メモリーの選び方
「パソコンのメモリーを増設したいけど、どうやって選べばいいの?」「スペックの見方がわからない」など、メモリー選びの際に浮かぶ疑問などを解決できるのが選び方ガイドです。メモリー選びに必要な基礎知識や選び方のポイント、用語解説をしっかりチェックして、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
2023/11/8 更新
目次
メモリーは、CPUが実行するプログラムやデータを一時的に記憶するためのパーツです。搭載するメモリー容量がアプリケーションやゲームなどの動作速度に影響してくるため、用途に合わせたメモリー選びが重要です。ここでは、メモリーを選ぶときに知っておきたいポイントから機能やスペックの確認方法、主なメーカーまでを紹介。しっかりチェックして、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
メモリーを選ぶ際、最初にチェックしたいのが「メモリインターフェイス」と「メモリ規格」です。「メモリインターフェイス」とはメモリーの形状のことで、主にデスクトップパソコン用の「DIMM」と、ノートパソコン用の「S.O.DIMM」の2種類が採用されています。
いっぽう「メモリ規格」は、メモリーの世代と動作周波数をあらわすもので、現在は第4世代となる「DDR4 SDRAM」が主流です。なお「メモリ規格」は世代ごとに接続端子のピン数が異なるため、たとえば「DDR4 SDRAM」対応のメモリースロットに第2世代の「DDR2 SDRAM」や第3世代の「DDR3 SDRAM」を装着することはできません。
「メモリー選びって難しいなあ…」という方は、まずは下で紹介しているポイントをおさえておきましょう。
おさえておきたい! メモリーの「インターフェイス」と「規格」のポイント
「メモリインターフェイス」は、デスクトップパソコン用の「DIMM」と、ノートパソコン用の「S.O.DIMM」の2種類が主流です。「DIMM」と「S.O.DIMMは」形状が異なるため、互換性はありません。一体型パソコンの中には、省スペース化のために「S.O.DIMM」を採用しているモデルもあるため、メモリーの増設を検討している方は、購入前に説明書などで確認しておくといいでしょう。
メモリーの規格である「DDR」とは、「Double Data Rate」の略。メモリーの性能はパソコンの進化にあわせて向上しており、現在は「DDR4 SDRAM」が主流です。メモリーのスペックに表記されている「DDR」の横の数字がDDR規格の世代、ハイフンに続く数字は動作周波数をあらわしており、大きいほどデータ転送速度が速くなります。
たとえば、「DDR4-2400」なら動作周波数2400MHzの「DDR4 SDRAM」、「DDR3-2133」なら動作周波数2133MHzの「DDR3 SDRAM」ということになります。動作周波数の速いメモリーのほうが高速ですが、メモリーのデータ転送速度はCPUやビデオカードの性能に大きく依存するため、一般的な用途では体感できるほどの差はありません。まずはパソコンのメモリースロットとメモリーの世代「DDR○」の○部分が合っているかを確認すればOKです。
なお、DDR規格は世代ごとに形状(ピン数)や切り欠きの位置が異なるため、たとえば「DDR4 SDRAM」用のメモリースロットに「DDR3 SDRAM」や「DDR2 SDRAM」を装着することはできません。購入前にパソコンやマザーボードの説明書などでメモリースロットの仕様を確認しておきましょう。また、メモリースロットに空きがない場合は、容量が大きいメモリーに付け替えることになります。
おさえておきたい! 「メモリー規格」のポイント
一部のパソコンは、メモリーの増設や交換ができない場合も
ノートパソコンの中には、「メモリーがマザーボードに組み込まれており、増設や交換ができるスロットがない」、「パソコンの内部構造が複雑なため、ユーザーによるメモリーの増設・交換を推奨していない」といった理由で、メモリーの増設や交換ができないモデルがあります。ノートパソコンのメモリー増設や交換を検討している方は、購入前に説明書などで確認しておくといいでしょう。
また、Appleのノートパソコン「MacBook」シリーズの現行モデルは、直販サイトでの購入時にのみメモリーの増設が可能です。あとから増設することはできないので、自分の用途に必要なメモリー容量をしっかり検討しましょう。
「メモリインターフェイス」と「メモリ規格」をしっかり確認したら、次に自分の用途にピッタリな容量をチェック! また、メモリースロットに2スロット以上空きがある場合は、同規格・同容量のメモリーを2枚1組で使用してデータ処理を高速化する「デュアルチャネル」構成にしてみるのもいいでしょう。
必要なメモリーの容量は、パソコンで行う作業によって異なります。WordやExcelといったオフィスソフトでの作業や、ネットサーフィンなどの比較的負荷が小さい作業が中心なら8GB、オンラインゲームや3Dゲームをプレイするなら16GB、ゲームの実況動画配信や本格的な動画編集をするなら32GB以上は欲しいところです。また、4K解像度以上の動画編集やRAW現像といったプロユースであれば、64GB以上あると快適に作業が行えます。
快適に作業が行える用途別メモリ容量の目安
容量 | 用途 |
---|---|
8GB | オフィスソフトでの作業、ネットサーフィン |
16GB | オンラインゲームや3Dゲーム |
32GB | ゲームの実況動画配信、本格的な動画編集 |
64GB以上 | 4K解像度以上の動画編集、RAW現像などのプロユース |
メモリ容量(1枚あたり)で製品を探す
メモリーの中には、同じ規格のメモリーを複数枚セットにしたお得な製品が販売されています。メモリーの枚数は、基本的にパソコンの空きスロットにあわせて選べばOKですが、「DDR2 SDRAM」以降のメモリーには複数枚の同規格・同容量のメモリーを1組で使用してデータ処理を高速化する「チャネル」という技術が採用されています。たとえば、メモリーを2枚1組で使用する「デュアルチャネル」では、データの道筋が2つになり、理論上は2倍のデータ転送速度になります。
そのため、メモリースロットに比較的余裕のあることが多いデスクトップパソコン向けの「DIMM」は、各社から同容量メモリーを複数枚セットにした製品が発売されています。なお、CPUやマザーボードが対応している必要はありますが、現在主流の「DDR4 SDRAM」では3枚1組で使用する「トリプルチャネル」や、4枚1組で使用する「クアッドチャネル」も利用可能です。
枚数で製品を探す
ここでは、メモリーを選ぶ際に知っておくと役立つスペックについて個別に解説。しっかりチェックして、自分の用途にピッタリな製品を選びましょう。
「モジュール規格」は、メモリーのデータ転送速度をあらわしたものです。「PC」の横の数字がDDR規格の世代、ハイフンに続く数字はデータ転送速度(単位はMB/s)をあらわしています。たとえば「PC4-19200」なら、データ転送速度が19200MB/s(19.2GB/s)の「DDR4 SDRAM」となります。
また、「モジュール規格」と「メモリ規格」は対応しており、「メモリ規格」の動作周波数を8倍すると、メモリーのデータ転送速度をあらわすモジュール規格の値になります。なお、パソコンに「モジュール規格」が異なるメモリーを混在させて装着することも可能ですが、その場合は、最も遅い「モジュール規格」のデータ転送速度となります。
主なDIMM(デスクトップパソコン用メモリー)の仕様
規格 | 動作周波数 | 最大データ転送速度 (理論値) |
ピン数 | ||
---|---|---|---|---|---|
モジュール | メモリ | ||||
DDR5 SDRAM | PC5-51200 | DDR5-6400 | 6400MHz | 51.2GB/s | 288ピン |
PC5-38400 | DDR5-4800 | 4800MHz | 38.4GB/s | ||
PC5-32000 | DDR5-4000 | 4000MHz | 32.0GB/s | ||
DDR4 SDRAM | PC4-21333 | DDR4-2666 | 2666MHz | 21.3GB/s | 288ピン |
PC4-19200 | DDR4-2400 | 2400MHz | 19.2GB/s | ||
PC4-17000 | DDR4-2133 | 2133MHz | 17.02GB/s | ||
DDR3 SDRAM | PC3-12800 | DDR3-1600 | 1600MHz | 12.8GB/s | 240ピン |
PC3-10600 | DDR3-1333 | 1333MHz | 10.6GB/s | ||
DDR2 SDRAM | PC2-6400 | DDR2-800 | 800MHz | 6.4GB/s | |
PC2-5300 | DDR2-667 | 667MHz | 5.3GB/s | ||
PC2-4200 | DDR2-533 | 533MHz | 4.2GB/s |
主なS.O.DIMM(ノートパソコン用メモリー)の仕様
規格 | 動作周波数 | 最大データ転送速度 (理論値) |
ピン数 | ||
---|---|---|---|---|---|
モジュール | メモリ | ||||
DDR5 SDRAM | PC5-51200 | DDR5-6400 | 6400MHz | 51.2GB/s | 262ピン |
PC5-38400 | DDR5-4800 | 4800MHz | 38.4GB/s | ||
PC5-32000 | DDR5-4000 | 4000MHz | 32.0GB/s | ||
DDR4 SDRAM | PC4-21333 | DDR4-2666 | 2666MHz | 21.3GB/s | 260ピン |
PC4-19200 | DDR4-2400 | 2400MHz | 19.2GB/s | ||
PC4-17000 | DDR4-2133 | 2133MHz | 17.02GB/s | ||
DDR3 SDRAM | PC3L-12800 | DDR3L-1600 | 1600MHz | 12.8GB/s | 204ピン |
PC3-12800 | DDR3-1600 | 1600MHz | 12.8GB/s | ||
PC3-10600 | DDR3-1333 | 1333MHz | 10.6GB/s | ||
PC3-8500 | DDR3-1066 | 1066MHz | 8.5GB/s | ||
DDR2 SDRAM | PC2-6400 | DDR2-800 | 800MHz | 6.4GB/s | 200ピン |
PC2-5300 | DDR2-667 | 667MHz | 5.3GB/s | ||
PC2-4200 | DDR2-533 | 533MHz | 4.2GB/s |
モジュール規格で製品を探す
OC時のモジュール規格で製品を探す
「電圧」とは、メモリーやメモリー回路を製品スペックどおりに動作させるのに必要な電圧のことです。現在主流の「DDR4 SDRAM」の標準電圧は1.2Vで、「DDR3 SDRAM」は1.5V、「DDR2 SDRAM」は1.8Vとなっています。一般的な仕様の「DDR4 SDRAM」は、基本的に1.2Vの標準電圧を採用していますが、メモリーメーカーが発売している独自仕様のオーバークロックメモリーの中には、1.35Vやそれ以上の電圧を採用したモデルもラインアップされています。オーバークロック等を行わない、通常の用途であれば標準電圧の製品を選ぶといいでしょう。
電圧で製品を探す
「Error-Correcting Code」(誤り訂正符号)の略で、メモリー内で発生したエラーを検出し、訂正する機能です。主に常時稼働を行うサーバー・ワークステーション向けのメモリーに搭載されており、「ECCメモリー」と呼ばれます。いっぽう「ECC」非搭載のメモリーは「non-ECCメモリー」と呼ばれ、一般的なパソコンにはこちらが搭載されています。なお、「ECCメモリー」を使用する際は、CPUやマザーボードなどのシステム側も「ECCメモリー」に対応している必要があります。
ECC対応・非対応で製品を探す
「Registered Memory」(レジスタードメモリー)の略で、「Registered Buffer」(レジスタードバッファ)と呼ばれるチップを搭載したサーバー・ワークステーション向けのメモリーのことです。この「Registered Buffer」がシステム側のメモリーコントローラの負担を軽減することで、メモリーの大容量化を実現しています。なお、「Registered Buffer」を搭載しないメモリーは「Unbuffered Memory」(アンバッファードメモリー)と呼ばれ、一般的なパソコンではこちらが使用されています。
Reg対応・非対応で製品を探す
愛知県名古屋市に本社を置く、パソコンパーツ・周辺機器の製造販売を行うメルコグループの企業です。国内トップシェアのCFDブランドメモリーをはじめとするパソコンパーツの開発・製造のほか、「玄人志向」のブランド名で自作パーツなどを販売しています。また、AMD、GIGABYTE、WESTERN DIGITAL、SEAGATEなど、海外メーカー各社の正規販売代理店も行っており、多岐にわたる製品を取り扱っています。
アメリカ・アイダホ州に本社を置く、半導体メーカー・マイクロン テクノロジーのエンドユーザー向けブランドです。同社のSSDと同様に、手頃な価格ながら高い品質と信頼性を実現しているのが特徴です。また、近年のゲーミングPC人気を受け、高品質なマイクロンダイやRGB LEDライト、パフォーマンスを向上させるヒートスプレッダーを搭載したゲーミングメモリー「Crucial Ballistix」シリーズも販売しています。
アメリカ・フリーモントのPCパーツ・周辺機器メーカーです。近年はオーバークロッカー向けの超高性能なメモリーや高効率な電源ユニットを販売しています。また、2012年にドイツのRaptor Gamingを買収してからは、PCゲーム市場向けのPCケースやキーボード・マウス、RGB LEDを搭載したゲーミングメモリーなどの周辺機器を展開しています。
台湾・台北市のメモリーメーカーです。高品質とコストパフォーマンスを両立させた「Value」シリーズや、スタイリッシュなデザインのRGB LEDを搭載したゲーミングメモリー「Trident Z RGB」、専用デザインのヒートスプレッダーを搭載した最速クラスのオーバークロックメモリー「Trident Z Royal」シリーズまで、幅広いラインアップが魅力です。
メモリーに使用されるDRAMモジュールのシェア世界第1位を誇る、アメリカ・カリフォルニア州の独立系メモリーメーカーです。一般向けの「Value RAM」シリーズから、サーバー向けの「Server Premier」シリーズ、RGB LEDライトを備えたゲーミング仕様のオーバークロックメモリー「Kingston FURY」シリーズなどがラインアップされています。
香港に本社を置くメーカーです。半導体を使用した独自製品を開発しており、ゲーミングメモリーやSSD、フラッシュメモリーなどを「KLEVV」ブランドで販売しています。メモリーはJEDEC準拠のコストパフォーマンスに優れたモデルと、ヒートスプレッダーを搭載したオーバークロックモデルの2タイプを展開しています。
取扱説明書などを見ながら行えば可能です。
一部のノートパソコンなどを除いて、取扱説明書にメモリーの取り付け方法が書いてあります。作業前に静電気を放電し、取り付け方向に注意しながら行えば、未経験者でも取り付けることは可能です。
パソコンが通電しているか確認してみましょう。
電源ボタンを押してもパソコンが起動しない場合は通電していないということなので、パソコン本体に問題があると考えられます。ノートパソコンの場合は、電源アダプターが外れていないか、バッテリー残量は十分かも確認してみましょう。
電源が入っているのに画面が表示されない場合や、ブルースクリーンが表示される場合は、メモリーの接触不良や破損の可能性があります。パソコンの電源をいったん切ってからメモリーを取り付け直してみましょう。
原因を見極めるため、増設したメモリーを抜いて動作を確認してみてください。
その状態で問題なく動作するようなら、メモリーに不具合がないかを確認するため、メモリーチェックツールなどを利用しましょう。その結果、メモリーに何の問題もないようでしたら、パソコンとメモリーの相性がよくないことも考えられます。そうした問題に対応するため、「相性保証」サービスを提供する販売店もあります。
機種によって異なります。
デスクトップパソコンなら4〜6基のメモリースロット、ノートパソコンなら1〜2基のメモリースロットを搭載していることが一般的です。
規格が異なるので変更することはできません。
パソコンのマザーボードは、搭載できるメモリーの規格が決まっています。「DDR3 SDRAM」と「DDR4 SDRAM」ではモジュールのピンの数や形状が異なるため、スロットに差し込むこともできません。
メモリータイミング
メモリーが読み書きを行う際、動作ごとに発生する遅延時間(レイテンシー)のことです。単位はクロックで、 「14-14-14-34」や「16-18-18-38」といったように表記され、左から順に「CAS Latency(CL)」、「RAS to CAS(tRCD)」、「RAS Precharge(tRP)」、「Cycle Time(tRC)」という各動作にかかる時間をあらわしています。同じ動作クロックのメモリーであれば、メモリータイミングが小さいほうが高速ですが、体感的な違いはほぼありません。
SPD
Serial Presence Detectの略で、メモリーの仕様を格納しておくためのチップのことです。SPD内にはメモリータイミングや最大動作クロック、容量といった情報が格納されており、パソコンがメモリーに正しくアクセスできるようにメモリーの仕様を伝える役割を担っています。
JEDEC
米国Electronic Industries Alliance (EIA:電子工業会) の下部組織で、半導体技術の標準化を行っている団体です。SDRAMやDIMMなどの規格を策定しています。JEDECに加盟しているメーカーのメモリーはSPD内に製品の仕様が記録されており、システム側で特別な設定を行うことなくメモリの動作設定が適用されるので、安心して利用することができます。