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地球に2か月間寄り添ったミニムーンは、やはり本物の月のかけらだった

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(著) (編集)

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Image by NASA /JPL-Caltech& Pixabay

 2024年の9月から11月まで、地球には2つの月が存在したことは以前お伝えしたかと思う。その正体は「2024 PT5」と呼ばれる小惑星だが、すでに月が起源である説も浮上していた。

 そしてNASAの最新研究によると、やはりこのミニムーンは、本当に月の一部であることがわかったそうだ。大規模な衝突によって数千年前に月の表面から分離したという。

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 2024 PT5の光の特性を改めて分析し、太陽光に対する振る舞いまで調べた結果、やはり月起源説は正しいだろうことが裏付けられたそうだ。

地球に寄り添ったミニムーンの正体を探れ!

 2024 PT5が発見されたのは、2024年8月7日のことだ。スクールバスほどの幅で長さ約10mの天体が、9月29日から11月25日まで、約2ヶ月の間、地球に地球の周りを周回し、注目を集めた。

 このように一時的に地球の重力の捕まり、1年に満たない短期間だけ地球の衛星になる天体を「ミニムーン」という。

 ミニムーンは、恒久的に地球を公転するわけではなく、一定期間後に軌道を離れて再び宇宙空間へと戻っていく特徴がある。

 注目されたと言っても、小さな天体であるために、地上から肉眼で2024 PT5を眺められたわけではない。

 だが望遠鏡による観測では、その光が月の特徴とよく似ており、本当に月の一部だったのではないかと推測する天文学者もいた。天体に隕石が衝突すると、その破片が弾き飛ばされることがあるからだ。

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2024 PT5のコースを示したもの。一時的に地球の重力に捕まるが、そのまま太陽の周回コースに戻っていく/NASA/JPL-Caltech

光と鉱物の特徴が月と一致

 今回、米国ローウェル天文台のテディ・カレタ氏をはじめとする天文学者チームによって、2024 PT5が月起源であることが、改めて裏付けられた。

 その証拠は、まずミニムーンの光の特徴だ。

 研究チームは、、アリゾナ州にある「ローウェル・ディスカバリー望遠鏡」と、ハワイの「NASA赤外線望遠鏡施設( IRTF)」を使って詳細な観測を行い、地球に落下した隕石や人工的に作られた物質のデータと比較した。

 その結果、2024 PT5と最も近い特徴を示したのは、アポロ14号が持ち帰った月の高地(Lunar Highlands)の岩石だった。

 決定的だったのは、その成分がシリケート鉱物(ケイ酸塩鉱物)に富んでいたことだ。これは一般的な小惑星には見られないが、月の岩石には含まれているという。

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2024 PT5 が太陽系から去る前の写真 (Image credit: Two-Meter Twin Telescope / Light Bridges / Instituto de Astrofísica de Canarias

宇宙ゴミとも一致せず月の一部であることを確認

 地球周辺には、過去の宇宙ミッションで打ち上げられたロケットの残骸や、その他の宇宙ゴミが漂っている。

 そこで研究チームは、2024 PT5が人工物ではなく本物の天体であることを証明するために、太陽光からの放射圧による影響を調べた。

 宇宙を漂う物体に光子が当たれば、その圧力でわずかに速度が変化する。もしもその物体が、人工物ならば、まるで風に揺れる空き缶のように動く。だが天然の小惑星はずっと密度が高いため、それほど影響されない。

 NASAのジェット推進研究所(JPL)のオスカー・フエンテス=ムニョス博士によると、「人工物は軽量であるため、太陽光の圧力によって大きく影響を受ける。一方で、小惑星のような天然の岩石ははるかに密度が高く、影響を受けにくい」と説明している。

 この分析により、2024 PT5が人工の宇宙ゴミではなく、自然に存在する天体であることが確定した。

 こうしたことから、2024 PT5はもともと月の一部だったが、月面に小惑星などが衝突したことで弾け飛んだ破片だろうと、研究チームは結論づけている。

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ミニムーン、2024 PT5 の概念図 NASA /JPL-Caltech

 なお月起源と考えられる小惑星は、2024 PT5が初めてではない。

 2016年に発見された「カモオアレワ小惑星(Kamo’oalewa)」は、地球に似た軌道で太陽を周回しており、もともと月の一部で、月の裏側にあるクレーターから飛び出したと考えられている

 さらに、研究チームは、現在知られている地球近傍小惑星のうち少なくとも16個が月由来である可能性があると指摘している。

 もしこの仮説が正しければ、月から飛び出した小惑星の数は私たちが考えているよりもはるかに多いかもしれない。

 月から飛び出した天体がどれくらい存在するのかを知ることで、月の表面や内部の構造、さらには小惑星の衝突頻度についても理解が深まるだろう。

 カレタ博士は「1つの例なら偶然かもしれないが、2つ見つかれば、それが単なる例外ではなく、まだ発見されていない多数の仲間が存在する可能性がある」とNASAのブログ述べている。

 「これは小惑星の研究者が語る月の物語です」と。

 この研究は『Astrophysical Journal Letters』(2025年1月14日付)に掲載された。

References: Study Finds Earth’s Small Asteroid Visitor Likely Chunk of Moon Rock | NASA Jet Propulsion Laboratory (JPL)

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。

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この記事へのコメント 6件

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  1. 数千年前の大規模な衝突って…
    下手すればその隕石は地球に落ちて来てたって事か
    月様様だな
    地球にも大小数百数千のミニムーンが降り注いだんだろうし
    当時の人々はこの世の終わりみたいな天体ショーを目の当たりにしたのかね

  2. ミニムーンのてっぺんで
    飛び跳ねているのは
    ムーミンじゃないか!

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