2023年05月26日

PaaSやSDKの制限に対する実装のコツ

paas_sdk

WebRTCやメッセージングの基盤を担うPaaSやSDKは開発工数の短縮に有効です。しかし、秒間あたりの実行数に上限がある等、制限事項もあります。制限事項の影響で実現できない非機能要件が発生する場合もあります。
この記事では、要件をさらに深掘りして実現させたい内容を満たす実装のコツを記載します。

制限事項の例

メッセージングを提供するAgoraやTencentの制限事項を例に解説します。AgoraのSignalingSDKではチャンネル毎に200件/秒以内(チャンネル参加者数が1,000人未満の場合)を推奨、TencentのChatでは40件/秒の制限になっています。

参考リンク
Signaling Limitations(Agora)
使用制限(Tencent Chat)

実装の改善例

連続したギフトやハートの処理要件

要件

・ハートを飛ばしてライブ配信の盛り上がりを演出
・応援する配信者へ積極的にギフトを送る

改善前の実装

  1. クライアントからハート又はギフトを送信
  2. サーバー側でデータ保存と決済処理を実施
  3. サーバー側からのレスポンス後、クライアントからメッセージングでハート又はギフト送信の旨をブロードキャスト
  4. 配信者や他の視聴者がメッセージを受信してUI更新

問題点

  • 送信側が連打できる為、メッセージの受信がスパイクして端末の負荷が上昇する
  • 決済処理やデータ保存用サーバーの負荷が上昇する
  • 大量にギフトの画像が流れていって読み取れない

改善のポイント

パターン1
ギフトの枚数や、ハートの数を入力するUIを追加し、件数とハート又はギフトの情報を合わせ、1回にまとめて送信
パターン2
クライアント側でボタンクリック数をカウントし、数秒待機してからクリック数とハート又はギフトの情報を合わせて1回送信

大量のチャット

要件

・10,000人規模のライブ配信でチャットをスムーズに流したい

改善前の実装

  1. メッセージング用に全員が1つのチャンネルに接続
  2. メッセージの送信
  3. 配信者や他の視聴者がメッセージを受信してUI更新

問題点

  • メッセージの受信がスパイクして端末の負荷が上昇する
  • PaaS側の負荷が上昇し、メッセージの遅延や送信できなくなる
  • 大量にチャットが流れていって読み取れない

改善のポイント

パターン1

視聴者をランダムで複数のチャンネルに分けて参加させる。数百人規模のグループであればメッセージも自然に流れ、盛り上がりの様子も失われない。

パターン2

チャットの投稿数が増えてきたらメッセージングですぐにメッセージを送信せずに、タイマー等で遅延させて送信する。

ベストプラクティス

PaaSやSDKを提供するベンダーは、設計や実装についてベストプラクティスをドキュメントとして公開しているケースもあります。コンセプトが実装中のサービスに対する同じソリューションなので参考になる場合が多いと思います。

例:Agora SignalingSDK、Tencent Chat

藤本 諭志

執筆者藤本 諭志

株式会社ブイキューブ 技術本部 Agora担当。 2007年ブイキューブ入社。 自社開発サービスであるV-CUBE セミナーの開発に携わる。現在はAgoraとTencent Cloudのプロダクト担当SEをしている。 スキル:Docker/AWS/Linux/DB/Ruby/PHP/JavaScript

関連記事

2024年05月09日

Apple Vision Pro: Cloud XR の力を解き放ち、次世代の没入型体験を実現

  • 技術動向
  • ライブ配信
  • ビデオ通話
  • Tencent
※この投稿は、Tencentの日本代理店であるブイキューブが、Tencentブログを翻訳した記事です。 待望のデバイスであるAppleVisionProが正式に発売され、すぐに世界中の注目を集めました。 VisionProの発売は間違いなくXRへの熱意の波を引き起こし、AR/VR/MRのより広範な市場を切り開き、新しい時代が目前に迫っています。 10年以上前にリリースされたOculusRiftから今日のVisionProに至るまで、没入感の向上、軽量化、参入障壁の低さは常にXR業界の開発の主な方向性でした。 VisionProの驚異的なパフォーマンスは印象的ですが、その高価なハードウェアコストとバッテリー寿命の問題は、ほとんどの消費者にとって依然として受け入れがたいものです。 クラウドコンピューティングの概念に基づいた革新的なCloudXRソリューションは、クラウドコンピューティングの能力を活用してレンダリングと表示を分離し、端末デバイスのコンピューティング能力を解放し、XR業界の発展に新しい方向性を提供します。

2023年09月12日

Tencent Effect SDKの概要

  • 技術動向
  • ライブ配信
  • ビデオ通話
  • Tencent
※この投稿は、Tencentの日本代理店であるブイキューブが、Tencentブログを翻訳した記事です。 概要 ライブストリーミングやショートビデオビジネスの爆発的な成長に伴い、豊かで多様なビデオ特殊効果、自然で鮮やかなスマートビューティーフィルター、革新的で面白いステッカーも多くの注目を集め、さまざまな映像のユースケースに新たな活力とエネルギーを注入しています。Tencent Effect SDKは、iOS、Android、Web、Windows、macOSにわたるリアルタイムのビデオフレームと画像処理をサポートします。ビューティーフィルター、メイクアップ、フィルター、アニメーションステッカー、基本的なセグメンテーション、ジェスチャー認識などの多様な製品機能を統合し、ショートビデオ、ライブストリーミング、オーディオ/ビデオ通話プラットフォームのスマートな美化やクリエイティブな機能に対する技術サポートを容易に提供します。

2024年03月15日

Tencent Cloudコンテンツ生成AIを用いたライブギフトの実現方法

  • 実装例・サンプルコード
  • ライブ配信
  • ビデオ通話
  • Tencent
※この投稿は、Tencentの日本代理店であるブイキューブが、Tencentブログを翻訳した記事です。 ギフトを贈ることはユーザがライブ配信者へ応援する気持ちを伝えるメインな手段で、ライブ配信者とプラットフォームにとっても重要な収入源となります。しかし、従来のギフトでは、ギフトの豊かさと他の人やものと異なる独自性を求めるライブ参加者のニーズに応えることが難しいです。 強力な生成機能を持つAIGCは、テキストおよび他の手段で全く新しいかつ独自性のあるギフトを容易に作成しライブ配信者へ贈ることができ、このようにユーザにインタラクティブな報いの体験を実感させます。「AIGC+ギフト」の組み合わせは、ライブストリーミングにおける双方向のやり取り体験を効果的に向上させ、ユーザアクティビティを促進させるだけでなく、ユーザがギフトを贈る意欲を引き出し、さらにプラットフォーム利益の成長にも繋がります。
Agora 勉強会 好評実施中!ご参加はこちら

先頭へ戻る