こりずに光市の件

一昨日はaikouくんとヤクルトVS阪神戦をけって

▼「光市事件」弁護団に聞く 弁護団は何を主張・立証したのか
─ 報道された虚偽の事実と、報道されなかった真実 ─
http://www.jca.apc.org/hikarisijiken_houdou/3.15syuukai.pdf

・2008年3月15日(土) PM1:30〜PM5:30(1:15開場)
主婦会館 プラザエフ  
東京都千代田区六番町15番地
(JR四ツ谷駅麹町口前 徒歩1分 地下鉄南北線/丸の内線四ツ谷駅 徒歩3分)
http://www.plaza-f.or.jp/information/otoiawase/otoiawase.html

参加費(資料代含):1000円 
(会場の都合により先着120名とさせていただきます)
●主催:「光市事件」報道を検証する会(03-3586-5064 中山法律事務所気付)
http://www.jca.apc.org/hikarisijiken_houdou/

に行ってきました。(今枝弁護士のブログで知った。)

実に4時間超!! このテーマについて話を聞きました。 
( ´_ゝ`)オレラ ストイック

言ってた内容は全部ココ -光市事件Q&A(弁護団への疑問に答える)-に書いてあるんだけど。。みんな読んでないよねということでシンポを開いたのでしょう。個人的には、この事件を伝えるマスコミがあまりに終わっているので、こういう広報は、良心が痛むかも知れないけど、もっとやってほしい。(今回の記事読まなくてもいいから、このQ&Aは読んで)

ちなみにマスコミの反応

って共同だけですか。TBSはカメラまわしてたので、後日何らかの形でやるとは思うけれど、うーん、、会場に記者いっぱいいた気がするのになぁ。

 今回のシンポに行って良かった事は21(22)人の弁護団のうち、17人を直接見れたこと。百聞は一見にしかず。あーこういう人達が弁護やってんだなぁ、と朧気ながらわかりました。また、それぞれの参加動機が聞けたのも収穫。ところで、なぜ僕がこれほどこの件に関心を抱いている理由を改めて言っとくと「公正な裁判が行われていそうにないから」。基本的にこれ。

「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」 憲法31条
「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」 憲法32条

まず、大前提としてこれがあって、そこから司法の役割−−つまり、客観的立場から、真相を解明し、不平等・不公正がない形で量刑をしていく(罪刑法定主義)−−が発生する。刑の執行も制裁ではなく、社会復帰が第一。そういう法治国家に僕は住んでいる。

 だから「凶悪犯罪だから」「加害者は虫野郎だから」「被害者感情をいたずらにかき乱したくない」といった理由で、事実と異なるテキトーな裁判が行われていたりすると困る。今後、裁判員制度がはじまるから、その時のために「素人にも分かりやすい基準=二人殺したら死刑」をつくっときたい、といった思惑から、「真実」が歪められる裁判が行われていては困る。

 勿論、遺族のことを思うと、こういうことをしたくなくなる。想像することしかできないが、もし自分が相手の立場だったら、ネットで殺された家族の真相は○○なんじゃないか 等と論議されていること自体、極めて煩わしいし、迷惑な行為であろう。

 しかし、亡くなってしまった二人は、何をしても戻らない。そして、被告を弁護している弁護団は、真摯に活動していると(僕には)思われるのに、メディアの報道もあってか、世間での風当たりが極めて悪い。検察・裁判所も憶測かもしれないが、この事件を利用することによって、裁判員制度への指針をつくろうとしている気配がある。そういった事情がある時、遺族の心情が最重要だとし、加害者を守る弁護団はとにかく叩く、という態度は建設的ではないように思える。

 ということで、今回もこんな長々と書いてます。

 さて、ぼちぼち本題のシンポレポを書いてこうと思うのですが、17人の弁護士(話す内容について役割分担していて、一人10分前後の持ち時間だた)に加えて綿井健陽さんが語った内容全部を書くと、疲れちゃうので、いくつか省略します。わかりやすくするため発表順も少し変えます。

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まずわかりやすくするために、検察側の主張・裁判所が認定した「事実」・弁護側の主張の順に書いていきます。どれが「真実」に近いのかは、各自が判断してください。

検察のストーリー

 被告は事件当日の朝、仕事に行くフリをして友人の家に行き、昼までゲームをする。途中、友人が出かけたため、一端帰宅する。(行き先が被告の職場の近くにあるおもちゃ屋だったため、一緒に行けなかった。)自宅には義母がいて、義母には「自宅の近くの工事に来た」と言って一緒に昼食をとる。しかし「早く仕事に行きなさい」と義母に言われ、13時40分頃家を出る。友人とは15時にゲームセンターで待ち合わせていた。

 家を出てから3分ほどの所にある、駐輪場に行く間に性的欲求が高まったので、強姦をしようと決意した。そして、仕事のフリをしてアパートを一戸づつ10棟からまわり、美人の奥さんがいるか物色する。そして第7棟で被害者と会う。トイレに入るとでスプレー式洗浄剤(トイレマジックリン)が目に入ったので、これで目潰しをして、強姦しようと思いついた。

 被害者の目にスプレーをかけ、馬乗りになって首をしめた。親指を立て両手で全体重をかけて締めた。被害者が動かなくなり、その両手が床の上に落ち、まったく無抵抗の状態になったにもかかわらず、被告人は被害者を確実に死に至らしめるためなおも頸部を絞め続けて殺害した。「生き返られては困る」と思いガムテープを手、口、鼻に張り、姦淫した。

 子供が泣き続けたことにより、事件の発覚を恐れ、激昂して殺害を決意した。同児を頭上から頭部を下にして床に思い切りたたきつけ、両手で首を絞めた。しかし、細すぎて殺せなかったため、紐を首に2重に巻きつけ、その両端を力いっぱい引っ張って絞殺した。

 子供の遺体を天袋に隠し、奥さんの遺体を押入れに隠してペンチ、スプレー、財布を持って家を出た。

一審判決。LEXでみつからんかったから手打ちorz

(犯行に至る経緯)
一
被告人は、昭和 年 月 日山口県光市で出生し、同市内の小学校を卒業後、平成 年四月同市内の中学校に入学した。同中学校を卒業後、平成 年四月同市内の私立高校に入学し、平成 年三月同高校を卒業し、同年四月一日  株式会社に入社した。
 また被告人の家庭では、平成 年 月実母が自宅横の車庫で自殺し、その後、被告人の実父は、平成 年 月、フィリピン国籍を有する女性と再婚し、平成 年 月から被告人等と右義母は同居を始め、平成 年 月 日ころに本件犯行当時の住居地である山口県光市  アパート(以下、Dアパートという。)十一棟に転居し、平成 年 月 日に実父と右義母との間に異母弟が出生した。
 なお被告人は、前記高校入学後、家出や不登校が見られ、平成 年 月には同級生方へ侵入しゲーム機等を盗んだとして右高校から自宅謹慎処分を受けた。また、被告人は、中学三年生のころからセックスに強く興味を持つようになり、ビデオや雑誌を見て自慰行為にふけったり、友人とセックスの話をしたり、右義母の下着を自室に隠し持つなどしていた。そして、前記会社に就職後も、ゲームがしたかったこと等から平成 年 月 日以降欠勤を繰り返すようになった。
二
 被告人は同月十四日午前七時ころ、前記会社の作業服上下の上にパーカーとジーパンとジャンパーを着て、作業服の胸ポケットにカッターナイフを差し、作業ズボンの右ポケットの中に剣道のこての紐を入れ、会社に出勤するかのように装い、自宅を自転車に乗って出発し、午前八時三0分ころ友人の家に遊びに行った。同人宅でテレビゲームなどをして遊んだ後、同人の家を出て、しばらく自転車に乗って時間をつぶした後、帰宅することとしDアパート三棟東側階段入口の軒下に自転車を駐輪し、右作業服上下の上に着ていたパーカー等を脱いで午後一時ころ帰宅して昼食をとった。
 その後、自宅を出て右自転車を駐輪していた場所に向かう途中、「美人な奥さんと無理矢理でもセックスをしたい。」「作業服を着ていれば排水等の工事に来たと思って怪しまれないだろう。」と思い、セックスがしたくてたまらなくなった。そして、自転車の前籠に布テープを置いていたことを思い出し「これを使って奥さんを縛れば、抵抗できないだろう。」、「作業服の胸ポケットに差してあったカッターナイフを奥さんに見せてやれば、怖がって抵抗しないだろう。」と考え、自転車の前籠に置いてあった布テープを取りに行き、Dアパートを十棟から七棟にかけて順番に排水検査を装って呼び鈴を押して回り物色を始めた。すると、誰にも怪しまれなかったことから、「本当に強姦できるかも知れない。」と思うようになった。
 被告人は、午後二時二十分頃、Dアパート七棟41号室のE方(以下、「被害者ら方」という。)の呼び鈴を鳴らし、応対に出たFに対し「Bの者です。排水の検査に来ました。」というと、同女は、「どうぞ」と言って、被告人を被害者ら方内に入れた。被告人は、首尾よく室内にはいることができたことなどから、同女を強姦することを決意した。
 被告人は、被害者ら方に入ってから、検査の振りをするためにトイレに入ると、、検査の振りをしているところを見つからないように内側から鍵を掛け、検査にみせかけるため同女から借りたペンチをその握りの部分で水洗トイレのバルブを何回か叩き、トイレに置いてあったスプレー式洗浄剤を便器内に吹きかけた後、蛇口をひねって水を流したりするなどして同女を強姦する機会をうかがった。そして、被告人は、意を決し、スプレー式洗浄剤と布テープを持ってトイレをでたが、ちょうど廊下をGがはいはいしていた。そこで、被告人は、同児を抱き上げ、六畳間近くの床の上におろした。すると、右Fは同児を抱き上げるために、前屈みになったので、被告人は、右Fの背後から抱きついた。
(罪となるべき事実)
被告人は少年であるが
第一 平成11年四月十四日午後二時三十分ころ、山口県光市E方において、同人の妻F(当時23歳)を強姦しようと企て、同所居間にいた同女の背後から抱きつき、同女を仰向けに引き倒して馬乗りになるなどの暴行を加えたが、同女が大声を出して激しく抵抗したため、同女を殺害した上で姦淫の目的を遂げようと決意し、仰向けに倒れている同女に馬乗りになった状態でその頚部を両手で強く締め付け、よって、そのころ同所において、同女を窒息死させて殺害した上、強いて同女を姦淫し、

第二 同日午後3時ころ、前記本村洋方において、前記EF夫妻の長女G(当時生後11ヶ月)が激しく泣き続けたため、これを聞きつけた付近住民が同所に駆けつけるなどして第一の犯行が発覚することを恐れるとともに、泣きやまない同児に激昂して、同時の殺害を決意し、同所居間において、同児を床に叩きつけるなどした上、同児の首に所携の紐を巻き、その両端を強く引っ張って締め付け、よって、そのころ同所において、同児を窒息死させて殺害し

第三 第二記載の日時場所において、前記F管理の現金約三○○円及び地域振興券約六枚(額面合計約六000円)等在中の財布一個(物品時価合計約一万七七00円相当)を窃取したものである  (略)

弁護団のストーリー(シンポでは村上弁護人が語っていた)
 村上弁護人:少年犯罪は、未熟さにもっと注目すべき

この少年の場合、生い立ちの影響からして、自分の行動の結果、物事がどうなるかという予想能力が著しく劣っている。また、予期しない場面に出くわした時の対応能力も極めて低い。それらを踏まえて弁護団が描く事件像ショートver↓

 少年は仕事を休んだ。時間をもてあまし、帰宅したところ、義母に仕事に行くように言われる。その時退行状態になっていて、義母に抱きついている。それでも早く仕事に行けと言うので、作業服のまま家をでる。友人と待ち合わせていた時間は15時。それまで1時間20分ある。暇なのでアパートを訪ねていく。チャイムを鳴らし会社を名乗り、排水検査があるから、トイレで水を流すように言う。

 応対した人々は不審に思いながらも、トイレの水を流す。少年には、こういう事をしながら人と接し会うという気持ちがあった模様。この行為をてんてんとしていった後(検察官はこれを美人の奥さんを物色する行為だと言うが。)被害者宅へ行く。その時彼女は赤ちゃんを抱いていた。子供を寝かせるのに手一杯だと思われる時に、トイレの水を流せと、わけのわからないことを言われる。折しも被害者の家だけが二ヶ月前に台所と風呂場の排水工事をしていた。そこで勘違いが生じたのだろう。

 よくわからないから、あがってくれと、被告を自宅に上げ、トイレに向かわせる。彼は自分が、中に入るとはおよそ予想をしていなかった。しかし、そんなつもりはないと弁解する能力はない。トイレに入りつつ、予期せぬ出来事に混乱する。作業のつもりはなかったのに、作業しなければならない。追いつめられ、一度トイレを出る。そのまま家に帰れば良かったのに、帰らなかった。父親に怒られるかもしれない。とりあえず工具を借りれば、作業のふりができると考え、ペンチを借りに行く。借りた後、トイレに戻り、作業のふりをする。子供だけに精神的にストレスがかかる。一定時間ふりをした後、ペンチを返しに行く。

 作業が終わったと報告すると「ご苦労様」と優しい言葉をかけてくれた。その時、ふりの作業の重圧から解放され、同時に中一の時に自殺した母の姿を、被害者の女性にみた(というのが鑑定結果)ため、後ろから抱きつく。抵抗されることは、まったくの予想の範囲外。された時、大人だったら、素直に謝れるが、子供はできない。抵抗を抑える形がスリーパーホールドになった。(ボタンの跡がつく) 被害者がぐったりしたため、手を離した。、放心状態になっていると、気付いた彼女が腰のあたりにペンチで反撃をしてきた。その時、彼女の口を手で覆い、抵抗を封じようとした。その結果が右手逆手による押さえつけ。結果的に殺害してしまった。 (略)

※被害者を死後姦淫した理由、子供を殺してしまった理由も、弁護団は一定の整合性をもって述べているのですが、ブログに積極的に書ける内容(でたらめでひどいとかではなく)ではなく、また一部分だけ書き出しても誤解を招くこと必至なので、省略します。読みたい人はメールをくれるか、弁護団が配っている冊子を読んで下さい。

 この事件の特徴は、予期に反することばかりが起き、それに対応できない子供が結果的に重大なことをしてしまった ということ。(重大な少年犯罪は大抵それ)

  • 関わった理由

愛知で少年事件をやっていた。少年事件は往々にして未熟性という部分があまり考慮されず、大人の目で物事を見られてしまう。そうすると事実が歪められて、実態が表にでてこないという特徴がある。この事件もやらなければいけないかな、と思っていたら、足立安田両名から依頼があった。

事件の概要を掴めたところで、以下、シンポでの弁護団の発言−−いかにして上記の様な主張ができたのか−−を書いてきます。割と順番通り。

山崎弁護人:一審判決は客観的にみて明らかにオカシイ。主に強姦目的について

・被告が昼食後家をでた時間は13:43 ・物色行為のために二件まわった時点で13:52  
(これらの時間は動かない)この間9分。家から自転車を取りにいくまでの時間は2〜3分。

その三分間に、今までセックスもしたことのない子が
「ムラムラときた。セックスしたいな。強姦したい。どういう強姦をしようか。(制服を着ているから怪しまれない。カッターナイフで脅かせば大丈夫。自転車のカゴにはガムテープがあったから抵抗されないよう縛ろう。)やると決意したぞ。」と計画し、実行に映すのは相当大変なことじゃないか。初デートでいつラブホに誘うかを決意することすら、三分じゃ足りないだろう。通常そういうことはありえない。

もう一つ。強姦目的で襲ったりしたら、抵抗がおこるはず。爪に皮膚が入ったり、暴力行為の形跡が残るはず→残ってない。部屋の中も荒れた形跡はほとんどない。物も整然としている。襖が破れたりもしていない。通常の強姦が起きて抵抗があった状況とはまるで異なる。一端自白したら、客観的状況から明らかにおかしくても、中々ひっくりかえらないのが裁判所。日常茶飯事。

  • 事件に関わった理由

依頼されたから。

足立弁護人:捜査段階での自白は作られたものである。

 当初の調書は右手で首を絞めた。殺害してから姦淫した。だったが、翌日検察庁に行ってから、内容が一変した。両手で締め、姦淫目的で押し入り、殺害した。その後約2週間、弁護人が間に入らず、孤立無援の状態で捜査官の言われるがままの状態で取り調べが行われた。少年は誘導に屈しやすい。スプレーの有無についても、検察は捜査段階で痕跡がないことを知っていながら、でっちあげた。

  • 事件に関わった理由

事実を明らかにしたい。

新谷弁護人:法医学の観点から見ると、遺体の痕跡と、最高裁を含め裁判所が事実と認定していることは矛盾する。

論点→馬乗りになって、思いっきり首を両手で締めたor口をふさぐつもりの右手が滑りおちて圧迫したため死なせてしまったのか。蒼白帯(傷跡)を分析するに、明らかに両手で首を絞めたものではない。右手逆手で締めた可能性が高い。→殺すときにそんな方法をとるのか?→殺意の有無について。
→ないんじゃないか

  • 関わった理由

主任弁護人が最高裁弁論を欠席した際、受けた懲戒請求に対して、代理人を務めた。そして事実関係に問題があると思ったことが発端。(しかし最高裁は事実だと認める) また、量刑基準が異なっていることをアンフェアだと思った。→先月の最高裁判決を例に出し、裁判員制度をふまえて、量刑基準を簡略化(二人殺したら死刑)している感がある。

河井弁護人;検察側の鑑定人(石津教授)が述べていることは、可能性の羅列と机上の空論

(1) 被害者女性に対し、指が白くなるまで全体重をのせ両手で首をしめたとされるが、痕跡はない→石津:痕跡がないことは認めるが、様々な仮定を付け足した場合「痕跡が残らない可能性もありうる」→そのような仮定は調書にない。
(2) 蒼白帯が検察の主張と合致しない→石津:女性が首をふって抵抗した為、蒼白帯が合致しないのだろう→蒼白帯は死亡した時に、圧迫されていない限り残らない=法医学的にありえない。
(3)赤ちゃんを叩きつけた痕跡はない→石津:傷害が残る可能性は極めて高いが、残らないこともありうる→そんなこと言い出したらキリがない。
(4)赤ちゃんに対し手で首を絞めた痕跡はない→石津:痕跡が残らないことはありうる。→自白には、殺意をもって首を絞めたとあるのに、そんなことがありうるの。
(5)紐で首を絞めた時、何らかの傷が残るだろう→石津:均等に力が入ったため残らない→その場合も均等に痕跡が残るのでは?→石津:わからない

批判:お前等、そんな重箱の隅をつついて何なんだ?結局二人亡くなっていることに変わりはないんだぞ?下らないこと言っていて意味あるのか? にたいして
→ここは法治国家。人を裁く、しかも死刑にするか否かのギリギリの時に、間違った事実を前提に裁くことはまずいだろう。事実をきちんと解明することは大前提。そして最高裁の認定した事実は、間違っている。前提とする事実が間違えているのだから、判決は意味を失い、拘束力はなくなるのが道理。右逆手で首を絞める行為は定型的な殺害行為ではない。殺意について、もう一度確認しなければならない。赤ちゃんの首を紐で絞めた事実はない。叩きつけた事実もない。少なくとも確定的な殺意があって、なされたものではない。それは、死刑を回避するには十分な理由。

石塚弁護人:計画性はない

 犯罪に対する責任を問うのは、被害者の側からみるのではなく、行為者の側からみなければならない。行為者がどういう意志に基づき、どんな行動をしたか、に責任は発生する。逆からすると、殺してるんだから○○ということで、やっていないことまでエスカレートしてでてくる危険性がある。強姦殺人の時、通常は、生きている状態で性的欲求を果たそうとするが、本件は屍姦。被告にネクロフィリアの傾向はない。なぜそうなったのかをトータルで考えた時、最もうまく解かれたのは野田判定(配布冊子で読めます)だった。少年はまだらに成長している感がある。精神年齢は7,8歳、あるいは母親が死んだ時の12歳程度で止まっている。最近は、また成長しているが。「天網恢恢疎にして漏らさず」を知っていた。
 屍姦と母親の自殺を目の当たりにした過去とは結びつきがある。そういった事を考えると、当初から「強姦する」という計画性があったとはとても思えない。

  • 関わった理由

二審時の弁護人が、大学(石塚氏が勤めている)に「死刑になるかもしれないから、研究会をやってくれ」と相談に来た。当時の方針は、一審が無期だったから、二審も無期であれば、事実関係について事細かに争わず、遺族感情を沈めるために、被告に反省を促そう、というものだった。その後、二審でも無期がでたが、最高裁で争うにあたって、弁護人を仲介し、再び関わるようになった。

岩井弁護人:少年法は18歳未満だけでなく、18歳強でも、経歴・素質・環境・鑑別結果を踏まえて審議しなければならないと条文化されている。

少年鑑別所の鑑定結果に基づいて、私たちは弁護活動をしている。最高裁になって、主張が急転したわけではない。

  • 関わった理由

元アムネスティ職員。私の分かりやすい経歴で、弁護団がアンチ死刑集団に思われたりして、迷惑をかけたと思っている。安田弁護士との関わりから、事件の事実関係に疑問を抱いた。事実が違うのでは、責任もとれないし、反省・謝罪もすることができない。

本田弁護人:DVの側面にもっと目を向けてほしい。

少年事件にもかかわらず、情状証人が一人もでていない。被告の家族は父親が母親に対して頻繁に暴力をふるう家庭だった。小学校の入学式当日にも家庭内喧嘩が発生し、止めに行った少年がケガを負ったり、事件発生二日前にも父に包丁を突きつけられるなど、決して良かったといえる家庭環境ではない。実母は中1の時に自殺し、後妻ができた。平成11年4月が事件発生日。児童虐待防止法ができたのは平成12年4月。子どもの権利条約は平成元年に国連で採択、日本もその流れで、色々と動きがあり、12年にできている。検察や警察もそういった条約等を知ってた上で、取り締まりを行ったはずにも関わらず、まったく活かせていない。最高裁判決も家庭内事情をほとんど顧みていない

山田弁護人:本件は特異な事件ではない。

 国家が刑事裁判でむちゃくちゃやっているから、それには対抗しなければいけない。福岡での放火事件、鹿児島の事件、メディアは機能せず、地道な弁護活動が真相を解明している。もし戦前だったら法務大臣の懲戒権でクビにされていたと思う。
 本件は実情を知ることによって、決して特異なケースではないと考えるようになった。これは被告人一人の問題ではない。家庭内暴力が如何に子供の成長を阻害するのかということが本質。家庭の在り方、社会全体の歪みが象徴的に表れている。野田鑑定(姦淫により蘇らせようとしたことなど)は、家裁の鑑別結果に近く、特殊な意見ではない。家裁もまともな鑑別をしていたが、結果として刑事処分相当として送ったことが、糸がもつれる原因になった。

  • 関わった理由

足立弁護人に頼まれたため、差戻し審議から参加。当初は、マスコミのバッシングに驚き「しまった」と思ったが、今は弁護活動が真摯に行われていることを確信している。

岡田弁護人:被告人のミクロなエピソードをいくつか

高校入学時は150cm足らず。高校三年時に170cmを超えた。ぜんそく気味なため食は細い。
マンガが好き。拘留されてからよく読むようになった。聖書に対する理解が深い。ヨナ記等。将棋は三段。

控訴審での手紙について。なぜあんな手紙を書いたのかと聞くと、弁解はせず、あの時は未熟だった、と答えた。
基本的に会話する相手がいない状況で、友人から煽られる(お前のやったことはたいしたことない)と過剰適応してしまった。二人のやりとりは互いに引用しつつ、煽り合いながら書いてしまった結果、あのような内容になったのだろう。挑発にのってしまうという未熟さの限界があった。しかし、そのことだけに注目して、全ての流れを変えてしまっていいのだろうか。

  • 関わった理由

安田弁護士との関係。共に福岡県警を相手にしたことがある。その時は、銀行口座も調べられていて驚いた。弁護人は孤立した人を救わなければならないと思っている。

オワリ

綿井さんは、光市を実際に訪れ、事件当日の被告の行動を映像でもって追体験するドキュメンタリーを流していた。映像を見ることによって、文面では伝わらない空気感、事件の「リアリティ」が独特な形で伝わってきた。

聴講に四時間半、これ書くのに三時間半。はぁ。もう書くのは最後にしたいが、来月22日に最後の判決がでる。その時、なんか書くのかなぁ。

※追記でリンクはっとく。

山口県光市「母子殺害事件」 12月弁護側最終弁論後の被告弁護団記者会見 全3回
一般人の裁判員は犯罪者に厳しすぎる。弁護士と検察官の常識が通用しない:アルファルファモザイク
asahi.com:市民とプロになお隔たり 模擬評議で浮き彫り - 社会

裁判員制度の正体 (講談社現代新書)

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つぶせ!裁判員制度 (新潮新書)

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