能性を示してきました(2020年9月19日産総研プレス発表)。表1にAlScNやGaScNの特性を示します。これらは安定な結晶で、高温でも安定な性能を発揮すると言われています。また、分極の値はさまざまな強誘電体の中でも最大級で、HfO2系の4~5倍です。残留分極が大きいと、小さい面積でも十分な記憶容量が得られるため、高集積化に有利であり、メモリの大容量化にもつながります。しかし、分極反転に必要な電界強度(抗電界)が高く、デバイス利用の際の消費電力が大きくなることが本材料の課題でした。今回、その抗電界の低減に取り組みました。
 
なお、本研究開発は、日本学術振興会(JSPS)科研費 JP21H01617(2021~2023年度)およびJP 22H01784(2022~2025年度)による支援を受けています。
 

 
研究の内容 図1は強誘電体の特性を示すグラフです。例えば、図中の赤の矢印のように、強誘電体に印加する電界を変えていくと、あるところで下向きの分極が上向きの分極に変わります。このときの電界を抗電界と言います。強誘電体の抗電界を小さく設計できると、分極を操作するために必要な電圧を抑えることができます。すなわち、強誘電体メモリとして材料を使用した際の、消費電力の抑制につながります。またオレンジの矢印のように電界をゼロに下げたときの分極を残留分極と言います。残留分極が大きい方がメモリの高集積化が期待できます。
 

 
これまでの研究で、抗電界を下げるにはSc濃度を高めることが有効であり、特にGaScNの方がAlScNよりSc濃度を高めやすいことを見出してきました。しかし、Sc濃度を高めるにつれ、GaScNの結晶性が低下することも併せて見出しており、結晶性を担保した上でのSc濃度(Sc/Ga+Sc比)の最大値は44%にとどまっていました。今回、統計学的手法を駆使して作製プロセスを最適化した結果、GaScNの結晶性を保ちつつSc濃度を53%(過去最高の濃度)にまで高めることに成功しました。また、Scの高濃度化により抗電界が大幅に小さくなりました。表1や図3に示すように、最も小さい抗電界の値は約1.5 MV/cmで従来のGaScN(Sc濃度44%)の半分以下であり、窒化物強誘電体としては世界最小値です。この値は現在強誘電体メモリの素材として注目されているHfO2系と同等レベルであり、GaScNの残留分極を動かすために必要な電界強度を充分に低減できたと言えます。すなわち、GaScNを使った強誘電体メモリの動作電圧の低減という課題が解決され、表1や図3に示すように、高い残留分極を持ちつつ低い抗電界を示す強誘電体の開発に成功しました。
 

 
 

 
 

 
さらに、強誘電体をメモリデバイスに利用する際には、耐久性も重要な性質です。耐久性を調べるために分極反転の繰り返し耐性を評価し、今回開発したGaScNは108回の書き込み動作にも耐えられることを確認しました。図1や図2のような分極の反転を繰り返したときの各回の残留分極値を図5に示します。正と負に反転を繰り返しても108回まで残留分極値が保持されていることが分かります。これは従来の窒化物強誘電体が有する耐性よりも約100倍高い、世界最高値です。
 

 
また、今回、150 ℃以下での製膜にも成功しました。HfO2系の強誘電体メモリの作製には一般には400~600 ℃以上の高温が必要で、デバイスを構成する他の素材への影響が懸念されています。GaScNは作製に必要な温度が低いので、メモリデバイスの中のメモリセルを演算セルに近接させることが可能です。AIチップなどではメモリと演算セル間の伝達における消費電力が問題とされており、これらの近接化が実現できれば、消費電力の削減が期待できます。
 
今後の予定 強誘電体メモリの素材となる、Sc濃度を高めたGaScNを新たに開発し、低消費電力で動作する強誘電体メモリ実現の見通しが立ちました。今後は分極反転のメカニズムの解明の他、基板や電極との界面の強誘電性への影響などの調査を進めることで、強誘電体メモリデバイスの製作に向けた、GaScNの材料としての特性制御技術を確立します。
 
また、トンネル接合型強誘電メモリという消費電力を最も低くできるメモリが考えられていますが、未だ実用化されていません。大きな残留分極をもち、抗電界の小さいGaScNはその素材として期待できますが、一層の薄膜化が必要です。今後、GaScNの極薄膜化技術は重要と考えています。
 
論文情報 掲載誌:APL Materials
論文タイトル:Excellent Piezoelectric and Ferroelectric Properties of ScxGa1−xN Alloy with High Sc Concentration
著者:Masato Uehara, Kenji Hirata, Yoshiko Nakamura, Sri Ayu Anggraini, Kazuki Okamoto, Hiroshi Yamada, Hiroshi Funakubo, Morito Akiyama
DOI:https://doi.org/10.1063/5.0236507
 
用語解説 不揮発性メモリ
メモリとはデジタルデータを保持する部品や媒体であり、不揮発性メモリとは電源を供給しなくても記憶を保持するメモリである。電源を供給しないとデジタルデータを保持できないメモリは揮発性メモリである。不揮発性の強誘電体メモリは、強誘電材料を用いた不揮発性メモリのことを指す。
 
残留分極
電界がゼロのときの分極の大きさ。
 
分極
正負の電荷の対である双極子モーメントの単位体積当たりの割合で定義される。物体中での電荷の空間的分布の偏りの度合いを表す。
 
ストレージクラスメモリ
プログラムやデータを一時的に保存する「メインメモリ」として使われるDRAM(ダイナミックランダムアクセスメモリ)と、長期保存用の「ストレージ」であるHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)の中間的な位置づけのデバイス。DRAMに近い高速な読み書き性能を備えつつも、不揮発性であるため電源を切ってもデータが失われないデバイス。
 
スパッタリング法
薄膜の作製方法の一つで、真空中において比較的低温で成膜できる。物体に高速で粒子をぶつけると、原子が飛び出す(スパッタ)。それをシリコンなどの基板の上に堆積させて、目的の結晶を成長させることで薄膜を形成する。
 
強誘電性
物質内の分極の方向を外部電界によって反転できる性質。この性質をもった物質を強誘電体という。
 
電界強度
単位長さあたりの電圧。
 
抗電界
強誘電現象において、分極反転するために必要な電界。強誘電材料を不揮発性メモリとして利用する場合、抗電界が小さいほど消費電力が小さくなる。
 
 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241204_2/pr20241204_2.html
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下水汚泥焼却灰からリン化成品を製造 https://kyodonewsprwire.jp/release/202411290820 Wed, 04 Dec 2024 08:00:00 +0900 産総研 ポイント ・ ケイ素化合物であるテトラアルコキシシランを用いて、リン酸の直接的エステル化反応を開発 ・ 下水汚泥焼却灰から回収した粗リン酸から、難燃剤であるリン酸トリブチルの合成に成功 ・ 化学製造業... <![CDATA[ ポイント
・ ケイ素化合物であるテトラアルコキシシランを用いて、リン酸の直接的エステル化反応を開発
・ 下水汚泥焼却灰から回収した粗リン酸から、難燃剤であるリン酸トリブチルの合成に成功
・ 化学製造業に使用可能なリン化成品を合成でき、国内の未利用リン資源の有効活用可能に
 

 
概 要 国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)触媒化学融合研究センター 永縄 友規 主任研究員、吉田 勝 研究センター長、材料・化学領域 佐藤 一彦 領域長補佐、地圏資源環境研究部門 森本 和也 上級主任研究員は、東京科学大学 中島 裕美子 教授、北海道大学 長谷川 淳也 教授(共に触媒化学融合研究センター 特定フェロー)と共に、安定なリン酸を直接的にエステル化する技術を開発しました。さらに、不純物を多く含む下水汚泥焼却灰から回収した粗リン酸のケミカルリサイクルに対してこの技術を適用し、難燃剤用途として有用なリン化成品であるリン酸トリブチルの合成に成功しました。
 
リンは、肥料や食品、医薬品など私たちを取り巻くさまざまな物質に含まれている元素ですが、日本ではリン化成品の原料となる黄リンが製造されておらず、現在ほぼ100%輸入に依存しています。近年、リン資源の経済安全保障上の重要性が高まっており、下水汚泥焼却灰や製鋼スラグに代表される国内の未利用リン資源の回収と有効活用が注目されています。
 
今回、ケイ素化合物であるテトラアルコキシシラン(TROS)を用いて、リン酸を直接的にエステル化させる技術を開発しました。これまで、リン酸の直接的エステル化反応はほとんど例がなく、既存の報告もリン酸モノエステルやジエステルの合成に関するものでした。一方、今回の開発技術では、リン酸から一気に難燃剤や可塑剤として利用可能なリン酸トリエステルへと変換することが可能です。本技術を下水汚泥焼却灰から回収した粗リン酸に適用し、リン酸トリエステルの一種であり難燃剤として知られるリン酸トリブチルをグラムスケールで合成することに成功しました。
 
なお、この技術の詳細は、2024年12月3日(中央ヨーロッパ時間)に「Angewandte Chemie International Edition」に掲載されます。この論文は当該雑誌編集者によってHot Paperに選出されています。
 
下線部は【用語解説】参照

※本プレスリリースでは、化学式や単位記号の上付き・下付き文字を、通常の文字と同じ大きさで表記しております。
正式な表記でご覧になりたい方は、産総研WEBページ
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241204/pr20241204.html )をご覧ください。
 
開発の社会的背景 リンは植物や動物の成長に必要な元素として肥料や食品に含まれているだけでなく、医薬品、工業製品などさまざまな用途に使われる重要な資源です。それらの製品の中でも付加価値の高いリン化成品は黄リンを原料としていますが、黄リンは国内での生産は行われておらず、その全てを輸入に依存しています。近年、リン製品の価格上昇などの影響でリン資源の経済安全保障上の重要性が高まっています。そこで、リン資源の有効活用の観点から国内にある下水汚泥焼却灰や製鋼スラグなどの未利用リン資源が注目されています。
 
しかし、未利用リン資源から回収された粗リン酸のリサイクル先は用途が限られており、ほとんどが肥料でした。これは主に、リン酸が熱力学的かつ化学的に安定であり、有効な分子変換技術が開発されていなかったからです。粗リン酸が黄リンを原料とするプロセスを代替し、付加価値の高いリン化成品へとケミカルリサイクルする技術が開発できれば、国内にある未利用リン資源の製造業への用途拡大が可能となります。
 
研究の経緯 産総研は、2020年度に設置された領域融合プロジェクト「資源循環利用技術研究ラボ」において、国内に存在する未利用資源からリン酸を回収する技術、ならびにリン酸の直接的分子変換による高付加価値化技術を開発してきました。今回、この技術を融合し、代表的な未利用リン資源である下水汚泥焼却灰から粗リン酸を回収し、難燃剤や可塑剤として利用されるリン化成品であるリン酸エステル類へと一気通貫で合成できる技術を開発しました。
 
なお、本研究開発は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 さきがけ「地球環境と調和しうる物質変換の基盤科学の創成」(2022~2025年度、JPMJPR2277)、JST 創発的研究支援事業「ケイ素およびリン資源循環に向けた新規ライフサイクルの構築」(2022~2029年度、JPMJFR221Z)、住友財団基礎科学研究助成(採択番号200092)、触媒科学計測共同研究拠点共同利用・共同研究(採択番号23DS0334)、自然科学研究機構 岡崎共通研究施設 計算科学研究センター(23-IMS-C002)、北海道大学 フォトエキサイトニクス研究拠点の支援を受けています。
 
研究の内容 今回、リン酸とTROSが、極性アミド溶媒であるN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中で反応し、リン酸シリルエステルを安定に生じることを見いだしました。また、これらのリン酸シリルエステルを200度で加熱することでリン酸トリエステルへとさらに分子変換することを発見し、結果としてTROSを鍵反応剤とするリン酸の直接的エステル化反応を開発するに至りました(図1)。リン酸エステルは工業的には黄リンから誘導化されたオキシ塩化リンとアルコールを用いて合成されています。また、リン酸とアルコールとの直接的エステル化反応の研究は、リン酸モノエステルやリン酸ジエステルを合成する報告に限られていましたが、本反応では、リン酸から難燃剤や可塑剤として利用可能な脂肪族リン酸トリエステルを製造することが可能です。脂肪族リン酸トリエステルはリン酸の水酸基を脂肪族有機基(R)に置換した構造をしています。
 

 
さらにリン酸を直接的にリン酸エステルに変換するこの技術を、下水汚泥焼却灰から回収した粗リン酸に適用することに挑戦しました。まず、国内3カ所の自治体から提供を受けた下水汚泥焼却灰を用いて、リン酸の抽出を行いました。下水汚泥焼却灰と強酸性陽イオン交換樹脂を水溶液中で混合する方法で、通常の酸を用いた抽出法では避けられないさまざまな金属イオンの溶出を抑え、リン酸を選択的に抽出しました。得られたリン酸抽出液を減圧下で濃縮して約80 質量%の粗リン酸を作製し、TROSを用いたエステル化反応に使用しました。粗リン酸とテトラブトキシシランをDMF中で反応させた結果、リン酸トリエステルの一種であり難燃剤として利用されるリン酸トリブチルをグラムスケールで合成することに成功しました(図2)。
 

 
これにより、従来はリン鉱石から製造される黄リンを原料とするリン酸エステルの合成を、国内の未利用リン資源から回収したリン酸を原料として達成しました。また、今回開発したエステル化反応は、有機ホスホン酸や有機ホスフィン酸にも適用可能であり、さまざまな有機リン化合物の合成に役立ちます。
 
今後の予定 今後も引き続き産総研では、未利用リン資源からのリンの回収と高付加価値化技術を社会実装すべく研究開発を実施します。リン資源のサプライチェーンへと対応し、将来的にはリン資源の国内回帰による資源循環型社会の実現に貢献します。
 
論文情報 掲載誌:Angewandte Chemie International Edition
論文タイトル:One-Step Esterification of Phosphoric, Phosphonic and Phosphinic Acids with Organosilicates: Phosphorus Chemical Recycling of Sewage Waste
著者:Yuki Naganawa, Kei Sakamoto, Akira Fujita, Kazuya Morimoto, Manussada Ratanasak, Jun-ya Hasegawa, Masaru Yoshida, Kazuhiko Sato, Yumiko Nakajima
DOI:10.1002/anie.202416487
 
用語解説 リン酸
五酸化二リンP2O5が水和してできる酸、すなわちオルトリン酸H3PO4、ピロリン酸H4P2O7、メタリン酸HPO3などの総称。普通は、オルトリン酸を単にリン酸ということが多い。
 
下水汚泥焼却灰
下水処理過程で発生する汚泥を800℃程度の温度で焼却したもの。焼却過程で有機成分などが除去されることでリンを20~30質量%(P2O5換算)と高濃度で含む代表的な未利用リン資源。
 
ケミカルリサイクル
マテリアルリサイクル、サーマルリサイクルなどと並ぶリサイクル手法の一種であり、使用済みの資源を化学的に分解し、原料やその他の有価物へと分子レベルで変換する手法。
 
難燃剤
プラスチック、ゴム、繊維などの可燃性の素材に添加して、燃えにくくする性質(難燃性)を付与する化学物質の総称。主にハロゲン化物やリン化合物が用いられる。
 
黄リン
化学式P4で表されるリンの同素体の一つ。あらゆるリン化成品の原料となる化学物質であり、現在では国内では製造されておらずほぼ全てを輸入に依存している。
 
テトラアルコキシシラン(TROS)
ケイ素原子にアルコキシ基が四つ結合した構造のケイ素化合物の総称。高純度合成シリカや電子デバイス用の保護膜、絶縁膜の原料などとして使用される。
 
可塑剤
プラスチックやゴムなどの材料に柔軟性や弾性を付与するために添加される化学物質の総称。主にエステル系化合物が用いられる。
 
リン酸エステル
リン酸より得られるエステルの総称。リン酸は三塩基酸なので、対応するモノエステル、ジエステル、トリエステルの3種類が存在する。このうちトリエステルは難燃剤や可塑剤などの用途で利用されている。
 
脂肪族有機基
有機基の一種であり、炭素原子が鎖状(直鎖または分岐鎖)に連なった骨格構造を持つ有機基を指す。このような基は一般に「アルキル基」とも呼ばれる。
 
ホスホン酸・ホスフィン酸
リンのオキソ酸の一種。オルトリン酸の3つの水酸基が一つ水素に置き換わったものをホスホン酸、2つ水素に置き換わったものをホスフィン酸という。このうち、特にリンが直接有機基と結合したものを有機ホスホン酸・有機ホスフィン酸と呼ぶ。
 
 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241204/pr20241204.html
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高周波でも安定:新規スピントルクダイオード効果の発見 https://kyodonewsprwire.jp/release/202411280743 Tue, 03 Dec 2024 19:00:00 +0900 産総研 発表のポイント ◆ 高周波電流を直流電圧に変換する「スピントルクダイオード効果」を反強磁性体で初めて実証しました。 ◆ 新材料「カイラル反強磁性体」を用いることで、従来の強磁性体を用いたデバイスに比べ... <![CDATA[ 発表のポイント
◆ 高周波電流を直流電圧に変換する「スピントルクダイオード効果」を反強磁性体で初めて実証しました。
◆ 新材料「カイラル反強磁性体」を用いることで、従来の強磁性体を用いたデバイスに比べ、高周波でも10-100倍以上安定して電圧を維持できるダイオード動作を実現しました。
◆ 本研究の成果は、フォトニックスピンレジスタにおける書込とシフトの高速動作に資するもので、次世代スピントロニクス技術およびBeyond 5Gに代表される超高速情報技術への貢献が期待されます。
 

 
 
概要 東京大学物性研究所の坂本祥哉 助教と三輪真嗣 准教授は、同大学大学院理学系研究科、同大学先端科学技術研究センター、産業技術総合研究所新原理コンピューティング研究センター、高輝度光科学研究センターと共同で、新材料「カイラル反強磁性体」において従来材料である強磁性体よりも高い周波数で安定動作可能なスピントルクダイオード効果を発見しました。
 
カイラル反強磁性体と呼ばれる特殊な磁気構造を持つマンガン化合物(Mn3Sn)を10ナノメートル以下の極限まで薄くし、マイクロ波電流(高周波電流)を印加すると直流電圧が出現することを発見しました(図1)。交流電流が直流電圧を生む効果はダイオード効果として広く知られており、半導体を使ったものが整流ダイオードとして一般社会に普及しています。スピントルクダイオード効果では、電子の自転に対応するスピンの首振り運動が整流効果を生み出し、半導体における整流ダイオードと同様の効果をもたらします。これまでに強磁性体を用いたスピントルクダイオードにおいて、半導体ダイオードでのマイクロ波電流の検出感度を超える報告がありましたが、周波数が高くなるとそれに反比例して信号(電圧)の強さが急激に減少するという問題がありました。本研究では、交換相互作用という高いエネルギーが顕在化する反強磁性体の特性を活かし、周波数が高くなっても、強磁性体と比べ10-100倍ほどの安定性で信号の強度を維持できるダイオード効果を実現しました。この新しいスピントルクダイオードの実現により、次世代のスピントロニクスおよび高速通信の発展につながると期待されます。
 
本成果は、英国科学誌の「Nature Nanotechnology」に、2024 年 12 月 3 日オンライン掲載されます。
 
 

 
※本プレスリリースでは、化学式や単位記号の上付き・下付き文字を、通常の文字と同じ大きさで表記しております。
正式な表記でご覧になりたい方は、産総研WEBページ(下記)をご覧ください。
 
プレスリリースURL
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241203_3/pr20241203_3.html
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液晶の複雑な秩序構造の形成メカニズムを解明 https://kyodonewsprwire.jp/release/202411280755 Tue, 03 Dec 2024 05:00:00 +0900 産総研 ポイント ① 液晶や高分子といったソフトな機能材料(ソフトマテリアル)において、分子の集合体が示す複雑な秩序構造の形成過程を明らかにすることは困難な問題であった。 ② 本研究では連続体シミュレーション... <![CDATA[ ポイント
① 液晶や高分子といったソフトな機能材料(ソフトマテリアル)において、分子の集合体が示す複雑な秩序構造の形成過程を明らかにすることは困難な問題であった。
② 本研究では連続体シミュレーションと機械学習を組み合わせることで、液晶の3次元秩序構造が変化してゆく過程、特に金属のマルテンサイト変態に似た双晶構造の形成メカニズムを解明することに成功した。
③ ソフトマテリアルに限らず、様々な材料や状況で見られる、複雑な秩序構造の形成メカニズムを解明することが期待される。
 
概要 液晶や高分子といった柔らかい物質群(ソフトマテリアル)は、構成する分子の集合体が複雑な秩序構造を自発的に形成することが知られています。ある秩序構造から別の秩序構造への構造転移のメカニズムの解明は、物理学や数学といった基礎科学の興味深い問題であるのみならず、材料設計や加工といった応用の観点からも重要な問題です。しかし、概してソフトマテリアルの秩序構造では、複雑な単位構造が集合してさらに複雑な高次の構造を形成するといった構造の階層性が、構造転移の詳細なメカニズムの解明を難しくしています。さらに、「この場所の構造(局所的な秩序構造)は何か」を的確かつ客観的に判定することも容易ではありません。
 
九州大学大学院理学研究院の福田順一教授、および産業技術総合研究所 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センターの高橋和義主任研究員(科学技術振興機構(JST)さきがけ研究員兼任)は、分子が集合体として示す秩序に着目する連続体シミュレーションと、機械学習に基づく局所的な秩序構造の判定を組み合わせることで、構造転移に関する難問の解明に取り組みました。具体的には、液晶が示す複雑な3次元秩序構造である、コレステリックブルー相と呼ばれる2種類の構造(BPI、BPII)の間の転移を研究主題としました。BPIIからBPIへの構造転移において、金属結晶のマルテンサイト変態によって生じるものと似た双晶構造が生成されることが実験によって示されていますが、詳細な構造転移のメカニズムは明らかになっていませんでした。本研究により、BPIIからBPIへの構造転移は、BPIIに含まれる線欠陥のジャンクションが切れることで開始されることをまず見出しました。また、ある向きのBPIからなる小さい領域がまず生じた後、それとは異なる向きのBPIの領域が隣接して生じることにより双晶構造が生成することを明らかにしました。
 
連続体シミュレーションと、機械学習による構造判定の協働は、本研究で取り組んだ液晶の問題に限らず、様々なソフトマテリアル、あるいはその他の材料で生じる複雑な秩序構造について、その構造形成、転移のメカニズム解明をもたらすものと期待されます。
 
本研究成果は、米国の国際学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America (PNAS)」のオンライン版に2024年12月8日(日)午後2時までに掲載されます。
 

 
 
プレスリリースの詳細はこちら
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241203/pr20241203.html
 
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