地味に渋い喫茶は大好物である。
たとえば三ノ輪「COFFEE & SNACK ロダン」。
極端に目を惹く何かを外観から見出すことはできないが、その佇まいはじんわり心に染み入った。
東京都台東区竜泉3-44-7
閉店
純喫茶を足のみで探す。それができる良い時代に出会った。と同時に私自身の経験値も低く、地域密着度数の高い店を反射的に避けていた時期でもある(それが今では……)。
大通りからわき道にそれた人通りの少ない立地に加え、営業中の札が出ていてもそれすらも疑わしい、ひっそりとしたその姿に「お前にはまだ早い」という神の声が聞こえ、直前でしっぽを巻いて逃げだしたのである。
それから時は流れ、この店をあえて名指しで向かう日が来たが、そしたらそしたで休みや営業終了後だったり、なんともタイミングが悪い。初訪問まで何年も時間がかかった。
店名入りショーケースはたまに見かけるが、このような縦書きは珍しい。しかも庇の色とお揃いで渋い。
アサヒスーパードライ、白鶴だと萎えるが、このロバートブラウンに関しては純喫茶度を損なわない気がする。色が珈琲色だからだろうか?
意外なことにドトールコーヒー!
*
ドアを開けるのはいまだに緊張する。
が、この緊張感こそが純喫茶巡りに欠かすことのできないスパイスのようなもの。何も感じず平気で入れるようになったら、たいして面白くはないだろう。
どんな内装か?
常連客でいっぱいか?
店主は一見に意地悪なこわい人ではないか?
実はこのうち3つ目が緊張の最大の理由だったりするのだが(^^;
渋い茶系で素晴らしい。外観のイメージ以上の空間。
派手さはないが、それこそが最大の魅力。窓にかかったレースのカーテン越しに透ける植木のシルエット、趣のある照明器具、壁や床にはレトロな模様が入っている。
カウンターには店名由来のロダン『考える人』像が置いてあった。
昭和な雰囲気をしっかり保ちつつ、ござっぱりと清潔感があるのも嬉しい。
ご夫婦と思われるマスターとマダムはどことなく品があった。他にお客はなく、奥に座ってテレビを見ていた。
窓際の、といっても角地なのでほとんどが窓際だが、ドア横のカーテンが人の字に開いた特等席に座った。
頭上には花をかたどった琥珀色のランプ。
お腹が空いていたので壁の食事メニューからスパゲティを選ぶが、やっていないとのこと。代わりに厚切トーストセットを勧められた。
さっくりして美味しいトースト。サラダ付。
コーヒーは濃いめでこちらも美味しい。
値段は550円というモーニングサービス並の価格なので、終日モーニングなのかと思い、もう一度壁を見ると、11:00までは同じような内容で400円。安い。
遠くからテレビの音が聞こえてくるだけのとても静かな空間。
やはり目立たない場所だし、一見を拒むオーラに恐れをなしてお客が入ってこないのだな、と考えていると、ドアがパッと開き、「まだ大丈夫?」と60代女性のグループが入店。一気に賑やかになった。
エムケイ
ブログを通して多くの方に純喫茶の魅力を伝えていきたいと思っています。
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コメント
いちプロ
根岸図書館というのが ありまして どうしても読みたい貴重な
本が あったので よく通いました。荒川線一本で行けるので
便利だったのです。
懐かしい場所ですなあ。
2015/08/29 URL 編集
エムケイ
ここは三ノ輪からも行けますが、入谷からも行けます。
私は浅草から歩きました。
2015/08/30 URL 編集