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  • 2019.09.16

グローバル化の抑止力としての「文化の盗用」

日本でも取り沙汰される機会が増えた「文化の盗用」。その背景と問題点を私たちが事細かに想像するのは、困難だが今後さらに必要とされるだろう。

「文化の盗用」と真っ向から対峙してきたヒップホップ・アーティストたちの視座から考えていく。

グローバル化の抑止力としての「文化の盗用」

キム・カーダシアンが発表した「KIMONO」は文化の盗用だという批判に晒され、
名称を「SKIMS」に変更することとなった。(画像は本人のTwitterより)

クリエイター

この記事の制作者たち

こんにちは、RAq@raq_reezy)です。

さて、「文化の盗用」(Cultural Appropriation)という概念がアメリカでは急速に広まっています。

「文化の盗用」は「他者の文化を許可なく用いること」といったような概念であり、特にマジョリティや権力の強い側が、マイノリティ側の文化をファッション的に取り入れると炎上しやすい傾向があります。

例えば、以下のような炎上事例があります。

・アリアナ・グランデが自身の新曲「7 rings」にちなんで「七輪」というタトゥーを入れたところ、日本文化を盗用しているとして炎上。

・ジャスティン・ビーバーが髪型をドレッドにしたところ、黒人文化の盗用であるとして炎上(白人のセレブリティが黒人の髪型を模倣すると、すぐに炎上します)。

・ある白人学生がプロムにチャイナドレスを着ていったことをSNSに投稿したところ、中国文化の盗用であるとして炎上。

・白人であるカーリー・クロスが、VOGUE紙の撮影で着物を着たところ、日本文化の盗用だとして炎上。

・ビヨンセがコールドプレイのミュージックビデオにゲスト出演した際に、インド風の衣装を着たところ、インド文化の盗用だとして炎上。

・キム・カーダシアンが自身の下着ブランドを「Kimono」と名付けて、商標登録までしようとしたところ炎上(これは他文化の特徴を真似したというよりも、他の文化発祥の単語を誤用した上に商標登録までしようとしたというレベルの低いものなので、少し趣きが違うようにも思いますが)。

その他にもたくさんあり、理解できるものもあれば、「何でも炎上する時代になったな」というものも多いのですが、せっかくなので、今回は「文化の盗用」とヒップホップの関わりについて書いてみたいと思います。

目次

  1. 「文化の盗用」とは何か
  2. ヒップホップにおける「文化の盗用」
  3. アジア系アメリカ人のマーケット拡大
  4. 「文化の盗用」は、文化間の関税のようなもの?
  5. RAqが聴き解くヒップホップと社会

「文化の盗用」とは何か

日本は多民族国家ではないため、民族文化の盗用という観点では「文化の盗用」の問題点にピンと来ないかもしれませんが、例えばこんな風に考えるとどうでしょう。

オタクの人たちが育んできた、ある種のコンプレックスでもあり、ある種のアイデンティティでもあった「オタク文化」を、ある日、芸術家の村上隆さんが戦略的にハイアートの世界に持ち込んだところ、最先端のポップアートとして大ブレイクした。
Takashi Murakami Short Film: Is This the Dream?

90年代の終わり頃。このときにオタクの人たちが感じた「俺たちの文化を勝手に使いやがって!」という気持ちに近いものがあるのではないでしょうか。当時、オタク文化はあまり世間的に認められていなかった中で、「俺たちは、酸いも甘いも含めて、その文化の担い手として生きてきたのに、どうして外部の人間が表面や美味しい部分だけを持っていくんだ!」という感情が生まれるわけです。

さらに、民族文化の場合は、オタク文化のように自分で選んで属しているのではなく、生まれつき属している文化です。身体的な特徴も伴っているため、なおさらその扱いにはセンシティブとなります。

こうした「文化の盗用」の中でも、炎上が多いパターンは2つあるように思います。

1. 白人が黒人文化を盗用するケース
2. 白人や黒人がアジア文化を盗用するケース

1つ目に関しては、単純に「文化の盗用」というだけでなく、黒人差別の歴史から「白人の特権(White Previledge)」と言われる概念までが複雑に関連しています。

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