ドーキンス VS テッド・ハガード

前置き

The Root of All Evil? というドーキンスによる二部立てのドキュメンタリーがありますが、この中で最近話題の Jesus Camp にも出てくる(確か)テッド・ハガード(Ted Haggard)へのインタビューがあります。ドーキンスのあせり、ハガードの尊大さ(自分で言ってるけどハガードの方がひどく見える)がよくわかります。個人的にはこういうのを見るとほんとに腹が立ちます。

何も見出しがなければドーキンスによるナレーション、囲いがあるのはハガードの説教の一部が挿入されています。

Youtubeの以下の部分より。書き起こしは
http://www.the-brights.net/forums/forum/index.php?showtopic=4425&mode=threaded&pid=64807
http://www.noematic.org/mine/archives/019157.html
を参照。

追記:TB先にその後のハガードについて詳しく書いてありますので参照するといいと思います。
http://d.hatena.ne.jp/muchonov/20061105


ハガードへのインタビュー

私はなぜ、自分では非合理的信仰だと思っているようなものがなぜ成長してきているのか、そしてそうした信仰がなぜ科学を攻撃しているのか、知りたいと思うようになりました。

テッド・ハガード牧師は神と、それにブッシュ大統領にホットラインを持っています。自分で頑固な共和主義者と言う彼は大統領と週に一回電話で話すそうです。また、トニー・ブレアアリエル・シャロンとも付き合いのあると語りました。

ドーキンス
すごいショーでした。お金もたくさん使われているんでしょうね。
ハガード
ええ。私は来た人が礼拝し、また楽しんでほしいとも思っています。それに話し手が近くに感じられるようにしてるんです。だからこのホールも円形で、そのおかげで私に近くなりますし、私も彼らを見渡せます。
ドーキンス
非常に効果的でしょうね。技術的にといいますか、思い出してしまったんですが、こういう言い方をすると失礼かとは思いますが、ナチスニュルンベルク党大会のようですよね。信じられないくらいで、ゲッベルスなら誇りに思うほどの。
ハガード
ははは、ナチスの党大会のことは全く知りませんが、アメリカ人はロックコンサートみたいに思っているようです。
ハガード
「テッド牧師、すばらしかったです。あなたの言うことならなんでも信じますよ」みたいに言う盲信者にやってきてもらうために説話を準備するのではありません。そういうのには反対なんです。
ハガード
聖書にはこうあります。『父なる神の予知によって,選ばれた人たちへ。』これは私たちのことです。ここに入る言葉を知っていますか?
聴衆
服従
ハガード
もっと大きく?
聴衆
ふくじゅう
ハガード
そうです。我々は選ばれたのです…

誰もが心の内では存在の意味を知りたがっています。私たちにとってそれは生と死であり、そのおかげで自分が何者なのかわかるのです。しかし我々の多くは、成長して責任ある大人になるにつれて、人生は複雑に出来ている、つまり白黒はっきりしたものではなく、微妙な灰色の部分でできていてるんだ、ということを受け入れるようになります。彼らのような信仰を新たにした人々が子供っぽい確信に戻っていくよう説得されているのを心配に思います。彼らが必要とするただ一つの真実は神です。彼らのために牧師が解釈した神です。

ハガード
みんな知っていることですが、私たちは聖書が神の世界であると信じています。今日私は汝の隣人を汝として愛せ、ということについてお話しました。さて、証拠をつくりだす必要はありませんでしたね。社会学的、あるいは心理学的証拠というものを。
ドーキンス
でもあなたは本を…
ハガード
この本は真実です。
ドーキンス
彼らは自分自身で考えるように教えられ、この本に書いてあること全てが真実だと説得させられる。それなのにどうしてそんなことが言えるのですか?
ハガード
そのことを信じる必要がないからです。
ドーキンス
私が提出する証拠というものは、言って読めばいいと思いますが、この本はこれこれ、あの本は別のもの、また別の本はまた別のこと、という風にいろんな形で提示されるものです。
ハガード
私が提示できる証拠というのは、私がもっているこの一冊の本です。1500年前に、40人もの人間により、一つの主題について書かれていて矛盾がない。二人、二人でいいですから、どこかの分野で、同じ時代、同じ研究をしている専門家を呼んできて、彼らの間で矛盾がないということを示せますか?
ドーキンス
それが科学の美点です。多くの証拠があり、新たなものがいつでも発見されていき、我々の心をかえていくのです。一方あなたは一つの本があり、そこでは何も物事は変化しない、とおっしゃる。それは人々に自分で考えるということを教える態度ではないでしょう。
ハガード
(ニヤニヤ)
ハガード
私たちはみんなで聖なる地へ行こうと決めましたね?
聴衆
そうです!
ハガード
そうです! みんなもさあ!
聴衆
そうです!
ハガード
オーケー、多数決ですね。


私が最も心配に思うのはハガードのような福音主義者が明らかなウソを群集をだまして信じ込ませてしまうということです。福音主義者は科学的証拠を否定します。ただ青銅器時代の神話を肯定したいがために。

ハガード
アメリカの福音主義者として私たちは科学的手法をまったく受け入れています。時間が経てばもっと多くの事実が明らかになると思います。そのおかげで神がいかにして天国と大地をつく給うたのかよく学ぶことが出来るようになるでしょう。
ドーキンス
でも科学的手法では世界は45億年前に誕生したということがはっきりと示されていますよ。これは受け入れるんですか?
ハガード
えーと、あなたが何をしているかわかりますか。あなたは、科学社会の一部分で事実として受け入れられている意見の、一部、を受け入れているに過ぎないのです。逆に、あなたのお孫さんがあなたのしゃべっているのをテープで聞いて、笑うなんてことがあるかもしれませんよ。
ドーキンス
賭けますか?
ハガード
人間にとって耳や目を研究して、それが偶然にできた、というのは難しいんじゃないですか。
ドーキンス
失礼、いま「偶然」とおっしゃいましたか。
ハガード
ええ。
ドーキンス
「偶然」というのはどういう意味で?
ハガード
目がひとりでにどうにかして出来上がったということです。
ドーキンス
誰がそんなことを言ったのですか。
ハガード
えーとだれだったか、進化論者ですよ。
ドーキンス
私が出会った中には一人もそういうことを言う人はいませんでしたよ?
ハガード
本当ですか?
ドーキンス
本当です。あなたはあきらかに進化の主題を理解していません。
ハガード
それとももしかしたら私が会った人にお会いしたことがないのかもしれませんね。(笑) でもね、あなたは理解しているんじゃないですか? あなたはこの、ここで起きている、知性の傲慢さという問題が、あなたのような人々と信仰に基づく人々との間にある困難な問題を生み出しているということを。私は優越的にふるまいません。「私は非常に多くの物事を知っている。だからあなたが私の知っている本を読み、私の知っている科学者を知っていれば、あなたは私と同じくらい偉大なのにね」 ドーキンスさん。あなたが良く知っていることはたくさんあるでしょう。しかしあなたが良く知らないこともまたあるのです。歳を取れば自分自身が何について間違っていて、何については正しかったのかわかるようになるでしょう。しかしそうなるまでは、傲慢にふるまうのはよしてください。

インタビュー後、当惑する出来事がありました。荷物をまとめ出発しようとしていたところ、ハガード氏が突然ピックアップトラックに乗って現れ、うちの土地から出て行けー、とか、刑務所にいれてやるー、フィルムを差し押さえるぞー、などと言ってきました。それからとても奇妙なことを言ってきました。「お前は私の子供たちを動物よばわりにしやがった」

あとになって彼が言いたかったに違いないことがわかりました。私が話していたテーマは進化だったのです。私が彼の信徒を動物呼ばわりにした、と彼は考えましたが、ある意味では私はそうしたと言えます。全ての人間は動物なんですから。