凡例《デジタル大辞泉》
デジタル大辞泉の凡例です。
編集の基本方針
- 本書には、現代の日本で用いられている語を中心に、古語、専門用語、地名・人名その他の固有名詞など、総項目数23万余語を収めた。項目を立てるにあたっては、上代から現代までの文献を検して語彙・用例を採集するとともに、新聞・放送などの情報媒体にも着意して、広く世に行われる語彙・語法を積極的に採録した。
- 本書は、学校・職場また家庭の中で、より多くの人の使用に応えるために、なるべく平易・簡潔な記述をするよう心掛けた。解説の文章および用字は、常用漢字表を基準として、難字・専門用語などにはふりがなを付けるようにした。
- 本書は、言葉の意味を解説するにとどまらず、それが実際にどう使われるかという観点から、用例をふんだんに入れるようにした。
- 語義の解説にあたっては、現在通行している意味や用法を先にし、古語としての解説をあとに記述した。また、広く一般的に用いられる語義を先に、特定の分野で行われる語義や、限られた形での用法などはあとに記した。それ以外については、原義から転義へと時代を追って記述した。
- 文法の扱いは、現在の学校教育で広く行われているものに従った。文法用語の使用も一般的な範囲にとどめて、なるべく専門的な記述に傾かないようにした。
- 本書では、記述が平板に終わることを避け、できるだけ多角的に言葉をとらえることをめざした。基本的な語においては、表現を豊かにする[類語]欄、いわゆる逆引き辞典の機能をもつ[下接句][下接語]欄、言葉の微妙な差異を明らかにする[用法]欄を設けた。また、関連する図版を一箇所に集めて総合的に解説した。
- 言葉と生活・文化との関わりを重視して、関連する情報をなるべく多く添えるように心掛けた。たとえば、季語とその俳句例などを積極的に入れるようにした。
見出し
1.見出しの表示のしかた
- 和語・漢語はひらがな、外来語はかたかなで示した。
- 和語・漢語については、古語・現代語の別なく現代仮名遣いによることを原則とした。
- 外来語は普通に行われている書き表し方によって、長音「ー」や拗音「ァ・ィ・ゥ・ェ・ォ」などを用いた。ただし、「ヴァ・ヴィ・ヴ・ヴェ・ヴォ」は「バ・ビ・ブ・ベ・ボ」に統一した。
ティーン【teen】
ヴァイオリン【violin】⇒バイオリン - 見出しの語構成は、その語の成り立ちを説明しうる最終的な結合箇所に「‐」を入れた。原則として二分するものであるが、結合関係によってそれ以上の場合もある。
ば‐しょ【場所】
い‐ばしょ〔ゐ‐〕【居場所】
な‐の‐はな【菜の花】 - 活用する語には、活用語尾の前に「・」を入れた。
およ・ぐ【泳ぐ/×游ぐ】
ただし・い【正しい】
語幹と語尾とが区別できない語には入れていないが、それが下に付く複合語には、語間に「・」を入れた。
みる【見る/▽視る/▽観る】ゆめ・みる【夢見る】 - 語幹と語尾との区別のない活用語を含む連語・慣用句には、それらの活用語の前に「◦」を入れた。
おもほえ◦ず【思ほえず】
足元を◦見る - 「‐」が「・」「◦」と重なるときは、「‐」を省略した。
こころ・える【心得る】
2.活用語の見出し
- 活用語は原則として終止形を見出しとした。
- 口語形を見出しとし、文語形が存在するものはそのあとに示した。
むく・いる【報いる/▽酬いる】[動ア上一][文]むく・ゆ[ヤ上二]
たか・い【高い】[形][文]たか・し[ク] - 形容動詞および本書で[ト・タル]と示した語は、語幹を見出しとした。
しず‐か〔しづ‐〕【静か/▽閑か】[形動][文][ナリ]
かっ‐こ〔カク‐〕【確固/確×乎】[ト・タル][文][形動タリ] - 名詞・副詞から派生したサ変動詞は、もとになる見出しに統合し、その品詞に「スル」を添えて表示した。ただし、漢字一字に「する」が付くものは独立の見出しとした。
うん‐どう【運動】[名](スル)
びっくり[副](スル)
ろん・ずる【論ずる】[動サ変][文]ろん・ず[サ変]
ひがし・する【東する】[動サ変][文]ひがし・す[サ変]
3.見出しの配列
- 見出しは、五十音順に配列した。一字目が同じものは二字目のかなの五十音順とし、以下も同様に扱った。長音符号「ー」は、直前のかなの母音と同じとして扱った。
- 同じかなのときは、以下の基準を設けて配列した。
(1)清音・濁音・半濁音の順。
ハート→ハード→バード→パート
(2)拗音・促音は、直音の前。
ひょう【表】→ひ‐よう【費用】
はっ‐か【薄荷】→はつ‐か【二‐十‐日】
(3)品詞の順。すなわち、名詞→代名詞→動詞→形容詞→形容動詞→ト・タル→連体詞→副詞→接続詞→感動詞→助動詞→助詞→接頭語→接尾語→語素→連語→枕詞 の順。
(4)和語・漢語・外来語の順。
めい【×姪】→めい【銘】→メイ【May】
(5)漢字表記のあるときは、ア.漢字の字数の少ないものが前、イ.一字目の漢字の画数の少ないものが前、一字目の画数が同じときは二字目以下の画数による。
か‐しょう【火傷】→か‐しょう【仮称】→か‐しょう【仮象】
(6)外来語で同じかたかなの見出しのときは、原語の綴りのアルファベット順。
コード【code】→コード【cord】
表記
1. 漢字表記
- 見出しに当てられる漢字表記を【 】の中に示した。
- 常用漢字表および人名用漢字にある字体は、それらの字体を使用した。繰り返し記号「々」などは原則的に用いていない。
あくたがわ‐りゅうのすけ〔あくたがは‐〕【芥川竜之介】
かんかん‐がくがく【×侃×侃×諤×諤】 - ひらがな・かたかな、またローマ字で書く部分を含む語は、それらを含めて示した。
ごった‐に【ごった煮】
と‐がき【ト書(き)】
エックス‐せん【X線】 - 漢字表記が二つ以上考えられる場合は、原則として広く用いられるものを先に掲げた。
あか・い【赤い/▽紅い】
ほり【堀/×濠/×壕】 - 意味による漢字の使い分けが明確な語は、項目を別にした。また、同一項目内でも、ある特定の意味によって用字が慣用化されている場合には、その語義区分の初めに( )でその用字を示した。
あかし【▽灯】《動詞「明かす」の連用形から》
あかし【▽証】《「灯(あかし)」と同語源》
か・く【書く/▽描く/▽画く】1 (書く)…2 (書く)…3 (描く・画く)…
か・ける【掛ける/懸ける】…3 物を一方から他方へ渡す。㋐(「架ける」とも書く) - 作品名などでは、その原題や邦題の表記を示した。
あいびき〔あひびき〕【あひゞき】
ベニスのしょうにん〔‐のシヤウニン〕【ベニスの商人】
2. 常用漢字
- 見出しに相当する漢字には、常用漢字表にない漢字には「×」、常用漢字音訓表にない読みの場合には「▽」を漢字の前に付した。
- 常用漢字表の「付表」に掲げる語は、常用漢字に準じて扱った。
- 固有名詞、また中国語・朝鮮語など外来語の漢字表記には常用漢字の基準は適用せず、「×」「▽」の類は付さないこととした。
いかるが【斑鳩】
ギョーザ【餃子】《中国語》
チョンガー【総角】《朝鮮語》 - 国語審議会報告や、法令用語、公用文の書き表し方などで、慣用として認められるものを多く採用した。
にっ‐しょく【日食/日×蝕】
き‐りつ【規律/紀律】 - 漢字熟語に和語を当てた、いわゆる熟字訓は、常用漢字表の「付表」にあるものには「‐」、ないものには「=」によって、そのまとまりを示した。
お‐じ〔をぢ〕【伯‐父/叔‐父】
あき‐なす【秋茄=子】
3. 送りがな
- 送りがなは、内閣告示『送り仮名の付け方』によることを原則とした。古語についてもこれに準じたが、仮名遣いは歴史的仮名遣いを用いた。
かま・える〔かまへる〕【構える】
おもい‐かま・う〔おもひかまふ〕【思ひ構ふ】 - 省略することが許容されているものには当該のかなを( )で囲み、補った形が許容されているときには語全体を〔 〕で囲って示した。
いい‐おと・す〔いひ‐〕【言(い)落(と)す】
おこな・う〔おこなふ〕【行う〔行なう〕】 - 専門的な用語については、その分野などで慣用とされている書き表し方によった。
とりもどし‐けん【取戻権】
あずかり‐どころ〔あづかり‐〕【預所】
さし‐じきい〔‐じきゐ〕【指敷居/差敷居】
4. 外来語
- 外来語については、日本に直接伝来したと考えられる原語を【 】内に掲げ、その言語名を付記した。ギリシア語・ペルシア語・ロシア語などはローマ字綴りに翻字して掲げた。また、英語の場合は、原則として言語名の付記を省略した。
ウオツカ【(ロシア)vodka】
ランプ【(オランダ)・(英)lamp】
アーケード【arcade】 - 地名・人名などの固有名詞には、原則として言語名は記さなかった。ただし、現地での呼称とは異なる地名や、普通名詞などと熟した呼称には、言語名を記すものもある。
チャーチル【Winston Leonard Spencer Churchill】
イギリス【(ポルトガル)Inglez】エコール‐ド‐パリ【(フランス)Ecole de Paris】 - 外国人で同姓の人名が複数あるときは、【 】には姓のみを記し、各々の解説の冒頭に姓名の原綴りを掲げた。ただし、姓の部分は「~」を用いて省略した。
ジャクソン【Jackson】(Andrew ~)…(Mahalia ~)… - 漢字を当てる慣習のある外来語については、一般的な語に限り、原綴りのあとに掲げた。それ以外のものについては必要に応じて補説として記すようにした。
ガス【瓦斯】【(オランダ)・(英)gas】
カナリア【(ポルトガル)canaria】…[補説] 「金糸雀」とも書く。 - 原語音から著しく転訛した語や、外国語に擬して日本でつくったいわゆる洋語(和製語)には、【 】に綴りを記さず、語源語誌の《 》内でその成り立ちを示した。
カレー‐ライス《curry and riceから》
ハイ‐ティーン《(和)high+teen》…[補説] 英語ではlate teens - ローマ字略語は、【 】にローマ字を示し、さらにもとになった綴りを《 》に記した。
アイ‐エヌ‐エス【INS】《Information Network System》
ナトー【NATO】 《North Atlantic Treaty Organization》
5. 歴史的仮名遣い
- 見出しの仮名遣いと異なる歴史的仮名遣いは、見出しのあと〔 〕に記した。その際、「‐」や「・」「◦」は省略した。
あい‐しらい〔あひしらひ〕
おおき・い〔おほきい〕【大きい】
きら◦う〔きらふ〕【▽霧らふ】 - 見出しに語構成を示す「‐」が入るものは、その単位で分けて考え、歴史的仮名遣いが見出しの仮名遣いと一致する部分は省略して「‐」で示した。
にわ‐の‐おしえ〔には‐をしへ〕【庭の▽訓】
せかい‐かん〔‐クワン〕【世界観】 - 歴史的仮名遣いは、和語はひらがな、漢語はかたかなで示すことを原則とした。
きのう〔きのふ〕【昨‐日】
い‐じょう〔ヰゼウ〕【囲×繞】 - 漢字表記が複数あり、それぞれの歴史的仮名遣いが異なるときは、それぞれを「|」と「・」で区切って示すようにした。
こう‐ほう〔クワウ‐|コウ‐〕【広報/×弘報】 - 同じ漢字表記でも、語義の違いに対応して歴史的仮名遣いが異なるときは、それぞれの語義区分の冒頭に示すようにした。
こう‐どう【講堂】1 (カウダウ)…2 (コウダウ)…
品詞
- 見出し語の品詞などの表示には略号を用いた。(「記号・約物一覧」参照)
- 名詞は品詞の表示を省略した。ただし、同一項目の中で他品詞の用法もあるときには、それと区別して[名]と示した。固有名詞については表示を省略した。
ぜん‐たい【全体】[名]…[副]…
じ‐ゆう〔‐イウ〕【自由】[名・形動] - 「する」が付いてサ変動詞となるものには、もとの品詞に「スル」を添えて示した。
けん‐てい【検定】[名](スル)
うっとり[副](スル) - 形容詞・形容動詞の文語形には活用の種類を示した。
かる・い【軽い】[形][文]かる・し[ク]
こころ‐はずか・し〔‐はづかし〕【心恥づかし】[形シク]
あき‐らか【明らか】[形動][文][ナリ]
しょう‐ぜん〔セウ‐〕【昭然】[形動タリ] - 文語のタリ活用の形容動詞で、口語においては「-と」の形で副詞に、また「-たる」の形で連体詞に用いられるものは、品詞表示を[ト・タル]とした。
へい‐ぜん【平然】[ト・タル][文][形動タリ] - 助詞は、格助詞・接続助詞・副助詞・係助詞・終助詞・間投助詞・並立助詞・準体助詞の別を示した。
は[係助]
から[格助]…[接助]…[準体助]… - 文語のタリ活用の形容動詞で、口語においては「-と」の形で副詞に、また「-たる」の形で連体詞に用いられるものは、品詞表示を[ト・タル]とした。
へい‐ぜん【平然】[ト・タル][文][形動タリ] - 助動詞には、語義解説の前に活用する語形を掲げた。
れる[助動][(れ|れ|れる|れる|れれ|れろ(れよ))] - 連語については、名詞を格助詞「の」「つ」でつなげたような、体言型のものには〔連語〕の表示を省略した。
語源語誌
- 語義記述の前に、語の成り立ち、語源・語誌の説明、および故事・ことわざの由来などを必要に応じて《 》で記した。
いん‐ねん〔‐エン〕【因縁】[名]《「いんえん」の連声》
しい‐か【詩歌】《「しか(詩歌)」の慣用読み》
そう・ず〔サウず〕【▽請ず】[動サ変]《「そう」は「しょう」の直音表記》
かえで〔かへで〕【×楓/槭=樹】《「かえるで(蛙手)」の音変化》
うしゃあが・る[動ラ四]《「うせあがる」の音変化。近世江戸語》
しか◦なり【▽然なり】〔連語〕《副詞「しか」+断定の助動詞「なり」》
朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり《「論語」里仁(りじん)から》 - 見出し語に対する、仮名遣い、清濁の差異については《 》で触れた。この場合の小異の語形は、見出し語と同じ意味・用法として扱った。
むずかし・い〔むづかしい〕【難しい】[形][文]むづか・し[シク]《「むずかる(むつかる)」と同語源。「むつかしい」とも》
もみじ〔もみぢ〕【紅‐葉/黄=葉】[名](スル)《動詞「もみ(紅葉)ず」の連用形から。上代は「もみち」》 - 品詞欄で示しきれなかった説明などは《 》で補った。
もうさ‐く〔まうさ‐〕【申さく/▽白さく】《動詞「もうす」のク語法》 - 見出し語が翻訳によって生じたことが明らかなときは、その原語を《 》に掲げた。梵語の場合は音写か訳語かの別も示した。
まんだら【×曼×荼羅/×曼×陀羅】《(梵)mandalaの音写。本質を有するものの意》 - 外来語で、日本語としての意味と外国語本来の意味との間に著しい差異があるときなどには、その本来の意味を《 》に示した。
アルバイト【(ドイツ)Arbeit】[名](スル)《労働・仕事・研究の意》 - 邦訳された外国の作品名には、その原題を《 》内に示した。
つみとばつ【罪と罰】《原題、(ロシア)Prestuplenie i nakazanie》 - 助詞は、格助詞・接続助詞・副助詞・係助詞・終助詞・間投助詞・並立助詞・準体助詞の別を示した。
は[係助]
から[格助]…[接助]…[準体助]… - 助動詞には、語義解説の前に活用する語形を掲げた。
れる[助動][(れ|れ|れる|れる|れれ|れろ(れよ))] - 連語については、名詞を格助詞「の」「つ」でつなげたような、体言型のものには〔連語〕の表示を省略した。
語義解説
1. 意味・用法の記述
- 一般の国語語彙に関しては、まず現代の意味・用法を記述し、それをもとに古い時代の意味・用法の変遷を記述するようにした。
- 百科語に関しては、最新の情報・学説を取り入れつつ、現代生活に密接した内容を簡潔に記述するようにした。
- 同一項目内において意味・用法を分けて解説する場合、必要に応じて以下の記号を用いた。
(1)品詞、およびそれに準じる区分にはを用いた。
あじ〔あぢ〕【味】[名]…[形動][文][ナリ]…
すく・む【×竦む】[動マ五(四)]…[動マ下二]…
(2)意味・用法の区分を示す標準的な記号としては1 2を用いた。その下位の区分としては㋐㋑を用いた。
た・つ【立つ】㋐[動タ五(四)]1 …㋑…㋒…
また、区分が多数・煩雑になる場合に限り、1 2の上位区分としてを用いた。
い・う〔いふ〕【言う/×云う/×謂う】[動ワ五(ハ四)]…1……1 (「…という」の形で体言に続けて)㋐…
(3)固有名詞の区分には、を用いた。
ふちゅう【府中】東京都中部…広島県南東部…
エリザベス【Elizabeth】(一世)…(二世)… - 語義解説の末尾には対義語・対語を⇔で示した。
あが・る【上がる/揚がる/挙がる】…⇔おりる。
だい‐じょう【大乗】…⇔小乗。 - 参照する項目などについては、語義解説の末尾に → で示した。
あい‐そ【愛想】…→愛嬌(あいきよう)[用法] - 語義解説のすべてを別の項目にゆだねるときは、⇒を用いてその見出しを示した。
きゃく‐し【客思】⇒かくし(客思)
こくさい‐ろうどうきかん〔‐ラウドウキクワン〕【国際労働機関】⇒アイ‐エル‐オー(ILO) - 人名の項目には[( )]を用いて生没年を西暦で記した。
たかすぎ‐しんさく【高杉晋作】[一八三九~一八六七]
2. 用例
- 一般の国語項目には、意味・用法を理解する一助となるように用例を入れた。特に活用する語には必ず入れることを原則とした。
- 現代語には、用法を想定した例(作例)を入れることを原則とした。現在では古めかしくなっている語には、近代・現代の文献から用例を引くようにした。
- 古語には、その語が最も使用された時代の代表的な古典から用例を引くようにした。この場合の仮名遣いは歴史的仮名遣いを用いた。
- 用例文は「 」でくくり、見出し語に当たる箇所は「-」で略した。活用語の場合は、語幹の部分を「-」で示し、活用語尾は「・」「◦」のあとに記した。
かん‐どう【感動】[名](スル)…「深い―を覚える」「名曲に―する」
うね・る[動ラ五(四)]…「山道が―・る」「帰りには二三間―・って、植込の陰を書斎の方へ戻って来た」〈漱石・虞美人草〉
語幹と語尾との区別のつかない語は「-」を用いず、ボールド(太字)文字で該当箇所を示した。
える【得る】[動ア下一][文]う[ア下二]…「そうせざるをえない」
みたいだ[助動]…「お寺みたいな建物」
また、清濁を明らかにしたり、異なる語形を掲げたりするときなどは省略していない。
てる〔連語〕…「いま考え―ところだ」「話はだいぶ進んでるはずです」
跡を垂(た)・る「弥陀次郎が跡垂れて発心もならざれば」〈浮・永代蔵・五〉 - 文献からの引用に際しては、途中の部分を省略した箇所は「…」で示した。また、文意を明らかにするために( )で補ったり、語義を(=)で加えたりした。
そ‐らい【×徂×徠】[名](スル)…「さまざまな幻が、…ひっきりなく―すると」〈芥川・偸盗〉
ひそ‐か【▽密か/▽窃か/▽私か】[形動][文][ナリ]…「(清盛ハ)ほしいままに国威を―にし」〈平家・四〉
おぼ‐めか・し[形シク]《動詞「おぼめく」の形容詞化》…「そのかた(=和歌ノ方面)に―・しからぬ人」〈枕・二三〉 - 名詞・形容動詞をまとめた語義区分では、形容動詞連体形の作例に「(の)」を補って名詞にも同様の用法があることを示した。また、見出し語のままの形でも助詞「と」を伴った形でも用いる副詞には、「(と)」を補って両様があることを示した。
せい‐しき【正式】[名・形動]…「―な(の)要請」「―な(の)名称」
びっしり[副]…「予定が―(と)詰まっている」 - 出典の表示では、異称のある文献は一つの名称に統一し、また適当に簡略化した。巻名・巻数・部立て・説話番号などは、文献に応じて適宜付した。万葉集には旧『国歌大観』番号を用いた。(「古典出典一覧」参照)
あいだち‐な・し[形ク]…「心よからず―・きものに思ひ給へる」〈源・夕霧〉
き‐でん【貴殿】「六波羅の―へも参ずべし」〈盛衰記・一〇〉
ひき‐ほ・す【引き干す】[動サ四]…「小垣内(をかきつ)の麻を―・し」〈万・一八〇〇〉 - 訓点資料や漢文体で書かれた文献は、読み下した形のテキストを使用した。また、ローマ字資料をかたかなで示す以外は、原則として漢字ひらがな交じり文とした。
にい‐ばり〔にひ‐〕【新▽治/新▽墾】…「―の十握(とつか)の稲(しね)の穂」〈顕宗紀〉
あっぱれ【▽天晴(れ)/×遖】「―獅子ワ臆病ナモノカナ」〈天草本伊曾保・驢馬と獅子〉 - 古辞書類では、単に書名だけを掲げて語義の典拠としたものもある。
こう〔こふ〕【×鵠】ハクチョウの古名。〈和名抄〉 - 近代・現代の出典の表示には、筆者名に、姓・名・号などの略称を用いたものもある。(「近代作家略称一覧」参照)〉
補説・派生語など
- 語義解説の補足的な事柄、また諸説のある問題点などについては、語義解説の末尾に [補説] を付して記述した。
- 現同一項目内において、意味・用法によってアクセントが異なるときは、語義解説の末尾に[アクセント]として注記するようにした。語形をかたかな書きにして、高く発音する部分をボールド(太字)の文字にしてある。
がた‐がた[副](スル)… [形動]…[アクセント] はガタガタ、 はガタガタ。 - 俳句において季語とされている見出し語には、《季 春》《季 花=夏》のように示し、代表的な句例を添えるようにした。
- 歌枕とされている地名には、[歌枕]と示し、適宜和歌例を添えた。
- 可能動詞は、独立の見出しとして立てず、もとになる動詞の解説末尾に[可能]としてボールド(太字)の文字で掲げた。ただし、複合動詞には表示を省略した。
よ・む【読む/詠む】[動マ五(四)]…[可能]よめる - 現代語の形容詞・形容動詞に接尾語「がる」「げ」「さ」「み」が付いた派生語は、その項目の解説末尾に[派生]としてボールド(太字)の文字で掲げた。
つよ・い【強い】[形][文]つよ・し[ク]… [派生] つよがる[動ラ五] つよげ[形動] つよさ[名] つよみ[名]
しん‐けん【真剣】[形動] [文][ナリ]…[派生] しんけんさ[名] しんけんみ[名] - 基本的な語には、表現に役立つ実際的な資料として、次のような欄を設けた。
(1)見出し語に似た意味の語句を[類語]として集めた。語義区分や用法によってグループに分けて示した。
き・く【聞く/聴く】
[類語] (1 )耳にする/(2 )傾聴する…/(3 )仄聞(そくぶん)する…(謙譲)伺う…
(2)見出し語が下に付く慣用句・ことわざの類を[下接句]として集めた。
く・う〔くふ〕【食う/×喰う】
[下接句] 泡を食う・一杯食う・犬も食わぬ…
(3)見出し語が下に付く複合語・連語の類を[下接語]として集めた。
いわい〔いはひ〕【祝(い)/▽斎】
[下接語] 内祝い・産(うぶ)祝い・産衣(うぶぎ)の祝い・快気祝い…
(4)見出し語と意味・用法が似ていて微妙に異なる語を[用法]欄に取り上げ、その相違を解説するようにした。
うま・い【▽旨い/▽甘い】
[用法] うまい・おいしい…
漢字項目
- 音読みの熟語を多くつくる漢字を特に選び出し、本文とは別に「漢字項目」として解説した。 その漢字に複数の字音がある場合は、一つの字音の項目でまとめて解説した。
- 字体は常用漢字表および人名漢字表に則り、それ以外は正字とされるものを用いた。
- 人名漢字として認められているものは[人名用漢字]と表示した。
- 音訓は、常用漢字音訓表にあるものは特にボールド体で示した。
- 字音には、呉音(呉)、漢音(漢)、唐音[唐宋音](唐)、慣用音(慣)の別を示した。
- 解説にあたっては、音訓が複数あるときはまずその別を示し、そのあとに漢字の意味と熟語の例を掲げるようにした。 熟語の配列は、その漢字が上に付く語と下に付く語とに分け、それぞれを五十音順に並べた。
- 解説の末尾には、人名に用いられる音訓を[名のり]として集めた。 また、熟語として読みにくいものを[難読]としてまとめた。
その他
- 年号を記す場合には、原則として、日本の国内に関する事柄には和暦、それ以外は西暦を用いた。
- 日本の都市の人口を記す場合は、自治省行政局編『住民基本台帳人口要覧』(平成六年版)、および外国の人口に関するものは『Demographic Yearbook, United Nations』(国連世界人口統計年鑑、一九九二年)などに基づいた。