映画「土を喰らう十二ヵ月」

施設の映画会で2022年の日本映画「土を喰らう十二ヵ月」の知らせがあり参加してきた。

ネタバレにならない範囲で簡単に書くと、物語は初老に差し掛かった作家(沢田研二)が信州の山裾で、時折訪れる年下の恋人で編集者(松たか子)や、愛犬と暮らし、村人や亡くなった妻の母親、弟夫婦等との付き合いを交え、土から得られた野菜や山菜の恵みを調理(土を喰らう)して生きる姿が描かれる。

冬から始まり冬で終わる十二ヵ月だが、信州の季節の移り変わりに合わせ、雨水(うすい)、啓蟄(けいちつ)、清明(せいめい)、穀雨(こくう)などの二十四節気が字幕で説明され観る者に季節の変化をより感じさせることに繋がっている。

今まで二十四節気とは無縁の生活を送ってきたが、最近俳句を始め、多少このような季節の移り変わりにも目がいくようになり、改めて農業や自然に関係する「節気」の言葉の意味合いを感じている。

出演者のなかでは、今年亡くなられた奈良岡朋子さんが主人公の亡き妻の母親役を演じていて、脇役ながらそれらしい毅然とした存在感を放ってとても良かった気がしている。

映画のなかで主人公が子供の頃「口べらしのために禅寺に小僧に出され、そこで精進料理を和尚さんに教わった」と話すくだりがあり、これは作家・水上勉さんがモデルではないかと思い始め、観終わって直ぐ調べてみるとやはり映画は水上勉さんのエッセイ「土を喰う日々ーわが精進十二ヵ月ー」を原案にしていることがわかりとても嬉しい出会いだった。

また誠に遅まきながら、この時点でようやく主人公を色々な人が「ツトムさん」と呼んでいた理由に気付いた次第である。

また映画のなかで禅寺の精進料理のことを書いた、道元著「典座教訓(てんぞきょうくん)」のことが出てきたが、私も2020年1月1日のこのブログ「禅寺の食事担当・典座(てんぞ)」のなかでこの事に触れたことがある。

この年齢になってこそ意味を感じることの出来る映画のような気がする。

誠に余談ながら、水上勉さん原作で三國連太郎、左幸子さんが主演された「飢餓海峡」は今も記憶に残るいい映画だった。

🔘今日の一句

 

杣屋(そまや)には物書きひとり雪積もる

 

🔘施設介護棟の庭、小菊