木走日記

場末の時事評論

中国のジニ係数がとんでもない異常値な件

 社会の所得格差、不平等さを測る指標・インデックスとしてジニ係数が有名であります。

ジニ係数

ジニ係数(ジニけいすう、Gini coefficient, Gini's coefficient)とは、主に社会における所得分配の不平等さを測る指標。ローレンツ曲線をもとに、1936年、イタリアの統計学者コッラド・ジニによって考案された。所得分配の不平等さ以外にも、富の偏在性やエネルギー消費における不平等さなどに応用される。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%8B%E4%BF%82%E6%95%B0

 ジニ係数は0から1の範囲の値を取ります、0に近いほど平等で1に近いほど不平等、所得格差が顕著であることを示します。

 ちなみにOECD諸国では、日本が0.329、ドイツが0.295、アメリカが0.378などとなっております。 

社会実情データ図録 所得格差の国際比較(OECD諸国)
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4652.html

 ジニ係数にはカラクリがあります、日本のジニ係数0.329ですがこれは「直接税、社会保障給付金、現物支給」の再分配を考慮した所得のジニ係数でありまして、当初所得のジニ係数は当然ながら0.4を超えているのです。

■図1:ジニ係数の推移と社会保障と税による改善

・赤線は「直接税、社会保障給付金、現物支給」の再分配を考慮した所得のジニ係数
・青線は「社会保障給付金、現物支給」の再分配を考慮した所得のジニ係数
・緑線は当初所得のジニ係数
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Jpgini.png

 一般に社会騒乱多発の警戒ラインは、0.4と言われております。

 日本も社会保障と税による再分配で改善されていなければ社会騒乱レベルにあるわけです、所得格差の固定化が問題となりつつあるアメリカでは改善後のジニ係数が0.378ですので、0.4越えも時間の問題のレッドゾーンにあるわけです。

 ・・・

 さてここからはジニ係数の計算方法に踏み込みます。

 難しい数式は登場しませんのでご安心ください。

 以下にジニ係数の計算式とジニ係数の計算例(その1)を示します。

■図2:ジニ係数の計算式とジニ係数の計算例(その1)

 ご覧のとおり、150万、200万、300万の例ではジニ係数は0.23であります、最小所得と最大所得は2倍の差が有りますがこの例ではジニ係数はOECD諸国平均より低いですね。

 では、300万の所得の人を3000万として格差を拡大したジニ係数の計算例(その2)を示します。

■図3:ジニ係数の計算例(その2)

 ご覧のとおり、150万、200万、3000万の例ではジニ係数は0.85に跳ね上がります、もちろん現実にこんな高い値の国はないでしょうが、この例のような国があれば間違いなく社会騒乱が頻発し下手をすれば革命が起こりかねないことでしょう。

 ・・・

 さて社会保障と税による改善後のジニ係数が0.6という格差の意味について数式でしっかり検証しておきます。

 最終ジニ係数が0.6という異常値はおそらくごく一握りの人に富が偏在している状態のはずです。

 そこで標本数10人で各所得が9人は100万、一人だけがX万として、Xがいくらならばジニ係数が0.6という異常値を示すのか計算していきます。

 まず平均差ですが、これは次式でもとまります。

 平均差=(X−100)*18/90=(X−100)/5 ・・・式(1)

 次に平均値は次式となります。

 平均値=(X+900)/10 ・・・式(2)

 式(1)、式(2)より、ジニ係数は以下の式になります。

 ジニ係数=平均差/(平均値*2)=((X−100)/5)/((X+900)/10*2)・・・式(3)

 式(3)で示されるジニ係数が0.6に等しいですので次式が成立します。

 0.6=((X−100)/5)/((X+900)/10*2)・・・式(4)

 式(4)を解けばXが求まります。

 X = 1600

 最終ジニ係数が0.6という異常値は、10人の標本で9人が100万の所得のケースでなら最後の一人に1600万の所得が集中していることになります。

 すごい所得格差、不平等な社会なのです。

 ・・・

 11日付け日経新聞の地味な記事から。

 中国の所得格差、危険域 暴動頻発の背景に
ジニ係数、世界平均を大きく上回る
2012/12/11 2:18

 中国の西南財経大学(四川省)の調査によると、中国の所得格差が深刻になっている実態が明らかになった。1に近いほど所得格差が大きい「ジニ係数」は2010年で0.61となり、警戒ラインとされる0.4だけでなく、社会不安につながる危険ラインとされる0.6も突破。中国各地で地元政府に対する暴動が頻発する状況を裏付けた格好だ。

(後略)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM10079_Q2A211C1FF1000/

 これですね、ネットではまだあまり話題になっていませんがすごい内容の記事です。

 中国の西南財経大学(四川省)の調査によると、中国の最終ジニ係数が0.61となったという報道です。

 最終ジニ係数0.61ということは、所得不平等が顕著で一部の人に富が極端に集中しているわけです、でなければこのような数値は出てきません。

 普通の国ならばもうこれは社会騒乱必至の数値です。

 異常値といっていいでしょう。

 実は中国では改革解放直後の1980年代初めは0.2程度だったのが2000年には0.41まで上昇してしまい、その後は中国政府はジニ係数を発表しなくなってしまい、「格差を隠している」との批判を受けていたのであります。

 うむ、この異常なジニ係数では発表したくても出来なかったのでしょうね、どの資本主義国よりも格差拡大しているとんだ「共産主義国」なのであります。

 いやはやしかし、かなり危険な数字です。

 いよいよ中国から目が離せなくなってきました。



(木走まさみず)