政府が東電に1兆円規模の資本注入を検討、実質的国有化

政府が東電に1兆円規模の資本注入を検討、実質的国有化
 12月8日、政府が、東京電力に1兆円規模の資本注入を検討していることが分かった。写真は東京電力のロゴ。6月撮影(2011年 ロイター/Yuriko Nakao)
[東京 8日 ロイター] 政府が、東京電力<9501.T>に1兆円規模の資本注入を検討していることが分かった。複数の関係筋が8日までに、ロイターに明らかにした。優先株などの新株を引き受け、東電を一時的に実質国有化する。合わせて、銀行団に2012年度以降の追加融資を求める。
政府の原子力損害賠償支援機構を通じて来年夏にも実施する案が出ている。東電は福島第1原子力発電所事故の賠償金支払いで、支援機構を通じて国から8900億円の資金援助を受けたが、この資金は賠償金の支払いに使途が限定されている。福島第1原発1─4号機の廃炉費用(政府第三者機関の見積もりで1兆1510億円)が今後どれくらい膨らむのか、除染作業の費用負担が東電に発生するかどうかなど、今後、不確定要素が明らかになるにつれ東電に追加の財務負担が発生する可能性が出ており、財務基盤を強化する必要があるためだ。
東電が国から11月に認定を受けた「緊急特別事業計画」によると、2011年3月期に1兆2648億円だった純資産(単体)は12年3月期には7088億円に減少する見通し。柏崎刈羽原発の再稼働が見通せない中で、代替の火力発電コストが増大しており、12年3月期に3350億円の営業赤字(単体)を見込むなど収支も悪化している。赤字解消には電気料金の値上げが避けられない状況だが、認可を行う枝野幸男経済産業相は「徹底した料金制度の見直しや電力会社の企業努力が必要」などと慎重姿勢を崩していない。
一方、東電の西沢俊夫社長は、国からの資本注入について「現時点では選択肢として考えていない」(11月4日の記者会見)と発言するなど、国の経営関与が一段と強まる資本注入の受け入れには否定的な見解を繰り返し示してきた。ただ、期間損益の悪化が続くことにより「来年秋には資本的にはすれすれの状況だ」(第三者機関関係者)とされ、資本注入は不可避との見方が強まっている。
東電が国の資金支援を受けるにあたっては、金融機関からの協力を取り付けることが求められている。政府関係者は「国が東電支援で進めるからには、銀行側も残高維持だけでは済まない」と、銀行団に東電支援で国と歩調を合わせるよう求めている。

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