いじめの後遺症とは? 親ができる対応を解説
こんにちは。生徒さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする完全個別指導塾・キズキ共育塾です。
いじめは、転校や卒業によって加害者と距離を持ったあとでも、心身に大きなダメージを与え続けます。
- つらい記憶が忘れられない
- 周囲からは「もう終わったこと」と言われて苦しい
- もう、以前の自分には戻れないかも…
その悩みは、いじめの後遺症が原因かもしれません。いじめの後遺症はひきこもりや精神疾患の発症など、さまざまな変化を引き起こします。
このコラムでは、いじめの後遺症の具体例や克服するためのポイント、親ができる対応について解説します。あわせて、いじめの後遺症に悩んだ時の相談先を紹介します。
いじめに関しては一人で抱え込まず、まずは家族や周囲の人に打ち明けることから始めましょう。
私たちキズキ共育塾は、いじめの後遺症にお悩みの人のための、完全1対1の個別指導塾です。
生徒さんひとりひとりに合わせた学習面・生活面・メンタル面のサポートを行なっています。進路/勉強/受験/生活などについての無料相談もできますので、お気軽にご連絡ください。
目次
いじめの後遺症とは?
いじめの後遺症とは、いじめられた経験が心の傷となって起こる困難な状態や病気・障害のことです。
いじめから解放され、成長した後でも、いじめの影響が現れることがあります。(参考:朝日新聞「斎藤環さんに聞く「治癒できる『いじめ後遺症』」」)
例えば、自殺をした高校2年生に関する訴訟において、名古屋高裁は、中学生の頃に受けたいじめ行為や学校側の対応と自殺の因果関係は認めなかったものの、解離性同一性障害の発症との関連性を認めています。(参考:日本経済新聞「いじめとの関係認めず賠償減額 高2自殺で名古屋高裁」)
ただし、いじめの後遺症による苦しみは、まだまだ世間的な認知度が低い状態にあるのが現状です。
いじめの後遺症として現れる行動の変化
この章では、いじめの後遺症として現れる行動の変化について解説します。
行動の変化①対人恐怖
いじめの後遺症のうち、最も典型的なものは、対人恐怖です。
過去のいじめの記憶が蘇り、人との交流を避けるようになるのです。特に同世代の集団に対する強い不安や恐怖を感じることが多く、街中で学生グループを見かけただけで、逃げ出したいと感じるようになる人もいます。
同質な集団である学校の教室内で生じたトラウマが原因で、同世代との人間関係をつくりにくくなるのです。(参考:朝日新聞「斎藤環さんに聞く「治癒できる『いじめ後遺症』」」)
行動の変化②ひきこもり
いじめで学校に行けなくなり、ひきこもり状態になるケースも少なくありません。(参考:読売新聞「うつ、ひきこもり、職場になじめず…「いじめの後遺症」は成人後まで続くことも」)
ひきこもりとは、さまざまな原因から自宅以外での就学・就労などの社会的な活動の機会を避けて、長期にわたって自宅に留まり続けている状態のことです。(参考:ひきこもりVOICE STATION「まず知ろう!「ひきこもりNOW」!」、厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」)
いじめを受けて対人恐怖の状態になると、集団になじめず、外に出るのが難しくなります。外出時に見知らぬ人の視線が気になったり、自分を笑っているように感じたりするのです。(参考:ダイヤモンドオンライン「引きこもり長期化にも見える「いじめ後遺症」の呪縛」)
ひきこもりの概要などについて、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
いじめの後遺症として発症する可能性がある病気・障害
この章では、いじめの後遺症として発症する可能性がある病気・障害について解説します。
解説する病気・障害は複合的に表れるケースもありえます。いずれの場合も、一人で抱え込まず、医師や専門家のサポートを受けましょう。
病気①複雑性PTSD(複雑性心的外傷後ストレス障害)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、生死に関わるようなトラウマ体験を経験したことで、日常生活に支障をきたす症状が現れる精神疾患のことです。(参考:e-ヘルスネット「PTSD / 心的外傷後ストレス障害」、MSDマニュアル家庭版「心的外傷後ストレス障害 (PTSD)」、こころの情報サイト「PTSD」)
いじめや虐待などの体験が原因になるPTSDは、特に複雑性PTSD(C-PTSD、複雑性心的外傷後ストレス障害)と呼ばれます。
複雑性PTSD(C-PTSD、複雑性心的外傷後ストレス障害)とは、児童期虐待やいじめなどの持続的かつ反復的なトラウマ体験を経験したことで、通常のPTSDの症状以外の多様な症状が現れる精神疾患のことです。
一般的には、逃げることが困難で、持続的または反復的な出来事の後に起きるとされています。(参考:公益財団法人 日本心理学会「複雑性PTSD」)
これは、いじめという出来事が一回限りではなく、長期間にわたって繰り返し経験されることが多いためです。被害者は深い心の傷を負い、気分の落ち込みや認知の歪みなど、複数の症状が重なって現れることが特徴です。
精神科医の斎藤環氏は、診察の実感として、いじめは現代日本において最も多くのPTSDを引き起こしていると私見を述べています。(参考:朝日新聞「斎藤環さんに聞く「治癒できる『いじめ後遺症』」」)
病気②社会不安障害(SAD)
通常、人は幼い頃からのさまざまな社会的体験を通じて、他者との関わり方を学び、人に対する不必要な恐怖や緊張を自然と克服していきます。しかしいじめを経験した人は、人に対して不安を抱きやすくなります。
その結果、社会にうまくなじめず、孤立した感覚や強い不安感を抱くようになり、社会不安障害(SAD)を発症することがあります。
社会不安障害(Social Anxiety Disorder、SAD)とは、日常的な社交の場面などで人から注目されることに対して強い恐怖や不安を感じることで、人前で話すことや他人と接することを恐れ、日常生活や仕事に支障をきたす障害のことです。一般的に、社交不安障害や社会恐怖症、社交恐怖症とも呼ばれます。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、MSDマニュアル家庭版「社交恐怖症」)
社会不安障害(SAD)には、以下の種類があります。
- 対人恐怖症
- 赤面恐怖症
- 発汗恐怖症
以上の症状は単独で現れることもあれば、複数の症状が重なることもあります。
キズキビジネスカレッジ(KBC)「社会不安障害(SAD)のある人に向いてる仕事 仕事を続けるためのコツを解説」
病気③うつ病
いじめの後遺症から自己肯定感が低くなり、自信を失った結果、うつ病を発症することもあります。(参考:読売新聞「うつ、ひきこもり、職場になじめず…「いじめの後遺症」は成人後まで続くことも」)
うつ病とは、気分の落ち込みや憂うつ感、さまざまな意欲の低下などの精神的症状と、不眠、食欲の低下、疲労感などの身体的症状が一定期間持続することで、日常生活に大きな支障が生じる精神障害・気分障害のことです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、厚生労働省「1 うつ病とは:」、厚生労働省「うつ病に関してまとめたページ」、、厚生労働省「うつ病」、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「うつ病」、MSDマニュアルプロフェッショナル版「抑うつ症候群」)
また、脳の機能が低下している状態、脳のエネルギーが欠乏した状態を指し、脳の中で神経細胞間のさまざまな情報の伝達を担うセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなどの神経伝達物質のバランスの乱れや、感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じているものと考えられています。
うつ病の概要や症状などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
キズキビジネスカレッジ(KBC)「うつ病とは? 症状や治療方法を解説」
いじめの後遺症を克服するための2つのポイント
この章では、いじめの後遺症を克服するためのポイントについて解説します。
ポイント①周囲のサポートを受けつつ環境の整備をする
いじめの後遺症からの回復には、適切な環境づくりと周囲からの継続的なサポートが不可欠です。まずは専門家に相談し、回復までのプロセスを確認しましょう。
対人恐怖やひきこもりなどの行動の変化は、専門家の支援のもとで、他人と接することで改善されることがあるようです。人との関わりの中で受けた傷を、他人からの承認を繰り返し受けることで癒やしていくのです。(参考:朝日新聞「斎藤環さんに聞く「治癒できる『いじめ後遺症』」」)
ほかにも自助グループによるミーティングも効果があると言われています。
また、家庭や学校などの環境整備も重要です。周囲の大人たちは、本人の苦痛に真摯に向き合ってください。本人はいままさに苦痛を覚えているということを受け止め、苦しみに寄り添う態度を取る方が、本人の心の回復につながります。
本人の自信と自己肯定感を回復させるためには、他者からの承認や理解が必要不可欠です。
なお、「いじめられる側にも問題がある」などの被害者批判は、いじめられた当事者を追い込むことになり、何も良い効果を生まないので避けた方がいいでしょう。(参考:読売新聞「うつ、ひきこもり、職場になじめず…「いじめの後遺症」は成人後まで続くことも」)
ポイント②医師や専門家、支援機関に相談する
いじめの後遺症による精神的な変化には、医師や心理師による治療やカウンセリングが必要な場合があります。
社会不安障害やうつ病などの精神疾患は、治療が必要だからです。なるべく早く、精神科医やカウンセラーなどの専門家による適切な治療やケアを受けましょう。
医療機関では、薬物療法やカウンセリングを通じて、トラウマの克服や症状の改善を図ることができます。また、専門家に相談することで、自分の状態を客観的に理解し、回復への具体的な道筋が見えてくるかもしれません。
いじめの後遺症に悩む子どもに親ができる3つの対応
この章では、いじめの後遺症に悩む子どもに親ができる対応について解説します。
対応①まずは受け入れて、話をきく
子どもからいじめの後遺症で悩んでいることを打ち明けられたら、まずは子どもの気持ちを全面的に受け入れ、じっくりと話を聴くことが大切です。
その際、「なぜいじめられたの?」「どうして言い返さなかったの?」などの質問や非難は避けてください。子どもの話に真摯に耳を傾けましょう。
またこのとき、子どもの気持ちを否定したり、安易な励ましや解決策を提案したりするのはやめましょう。まずは子どもの苦しみに共感する姿勢を示すことが重要です。
そうすることで、子どもは自分の気持ちを理解してくれる人がいると実感でき、心の安定を取り戻す第一歩となります。
子どもの話を最後まで聴き、「よく話してくれたね」「あなたは悪くないよ」と伝えることで、子どもの心の支えになることができるのです。
対応②家庭を居心地の良い居場所にする
子どもが苦しんでいるとわかったら、家庭を子どもにとって安心できる居場所にしましょう。
いじめられている子どもは心に悩みを抱えて自信を失い、自分の存在価値を見失っています。学校や教室に居場所がなくても家だけは自分の居場所だと思えると、子どもが安心できるでしょう。
また、家族に受け入れられると、「自分は一人じゃない」「自分を必要としてくれる人がいる」ことに気づけます。
自分が1人ではないこと、周囲から必要とされていると感じることが、子どもにとって、回復への第一歩になるのです。
対応③必要に応じて専門家に相談する
精神的な病気・障害には、医師の治療が必要です。いじめの後遺症として精神に不調をきたしている場合には、一緒に病院で話を聞きましょう。
また、いじめや不登校に関する支援機関も設置されています。親御さんだけで利用できる支援機関もあるため、まずは相談してみてください。
子どもがいじめの後遺症に苦しんでいたら、親御さんも大きな不安を感じるはずです。必要に応じて、自分自身のためのカウンセリングを受けてください。
親や家庭が安定した状態にあることが、子どもの安心感にもつながるでしょう。
いじめの後遺症に悩んだ時の5つの相談先
この章では、いじめの後遺症に悩んだ時の相談先を紹介します。
相談先①学校のスクールカウンセラー・養護教諭
学校のスクールカウンセラーや養護教諭は、子どもの心理的なケアを行う専門家です。
スクールカウンセラーは心理の専門家として、いじめの後遺症に悩む子どもの気持ちに寄り添い、専門的な視点からアドバイスを提供します。
また養護教諭は、保健室という安心できる環境で子どもの心身の健康状態を把握し、日常的なケアを行うことができます。
いずれも学校内に常在し、子どもの学校生活を理解している立場にあるのが特徴です。相談内容の秘密は守られますので、子どもや保護者は安心して相談してみましょう。
相談先②教育センター
教育センターとは、各都道府県や市区町村が設置している教育相談の専門機関のことです。心理や教育の専門家が常駐し、いじめの後遺症に関する相談を無料で受け付けています。
電話相談だけでなく、面接相談も可能で、子どもの状況に応じて継続的なカウンセリングを受けることもできます。学校とは異なる第三者的な立場から、客観的なアドバイスや支援を提供してくれるのが特徴です。
相談先③子供のSOSの相談窓口
文部科学省が設置している子供のSOSの相談窓口とは、24時間365日無料で利用できる相談サービスのことです。いじめの後遺症に悩む子どもたちや保護者が、電話やSNS、メールを通じて気軽に相談することができます。
相談員は教育相談の専門家で、子どもの悩みに寄り添いながら一緒に解決策を考えてくれます。匿名での相談も可能なので、誰にも知られたくない悩みも安心して打ち明けることができます。
相談先④子供の人権110番
子どもの人権110番とは、法務省人権擁護局と全国の法務局・地方法務局が設置する子どもの人権問題に特化した相談窓口のことです。
いじめの後遺症に限らず、子どもの人権にかかわるあらゆる問題について、人権擁護の専門家が相談に応じます。
相談は無料で、プライバシーは厳重に守られます。電話での相談のほか、インターネットを通じた相談も可能です。
子どもだけでなく、保護者などの大人も利用できます。
相談先⑤チャイルドライン
チャイルドラインとは、18歳までの子どもなら誰でも利用できる、子どものための無料相談窓口のことです。電話やチャットを通じて、いじめの後遺症をはじめとするさまざまな悩みを相談することができます。
特徴的なのは、相談を受けるのが研修を受けたボランティアで、一緒に考える仲間として子どもの気持ちに寄り添ってくれることです。相談内容の秘密は必ず守られ、名前を言う必要もないため、安心して本音を話すことができます。
いじめとは?
この章では、いじめの定義や原因について解説します。
いじめの定義
いじめとは、学校や職場などの集団内で、特定の個人を肉体的・精神的に苦しめる行為のことです。(参考:三省堂『大辞林 第四版』)
具体的ないじめの考え方は歴史と共に変わってきましたが、文部科学省は、いじめを以下のように定義しています。(参考:文部科学省「いじめの定義の変遷」、Gov法令検索「いじめ防止対策推進法」、法務省「「いじめ」をなくすために」)
児童生徒等に対して、当該児童生徒等が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒等と一定の人的関係にある他の児童生徒等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒等が心身の苦痛を感じているもの
(参考:文部科学省「いじめの定義の変遷」)
受けた本人がいじめだと思えば、それはいじめです。「これくらい」「遊びのつもりだった」などという言葉に惑わされず、いじめに対する正しい認識が必要です。
いじめの定義や具体的な事例、認知する方法、対処法については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
いじめの原因
いじめの原因には、さまざまなケースが考えられます。
文部科学省は、いじめの原因として「不満やストレス」を挙げています。(参考:文部科学省「いじめ対策Q&A」)
なお、「いじめられた側に原因がある」という考え方は誤りです。原因はむしろ、加害者側にあります。
加害者の中には、何らかの不満やストレスのはけ口として相手を攻撃している人もいます。また、自分がいじめられるのを避けるためにいじめていることも珍しくありません。いじめをしているという認識がほとんどない子どももいます。
本当の意味でいじめの原因をなくし、解決へつなげるためには、加害者側に治療や支援が必要なケースも少なくないのです。(参考:読売新聞「うつ、ひきこもり、職場になじめず…「いじめの後遺症」は成人後まで続くことも」)
いじめの原因については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ~いじめの後遺症が長引くときは、専門家に相談しよう~
いじめの後遺症は、決して軽視できない深刻な問題です。
ひきこもりやうつ病やPTSDの発症など、さまざまなかたちで心と体に影響を及ぼし、成長してからも長く苦しむことがあります。しかし、適切なケアと支援があれば、必ず回復へ向かうはずです。
一人で抱え込まず、まずは家族や周囲の人に打ち明けることから始めましょう。そして、専門家に相談することが大切です。
周囲の人や専門家のサポートを受けながら、回復に向けて、焦らず進んでいきましょう。
Q&A よくある質問