虹色の奇跡 第5回「迫り来るガーディアンズ」
「なんでもいい。命が惜しければすぐにでも学園に帰ってくるんだな。」
アスナは念話でエヴァと会話している。
そこへネギが血相を変えて帰ってきた。
「た、大変です!!海岸で感じた妙な魔力をたどったら、かなり強力な結界が…いろいろ手を尽くしたんですけど、脱出不可能です!!」
「うそ~…またなの?また悪者がこのかを狙っているってわけ…?」
「ちょっと、アスナさん。」
「あ、ゴメンこのか。」
「ええんよ。ウチだってある程度戦えるし、それにせっちゃんが守ってくれるしな。」
と、このかは刹那に寄りかかる。刹那は紅潮しながらも決意を口にする。
「も、もちろんです。命に代えてもこのちゃんを守り抜きます。」
「私だってがんばっちゃうんだから!」
刹那とアスナは意気込んだ。
そう、ネギたちは海へ遊びに行っていたのだが、敵意と悪意に満ちた異様な魔力や人の気配を感じ、ログハウスに帰って来ていた。
「まさかそのエリア一帯を結界で覆ってしまうとは。いいか、なんとか学園長のじじぃの力でそっちへ行ってやる。それまでは持たせろ。敵は相当強力だぞ。関西呪術協会の端くれどもなどとは格が違う。」
エヴァの声が響く。
「分かりました。なんとかしてみせます。」
「ネギ先生!強力な魔力がこちらに近づいてきています。」
刹那が緊張した面持ちで夕凪に手をかけた。
「分かりました。みなさんとにかく山の方へ逃げましょう。幸いそちらの方には結界は張られていないようです。」
「しかし、敵の罠があるかも…」
刹那の懸念にアスナが答えた。
「でも、ここで戦闘にでもなったら、キャンプ場や関係のない利用者の人たちが巻き添えをくっちゃうわよ。」
「仕方がありませんね。では、準備を整えてここを出ましょう。」
刹那も仕方なく同意し、ネギたちは出発の準備を始めた。
必要最低限の装備を整え、いざ出発。
それから事情を知っていて、かつ腕の立つ真名と古菲も同行することに。
「さあ、いざ出発アルね!」
「今回も仕事料ははずんでもらうよ、刹那。」
「ああ、2人とも頼りにしている。」
「でも、長瀬さんがいないのは残念ね。あとあのエロオコジョも。」
アスナが苦笑いした。
「ああ、カモ君なら朝倉さんと一緒ですよ。」
とネギが説明した。
それに刹那が答える。
「仕方ありません。一応式神を飛ばして、彼女たちにも知らせるようにはしましたがね…。むっ!」
「おっと、早速おでましだよ。」
真名の言うとおり、強い邪気と敵意が迫って来た。
「みなさん、気をつけてください!相手は1人や2人ではないようで…。」
刹那が言い終わらないうちに敵が大勢現れた。しかも…
「な、なんなのこれ?」
アスナが叫ぶ。刹那は瞬時に状況を把握した。
「こ、これは結界!?し、しまった!遮断されてしまった!」
強力な結界により、ネギとアスナ、このかと刹那、真名と古菲というふうにグループが寸断されてしまった。
「しかたがありません!各自で敵を撃破するしかありません!みなさん気をつけてください。」
ネギはそう言うと、アスナと共に駆けていった。
「くっ、しかたがない。このちゃん、私のそばを離れないように。」
「わかったえ、せっちゃん。」
なんとか、敵の気配を振り切ったこのかと刹那。しかし…
「くっ、また敵か。そこにいるのは分かっている。出て来い!」
刹那が怒鳴ると木の陰から一人の小柄な少女が姿を現した。年の頃は12,3歳といったところか。
刹那はこの少女に見覚えがあった。
どこかで見たような…。
「ハッ、今朝の夢…?」
少女は刹那を見ると不気味に微笑んだ。と、同時に長剣で刹那に斬りかかってきた。
火花を散らす長剣同士。
「はじめまして、神鳴流のセンパイ桜咲刹那さま。あ、初めてではなかったですね。夢の中でお会いしましたものね。」
ますますその少女の表情が不気味に歪んだ。
「私、プラネットウォーリアのプルートと申します。あ、プルートって冥王星という意味です。やっとお会いできてうれしいですわ。ずっとアナタのことを追い求めていましたもので。あの~早速ですが私の剣の錆となってもらいます。」
「なにっ。」
「せっちゃん!」
プルートがものすごい勢いで迫ってきた。
しかし、刹那に襲いかかるプルートの剣は太刀筋、踏み込みがバラバラのド素人剣術だった。
「こっちの調べはついているって事か…」
刹那が口を開いた。しかしプルートは聞こうともしなかった。
「センパイ、無駄口はいいですからさっさと神鳴流の奥義使ってきてくださいよ…ホントにあなたの技をこの目で見たいんですから~。」
刹那はあきれるように、
「貴様みたいな素人剣士には神鳴流は見せられないな。」
と答えると、刹那は急に目つきが変わったようにその場で剣を鞘に収めた。
「やっぱり先にこっちの剣技を見せなければいけませんか?」
と質問してきた。
刹那は目を細くして攻撃を見極めようとしたがプルートは攻撃体勢に入ったままだった。
刹那が一歩前進してプルートの間合いに入ってしまった。
「残念、センパイごめんね~♪…冥王 斬空閃!!」
刹那の腹を横一閃にかすめた。
「グッ!!」
刹那は口から血を吐いた。腹からも血が流れ出す。
「刹那センパイの好みはなんですかぁ~?…血まみれとか…縛りつけとか…はりつけとか…」
プルートはバトルマニア&変態の超度級の達人だった。
「だから普通の剣術はでたらめだったのか…。」
プルートがケラケラ笑いながら、
「さてと…そろそろ陰陽道としての実力をセンパイに見せてあ・げ・る。愛する私のセ・ン・パ・イ。」
ゾクゾクゾクゾクゾクゾク…
刹那そしてこのかは相当な嫌悪と同時にかなりの恐怖を感じた…。
「う~、数を出せばいいというものでないアルよ!」
「しかし、自分が情けない…これしきのことで。さすがに危なくなってきたぞ。」
大勢の忍者の集団に囲まれて劣勢を強いられる、真名と古菲。
すでに20人くらいは倒したが、まだまだ残りは多い。
と、ガニメデというリーダー格の忍者が合図をした。
「一斉砲撃!!」
「ま、まずい!クー、下がれ!」
辺りがものすごい爆撃音と爆煙に包まれた。
「そうくるでござるか。まずいでござるな。」
真名と古菲の戦いを遠く離れた木の上から望遠鏡で覗いていた楓。
「早く援護に行かねば。」
楓が真名たちの元へ行こうとすると声が。
「フフフ、拙者と同じくノ一か。これは戦い甲斐がありそうだ。」
すると楓のすぐそばの木の間から一人の女の忍者が現れた。大柄な楓よりもさらに背が高かった。
「むむ、近くにいたとは迂闊であった。拙者もまだまだ修行が足りんでござるな。」
楓が唸ると、相手が言った。
「話は聞いておるぞ、甲賀中忍、長瀬楓。拙者の名は木星ジュピター。伊賀上忍だ。いざ手合わせ願わん。」
楓は思った。
「(相手は格上でござるか…少々分が悪いでござる。)」