プール燃料取り出しは今月中旬に開始、リスクは散乱がれき

プール燃料取り出しは今月中旬に開始、リスクは散乱がれき
11月6日、東京電力は、福島第1原子力発電所4号機原子炉建屋内の燃料プールに貯蔵されている約1500体の燃料を取り出して、近くの共用プールに移送する作業を今月中旬に始める予定だ。写真は4号機建屋。代表撮影(2013年 ロイター)
[東京 6日 ロイター] -東京電力<9501.T>は、福島第1原子力発電所4号機原子炉建屋内の燃料プールに貯蔵されている約1500体の燃料を取り出して、近くの共用プールに移送する作業を今月中旬に始める予定だ。過酷事故が発生した現場にあるプールからの燃料取り出しは世界的に前例がなく、海外の注目度も高い。
燃料取り出しと共用プールへの移送自体は、従来から通常の作業として実績を重ねてきた。一方で、事故の影響でプール内に多数のがれきが存在していることがリスクとの指摘も聞かれる。危険性が極めて高い核燃料を扱うだけに「間違いを起こしてはいけない仕事」(原子力規制委員会の田中俊一委員長)とされる。作業は1年以上続く見通しだ。
<成功すれば廃炉進展>
使用済み燃料プールからの燃料取り出し作業自体は、通常どの原発でも行われている。取り出した燃料は「キャスク」と呼ばれる金属製の円筒形容器に格納されて4号機近くにある建物の中にある共用プールに移送される。
ただ、事故当時の水素爆発によって原子炉建屋が大破した4号機では通常通りの作業とはいかず、取り出しに着手するまでに大掛かりな準備工事が続けられてきた。
現場では、原子炉建屋の外壁や屋根をパネルで覆い、建屋上部の一部と南側の建屋外壁を「逆L字型」に囲む鉄骨の構造物の設置。この鉄骨構造が、燃料をつり上げる装置と、燃料を水平方向に移送する天井クレーンを支える。
構造物の工事や装置の取り付けによって、事故発生から2年8カ月を経て取り出し作業に入ることが可能になった。東電は取り出し作業について「福島第1の安定化・廃炉に向けての大きな進展」と位置付けている。
<「地震耐えられる」と前所長>
1年強に及ぶ作業期間中は、相当の規模の地震が発生することを想定する必要があるが、果たして4号機建屋は耐えられるのか──。今年6月、現地を取材した外国報道機関の記者団に対し、高橋毅・第1原発所長(当時、現在は執行役員原子力・立地本部副本部長)は、「地震に対する強度は十分余裕をもって作られており、2年前のような地震が来ても耐えられる」と強調した。
燃料プールの底部も補強工事によって耐震裕度を向上させたほか、万が一、水が抜けても補給の給水設備は用意していると東電は説明する。
<がれきがリスク要因に>
4号機プール内には水素爆発によって大小さまざまながれきが降下し、現在でも数百片が散乱している。燃料取り出しの際にがれきが引っ掛かったりして取り出せなくなったり、燃料を傷つけるリスクが懸念材料となっている。プール内のがれきの撤去は、燃料取り出しと並行して実施する予定だ。
規制委の田中委員長は6日の記者会見で「大きながれきがプールの中にたくさん落ちたことによって燃料が傷んでいたり、取り出しの過程で小さな傷が大きくなる可能性もゼロではない。放射性ガスが出てくることなどのリスクも考えているが、敷地外にまで大きく影響するリスクは想像していない」と述べた。
経済産業省幹部は「燃料取り出しでがれきが引っ掛かる状態がどのように発生するのかわからないので、十分慎重にやる必要がある。引っ掛かった状態で無理して引き抜かないことが大事だ」と話す。
<津波の備えは>
福島第1原発事故の主因となった大津波への備えは万全なのか。規制委の田中委員長は、東日本大震災と同様の津波が襲来した場合に健全性は保てるのかどうかについて「よく分からない。そういうことがないように願っているが、難しいことは聞かないで」(10月30日の会見)と述べた。
東電広報は「土のうや石を積んだ仮設の防潮堤による対策はとっている。4号のプールだけではなく全体としての津波対策をとっている。地震で原子炉建屋の躯体(くたい)に損傷は与えておらず、津波においてもそうした心配はない」などと説明している。

浜田 健太郎;編集 田巻 一彦

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