ココロ社

主著は『モテる小説』『忍耐力養成ドリル』『マイナス思考法講座』です。連絡先はkokoroshaアットマークkitty.jp

日本陸軍の火薬工場とU.S.A.を少し確認できる「稲城フェスティバル」

稲城に日本陸軍の火薬工場(造兵廠火工廠板橋製造所多摩分工場)の遺跡があると知ったのは多摩ニュータウンに引っ越してきてからのことで、はるばる猿島まで行かなくても旧日本軍の遺跡が見られてよいと思ったが、いまは米軍のレクリエーション施設になっていて入れないと知り、がっかりしたのだった。


話は横道にそれるが、「レクリエーション」という言葉は小中学生のときによく聞いた。遠足や宿泊研修の時間割に「レクリエーション」と書いてあって、その語の指し示すところについての説明は一切なかったものの、しりとりなどの退屈なゲームをさせられることが多く、真剣に遊ばないと先生に怒られることもあり、「レクリエーション=退屈な遊びを無理やりさせられること」と理解していた。re-creationのことだと知るのはずっとあとのことであるが、語義通りre-creationするのであれば、より強烈な刺激が必要になってくるので、野球拳やランバダなどが適切ではなかろうか……それはともかく、米軍のレクリエーション施設が年に1回だけ公開されるという話を聞きつけて稲城に急行(注:稲城駅には急行電車は止まらない)したのである。

 

ノーマルな感覚の持ち主であれば南武線の南多摩駅から歩くところだが、わたしは稲城駅からの徒歩30分のコースを選んだ。わたしが住んでいるのは多摩ニュータウンのなかでも初期に開発されたところなので、稲城のニュー(といっても30年前くらいにはなるが)なタウンにはまた違った魅力を感じている。

 

少し遠回りして城山公園に入ると見晴らしがよい。

遠くに多摩川にかかる是政橋があるが、今回は多摩川の西側(わたしは「こっち側」と呼んでいる)なので渡ることはない。


例年は真夏のころに行われていた祭りであるが、今年は3年ぶりの開催で、10月2日に開催された。

3年ぶりということもあり、入場の行列は200メートル以上あった。

 

30分ほど並んだが、Twitterを見ていたらあっという間で、そのことにうっすらと自己嫌悪を感じて発熱した気がしたが、それでも体温検査はセーフで、荷物検査も難なくクリアした。

 

入ってみると、意外なことに米軍施設であることを感じさせる要素は多くなかった。わずかな米軍要素にはカメラを持った人が群がって、ひとつも撮り逃がすまいとしていた。わたしは注意力が散漫なのでいくつか取り逃したと思う。

 

貴重なのはこの地図。

驚きのあまりぶれてしまったが、気を取りなおして脇をしめて撮影。

 

稲城フェスティバルで開放されるのは、この施設のなかで黄色い枠のところだけである。

 

右側はゴルフ場になっているが、左側は火薬工場だったときの施設をそのまま生かしていると推測される。「Shogun Cabin」「Samurai Cabin」の名を見て、敗戦国であることを実感するが、問題があるとも思わない。

 

しかし、この地図を見て感慨に耽っている場合ではなかったのである。敗戦国であることを実感することは思想信条の自由であるから問題ないのだが、フードコーナーの行列がみるみる長くなっていたのだった。わたしが慌てて並んだころには、行列はフードコーナーの隣のソフトボールのグラウンドを半周ほどに達していた。

そして入場するときの行列よりも目的がはっきりしている(食料の調達)ので、待ち遠しさがひとしおである。

 

並んでいる間、道路を挟んで向こう側のリサイクルセンターを眺めていた。真ん中のがれきがマジカルな仕掛けによって右側の砂山になるようだ。

 

テントの近くまで来ると「本物をサンプルにしているからラップの中が曇ってよく見えないやつ」があった。本物をサンプルにしているからラップの中が曇ってよく見えないやつ大好き!

右下が、全員が狙っているステーキなのだが、わたしの5組くらい前で終了……3年ぶりの開催で来場者数が読めなかったようだ。検索しても、以前はここまで行列が長くはなかったようなので、来年以降また行こうと思った。

 

わたしが得たのはハンバーガーwithポテトチップス、ホットドッグwithドリトス、そして水。

 

水が飲みたかったわけではなく、早々に他の飲み物が売り切れてしまったからであるがジャングルの中で泥水を飲みながら進軍するのに比べればミネラルウォーターをいただけるというだけで御の字である。

 

すごいアジア感のある名前と思ってラベルを見たら韓国産だった。同盟国じゃん!最近韓国を同盟国と実感することが少なかったので同盟を確認するような気持ちで飲んだ。

 

ハンバーガーとホットドッグは驚くほどシンプルな姿で、そういうものだ、ピクルスやケチャップなんて甘えにすぎない……と思って食べた。ランチにスナック菓子を食べる雑な感じもわたしのU.S.A.のイメージと合致する。最高じゃんと思ってあっという間に食べつくしたが、ほどなくして、ピクルスやケチャップのコーナーがあって、そこでオプションを調達すべきだったことを知った。いい仕組みで、次回伺うときは必ずや大量のピクルスを……と思ったのだが、もし日本にこのあと食料が配給制になるような悲劇が起きたとして、わたしは満足に食事にありつけるのだろうか……と不安になった。

 

満腹中枢を無理やり黙らせることに成功し、正気にかえったので、ふたたび施設内を歩くことにした。

policeを和訳するとこうなるんや……。

 

稲城フェスティバルは、ピクニックエリアにある野外ステージでの主に和洋折衷的な演奏で、必要なエリア以外は立入禁止になっている。

 

この祭りの中で見える旧日本軍施設は、地図上で「202」「207」と書かれている建物。

これが202。物置のような外観である。

 

テニスコートの向こうにちらりと見えるのは207。

これも倉庫のように見えるが、今はここでアメリカンジョークを言いながら着替えたりしているのかもしれない。

いつか「Shogun Cabin」「Samurai Cabin」でクラブイベントが行われることを願っている。

 

入口には子供用のゴルフ場があり、おそらく稲城フェスティバルの中で最もU.S.A.らしさを感じられるゾーンである。

 

 

そういえば志村けん先生はコロナで亡くなったね……。

 

ミッキーとジェリーがフュージョンした感じ。

 

昔のプレイステーションの海外のゲームの3Dモデルってこんな感じのが多かったよね……こんな細かいところに共感してくれる人がいるか知らんけど……。

 

「日本軍の火薬工場がわりとそのままの姿で米軍のレクリエーション施設になっている」という状況はそんなにないので、行けてスッキリした。並んでいる時間と中にいる時間がだいたい同じくらいだったが、来年はそのへんもバランスが取れるだろうし、また行きたいと思った。

 

ただひとつ、心残りだったステーキへの執着が数日後にターリー屋に行ったときに暴発した。サーロインステーキお肉ダブルキーマライス定食を頼んでスッキリした。

 

多摩ニュータウンにきてくれないだろうか。若葉台なんかピッタリだと思うのだけれど……。

 

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