アングル:宙に浮くワグネル、プリコジン氏亡き後ロシアの出方は

アングル:宙に浮くワグネル、プリコジン氏亡き後ロシアの出方は
 ロシア民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏が乗っていたとされる小型機が墜落した前日の22日、ロシアのエフクロフ国防次官はリビアを訪れて現地の軍司令官に会い、ワグネルの戦闘員は同国にとどまるから心配はいらないと告げていた。アフリカで撮影されたとみられる21日に公表されたプリゴジン氏の提供写真(2023年 ロイター/Courtesy PMC Wagner via Telegram via REUTERS)
[24日 ロイター] - ロシア民間軍事会社ワグネルの創設者プリゴジン氏が乗っていたとされる小型機が墜落した前日の22日、ロシアのエフクロフ国防次官はリビアを訪れて現地の軍司令官に会い、ワグネルの戦闘員は同国にとどまるから心配はいらないと告げていた。ただし、今後ワグネルはロシア政府の支配下に置かれ、司令官は交代すると――。
会談の内容はリビア高官が明らかにした。会談のタイミングが偶然ではなかったことをうかがわせるものはない。ただ専門家は、エフクロフ氏の訪問により、ロシアのリビアにおける存在感が小さくなるどころか、拡大かつ深化することが示されたと言う。
この会談は、ワグネルが築いた世界的なネットワークをロシアが手放すつもりはないことを示している。
ワグネルとプリコジン氏は、ロシアのために欧州、中東、アフリカ全域で複雑な軍事・商業ネットワークを張り巡らせた。プリコジン氏が死亡したとみられる今、その命運が宙に浮いている。
ワグネルはウクライナで大規模な戦闘を繰り広げてきたほか、シリア、リビア、中央アフリカ共和国、マリで内戦や反乱を戦い、その過程で金鉱や油田を掌握した。
アフリカにおいて、ワグネルは新たな指導者の下でおおむね現状を維持するか、別のロシアの傭兵グループに吸収されるかもしれない。ただ、ロシアが公式の、もしくは法的な存在感を持たないような場所でも活動できるワグネルは、同国政府の外交政策上、貴重な道具になっている。
プリゴジン氏についての本を執筆中の米国在住の研究者、ジョン・レヒナー氏は「ワグナーは継続企業だ。契約があり、ビジネスであり、継続する必要がある」と語る。
「信頼性の観点から、(ワグネルは)物事が通常通り進んでおり、今もパートナーであるように見せかけようとするだろう」という。
<代わりはいる>
6月にロシア政府に反旗を翻した後、プリコジン氏はアフリカにおけるワグネルの存在感を強化するための取り組みに一層力を入れた。
ロシア政府はこれを歓迎しなかった可能性があり、ワグネルの活動を乗っ取るために別会社を複数設置したとの報道もある。ただ、どれも今のところ乗っ取りに成功していないようだ。
ワグネルがロシア政府との正式な合意に基づいて活動していた国々では、当面大きな変化は起こらないとアナリストはみている。
ロシアはリビアで公式の軍事的役割を担っておらず、国連の武器禁輸措置を破らずに直接介入することはできないため、今後もワグネルかそれに類する組織を通じてリビアに関与する必要がある、と専門家は述べた。
中央アフリカ共和国では大統領の政治顧問、フィデレ・ゴウアンジカ氏が、ワグネルは共和国の内戦中に「民主主義を救うのに手を貸してくれた」とし、プリコジン氏の死を悼んだ。もっとも、ワグネルはロシアとの国家レベルの合意に基づいて展開していたため、プリコジン氏の「代わりはいる」と付け加えた。
それでも政治アナリストは、プリコジン氏の死による不透明感はアフリカにリスクをもたらすと言う。
ワグネルが持つ純粋に経済的な資産の行方は、さらに見極めが難しいかもしれない。ワグネルが所有しているとされるシリアの石油関連企業、エブロ・ポリスの命運については情報がない。
中央アフリカ共和国などのアフリカ諸国で、ワグネルが鉱業・伐採事業でどれだけの利益を上げているかについての情報もほとんどない。ただ、これらの資産をロシアが直接支配したり、別の業者に譲渡したりするのは難しそうだ。

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