SSDの選び方
SSDは、HDDと同じくデータを保存しておくための「ストレージ」(外部記憶装置)です。記録媒体に「NANDフラッシュメモリー」を採用しており、HDDよりもデータの読み書きが速いのが特徴です。ここでは、SSDを選ぶときに知っておきたいポイントから機能やスペックの確認方法、主なメーカーまでを紹介。しっかりチェックして、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
2023/6/9 更新
SSDは、HDDの代替デバイスとして2004年頃に登場しました。記録媒体に、半導体(電気を通しやすい物質と、まったく通さない物質の中間にある物質)を用いて電子回路に電気的なデータの読み書きを行う「NANDフラッシュメモリー」を採用しており、モーターや磁気ディスクを搭載したHDDと比較して「動作音がしない」「データ転送速度が高速」な点が大きなメリットです。デメリットとしては、HDDよりも「容量が少ない」「容量単価が高い」といった面が挙げられますが、年々差は縮まってきています。
またSSDには、HDDと同様に「内蔵」タイプと「外付け」タイプという2種類の設置タイプがあります。「内蔵」タイプはパソコン内のドライブベイに搭載する設置方法で、OSの起動がSSDから実行できるため、動作が快適になります。ただし、パソコンによって搭載できるSSDが異なるので、購入前にしっかりチェックしましょう。
いっぽう「外付け」タイプは、パソコンのUSBポートに接続するタイプです。外付けHDDよりも軽量・小型で衝撃に強いので、大量のデータを持ち運ぶのに適しています。
SSDの主なメリット・デメリット
内蔵タイプのSSDを選ぶ際、最初にチェックしたいのが「規格サイズ」と「接続インターフェイス」です。「規格サイズ」とはSSDのサイズやレイアウトを定めた規格のことで、現在の主流は「2.5インチ」と「M.2」(エムドットツー)の2種類です。いっぽう「接続インターフェイス」はSSDとパソコンを接続するための規格のことで、現在は主に「Serial ATA 6Gb/s」と「PCI-Express」の2種類が採用されています。せっかくSSDを購入したのに、「規格サイズが合わなくて搭載できない」「接続インターフェイスが異なるせいで接続できない」という事態を避けるためにも、しっかり確認しておきましょう。
SSDの規格サイズは、パソコンのドライブベイに搭載する「2.5インチ」と、マザーボード上のM.2スロットに搭載する「M.2」の2種類が主流です。パソコンに搭載されている内蔵HDDと換装する場合は、同じ規格サイズの製品を選べばOKです。規格サイズがわからなければ、パソコンの説明書やカタログなどで確認しましょう。
一般的なノートパソコンに採用されている規格で、SSDといえばこのサイズを思い浮かべる人も多いでしょう。製品ラインアップも豊富で、デスクトップパソコンの3.5インチベイに搭載するためのマウンタや、外付け用ケースが付属している製品なども販売されています。接続インターフェイスは「Serial ATA 6Gb/s」のほか、エンタープライズ向けにより高速な「PCI-Express Gen3」を採用した製品も販売されています。
ちょっと古いパソコンには、旧規格のHDDやSSDが使われていることも
古めのノートパソコンの場合、「1.8インチ」や「mSATA」という規格サイズのHDDやSSDが搭載されている場合があります。どちらも上で紹介している「2.5インチ」や「M.2」とは互換性がないため、購入前にパソコンの説明書で搭載されているHDDやSSDの規格を確認しておきましょう。なお、「1.8インチ」と「mSATA」はどちらも旧規格のため、販売されている製品も少なめ。思い切って新しいノートパソコンに買い替えてしまうのもいいかもしれません。
「接続インターフェイス」とは、SSDとパソコンを接続する規格のことです。パソコン側とSSD側の接続インターフェイスが異なると、せっかく買ったSSDが接続できなかったり、本来の性能を発揮できなかったりする場合があるので注意しましょう。ここでは、現在SSDに採用されている主な接続インターフェイスである「Serial ATA 6Gb/s」と「PCI-Express」について解説します。
転送速度が最大6Gbp/sの規格で、「SATA 3.0」とも呼ばれます。現在販売されているSSDの中では最も多く採用されている接続インターフェイスで、2.5インチ SSDのほか、M.2 SSDの一部モデルにも採用されています。
「PCI Express」の第3世代規格です。通信プロトコルにPCI Express接続のSSDに最適化した「NVMe」を採用しており、最大データ転送速度は32Gb/s。M.2 SSDのほか、エンタープライズ向けの2.5インチ SSDにも採用されています。
「PCI Express」の第4世代規格です。「PCI-Express Gen3」と同じく通信プロトコルに「NVMe」を採用しており、最大データ転送速度は64Gb/s。主にハイエンド向けのM.2 SSDに採用されています。
M.2 SSDの購入前に確認したい3つのポイント
データ転送速度の速さやコンパクトさで近年注目されているM.2 SSDですが、パソコンのマザーボードやCPUによって搭載できる製品が異なります。ここでは、M.2 SSDを購入する際に、知っておきたいポイントを3つに分けて紹介。せっかく購入したのに、「サイズが合わなくて搭載できない」「十分な性能が発揮できない」といった事態を防ぐためにも、しっかりチェックしておきましょう。
1. M.2スロットの対応基板サイズを確認
M.2 SSDを選ぶときは、まずマザーボードのM.2スロットの対応する基板サイズと接続インターフェイスを確認しましょう。M.2 SSDの基板サイズとマザーボード上のM.2スロットが異なる場合は物理的に搭載することができません(一部のマザーボードは、スロットの長さを調整できる機能を備えています)。M.2 SSDの場合は、「Type2280」サイズが一般的です。
2. M.2スロットの接続インターフェイスを確認
マザーボードのM.2スロットには、「Serial ATA 6Gb/s接続のM.2 SSDのみ対応するスロット」、「PCI-Express接続のM.2 SSDにのみ対応するスロット」、「Serial ATA 6Gb/s接続とPCI-Express接続の両方のM.2 SSDに対応するスロット」が存在します。M.2スロットは、マザーボードごとに対応する接続インターフェイスや最大データ転送速度が異なるため、事前にチェックしておきましょう。
3. 「PCI-Express Gen4」接続のM.2 SSDは、パソコン側が対応しているかを確認
「PCI-Express Gen4」接続のM.2 SSDの場合、CPUとマザーボードの両方が「PCI-Express Gen4」に対応してないと、本来の性能を発揮することができません。たとえば「Intel Core i」シリーズの場合、現行の第11世代CPU(PCI-Express Gen4対応)とZ590マザーボード(PCI-Express Gen4対応)を組み合わせたときの最大データ転送速度は64Gb/sですが、第10世代CPU(PCI-Express Gen3対応)とZ590マザーボード(PCI-Express Gen4対応)を組み合わせたときの最大データ転送は「PCI-Express Gen3」接続のM.2 SSDと同じ32Gb/sとなります。「PCI-Express Gen4」接続のM.2 SSDを購入する際は、CPUとマザーボードのスペックも確認しておきましょう。
SSDの規格サイズと接続インターフェイスをしっかり確認したら、容量やデータ転送速度、設置タイプなどをチェックして、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
HDDと比較すると容量単価が高いイメージのSSDですが、年々その差は縮まってきています。2021年現在は、容量500GB〜2TB(2000GB)前後のモデルが主流ですが、SSDにOSだけをインストールするなら容量は256GB程度で十分で、HDDの代わりに使用するなら500GB以上は欲しいところです。自分の用途に応じた容量の製品を選びましょう。
容量で製品を探す
SSDはパソコンに搭載する「内蔵」タイプのほか、持ち運ぶことができる「外付け」タイプも販売されており、HDDに比べて軽量で耐衝撃性が高いというSSDのメリットを生かすことができます。さらに、大容量の高速SSDを搭載したプロ仕様の「据置」タイプや、内蔵タイプに外付けケースをセットにした「内蔵/外付け」タイプもラインアップされています。
設置タイプで製品を探す
外付けSSDを選ぶときは、接続インターフェイスをチェック
外付けSSDの接続インターフェイスとして採用されている「USB」の最大データ転送速度は、規格によって5Gb/s(USB 3.0接続時)〜20Gb/s(USB 3.2 Gen 2x2接続時)と幅があります。USB接続の外付けSSDを購入する際は、パソコンのUSBポートのコネクタ形状や、どのUSB規格に対応しているのかを確認しておきましょう。
また、一部の外付けSSDに採用されている「Thunderbolt/USB」は、IntelがAppleと協力して開発した規格で、現在は第3世代の「Thunderbolt 3」となっています。コネクタ形状はUSB Type-Cと同じですが、最大データ転送速度は40Gb/sと高速です。お使いのパソコンが「Thunderbolt 3」に対応している場合は、こちらを選択するとより快適に利用できます。
SSDのパフォーマンス(読込速度、書込速度)は、接続インターフェイスや容量によって変わってきます。たとえば、2021年現在のメインストリームである容量512GB〜2TBのSSDの場合、「Serial ATA 6Gb/s」接続の読込速度が約500MB/s〜600MB/s、書込速度は約400MB/s〜700MB/s、「PCI-Express Gen3」接続の読込速度は約1400MB/s〜3500MB/s、書込速度は約400MB/s〜3000MB/s、「PCI-Express Gen4」接続の読込速度は約3800MB/s〜7000MB/s、書込速度は約2500MB/s〜5500MB/sとなっています。高速なほど快適ですが、そのぶん熱を持ちやすいというデメリットもあります。
読込速度で製品を探す
書込速度で製品を探す
ここでは、SSDを選ぶ際に知っておくと役立つスペックについて個別に解説。ぜひチェックして、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
SSDには、1つの記録素子に1ビットのデータを書き込む「SLC」(Single Level Cell)、2ビットのデータを書き込む「MLC」(Multi Level Cell)、3ビットのデータを書き込む「TLC」(Triple Level Cell)と4ビットのデータを書き込む「QLC」(Quad Level Cell)の4種類があります。1素子に格納できるデータが増えるほど容量単価が低くなって低価格化できますが、耐久性が下がります。なお、現在は、3次元構造の「3D NAND」を採用した製品が主流です。「3D NAND」は、記録素子を縦方向に積層化することにより、従来の平面型NANDよりも密度が向上。そのため、コストを抑えつつ大容量化でき、省電力にも優れているといったメリットがあります。
記録素子タイプで製品を探す
SSDには、製品仕様に「MTBF」や「TBW」、「DWPD」といった耐久性をあらわす項目が記載されていることがあります。いずれの項目も耐久性の目安を示す数値で、SSDの寿命や壊れやすさをあらわすものではありません。あくまで参考程度に考えておくといいでしょう。
「Mean Time Between Failures」(平均故障間隔)の略で、故障するまでの平均的な間隔をあらわしています。単位は時間で、値は「動作時間の合計÷故障発生数」で求めます。なお、「MTBF」の時間が長いほど信頼性が高く壊れにくいということであり、SSDの寿命をあらわすものではない点には注意が必要です。
MTBF(平均故障間隔)で製品を探す
「Total Byte Written」(最大総書き込みバイト数)の略で、SSDに書き込みできる上限サイズのことです。単位はTB(テラバイト)。SSDに搭載されているNANDフラッシュメモリーには、構造上「書き込める量に上限」が存在します。たとえば、SSD(容量1TB)の「TBW」が600TBの場合、「SSDの容量の600倍にあたるデータを書き込むと、それ以上書き込むことができなくなってしまう」ということになります。ただし、「TBW」の値はワークロード(使い方)に大きく依存するため、「TBW」の上限を迎えたからといって必ずしも書き込むことができなくなるわけではありません。通常モデルと高耐久モデルの違いなど、製品の特徴を知るための参考にするといいでしょう。
TBW(最大総書き込みバイト数)で製品を探す
「Drive Writes Per Day」(1日あたりのドライブ書き込み数)の略で、製品の動作保証期間内においてユーザーが1日にドライブに書き込むことのできる回数(耐久性)のことです。値は(SSDのTBW(単位:TB)×1000)÷(365日×(保証)年数×容量(単位:GB))で求めます。たとえば、5年保証のSSD(容量1TB)の「TBW」が600TBの場合、(600TB×1000)÷(365日×5×1000GB)=0.32(320GB)となります。「DWPD」の数値が大きければ大きいほど書き換えの耐性に優れていることになりますが、保証期間が長くなるほど「DWPD」は小さくなる点は留意しておきましょう。
DWPD(1日あたりのドライブ書き込み数)で製品を探す
「Non-Volatile Memory Express」の略称で、SSDやフラッシュストレージでの通信に最適化したPCI-Express接続向けの通信プロトコル(通信規格)です。現在は「PCI-Express Gen3/4」接続のSSDに採用されています。Serial ATA接続のHDDに最適化されている通信プロトコルである「AHCI」の転送速度の理論値は6Gb/sですが、「NVMe」のデータ転送速度の理論値は32Gb/s(PCI-Express Gen3接続時)〜64Gb/s(PCI-Express Gen4接続時)と、約5倍〜10倍の速度を実現しています。
アメリカ・アイダホ州に本社を置く、半導体メーカー・マイクロン テクノロジーのエンドユーザー向けブランドです。自社製の3D TLC NANDフラッシュと独自のカスタムファームウェアで強化したSilicon Motion社製のSSDコントローラを採用した2.5インチ SSD「MX500」シリーズや、手頃な価格ながら高パフォーマンスと大容量を実現したM.2 SSD「P」シリーズなど、幅広い製品がラインアップされています。
SDカードやUSBメモリーで有名な、アメリカ・カリフォルニア州のフラッシュメモリーメーカーです。2016年にWESTERN DIGITAL傘下となり、現在はSANDISKブランドのSDカードやUSBメモリー、SSDなどのフラッシュメモリー製品を販売しています。定番の2.5インチ SSDやM.2 SSDのほか、ポータブルSSDにも力を入れており、こちらも人気を集めています。
アメリカ・カリフォルニア州のストレージメーカーです。同社のSSDはユーザーのニーズに合わせて、最大転送速度7000MB/sを実現したハイパフォーマンスPC向けの「WD Black NVMe SSD」、ハイエンドパフォーマンス向けの「WD Blue」、エントリー向けの「WD Green」、NASシステム向け「WD Red」の4種類のラインアップが用意されています。
韓国の総合家電・電子部品・電子製品メーカーです。独自技術の「3D V-NAND」によって、大容量化と高速化を両立。さらに、データ移行ソフトやドライブの健康状態を監視する管理ソフトなど、付属のユーティリティソフトも充実しています。ラインアップも、ライトユーザー向けのエントリーモデル「QVO」、一般ユーザー向けのミドルレンジモデル「EVO」、プロ向けのハイエンドモデル「Pro」の3種類が用意されています。
手頃な価格で高性能なSDカードやUSBメモリー、SSDなどを販売している、台湾のフラッシュメモリーメーカーです。同社のSSDは製品ラインアップの豊富さが特徴で、2.5インチ SSDからポータブルSSD、mSATA SSDはもちろん、M.2 SSDでは一般的なサイズとなる「Type2280」以外にも、「Type2242」や「Type2260」といったサイズの製品も展開しています。
コストパフォーマンスに優れたSDカードやUSBメモリー、SSDなどを販売する、台湾のメモリーメーカーです。SSDは、2.5インチSSDがライトユーザー向けの「Ultimate SU650」と一般ユーザー向けの「Ultimate SU750」、M.2 SSDはPCI-Express Gen3接続の「SWORDFISH」とPCI-Express Gen4接続の「FALCON」の4シリーズを展開しています。
SSDは、空き容量が不足すると速度の低下を引き起こします。
もし空き容量が少ないようなら、OS以外のアプリや画像・動画などのデータファイルを別のSSDやHDDなどに移動させるといいでしょう。また、PCにメモリーが十分に搭載されている場合、SSDやHDDなどのストレージをメモリーとして利用するWindowsの「仮想メモリ」機能の設定を無効にすることで、SSDの容量を開放することができます。
「プチフリ」(プチフリーズ)と呼ばれる現象です。
「プチフリ」の原因としては、SSDに搭載されているコントローラや、Windowsの省電力機能「LPM」(Link Power Management)が挙げられます。コントローラに起因する「プチフリ」は、少し古いSSDに搭載されていた一部のコントローラが原因といわれており、現在販売されているSSDには改良された新しいコントローラが搭載されているため、ほぼ解消されています。いっぽう「LPM」に起因する「プチフリ」は、システムが求めていないタイミングでSSDが省電力化を図った際に「LPM」が誤認識し、電力をシャットアウトして動作を停止してしまうのが原因です。こちらは、レジストリから「AHCI Link Power Management」を変更して電源オプションの設定を変えることで解消することができます。自分でレジストリを更新する自信のない方は、SSDの設定を最適化するアプリを使用するといいでしょう。
IOPS
「Input/output operations per second」(入出力操作毎秒)の略で、データを1秒あたりにどれだけ読み書きできるかをあらわす指標です。HDDは約100〜300IOPSですが、Serial ATA接続のSSDでは約1万〜10万IOPS、「PCI Express」接続のM.2 SSDでは、約10万〜100万IOPSという速度を実現しています。
PCI-Express
「Peripheral Component Interconnect Express」の略で、拡張バス/スロットの接続規格である「PCI」の後継規格。「PCIe」とも呼ばれます。広帯域を必要とする高速なCPUやハイエンドビデオカード、SSDなど、「PCI」ではサポートしきれなかった大容量データや高速転送に対応しており、現在は主に第3世代の「PCI Express Gen3」と第4世代の「PCI Express Gen4」が採用されています。