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ソフトバンク宮川社長、4.9GHz帯は「2030年開始、AI活用に必要な周波数幅」

 総務省は13日、5G通信用の周波数として、4.9GHz帯(4900MHz超え5000MHz以下の100MHz幅)をソフトバンクに割り当てた。当日、総務省内で認定書交付式が執り行われ、ソフトバンク代表取締役 社長兼CEOの宮川潤一氏が認定書を受け取った。

阿達雅志総務副大臣から認定書を受け取るソフトバンク宮川潤一社長

今回の周波数割当

 5G通信については、NTTドコモとKDDI、ソフトバンクと楽天モバイルに割り当てられている。このうち、ドコモとKDDIは100MHz幅が2つ(合計200MHz幅)、ソフトバンクと楽天モバイルが1つ(合計100MHz幅)持っている。

 新たな周波数の割当では、希望する事業者が複数あることが多く、審査のうえ割当事業者が決まるが、今回の4.9GHz帯では申請したのがソフトバンク1社だけだった。審査基準にはエリア展開や公平性、競争促進、基地局開設料などの項目があるが、審議会ではソフトバンクに対し割当が妥当と判断され、今回の割当に繋がった。

 なお、4.9GHz帯には現在も免許を持ち利用している既存利用者がいる。ソフトバンクが実際に利用するためには、現在利用している事業者に廃止または別の周波数帯に移ってもらう必要がある。

宮川氏「率直にうれしい」

囲み取材に応えるCTOの佃英幸氏(左)と宮川社長(右)

 交付式の後、囲み取材に応じた宮川社長は、喜びの表情とともに、今回の申請の経緯や周波数の利用について記者に説明した。

――今回の獲得しての感想は?

宮川氏
 5G Sub-6帯で比べると、うちだけ100MHzだったので、これはほしいと何年も前から希望していた。そういう意味では、希望が叶ってほっとしている半面、これから始まる移行が大変だと思うので、全勢力でやっていかなければならないと思う。

――移行は大変?

宮川氏
 免許局でいくと1万3000局あり、登録されている免許人で660人いる。900MHz帯のときは本当に大変だったが、(今回は)免許人が皆さんきちっと見えてるので、そのときほどではないが、使い方が複雑なので、丁寧に事業者と対話していく。

宮川氏

――n79の帯域で、世界ではあまり使われていないと思う。端末についての考えは?

宮川氏
 周波数のやりくりはこれまでもやってこれた。しっかり使える周波数だという認識。

――メーカーにはどのような働きかけを?

宮川氏
 しっかりと会話していく。それでも、周波数の基地局側の設備では、AI-RANが実装してくる時期と重なってくるのでアグレッシブに周波数を使っていきたい。

――サービス開始時期は?

宮川氏
 申請では、2030年から使い始める。それまでは移行をしっかりやる申請。そこから2036年までに4万5100局を立ち上げる計画で出しているが、いつも事業計画で半分くらいの期間でやりきるのが我々のやり方。ただ、今回は移行先が多いので、丁寧な対応をしていき、使い出す時期は2030年くらいを考えている。

――2030年までの約5年間、NTTドコモやKDDIと比較すると使える周波数幅が少ないが、対策は考えているのか?

宮川氏
 少ない物はどうしようもないので、基地局の高度化や密度を上げるなどで工夫していく。

 いつも少しハンディキャップを持ちながらやるのが我が社。今回も移行を伴う周波数だからもらえたのかもしれない。(過去にも)“移行を伴う周波数”はいただけるが、それ以外はなかなかいただけない。それでもやりくりする覚悟を持って有効利用していく。

――経営面での効果は

宮川氏

 今回の申請では、移行費用含めて5500億円を16年掛けて実施していくと申請した。100MHz幅では、それ以上の経済効果が十二分にあると思っている。

 特にAI関連のトラフィックがどんどん増えている。マルチタスクのAIがどんどん動き出すと、通信トラフィックがもっと増えることが想定されるので、それまでの対策として今から認定されて準備を進め、2030年に使えるのが、ちょうど我々にとってもベストになる。

――今回の申請で競合がなかったが

宮川氏
 本当はめちゃくちゃ驚いた。

宮川氏

 最初は電波利用料もオークションがあり、いくらにすれば1位通過できるかを社内で喧々諤々議論した。「すごい戦いになる」と議論をしていたが、蓋を開けてみたら誰もいなかったと……。ちょっと積み増してしまったかと反省している。

――他社が手を挙げなかった要因は何が考えられる?

宮川氏
 総務省さんいわく、移行が大変なのと、各キャリアが持っている周波数をすべて使い切っているわけではないという2点。

 まだまだトラフィックが増えるとこちらも読んでいる。(ドコモやKDDIよりも)100MHz足りなかったハンディキャップを引っ張ったまま2030年代に突入するわけにはいかないと、4.9GHz帯はどうしても取るべきだろうという風に判断した。

――次狙っている周波数は?

宮川氏
 当面はミッドバンドで出てくる5G用周波数は、これがラストではないか?

 ミリ波がまだまだ出てくると思うが、今のスマートフォンでミリ波を使っていこうとすると、少し難しい。技術革新とともに使えるようになると思うが、短期的な戦力にはならないと感じている。

――来年、オープンシグナルの調査で逆転できそう?

宮川氏
 来年ではなく年末には逆転する。(実際はわからないが)我が社のデータでは、順調だと思っている。

宮川氏