CDが売れてないけど音楽業界が儲かっているという事実誤認について

烏賀陽氏のコラムより。

CDが売れない、でも音楽産業は「活況」の理由
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5288
(一部会員登録が必要な部分あり)

これね。古いデータをベースに話してるからとんでもない事実誤認がある。確かに2009年位まではCD売上の沈下分を補えていたかもしれない。ただ、もう時代はすごいスピードで動いているのです。

特にインタラクティブ配信が音楽業界の助け船になってるみたいな件。この表を見てもらいましょうか。レコード協会の資料から抜粋。

「インターネット配信とか前年比130%とかSUGEEEEE!」とかそういう部分ではない。見るべき部分は売上金額。特にモバイル。「Ringtunes」は着うた。「ringback tunes」は待ちうた。シングルトラックは着うたフル。爆減である。
そしてこのダウントレンドは変わらない。むしろ絶滅に近くなっていくだろう。理由は単純。スマホの普及だ。着信設定に着うたを使うというよりは、CDを購入するお金の無い若年層に対しての楽曲廉価販売という要素が強かった着うたフルはここで死滅する。Youtubeなどのサイトで十分だから。
現状売上75%減で動いているが、スマートフォン普及率の増加と比例して加速度的に落ちてゆくことだろう。


何もしなくても著作権使用料や原版料で潤っていた時代は終わりを告げる。現場はそれを知っているはず。だからAKBのような音楽事務所連合が護送船団方式でのCD販売を促す仕組みに飛びついたのだ。アニメとアイドルのCD販売の仕組み(握手、事前予約などの大量購入を促す様々な仕組み)は今の音楽業界唯一成功していると言っても良い。


このコラム中の大規模フェスティバルの件に関しても、再考が必要だ。2003〜4年位に雨後のタケノコのように各所で誕生したフェスティバルも、だいぶ淘汰されてきた。屋外型だけではなくa-nationのようなツアー型イベントなどを、このコラムで言う「フェスティバル」と括るのが正しいかというのには疑問符がつく。

 私がもう1つ、音楽への需要はまったく衰えていないどころかむしろ活発になっていると思うのは、コンサート産業がこの10年で成長していることだ。

 「ぴあ総研」の調査では、「音楽公演」の市場規模は1225億円(2000年)から1503億円(2008年)へと増えている。2007年には前年割れして「やはり、お前も息切れか」と危惧したのだが、また盛り返した。

 このコンサート産業の成長の大きなエンジンの1つが「野外フェスティバル」であることは興味深い。

元データはACPC(社団法人全国コンサートツアー事業者協会)の年間報告書だ。皆この総動員数をベースに話をするが、ミュージカルやバレエなんかも込みのこの数字を単純に納得してはいけない。皆このページの数字を信じすぎなんだ。もうちょっとこまかく見ないと。
http://www.acpc.or.jp/marketing/transition/

ここ数年の推移をみると単純に「野外フェスが牽引してコンサート人口が増加!」とかは言えない。現に2009年などは野外フェス自体が少なく大幅減少してるのだ。見るべきデータはここだ。
http://www.acpc.or.jp/marketing/?year=2010

4年分くらい並べてみて個人的なメモとして気になったところを箇条書きにしておく。

・公演数の増加率と著作権使用料の増加率が一致しない。イベント自体が小さな規模の物が増えているのかもしれない(インストアとか?)
・バレエやパフォーミングアートの公演数が多いエリアは売り上げも急激に伸びている。おそらくチケット単価の高さが影響している
・ライブハウスの稼働はほとんど変わらない。
・その年度ごとの特性によって売り上げ構成比が大幅に変化してしまうため、総額で語ることは出来ない
・野外フェスは単価が高いのは良くわかるが、この数字の中の「野外」にはおそらく駐車場などでの野外イベントも含まれている

実質問題として、今の「CD購入したらイベントに参加できます」みたいなのってここだとどういう位置づけになるんだろう。ライブチケットにCDが付いているという位置づけになるんだろうか。でもそうなると、CD売上にならないはず。ややこしいな。この辺は。


レコード会社や事務所は今のままで行くと本当に儲からなくなる。今のネットトレンドである「シェア」の発想からは著作権使用料も落ちてこないし単価を上げることも難しいから。唯一うまくいっているiTUNESはレコード会社なんかにしてみれば最後の砦だろう。ただそれだっていつまで続くかわからない。


「音楽業界は儲かってる!」なんて口が裂けても言えない。「公演は儲かる」のも怪しい。著作権と原盤権を巡って自縄自縛の音楽業界。


個人的に唯一可能性があると思っているのが「レコード会社のファンクラブを作る」ことだ。コンテンツ制作の原資をファンからいただく仕組み。当然レコード会社は今までのようなブラックボックスだらけのスタンスで商売は出来なくなる。しかし、「物を作るのにお金が必要、援助して!」という思いはちゃんと伝えた方がいい。soundcloudとかも玉石混交、80%はクソだ。ニコニコだって80%はクソだ。メジャーの音楽もクソだがまだマシだ。なぜなら制作に手がかかってるから、クオリティに関してある程度担保される。であればそれをサポートする仕組みがあっても良いとは思う。


先日潰されたmegauploadを使ってswizz beatzはなにをやろうとしてたんだろう。個人的にはすごく気になっている。