中小企業が低予算で情報化できない理由

数十万円でオーダーメイドのシステムを作ってくれと言われても無理。
だけど普通の中小企業が情報化のために出せる予算なんてそんなもので数十万円でもかなり頑張っていると思う。
ちょっとそんな話しがここ数日いくつかあって何かいい方法は無いだろうかと悩みんぐ。


SOHOのプログラマーとかフリーランスの技術者にとって、受けやすい仕事と受けにくい仕事がある。
WEBデザインなどであれば、今は数十万円がボリュームゾーンなのかもしれないが、システムとなると50万はせめて超えてくれないと案件としては扱えない。
毎月50万とかいう委託なら話しは別だけど、50万円で業務を効率化する何かをつくってくれといわれても組めない。
100〜300万ぐらいでいったん納品できる範囲がうけ所で、逆に単発で1,000万円を超えてしまうと、SOHOではいろいろな意味で死んでしまうので受けきれない。
数十万円という額でも動けなくもないが、その額でやるためには作業範囲と責任範囲が明確になっていて、やれば終わる状態になっている必要がある。だが大抵はそうなっていない。新規のお客さんではその見極めをするのに、仕事を受ける側にコストが発生する。


お客さんが何をシステム化したいのかというのが明確にわかっていない状態では踏み込んだ要求定義が必要になる。
だが、ここには業務知識と業務理解が必要。そのような提案、設計ができる人間は安くはない。なので、数十万の予算だと何かを作るまえに、いきなり経費がオーバーをしてしまう。


だが、数十万円でもお金を出して情報化したいという要望があったとしたらそれを放置しておいていいのだろうか?
これを放置しておくと「できますできます」という人が拾っていって、よくわらないものをつかまされて、これがあなたが注文したものだからお金を払いなさいとなり、さらには、メンテナンス費用は毎月ね!うっしっし!というコンボにはめ込まれて残念なことになるのが目に浮かぶ。または毎回遠ざかるゴールへの行進に、そのシステム屋さんに所属している技術者が泣くかのいずれかだ。
かくしてソフトウエア開発業界はレモン市場のままとなる。
<レモン市場:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%83%A2%E3%83%B3%E5%B8%82%E5%A0%B4>


数十万円未満の案件で、相手の要望からくみ上げてシステムを作るのは実費的に無理。
業務システムは大抵は注文建築のようなものだ。プレハブの予算で、御殿が立つことはない。
家が立つと思ってお金をだして犬小屋を建ててもらうことになる。
結果、顧客の要望をまじめに聞いて調査したほうが競争に負ける。マーケットとしてまだまだ残念だ。

情報化費用は経費か、投資か

中小企業にとって50万という情報化のための投資の根拠を考えてみる。
わかりやすいのは、売上が増えるケースだ。ホームページやECサイトなどはそれに当たる。投資額より稼げればその情報化は成功したといえる。


経費削減を狙って情報化を行うことも多い。
たとえば毎日1時間かかっていた業務が10分でおわるようになれば、毎月50分×20日で年間200時間浮く。1人一ヶ月分ぐらいが浮く計算になる。であれば、会社にとって見れば、わずか1年で回収できる。この情報投資は成功と判断できる。
これは、その業務をやっている人数が多ければ多いほど、また、時間がかかっていればいるほど効果がでる。取り扱いが増えれば、コンマ何秒、何円何銭の効率を上げるためにシステム化を行うこともある。それで元が取れると経営判断をするからだ。
情報化は投資である”べき”で、効果測定がなされる範囲内でやる”べき”なのである。システムを維持するための費用が経費なのだ。しかし小規模事業者が発注する際には作成そのものを経費として考えてしまい、その運用の経費まで考えが至らないケースが多いように思う。

まだ存在しない業務の情報化

これからそのような作業が増えるのではないだろうかという目論見のもと情報化を行いたいというケースはさらに厄介だ。まだ業務が存在していないので、検討違いなシステムが出来上がる可能性がある。また、事業そのものが目論見からハズれるとシステムそのものも不要となる、いろいろな意味で痛い。


投資する額以上の経費削減効果が具体的に見込めないようなものであれば人を投入するほうがいい。
システムより人間の方が俄然柔軟性がある。特に業務がまだ形式化していない場合、無理して情報化をするという選択肢をとる必要はない。特に小規模事業者の場合はそれが無いと業務がまわらないというもの以外には冷静になるべきだ。
人手だけではどうにもならなくなってから情報化は遅くはない。
つくるものが明確ではない状態でシステムを作成するのは、業務フローそのものをシステム開発側の人間が考えることになるので、複数の意味で高くつく。業務が形式化するほど固まってから情報化をおこなったほうがいい。

業務の電子化と情報化の違い

プログラムというのは反復作業が人間よりも得意である。反復するためには定型化されている必要がある。
故にシステム化するためには最低限、紙や書類でもいいので形式が整っていることが前提となる。


「データを入力しなきゃいけないんだったら紙のほうがいいよ!」というクレームが現場からあったという話しを聞いたことがある。営業報告書のフォーマットがあったとしても、営業さんによって記載される内容が違ったのではそれは形式化されているとは言い難い。電子化により紙だから誤魔化せてたのが誤魔化せなくなる。
また不慣れなPCの操作で余計時間がかかってしまうなど、コストがあがることがある。


人間がシステムに対して柔軟さをもたないと、システムの方が人間に対して柔軟でなくてはならなくなる。
システムを柔軟につくるためには、本筋ではない機能をつくらなくてはならないので開発コストが跳ね上がる。
パソコン操作が困難である人達にシステムを使わせるのは、システムを提供する側、される側双方にとって不幸なことである。このようなケースの場合、情報化を行う前に、まず業務の一部電子化から始める必要があるのではないかと思う。


保守、運用コスト

システムを作ってもらったはいいが、今はもうその会社がない、担当者が居なくなったから頼めないとか、他の人にたのみたいのだけど、その人にお願いしつづけざるを得ないとか、そういう発注側の苦悩を聞く。
保守費用や、ユーザー教育のための予算を用意していなかった為に不幸なケースに陥ることは多いように思う。
こういうことも中小企業の情報化のコストをあげることになる。


「知識がなければブランドに頼れ」つまり金を出せという結論になってしまう。
だがこれではいつまでたっても情報化がすすまない。それぞれの会社がそれぞれ失敗ししなくてもいい苦い経験を積み重ねている。それが中小企業の情報化のコストをあげているし、システム会社の品質を下げている。


電子化されているこの部分をシステム化してくれというところまで、発注側が理解しているのであれば話しは早い。
これらの問題点を理解し、解決したところで数十万円でオーダーメイドシステムを作ってと言うのなら可能だ。


これで、ようやく掲題のお話しに戻れる。
これらの問題を解決できれば中小企業を低予算で情報化できると思う。
中小企業が低予算で情報化するための方法はある!! …と思う。


問題提起だけでこんなに長くなってしまった。俺ティータイム終了。また次回!
次回こそ「中小企業が低予算で情報化するための方法」を書きたいなっと。
(今回本当はこっちのタイトルで書き始めたの、問題点整理してたら終わってもーた)


つづきを書いたのだ↓
http://d.hatena.ne.jp/kuippa/20100606/1275817427